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〇表紙連動で市民が登場する議会だより          八女市議会

 

  令和6年2月7日  八女市議会

 

1.視察意図

 

 HPであちこちの議会の広報紙を検索していて、ひときわ元気で活発さを感じるものがありました。特に裏表紙に、その3分の2ほどの紙面を割いて一人の制服の女性の笑顔が目を引きました。タイトルは「聞いてきました まちの声」。そしてサブ見出しに「表紙によせて vol.15」と。表紙とは? 納得がいきました。表紙には消防出初式の写真。この女性は女性消防隊の隊長さん。この方にインタビューをした企画紙面で、内容は入隊のきっかけから議会へのメッセージまで。

 そのほか、議会のHPにはアンケート調査を実施したともあり、強い関心を抱きました。

 

2.視察の概要

 

〇予定どおりに到着すると、待ってくれていたのは広報委員会の正副委員長。

 

〇市議会は定数22人。そして先の選挙で7人が新人になった。この7人、プラスベテランから2人の計9人で広報委員会を構成。メンバーは3常任委員会から各3人。驚くべきは、その正副委員長もそろって新人、というところです。昨日、山鹿市で正副議長が任期4年というのに驚きましたが、こちらでも、常任委員会、広報委員までもが任期4年。お国柄か、九州のこの特徴に心から圧倒されました。

 

〇なお22議員のうち議長を除き21名で委員会を構成。3委員会に各7名。

 

〇前述のとおり、21日に発行されたばかりの最新号の表紙には消防団の出初式。裏表紙を見ると婦人消防の隊長さんがにこやかにインタビューに答えている。これまでに少年野球チーム、地場産品である玉露茶、提灯、灯籠、線香、桶の職人や人形づくりの関係の方などが次々と登場しています。この企画は、選挙前、前任の委員長の発案で始まったとのことです。「伝統工芸」にスポットを当てて連載をやってきたが、こちらもネタ切れぎみ。でもぜひ続けたい。今では市民が話題になることから楽しみにされ、載った本人やその周辺に喜ばれている。待ちわびてくれるようになった、とのこと。

 

〇取材はもちろん広報委員が行う。なお一般質問の記事なども事務局任せでなく、発言の要旨を委員が見極め、紙幅サイズに要約して、発言者本人に確認。手直しも入ります。

 

〇八女市議会ではこの企画のほか、市民への議会に関するアンケート調査も実施。いかにも議会に関心がない、よくわからないという、もうアンケートの前からわかっていそうな調査をあえてやった。それがエビデンスとなり、これを議会が共有して、広報紙の改革にもつながっていったというところに大きな意味がある。無作為抽出でアンケートを送付。当初は行政がやるアンケートに「便乗」したが、そうすると行政と議会で回答分量が膨大に。次回はぜひ議会独自で、それも4年に1度はぜひ実施したいと意気込みます。議会では「アンケート調査特別委員会」までこしらえた。結果は11月に全員協議会で報告、その後議会HPにも掲載するという徹底ぶり。

 

〇ここで、話題が中津市議会のことに。こちらも先進的で、議長が定例会ごとに、ケーブルテレビで市民向けに議会報告をしているとのこと。そしてその視聴率が高い。以前、私も中津市がある国東半島方面を視察に巡ったことがあり、放送局のエリアの事情でこの方面は一般テレビ放送の受信状況が悪い。そこでケーブルテレビの加入率が高く、だからこそ、私の視察先では土曜日、学校の補修授業を教員OBがケーブルテレビで行っているということを教わった、図らずもそんな情報交換で賑わった。この最新号に、その中津市議会へ八女市議会広報広聴委員会から視察に出かけていることも載っており、他の常任委員会、議会運営委員会の視察まで、日時や項目だけでなく、2ページ半を割いて詳細に報告し、「視察を終えて」のコメントも添えられている。文末にはそれぞれ執筆した担当議員の名もあり、委員各人の自覚の高さや情熱が伝わってくるようだった。

 

3.感想

 

 視察テーマのことよりも前に、昨日の山鹿市議会といい今日の八女市議会といい、これは偶然のことでなく、九州方面には議会役職が議員任期と同じ4年であるという風土があることを知りました。このことをまず特筆します。

 

 本題からはずれますが、私も「議長任期は2年に」の論者でした。ですが考えるところがあり、自ら議長を拝命してみて、その気持ちが引けました。しんどいから、という意味ではありません。2年どころか4年間にもわたり、もし失政が行われたら、という懸念の方が強くなったからです。しかしこの度の2つの市議会視察を経て、私は間違っていたのかと思うに至りました。ことを成すには一定の時間が必要で、1年周期で交代では椅子を温める時間もない。いや、椅子の温まる暇もないというのが本来の慣用句ですが、それほどの東奔西走をし、心を砕いても、それでも2年、4年の任期は必要である。だからこそ議員の任期もまた4年と定められており、何か別の思惑で、それが1年交代に任意で、申し合わせで短縮されることが、法が禁じてないとはいえ、妥当なことなのか。そのように改めて考えさせられます。昨日の正副議長、今日の正副委員長のお人柄や熱意に接したからこそのひとつの感慨です。そうではありますが、もし、任期が1年であるがゆえに小学校での出前授業も成し遂げられない、議会だよりの紙面も改善できないとなれば、これでいいのか、との気持ちを消し去ることができません。

 ところで、この報告書は議長に宛てて提出するもので、私はその後、これを自分のHPにも掲載することを常としてきました。私は議員に初当選以来、議会だよりは1議員が1ページを占有する構成にして、今の議員定数でいえばそれだけで24ページ建てとし、それを仮称「議会報告白書」なるものとして全戸に届けることを理想と掲げ、提案してきました。そうすれば、議員は各自が発行するミニ新聞を届けるための時間がそのまま本来業務に投入できる。その頃、まだ三豊市が誕生する前の旧詫間町議会で、全定例会で質問に立っていた、私と同じ党所属の女性議員がいました。当時の町議会だよりでは質問者が1ページを「独占」できる慣行でした。それが公費で、全町民に届くのです。その議員からあるとき「うちださんは自分の新聞を何枚印刷しているの?」と聞かれたことがあり、「〇千枚です」と答えたところ、「まあ!詫間町の全世帯ね」と思いがけない返事が来て、この「白書」の考えに至ったのを思い出します。「うちださん、こんな新聞を配っていたら議員仕事ができんでしょう?」とツッコまれたこともあります。でも一方で「当選したら、議員はぜんぜん顔も見せん」という市民がいらっしゃることも事実。新聞の政策も配達も苦ではありませんが、その時間があれば議会の出前講座や「だより」紙面への工夫もできるのに、と考えたら忸怩たるものもあります。数行前に話を戻しますが、「ごひいきの議員がおるからあんたの新聞は受け取らん」という人がいますが、それは民主主義の未熟さそのもので、24人が店先を並べたらおいしさや安さが競えて結局民主主義というその商店街全体が繁盛する、そのように今も信じています。でもいつぞやそれはあまりに現実離れがしていて私自身も口にしなくなりましたが、この視察を経て、今さらながら、ここに書いておく気持ちになりました。というのも先日、ある親しい職員が私に「自治研修所で勉強して目からウロコでした」と喜びの報告をしてくれましたが、返す刀?で申し訳なかったが「その復命書を職員だれでも読めるLG-WANに発表したら?」と提案したところ、すぐさま「そんな文章力はありません」との一言が返ってきました。謙遜ですが、複雑な気持ちでした。研修の成果、それはあなたの持ち物ではない。市の、市民の財産だ。「異動と共に去りぬ」。それは本来の予算執行の姿ではないでしょう、とはその場では言いませんでしたが、代わりに議会の決算審査の場で申しました。同様に、私たちが公費で行かせていただくこのような視察や研修も、もとより「私のもの」ではありません。個人のHPでなく議会のHPに、1円以上の領収書と共に掲載するのがスジだ。私はそのように今も思っています。それこそが真の領収書だ、と。

 議長への報告という体裁でこれを提出しますが、一応、議会事務局員の目には触れることになっています。先日の予算委員会のある場面で「職員は民間マインドを」と発言したら、すかさず所管部長から「ウチの部署には民間経験者が、私も含め、多数いるのが強みです」との返事があったのは心強い。市役所内に次第に広がる「民間」の波動が、「これはボクのものでなく会社の資産だ」、さらに公務員マインドとして「公費出張の成果は全市民の資産だ」との自覚が定着するように、せめて、この文書が机の上を通る事務局職員だけでも一読していただき、やがて事務局から他の一般行政部門に異動になる際に、心のどこかに、このセンスをそれこそ「持ち出して」もらいたいものだと願ったりしております。

 

 ルールというものは変えられるためにある、などとも言います。「私がルールブックだ」などと穏やかでないことを言う人もいました。ルールを作り、改善していくという、立法府としての機能が日本の自治体では忘れ去られて久しい。それは無理もないことで、忘れられているというより思い出させてもらえていない、というのが戦後今日までの地方議会のありようでした。2000年、地方分権一括法までは。国の機関委任事務制度は、そもそも地方の議会をおざなりにする設計だった。それを法定受託事務、と言い換えたとしてもずい分無理がある言い回しで、国からの指示や予算付けがない限り、結局地方自治体に自治はない、ということを、はしなくも「コロナ」が教えて去って行ったのだ。これまでそう思って来たけれど、その日本で、小学校に地方議員が飛び込んで授業をやることができるのか、とあっけにとられ、また町に議員が飛び出して、キーマンにインタビューを敢行することもできるのだ、と、今さらの感慨を抱きます。

 そうだ。われわれがルールブックだ。ルールの下で安んじてはいけない。持てる権限や託された責任を忘れまい。次の議会だよりは今号よりも面白く。その果てなき執念こそが議会人、議会事務局人の使命だ、冥利だと改めて思います。

 それこそまさしく、私の広報広聴委員長の職責余命もあとわずか。「自分ひとりが頑張ってもなあ」との感傷を排して、年齢不相応の元気と貪欲さで、これら視察の「果実」を丸亀にもたらせてまいりたい。


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