○議会広報紙編集の基本と「読まれる」紙面の作り方セミナー 東京都
日時 2017年7月10.11日
場所 NOMAホール(渋谷区)
講師 日本エディタースクール講師 西村良平氏
1. 受講意図
今年度は広報広聴委員会の一員となりました。
私がまだ議員経験の浅い頃は、「議会だより」は事務局職員がほぼ“完成”させたものを委員がざっと目を通す。写真について注文をつける。自分に関連する記事だけはちゃんとチェックする、といった編集作業であったと記憶しています。紙面の都合上、掲載されるのは発言の一部(これは現在もそうですが)であることに不満もあり「ページを増やせないのか」、また「カラーにできないのか」などと提案しても、事務局職員から丁重に「予算が…」と言われれば会話はそれで終わり。そんな状況が長く続いた印象があります。
議会改革が全国で話題になり、「開かれた議会」の一番の看板は何と言っても「議会だより」。その充実、まさに今回のセミナーのテーマである「読まれる」紙面が求められていることは誰の目にも明らかです。
ここで今一度、広報紙づくりの原点を学び、少しでも改善点を編集会議に生かせればとの思いで、受講することにしました。
2. セミナーの概要
1日目
▼はじめの一歩
→年間方針、年間計画を立てていますか?
→印刷・製本の基本知識
▼議会広報紙ウォッチング
→出席者各自が持ち寄った「自前」の議会だよりを互いに品評
▼「らくらく編集術」ガイドツアー(別冊)
▼広報紙の「発行目的」と「編集方針」
→「読者のため」とはいうものの…読者とはだれ?
→目標をどこに置くか? 長期・短期
▼編集から発行までの流れ(事例)
▼読まれる記事を書く~原稿執筆
→読まれる記事とは?
→タマゴ法
→逆ピラミッドのまとめ方
▼読みやすい文章に整える~原稿整理
→言葉と文章の直し方
▼読者を引きつける見出し
▼「読まれる」紙面と「読まれない」紙面~定石とタブー①
▼広報写真の基本~撮影のポイント、写真編集、キャプション
2日目
▼レイアウト作業の基本
▼キャプションの作成
▼「読まれる」紙面と「読まれない」紙面~定石とタブー②
▼ミスをなくす点検法~校正
▼議会広報紙づくりの新しい動き~HPとの連動
▼まとめ
3. 講演録(1日目)
(以下、文責は内田にあります。必ずしもレジュメどおりではありません)
○年間方針、年間計画
年間計画とは、特集「議会改革」などのメリハリのついた紙面づくり。
(出席者に聞く)立てている人いますか? 答えはゼロ!
方針もなくやってるなんて考えられない。まず“自分の方針”を!
それからみんなで考えることが大切。
読者との距離を縮めることを重点に。特に新人時代が大事。疑問を大切に。
ベテランになるほど技術は向上しても、読者からは遠くなる傾向。話し合
いをすれば“ハッ”とそれに気づく。
○グループに分かれ、各議会の広報紙を比較。磐田市、丸亀市、佐賀市議会
が1グループに。
目次では講師からアドバイス。目次の文字が遠慮しすぎ。週刊誌を見よ。
特集記事では磐田市がすばらしい。
連載記事は3市議会とも「なし」。
「読者の声」のコーナーも3市議会とも「なし」。投稿者の名を入れる。
編集後記、3市議会とも「あり」。執筆者の名を入れる。
発行者連絡先(メルアドも)明示は磐田、丸亀あり、佐賀はQRコード。
→ここには「読者とのキャッチボールをする気があるかないかが表れる。
○講師から「字は大きく、本気度を出せ、UD(ユニバーサルデザイン)を
意識せよ」
○なぜ、市議会だよりは市の広報に負けるのか。
→市民の暮らしに関係しないから(サービスの申し込みとか市営住宅とか)
→読まなくても損をしないから
→面白くする余地がない
→議員に気兼ねをして職員が文面改革やアイデア採用が進まない
→議員間の公平を重視
○市広報は現状重視。「お知らせ」と「報告」しかない。
議会報は未来が見える。「駅前に何ができるの?」「道路が広がるの?」
→そうであれば、議会報のほうが魅力があるのでは?
○「読者目線」でどう作るか。
→読者の言葉で書く。
→子どものものは子どもの言葉で書く。
→自分が知っている言葉を使ってもわかってもらえない。
→別添の本『らくらく編集術』は新米編集者にもわかるように書いてある。
○編集は技術だけではダメ。勘、コツ、センス(技能)が必要だ。
技術は教わるものだが、これらは盗むものだ。
○一般紙にある「きょうの番組」欄の工夫点
→見出しと写真。「問いかけ」から始まる文章。コンパクトで“終わりが見
える”。
→笑福亭鶴瓶の出演する番組紹介を例に。誰が出るか。どこに行くか。こ
れら「知りたいこと」が先に出てくる。番組のコンセプトなどではない。
誰が出るか、どこに行くか。ここでこの番組を見るか見ないかを決める。
国語の授業とは違う。前置きなどはない。
○相手によって書き分ける必要がある。
→起承転結よりも相手が何を知りたいかで書き方を変える。
→そこで何通りも書き方を知っている必要がある。
→原理主義を排せ。
→自分が思っているように見てしまうもの。
→読者の役に立つことを優先。
→「正しい書き方」などと言っていては「仕事は来ない」。
→今までのを捨てるのでなく新しいものを付け加える。
○講師が出席者に聞く。「一問一答は、やってますか?」やってないのは2市
のみ。「一問一答」とか「議会報告会」とか、そんなことは住民は知らない。
○講師が聞く「議会報告会、やってますか?」やってないのは3市のみ。
「なぜやってないの?」「わかりません」。
→マンネリからの脱却。他市議会のものをヒントに。
○磐田市議会の『羅針盤』のコーナー。これは市民が命名したという。懸賞
サイトに載せて募集。
○UD…読者とどんな関係を結びたいのかが見える。
○「編集後記」は読者とのキャッチボールだ。
椎名誠が言う。「編集後記のない雑誌は、雑誌に力がない、自信がない」
ないほうがアブノーマルだ。
読者に好きになってもらう。読者に球を投げる。
球が返ってくるのが「読者の声」だ。
○佐賀市議会は写真を募集している。実は読者の声を募集しても応募がなか
ったから。
○編集後記は名前入り。ここだけは好きなことを、思いを書ける。名前のな
い編集後記は「怪文書」だ。議員の名のない発言もある。
○編集後記は複数の人で書かない。
○読者の声。社内報には名前があがる。同様に議会報にも実名を、ただし了
解を取ってから。声の内容に足りないところがあればやりとりで補う。
○目次。ページ順にしなくていい。雑誌を参考にせよ。ページ順では売れな
い。議会報がいかに世間とずれてるか。頁の表記は6~9でなく6だけでい
い。魅力的な目次を考えよう。
○特集記事。磐田市議会は昨年リニューアルした。今号は議員による執筆で
「農業への思い」。次号は傍聴に来ていた大学生に執筆をお願いする予定。
○連載記事、連載番号。シリーズ企画を載せれば次への期待がもたれる。必
ず番号を振る。記事が良ければバックナンバーも読んでくれる。
○見出し
高知市議会はタブロイド判。表紙に「議長・副議長ごあいさつ」とある。
二人で一つの記事では、個人が何をやりたいかがわからず、メッセージが
ない。読んだ市民は「誰かが(職員あたりが)書いているのだろう」と考
える。これでは「票を減らす」。これだから読まれない。これを誰が読むの
か。市民は「何をやりたいのか」を知りたいのだ。それに本人が気づいて
ない。相手が見えてない。読者をバカにするな、という恥ずかしいものだ。
○メッセージが伝わらない見出しが多い。色も大切。派手なら良いものでは
ない。黄緑、黄色、オレンジなどは、急いで見る人にとっては白と同じだ。
デザイナーはきれいな色を良しとするが。
○日経新聞。色は悪いが見出しの色は黒だ。パッと目に入るのは黒か紺だ。
ダサイが、新聞の中では良い方だ。
○黒は差し替えに便利だ。新聞報道では大事件が差し込まれれば黒のところ
だけ直せばよい。急いでいる人には黒がありがたい。デザイナーはカラフ
ルにするが。
○小さいと読めない。スマート、ソフト、カラフル…では時間がかかる。
○写真のキャプションは必ず付ける。
○レイアウト、記事の配列。質問順、会派順など工夫して。船橋市議会、姫
路市議会のものはテーマ別、ジャンル別に並べている。船橋市は8つのジ
ャンル。答弁者によって分けている。
○いくつかの質問項目から1つに絞って掲載するときには、質問前に絞って
もらうと、質問前に編集ができる。質問の後は点検のみで済む。バタバタ
しなくてよい。
○議員別などあり得ない。話題があちこちにわたり、スポーツ欄に政治が入
るようなものだ。知りたいことを探すためにあちこちひっくり返さなけれ
ばならない。誰のために作っているのか。どこを見たらいいのかがわかる
ことが大事。議会報はその意味で市民目線でない。だから嫌われる。だか
ら相手にされない。読まれてないから文句も来ないのだ。
○記事の執筆。
「行う」と「行なう」。本則、許容、例外といったルールがある。「これし
かない」と思い込んでいないか? 文化庁は去年の調査結果を踏まえ、「な」
を入れてもいいことにした(=許容)。
「ら」抜き。「食べれる」「食べられる」。NHKもキャプションで「られる」
をやめた。「ガッテン」の番組でも「食べれる」と言っていた。「られる」
でないといけないとは、どこにも書いてない。「ら」抜きのほうがいい時も
ある。新聞社もそれぞれ自分のルールでやっている。国は「…を否定する
ものではない」とヤワなルールで、これが正しいとは言い切っていない。
公務員は国のルールを、大変だが見ておいたほうがいい。「目安」なのであ
って、原理主義になってはいけない。
○ここで実技。隣の参加者に1人5分で聞き取りをし、記事にする。それを
読んでくれた人に何の役に立つのかを考える。いい文章だけど何か足りな
いもの。失敗談があるといい。役に立つ。旅の失敗は旅の役に立つ。読み
手の役に立つことを考えると魅力のある文章ができる。相手の顔を浮かべ
て書く。失敗談を楽しく、ならなお良い。
テーマは「ご当地自慢」。聞き取りするときには相槌を打って、相手がしゃ
べりやすい環境を作る。5分ならメモを取らない。メモを取ると相手を見な
いから。失礼だし、一生懸命やって失敗することになる。訓練したらでき
るようになる。
○見出しを付けるのは執筆者でなく編集者の仕事だ。つまり見出しは「読み
手」が考えるのだ。記者にはそんな余裕はない。「編集者が見出しを支配し
ている」。
○「これをやったら終わり」集(スライド)
○見出しは「ドア」だ。見出しがない文は読まれない。
→「予算の概要」。これでは読まれない。
→議長のあいさつで正副議長共同…これも読まれない。
→一つの見出しに二つの記事。いくら良くても両方とも読まれない。
→「この人に聞く」との見出しだけでは中が見えない。
→オヤジは、女の人の顔だけは見る。
→川越市の商工会会報「商工の窓」のコーナー。見出しなし。このコーナ
ー名は魅力がない。タイトルは店の屋号だけ。なんで見出しを付けない
のか。そこに<上司からひとこと>を加えたが、読まない。見出しがない
と、もったいない。
「商工の窓」→「わが社のかがやきひと」
これで読者に近づいた。
→「人生80年を顧みて」。履歴書など誰も読まない。じいちゃんに書かせ
るよりじいちゃんに聞け。
→毎号の共通シリーズ名は小さく。
→「ごみ実態調査の結果出る!」。調査結果がそんなに珍しいか?
→新聞、週刊誌の見出しは「結論」を出す。
→「一部改正しました」「新年を迎えて」という見出しでなく、中身を書け。
それよりも、色紙にモットーを書き、それを手に持つほうがいい。
→「QOL」ではわからない。
→「…について」という見出しはダメ。
→「卒塔婆見出し」「戒名見出し」…漢字ばかり。見にくい。
→「やさともりお」…ひらがなばかり。見にくい。
→去年と同じ見出し。
→「○○校舎が完成しました」→「学びがいっぱい」
→「○○課からのお知らせ」でなくその中身を見出しに出せ。
→「ご案内」→「児童手当の現況届を出せ」という中身を出せ。
→「お忘れなく」と締めくくる。「○月○日までに出さないともらえなくな
ります」、と書き、子どもの写真をプラスすると注目してもらえる。
4. 講演録(2日目)
○見出しが良いのは文章が良い。良い文章は見出しが付けやすい。
見出しを付けるのに編集者が力を入れるから。
○編集者が良くないと読者が不幸だ。欧州では、編集長のレベルは高く、社
会から「偉い人」とされている。
○失敗は気づきのチャンスだ。
○コミュニケーションとは、
コム=お互いに、共に ミニケーション=贈り物
お互いに贈り物をしあう関係。編集も、もらう⇔返す のやりとりだ。
○磐田市議会だよりは読み物を入れた。カコミにする方法もある。
「農業の思い」と題し、これを議会の話題に関連付ける。
① 読者の関心を引いて、読まれる情報にする。
② マンガも入れて、対象者を明確にし、相手を考えて作成する。
→公務員から市民全体に、でなく、生産者向け、消費者向け、子ども向け、など。農水白書では、若手職員で「子ども向け」を作った。
③ 簡潔なタイトル見出しが注目度をアップさせる。
○「~について」をやめる。役所の文書は見出しで中身がわからないから嫌
われる。
(ここで班替え)
○タブロイドは早い、安い、まずい…安い紙でうまく印刷が乗らない。広い
紙面を確保できる。ロール紙を裁断していくので紙面上部がギザギザ。
A4紙面は高い、遅い…締め切りを早くしないといけない。
○カメラ操作のポイント。半押しピント、絞り、アパチャなど(省略)
撮影は朝の11時台が、光の具合がいい。2~3時にはビルの陰が出てよく
ない。
写真選びはグループでやると楽しい、編集は孤独な作業だがみんなでやる
と発見がある。新しい見方に気づく。
○1段組みと2段組み。2段のほうが、字がたくさん入る→ページを減らせ
る→安く作れる。2段にすると行間を狭くできる。1段だと、目が上から
下まで字を追うと同じ行を読んでしまう。目の移動距離から、1段だと行
間を広くする必要がある。3段にすればもっと行間を縮められる。ポイン
トも小さくできる。
○ルビ。8ポならルビは4ポ。
○NewsWeekは5段組み。
○ホワイトスペースがあるとホッとできる。情報を詰め込むと息苦しい。見
出しの周りにホワイトスペースがあると「ホッとできる」。
○文字と写真のバランスは何対何か、と考えては上達しない。
全180行の場合、104行を文章で使い、残り76行に写真と見出し。
○「ベネチアのページ」を教材にレイアウトを検討。
→見出しと写真がひとつのグループ。見出しの大きさが決まれば残りが写
真となる。プロはレイアウト1ページを5分で行う。
○ポイントとは。親指の幅が72ポイント。5文字文が入る。
1インチ=2.54㎝。NewsWeekは8ポ。5段でポを4段にすると8.5
ポとなる。
○日経1ページには目次がある。目立つ位置に全記事は書かない。
○新聞の広告は右ページにある。なぜか。1ページの次に目に見えるのは3
ページだから、右ページと左ページで広告の値段は違う。1、3、5ページ
は高く、1000万円。2、4、6ページは安く、800万円が相場。広告は左ペ
ージには載せない。しかし景気が悪くなると、広告は左に載る。
→左ページは良いページ。議員は左ページに載りたい。
→右ページは地味。プレスリリースされて集めなくても集まる記事、いた
だきもの、報告ものが多い。
→左ページは派手。記者が集めた価値ある記事。汗をかいてつかんだもの。
○校正。原稿固め→点検→原稿整理
原稿は、左の指を下げていきながら1字1字合わせる=「文字合わせ」。
ブロックでは間違いが起きる。
初校では、直しは右上に持っていく。 た→(赤で右上に)田
再校では、左に青ボールペンで1字1字つぶしていく。
→別紙「印刷校正記号一覧」JIS Z8208
→マルで囲む方式もある。TV番組『校閲ガール』でやっていた。白黒で
コピーを送る時に見やすい。
○「行う」と「行なう」。
本則は「行う、行った」。許容は「行なう、行なった」。例外もあり、例外
には強制力があるので注意。
○動画「漢字テストのふしぎ」(ビクター社制作、UTubeで見れる)
「環」の字のハネとか「保」の字の「木」のハライが離れているかくっつ
いているか、など。文科省の基準はゆるい。いくら文科省に言われても○
(正解)は付けられない。文科省は「○をつけてはいけない」とは書いて
ない。文科省はずるい。
「拓」の手偏のハネは、なくても○。
正解が1つであるのが教えやすく、教わる方も学びやすい。なのに文科省
と現場の学校とで違いがある。「なしくずし」を恐れる一面もある。
「龍」の右下のヒゲは3本から2本へ。
公式ルールが常用漢字表だ。その「前文」が大事。ゆるいが、現場では厳
しくルールを定め「これしかない」と考えられている。
筆順も自由。「筆順は例である」と書いている。
はねても、止めても正解、と文化庁が言っている。言っているのに、現場
では効き目がない。自分でルールを作っている。
人の文章を扱うときには、このことを知っておこう。校正担当者として
原文に“バンバン”「×」を付けるより、書いた人と話し合いをしながら
作っていこう。
○主婦の友社「ミーナ」ファッション誌編集部の動画。「編集者の一声で現
場のムードは変わる」。今村沙代子氏の行動をたどる。
見開きは勝負ページ。左ページを上半身として横たわる人物。これなら顔
が見える。実際には逆に右ページを上半身にしてしまい、売れなくて3万
部売り上げがダウンした。
※2日目午後はグループに分かれ、会場周辺をまち歩きしながら撮影。画像
を検討しながらひとつのストーリーを仕上げる、という応用編。
会場に帰り、グループごとに発表。
① サラリーマンのお楽しみ!代々木編
② 怪人22号
③ みずから水を!!
④ たしかなこと
⑤ ほぼ人力
⑥ 上京初体験
これらのグループ発表に各自がベスト2を投票。
結果、私の所属した②怪人22号が最優秀に選ばれた(!)。
3.感想
今回のセミナー参加者は札幌市から佐賀市までの22名。議員は私だけで、あとは全員が議会事務局の職員でした。やや違和感がありましたが、時間につれて「級長」的な立ち位置になりました。
あらかじめ集められた全国各地からの「議会だより」。まあ大体、似たり寄ったりで特段に目を引くものはありませんが、セミナー中で注目されたような特集記事、読み物などの企画は、読み手、市民との双方向性や「何としても読んでもらおう」という苦心の産物であり、ぜひ取り入れたい。議会改革、開かれた議会のわかりやすいツール、最も住民に接しているところの「議会だより」をこれからさらに進化させていくことに力強いエールをいただきました。
そうした企画上の工夫もさりながら、左ページと右ページの値打ちの違い、A4判とタブロイド判の長短、段組みと読みやすさの関係など、知らなかった知識も豊富に得ることができました。大胆なアイデア、プラス細心の編集技術で、議会だよりは大きな可能性を秘めている、このように感じました。
「読んでもらおう」という気持ちがあるのか。もちろんあります。でも発行することがルーティンワークになり、毎号、決まりごとがある、議員間の公平を失してはならない、写真のプライバシーにも配慮せねばならない、紙幅に限りがある、そんな制限尽くしの中での窮屈な編集作業になりがちな議会だよりを大胆に改革するのは、何よりも編集者の心意気とアイデアであろうと思います。そしてそれらを下支えする、制作ノウハウを今回さまざま、教わりました。全員に配布された「編集長」の本とともに、このレポートも委員と職員全員にご一読いただきたいものだと思います。
市の広報は読まれてもなぜ議会だよりは読まれないのか。それを考えたことはありましたが、今回のセミナーで、それがスッキリ整理されたように思います。「読んでトクすること、読まないとソンすることが書いてある」、それが市の広報。それに比して議会だよりは読まないでソンすることは何も書いてない。そう言われればなるほどそうです。しかし講師が言っていました。市広報は「お知らせ」と「報告」ばかり。それに対して議会だよりには「未来」がある、と。なるほどそうだ、そのとおりだと思います。私たちは過去の行政をチェックもするが、未来に向けて答弁を引き出す。過去のチェックにしても、それは未来の姿を模索するからこそでしょう。私たちの発想の転換と技術の習得、そして議員全員が問題意識、「読んでもらおう」との意識を共有することで、丸亀市議会の「議会だより」も見事に“変身”することができるはず。そんな大きな自信をもらいました。
具体的に「あるある」と、納得できる話題もたくさんありました。一般質問の並べ方は一般に日程順の議員順。これに何の疑問も持たなかったが、読者目線に立つと議員順よりもジャンル別の方が引き込まれやすい。船橋、姫路両市議会ではこれを実現しているとのこと。
また年頭のあいさつを、一文で正副議長共通のあいさつとしている。ここは耳が痛い。これでは誰も読まない、というのもうなずけます。タイトルへの一工夫も、柔軟な発想が必要。でも共同で編集するから、全員が柔軟であることが要件となります。
紙面改革の最大の切り札は、紙面に読者が登場することだろうと思います。これでよしとしない。市民が毎号、楽しみにしてくれる。「読んでるよ」「ためになった」と反響もある。そんな紙面づくりで、全国に「丸亀市議会は」と評判になるような成果を出していきたいものです。