
〇「全国男女共同参画宣言都市サミットin新浜」参加復命書
と き 2003年10月10日(金)
ところ リーガロイヤルホテル新居浜
視察の内容
付随行事 四国市町村議会議員懇談会 10:30〜11:40 新浜ウィメンズプラザ
本体行事 全国男女参画宣言都市サミットin新居浜 リーガロイヤルホテル新居浜
○開会式
主催者あいさつ 内閣府男女共同参画局長/新居浜市長
来賓祝辞 愛媛県知事/新居浜市議会議長
○男女共同参画推進本部報告 内閣男女共同参画局長 名取はにわ氏
○基調講演
「ジェンダー平等・開発・平和 〜国際社会の取り組みと今後の課題〜」
目黒依子氏
(上智大学文学部社会学科教授・国際婦人の地位委員会日本代表)
○シンポジウム
パネリスト
兵庫県宝塚市長/山口県宇部市長/三重県松阪市長/
岡山県柵原町長/愛媛県新居浜市長(男女共同参画宣言都市の首長)
コーディネーター
塩崎千枝子(松山東雲女子大学人間文化学科長)
○サミット共同宣言
○閉会式
以下、詳細の報告(文責、内田)
○基調講演 「ジェンダー平等・開発・平和 〜国際社会の取り組みと今後の課題〜」
国際的な女性会議の流れ
1985 ナイロビ戦略 ※女性は貧困、教育レベルが低い、健康状態が
90年代の国連世界会議 悪く、死亡率が高い、「かわいそうな」という
1992 リオ 視点で女性を捉えたところから始まる。
1993 ウイーン
1994 カイロ人口会議 「女性の地位向上」
1995 コペンハーゲン ↓
「男女のあり方改革」
1995 北京女性会議 ↓
2000 女性2000年会議 「ジェンダーの概念導入、エンパワメント」へ
95北京から00女性会議までの5年間は、経済のグローバル化、紛争により、ジェンダー平等
が止まった時代であった。
そこで、00国連女性会議では、止まったものを目標修正し、05年目指し、「プラス10
(テン)」05年に世界会議をやることを決めた。しかし、実現できそうにない。
そのことよりも、これまでの文書を実施していくことが重視される。
冷戦構造の崩壊で、「世界の多様化と収斂」の時代に入る。
二極化がなくなり、○みんな同じ方向へ ○これまで収まっていたものがさまざまに
噴出
こうした状況下で、これからは「ジェンダーの主流化」 「ジェンダーメインストリー
ム」の概念へと進む。これは、あらゆる社会システムにジェンダーの視点を取り入れる
こと、ジェンダー平等を、ものごとの計画づくり、意思決定、予算づくりなどあらゆる
場面で、中心に据えること、が推し進められる。
ミレニアム会議サミットで採択された2015年までの8つの目標の3番目に、「ジェンダー
平等とエンパワメント」が盛り込まれている。
90年代の上記の国連世界会議の質的変化を見ると、
○人間中心の開発へ
○持続可能な開発へ
○住民参加型の開発へ との方向が見られる。
日本では、
変化はまず女性に起こり、男性の意識が変わらない。
男性の意識を変えようにも変えられない社会状況にある。
母子福祉など、すでに手厚く施されている、という矛盾があり、進まない。
今後の課題
@政治的な意思(ポリティカルウィッシュ)が、いま大切
A(NGOなど)市民自らが求めるものを明確にし、提言していくことが大事
○シンポジウムで発表された各市町の特徴ある取り組み
宝塚市長
H元 女性センターがオープン
H5 同センターが駅前に移転
H15 「男女共同参画センター」と名称変更
・このセンターを拠点としてフェスティバルを継続開催
・市女性プランの策定、実施 H8〜前期
H13〜17後期 6分野176項目
・共同参画推進条例制定 H14
・女性ボード事業
女性50人で構成、1年目は市政学習、2年目はグループで調査研究、これを経て、
女性が市長に政策提言を行う制度。
男女共同によるまちづくりの担い手を育成することができている。
また修了生が、多く審議会等の委員に登用され、貢献度も高い。
宇部市長
・年1度の男女共同参画推進大会の開催
・人材養成講座「コスモス」を開催、受講生から140人の女性が、市の審議会のメンバ
ー等に登用されている。市役所の新人課長研修の講師も担当。
・男のライフセミナーの開催
・企業啓発
・「ぱれっと」情報誌の発行 年2回 女性4名のスタッフ、ボランティアで
・相談事務
・できるだけ行政主導でなく市民主導を心がけている。
・「男女共同参画の会だから」といって夫婦で参加したという場合、女性の発言が鈍る、
との反省があった。
松阪市長
・「さ・し・す・せセミナー」の開催
(さわやか、しなやか、すこやか、せっきょく)
・情報誌「ひまわり」
・まつさか女性会議2002の開催、フォーラムの開催
・S60に立ち上げた「働く婦人の家」を発展させ「プラザ鈴」事業へ
男性受講者も受け入れ、仕事、育児の両立のための知識、技能、教養と憩いの場を
提供。
・地域の代表に集まってもらっても、呼べばいつも同じ顔ぶれ。そこで、
26の福祉会ごとに、中学生からお年寄りまで、1会4人で100人委員会を構
成することに取り組み中。これでたくさんの市民が参画できる。
・市行政が入らず、住民だけの議論の場を設けよう、息長く、プロセスを尊重する
ように、と心がけている。
柳原町長
・やなはら男女共同参画基本計画(ウィズプラン)を策定H15.3
・これに基づき、ウィズネットワークづくり事業に取り組み中。
・町内幼・小・中のPTA会長、校長、区長、女性団体、乳幼児クラブなどがまちづくり
行動計画策定委員に加わり、講演会の開催などに取り組んでいる。
新居浜市長
・役所では、「○○推進室」が取り組む、というのでなく、市全体が男女共同参画に取り
組む、という姿勢をとっている。
・H2新居浜ウィメンズプラザがオープン、拠点ができる。
・H4新居浜市女性行動計画策定、市に「女性政策課」を設置。
・H12男女共同参画都市宣言
・H13男女共同参画計画策定
・H15男女共同参画推進条例を施行
・H15ファミリーサポートセンター開設、子育て支援の橋渡し
・放課後児童クラブ、男女混合名簿、女性消防団員30人の採用、など
行政としての取り組み
・松阪市長 定年前退職者の大半が女性であることに気づいた。
その人たちはパソコンが苦手であった。反省として、40代後半から50歳代の
女性のポジションに配慮ができておらず、また男性上司も配慮足りなかったと
反省した。
・柵原町長 役場から地区に出かけていって啓発を行う。
水戸黄門の寸劇「世直し男女共同参画」はお年寄りに反響大。
町職員の発案で職員によるワーキンググループを発足、「役場が変わらなければ
地域は変わらない」をスローガンに、17時から庁舎一斉清掃、町長も町長室を
ぞうきんがけ、朝礼の実施。町職員も帰宅すれば地域の一員との自覚で、参画
能力を高める。
・新居浜市長 市議会では毎回12、3名の議員が質問をするが、うち7、8名が男女共同
参画に関する質問をする。
ソロプチからの声で、DV相談室を設置。その後、相談件数は激増した。
市のケースワーカーに、今年初めて女性2名を登用した。
○参加しての感想
千人規模の大きなサミットで、地元の婦人会の踊り、コーラスグループによる合唱などで
歓迎アトラクションが行われた後、開会。
ロビーには全国各地から集められた男女共同参画に関する情報誌、パンプレットなどがず
らりと並べられ、自由に持ち帰ることができるようになっていました。丸亀市のものも準備さ
れていました。
壁面にはこれまでの女性運動の闘士(?)たちの戦う姿が歴史的写真でパネル表示されて、
歴史を一望することができるよう、工夫されていました。
基調講演では、日頃まとまって体系的に知ることのできない女性の地位向上への国際的な
取り組みがわかりやすく紹介され、世界の潮流の中での位置づけが明確にされ、またその中で
の日本の課題が浮き彫りにされていきました。
続くシンポジウムでは、それぞれの都市宣言に至るまでの動機や経緯が発表され、前述の
ような各地の取り組みが、首長から報告されました。
役所が何かの審議会やワークショップを立ち上げようとするとき、いつも同じメンバーが
選出され、限られたそれらのリーダーがどこにでも顔を出している、という指摘は、本市でも
あてはまると思います。
これに対し、広く市井の住民である女性が積極的に家庭内の子育てから市の政策立案まで、
問題意識を高め、参画、発言していくことはたいへんに望ましいことです。しかし行政に
とっては手間のかかることで、いわゆるお役所仕事の概念からは、なかなかそういう発想に
なりにくいのも現実と思います。そこで、「役場が変わらなければ地域は変わらない」との
職員のスローガンは歓迎すべきもので、こういう市民、なかんずく女性へのステージの提供
といった発想や配慮こそが、これからの役所に求められる文化的な行政のなすべきことでは
ないだろうかと思います。
またそこに、議会人が大いに声を上げていく活躍と使命の場があるとも思いました。
日本のいわゆる「男性型社会」の姿は、簡単に変革できるものではありません。「ジェン
ダー」という言葉に対しても、まだアレルギーのようなものも根強く、また理解も浅い、
との指摘もありました。「男らしさ、女らしさ」ということを否定するものではない、との
コンセプトで条例制定をしたという、宇部市の報告もありました。 まずは議論の場が広く
市民に提供され、啓発がすべての市民の自覚、問題意識に上るようにすることが運動の
第一であり、またそれの継続がこの運動の生命線と言えましょう。
その上で、基調講演で示された国際的な潮流である、「人間中心」「持続可能」「住民参加
型」この3つのキーワードを基本としながら、男女共同参画、という概念が人間の当然の感覚
となるに至るまで、行政も自己改革を続け、そして住民もこのテーマを避けて通るのでなく、
関心を持ち、意欲的に考える姿勢を持つことが肝要と痛感します。
議会人はその橋渡しの重責を担います。
役所もそれぞれの課がDV相談や講演会の開催などで啓発推進に努めてくれてはいます。
熱心に取り組んでくれている個々の職員に敬意を表しつつも、われわれ議会人が個々の住民の
声と世界の潮流への理解の中で、常に理念を反芻し、役所に大きなビジョンを提示し、そして
住民参加型のあり方に向け、推進役を果たさねばならないことを知らされたサミットでありま
した。
