
市民参加のごみ処理 愛知県日進市
1.これまでの経緯
平成11年度、市役所の向かいに「エコ・ドーム」を竣工。
平成13年度に「ごみ処理基本計画」を策定。
平成18年度までの5年間で、ごみ排出量の少なさで「日本トップレベル」
を誇れるようにすることを目標に掲げた。(平成9年の調査で全国都市で12
位であった)
2.特色
○市民参画
平成13年度の計画段階から、市長は「市民を巻き込んで」進めること、「公
募」を必ず取り入れることを力説していた。
計画策定委員会はごみの組成調査、先進事例の視察、市民ワークショップ
「ごみ座談会」、市民アンケート、市民フォーラムの開催などを行い、「市民
が市民を呼ぶ」仕組みを充実させながら進められた。策定委員会独自のホー
ムページも開設した。
策定委員会の構成:公募市民4、環境団体3、行政職員2、専門研究者2、
合計11名。事務局は市環境課とNPO中部リサイクル運動市民の会。
市民と行政が共に考えるというスタンスで「日進スタイル」を作った。
○エコドーム(日進市中央環境センター)
・建設
日進市の場合、市役所が市域のほぼ中心部分に位置していることから、市
役所の向かい側の敷地に「エコドーム」を建設。(平成10年度国の補助事業
「社会福祉施設等施設整備費事業補助金(厚生省)、新エネルギー財団補助金
などを利用)施工費7800万円(うち補助金、寄付金等4500万円、一
般財源2300万円)
並存施設として、
◎シルバー人材センターの自主事業のリサイクルショップ「あいさ」
子ども用品、EMぼかしを販売している。
◎隣接して、環境展示室、市民環境活動支援室(ミーティングルーム)、
実験農園、温室
・運営
年間運営費2100万円、シルバー人材センターに委託。
歳入として、新聞紙などの売却益、太陽光発電売電がある。
・資源処理の状況
25種類の分別。
無料 ぼろ布、充電池、バッテリー、刃物、割り箸
有料 プラスチック類(ペットボトル/廃プラ)、使い捨てライター、
売却 新聞、雑古紙、段ボール、紙パック、リターナブルびん、廃食用油
・利用状況
月曜日定休、年末年始以外はオープン。午前9時から午後5時まで。
来場車実績(15年度実績)
平日 6〜700台 火曜日(定休日の翌日) 7〜900台
土、日曜、祝日 800〜1000台
○その他のごみ処理施策
・ステーション回収 エコドームに持参できない市民に配慮
・拠点回収 スーパーやコンビニ、公民館や集会所などを拠点に回収。
ただしこれについては、持参する市民が多すぎ、交通混雑
を生んだので、現在頓挫している。
・自主、団体回収 事業者が行う自主回収を推進など。
・サポートシステム 高齢者、障害者への戸別収集。
・その他 レジ袋の削減、グリーン購入、環境学習、情報交流など。
3.担当者から聞けた話
説明してくださったのは「ごみ減量係長」さん。
・ごみ業務は、「市民の参加」がすべてである。
・ごみ業務は、「行動」がすべてである。
・計画策定、調査から実践まですべて市民参画。「市民が仲間を増やしてく
れる」という進め方で成功。
・ごみの問題に「気づかない」人に「気づかせる」ことが大切。
・エコドーム利用者は市民の2〜3割にすぎない。このことから、積極的
な市民は1割、素直な市民が1割、問題は残りの8割の市民にどう理解
を求めるかである。そこで、市役所職員はよく地域に出かける。市民と
語る機会を多く持ち、「役所がやればカネがかかりますよ」と、正直に市
民に訴えている。
・学校にもシルバーが回ってトラックで回収をしているが、このことは不
審者対策にもなっている。
・自治の意識とは、「自分たちが背負う」という自覚である。
・エコドームについて、「ここはごみ捨て場ではない」という感覚。そのた
めには「臭くない」という配慮も大切。そうしないと市民はリピーター
とならない。
・ごみ処理は面倒くさい、という意識はゼロにすることはできない。しか
し少なくすることはできると思う。
・公民館前などに「ミニエコドーム」を置いたことがあったが、人気が高
すぎ、渋滞が発生、また市外から黙って持ち込むということが起こり、
頓挫した。しかし、地元の人にとっては地元に愛着があり、また近いこ
とで人気は高い。住民と話し合いを進めているところである。
4.感想
感想の前に、「基本計画やわらか版」という冊子に掲載された、ごみ処理の
プロセスで「協働」に参加した市民や市職員の声をここに紹介します。
(市民)「最初の会議は、わからない言葉だらけ。でも周りの方々が教え
てくれたのでほっとしました。一番うれしかったのはみんなが同じ目的
に向かっているので、意見が食い違っても最終的に一致することです。
これは、体験してみないとわかりません」
(市民)「この会議に参加して得たものは、大勢の人と知り合いになれた
ことと、他の人の話が聞けるようになれたことです」
(市民)「まちづくりの活動こそ自己成長と学びの場。自分なりに工夫し、
コミュニケーションをとったり、会議には、俺が必要だ!という気持ち
で、大人の方々と接していった」
(職員)「(自分のために会議の日程を都合つけてもらって)大切にして
もらった。そうしたら趣味の釣りをやめてでも参加している自分になっ
ていた」
(職員)「頼まれてしぶしぶ参加。みなさんの熱心さに驚き、志のある人
に接して私も触発された」
(市民)「(プロジェクトリーダーを買って出て)それが自分の力になる
と途中でわかりました。そして人をまとめる力をつけたかった自分に気
がつきました。今も奮闘中です!」
(市民)「気持ちの通じ合えるお友達ができた。環境だけでなく、より広
い視点で物事を見ている人がたくさんいることを知ってうれしかった」
(市民)「(最初)誰もなかなか意見を言わない。どうなるかと思ったわ。
でもワークショップをやると今度は話が止まらなかったの。これをやっ
ていけば人の輪が広がると思ったわ」
(職員)「市役所の中にいると、いつも堅い会議しか経験しないんだよ。
でも時代の流れとしてワークショップを体験できて、どういうものかわ
かって良かった。はじめは距離があり戸惑いもあったが、自分の趣味の
畑をいかしたプロジェクトだったので、距離が縮まりましたね」
(職員)「市民のみなさんが、どこからかいろいろな資料を探してきてい
て、正直驚きました」
(市民)「あまり乗り気ではありませんでした。しかし少しずつ知り合い
が増え、だんだんと日進に愛着がわいてきました。30年も住んでいて、
ようやく自分のまちが好きになりました」
引用が長くなりました。
ここ日進市を訪問した感想も、メインのねらいである「ごみ処理、ごみ減
量化」ということよりも、私(内田)はやはり「市民の参画、市民の喜び」
ということのほうに強い魅力を感じました。
以前、市民からの提言により、青森県八戸市で始まった「24時間出せる
資源ごみ」のことを、議会で提案したことを思い出します。答弁では主に、「そ
ういうごみステーションを置くことのできるスペースが確保できない」「各コ
ミュニティに配分している配分金に影響が出る」といった消極的なものでし
た。たしかに、ごみの置き場所、と聞いただけで、その近隣の住民は尻込み
するというのはわかります。また日進市でも言われていたように、市外、地
区外からの心無い投棄も心配されます。
してみると、やはり住民の参加意識が基本にないと、この事業は前に進む
ことが難しいものであると思います。日進市の「市民とともに」という着想
は、欠くべからざる成功の秘訣だったのだと痛感します。
担当係長のお話で「市民といっしょに、現状認識が正しくできれば、8割
がた、問題は解決している」ということを聞きました。ここまで到達するの
に、大きな努力と工夫があったことに思い至ります。
また、市役所の前の敷地に「エコドーム」をこしらえたのは大胆な発想だ
ったと思います。厚生省の介護関連の補助金を巧みに取り入れたのはすばら
しく、ここに行政側の知恵の絞りどころがあったのではと推測します。費用
対効果という言葉を持ち出されると、なかなか決断ができないことではない
でしょうか。それでも市の将来と地球環境問題、そして住民福祉を考え合わ
せて、この事業を推進したのは、英断だったと感心しております。
さて、よその先進地を視察して、いいところだけを持ち帰り、丸亀市で「あ
れもこれも」と提言するだけでは、視察の意義も半分しか達成していない、
と、私はふと思いました。市の財政事情、いわゆる台所事情に精通し、国の
方向性にアンテナを張り、そして市民の望みに敏感であって、しかも市民を
リードしていかなければならない、そう考えるとき、議員のあり方、もっと
言わせてもらえれば、議員の時間の使い方、それは今日、大変に市政にとっ
て重要なものと言える、そういう感想を持ちました。
