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行政評価システム〜新潟県新発田市

1.これまでの経緯

  予算編成に際して、財源不足を一律カットでしのぐ時代から、政策施策別
 に効果を測定し、市民に評価をしてもらいながら、明年の予算編成を行う「プ
 ラン・ドゥー・シー」の体制構築が必要とされる時代に入った。
  言い換えると、行政経営の優劣がはっきりと市民から問われる時代となっ
 た。したがってこれまでの「情報公開」という概念から、一歩進んで市民に
 積極的に、かつわかりやすく「情報提供」することが配慮されなければなら
 ない時期にさしかかった。
  新発田市では初の経済界出身の市長が誕生したことを契機に、平成12年
 秋からシステム導入に着手した。
  市長の意思が、たちどころに全職員に理解され浸透するわけではない。
  職員700名のうち8名が市長公室の下の行政改革課に配属され、以下の
 システム構築が進められたが、職員からは当初戸惑い、反感の声が多数寄せ
 られた。罵声をかけられたこともある。
  まず4役が「頭を切り替え」ることから始まり、システム構築に対する職
 員の理解を深めるため、再三勉強会を繰り返した。市長の意思を職員全員の
 意識に伝えていくところに、担当スタッフの苦労があった。
  平成13年度、
  予算編成を総合計画と連動させることを始めた。
  一般職全職員対象に階層別研修を実施、
  市民アンケートを実施、
  行政改革課、政策推進課を設置、
  政策評価会議の実施、
  また同年度後半からは「新行政推進リーダー育成特別研修」を始めた。
  (係長級40名、各課に1人の体制)
  14年度、
  政策指標に目標値を設定した。必然性、可能性、前提条件の3つの視点。
  昨年度の予算と総合計画との連動に対して、その成果を検討した。
  同年度10月に市民に公表した。
  また市民との協働、市民懇談会を企画した。
  特定改革テーマ6項目、
  行政サービスコスト計算書10項目を作成し、それぞれ発表会を行った。
  新行政推進マネージャーを設置した。(課長補佐級)
  政策マトリックスを作成し、重点施策、課題の整理を行った。
  15年度、
  行政評価システムが定着化した。
  改革改善の具体化、業務への反映を行った。発表会を実施した。
  貢献度、達成度、優先度を踏まえた各種評価会議を実施した。
  市民による外部評価委員会を設置した。
  政策大綱に基づく「予算の枠配分方式」を始めた。

2.新発田市の行政評価システムの特徴

 ・一部事業のモデル実施でなく、1200の事務事業が一斉に取り組んだ。
 ・試行初年度から、事務事業評価から政策評価までを実施することにより、
  全職員の意識改革をねらった。
 ・盛んな研修と発表会を繰り返して人材育成と連動させた。
 ・試行当初から推進体制を整備して臨んだ。(係長級で推進リーダー、課長補
  佐級で推進マネージャー)
 ・試行当初から改革改善の具体化への取り組みを実施した。
 ・庁内で発表会を行うことで情報共有を図った。

3.施策別枠配分による予算編成方式

  事業課が必要経費を見積もり、財政課がそれを査定する手法は、「木を見て
 森を見ない」やり方である。
  これでは大きな政策転換につながらない。全庁的な観点で政策の優先順位
 を決定する方法が必要である。
  そこで、「査定をしない」という逆転の発想をする。
  宮城県、東京都足立区、四日市市、川西市、網走市などが行っているが、
 施策別枠配分方式は、新発田市だけである。
  従来の手法では、事業課の課長は「市長に予算を削られたから」と言い逃
 れをしている。これに対し「枠配分方式」では、現場に裁量権を与え、自ら
 優先順位を決定し、倹約するべき点も検討し、手法の見直しも行う。財政課
 はその達成度を厳しくチェックする。
  枠配分方式により、このようなことが期待できる。
  行政評価システムは、こうした予算の仕組みの構築と連動しないと、実効
 をあげられない。
  行政評価システムと予算の枠配分の連動により、職員の意識改革が進み、
 同時に職員の政策形成能力が磨かれる。
  実際、検討を行った事務事業のうち廃止75件、統合15件、新規8件、
 縮小199件、拡充128件という結果が出た。枠配分方式の予算編成だか
 らこそ、事業課職員が細微に検討し、廃止、縮小などの決断を下すことがで
 きるわけで、財政課が従来のように一方的に、あるいは一律にマイナスシー
 リングを発するうちは、担当者の頭脳は動かない。

4.行政評価システムの年間フロー

 ・施策統括責任者を決めて、施策評価と事務事業評価を6月までに行う。
  具体的には、それぞれの担当課が評価を行い、それに対する2次評価を施
  策統括責任者が行う。2次評価は、直属部長や企画・財政スタッフが行う
  のではない。
 ・7月〜9月、経営会議を開催して基本方針を決定する。
  トップの「庁議」をこれまでの連絡周知の会議から「経営会議」に転換。
  部門の枠を取り払い、来年度の予算ではどこに重点をおくかについて、ト
  ップ層が方針決定を行う。
  この会議は企画部門と財政部門が連携して行う。
  ここで明年度の政策大綱と予算編成方針が形づくられることになる。
 ・9月議会終了後、上記政策大綱と予算編成方針を示して、施策統括責任者
  が施策ごとの企画会議を推進する。
  この場において、「これだけの枠配分で、これだけの成果目標を達成するた
  めには、どの事務事業を優先させ、どれを切り詰めるか」という議論を、
  事業担当課長と施策統括責任者が議論を行う。
 ・決定ののち、これを施策統括責任者が市長や幹部層に発表することとなる。

5.感想

  行政評価システムの全貌が理解できたわけではありません。
  しかし、システム導入は時代の要請であり、避けて通れないことは明らか
 であり、早期に、丸亀市もその検討を着手すべきことはまちがいありません。
  丸亀市も合併を明年に控えておりますので、合併ができてのちに、という
 考えに傾くのは無理からぬことではありますが、現に新発田市の場合、平成
 15年度に合併した事実があり、合併事業のさなかでも、行動を起こすこと
 は不可能ではないことを示しております。
  タイミング的には平成12年度からの着手で、システム構築までに3年を
 要しており、合併はその後に続いたものと整理できるでしょう。その点、ま
 だ着手前の現段階で合併が先に来る本市としては、平成16年度において何
 ができるか、何をしておくべきか、本市は本市のシチュエーションの中で独
 自に考えなければなりません。それは、先進各地の事例をより多く比較研究
 することであり、またかなり理論も整理されてきた行政評価システムそのも
 のについて、より深く理解をしておくことだと思います。そして合併後なる
 べく早い時期に、万全の体制でこれを実施できるように、準備をしておくこ 
 とが強く望まれます。
  新発田市では、次の段階として、これを市民にどう開示し、市民との協働
 というレベルにまで上げていくか、という試行段階に入っているように見受
 けました。私たちの丸亀市では、こうした先進事例がたくさん与えられてい
 るわけですので、システム導入着手に際しては、時を隔てることなく、市民
 との協働という場面での立ち上げも併せてスタートさせることができるので
 はないか、またそうするべきではないかと考えます。
  新発田市で行政評価システムを構築することとなったきっかけは、経済界
 から登場した新市長の熱い思いだったと伺いました。
  その熱い思いを受け、不幸にも(?)改革担当に当られた職員の方々も同
 僚からの恨みつらみも買いながら推進に当られ、いまようやくその成果があ
 らわれつつある段階です。
  究極の目的は市民の満足であり、その達成までいま少しというところにさ
 しかかっていますが、すでにここまで来れば、道筋は立っていると思えます。 
  視察を終え、ここに至るまでのご努力と苦心に対して頭が下がる思いでし
 たが、さて本市において、その努力と苦心の中心になるのは誰なのか、私は
 いろいろと考えをめぐらしています。
  議会もまた、こうした視察成果を行政に持ち寄り、積極的に貢献すべきだ
 と思います。職員の人材育成、とくに、転換期の今日、これまでの長い職場
 経験の中に味わったことのない経験や苦労をされるのはおそらく現在の幹部
 職員だろうと思います。また改革の熱い思いが、市長のなかに、新発田市長
 ほどにはないとすれば、ここで議会人の使命が大きくなってくるのではない
 かと思っております。

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