第10回環境自治体会議 二ツ井(ふたつい)白神会議 参加復命
期日 2002年5月22日〜24日
会場 秋田県二ツ井町
1 会議のあらまし
○テーマ 環境共生 〜地域からはじまる協働の世紀〜
○会議日程
22日 午前 ミニエコツアー
午後 開会式、市長村長報告、パネルディスカッション
夜 特別セッション(対談)
23日 午前・午後 分科会、フィールドワーク
夜 交流会
24日 午前 分科会報告、宣言採択
午後 エコツアー
2 二ツ井町について
今回の会場となった秋田県二ツ井町は、秋田県北部に位置し、北に青森
県と境を接する世界遺産白神山地を望む自然豊かな町であり、白神山地へ
の玄関口となっています。
南北34km、東西14kmの細長い地形で、人口は約13,000人、面
積18,000haのうち4分の3が森林です。
町の中央部分に米代川がゆったりと蛇行し、美しい自然に恵まれていま
す。高さ58m、日本一を誇る杉のある自然保護林など天然資源が豊富で
あるほか、かつて明治天皇がこの町を通った時の逸話から「きみまち」と
いうキャッチフレーズを用い、現在全国に向けて恋文コンクールを行い、
その名を知られるようになっています。
3 会議の詳細
○ミニエコツアー 第2コース 仁鮒水沢スギ植物群落保護林を視察
前述の日本一の杉の立つ同保護林は、この町の最南端に位置し、主会
場となっている町の中央からバスで約30分ほど走った所にあります。
地元ボランティアガイドの方の説明を受けながら、自然林と人工林の
違い、樹齢、杉林の生態の特徴などを学びつつ、なだらかな遊歩道を登
って日本一の杉に辿りつきました。この日本一の高さを誇る杉のほか、
ここに生息する杉の平均樹齢は250年ほどであり、人工林との比較を
しながらの原生林の散策は、これから始まる環境自然会議の序幕として、
たいへん示唆に富むものでありました。
○ 開会式
共同代表である日野市長、地元二ツ井町長、来賓秋田県知事が挨拶。
○ 市長村長報告「自治体の現状と課題」
@茨城県古河市長
・ 市民を巻き込んだ形を目指した「環境市民会議」を立ち上げる。
これには高校生も含まれており、来春にはスタートする。
・ ISO14001を取得。市内の事業所に普及しなければ意味
がない。地域に根ざした運動を目指し、古河版ISOを作り、市
内各事業所が取り組む。また学校版ISOは市内10校すべてが
取り組んでいる。さらに家庭版ISOにも、各家庭が取り組んで
いる。
・ 日本一美しいまちづくりを、市役所だけが取り組むのでなく、
市民全員が取り組むことで、初めて古河市の環境施策、システム
ができあがる、と考えている。
・ 市役所の担当課は「地球環境課」とした。
A茨城県東海村長
・ 環境自治体会議に参加したきっかけはまず、1999年9月3
0日に起こったJCOの臨界事故。次に、2000年5月、水俣
での自治体会議での水俣市の報告に刺激を受けた。これにより、
2000年12月に加盟した。
・ これまで国の原子力施策により、東海村は財政的に恵まれてき
た。下水道普及率100%など、村の環境施策は万全、先進的、
と考えてきた。しかしJCO事故により、表面的な施策に過ぎな
いと反省、転換が必要と痛感した。
・ 水俣で学んだものはまず指導者がよかったこと、次に市民が立
ち上がっている、すなわち住民自治の姿を見たことだった。
・ 2002年3月、環境基本条例制定、2003年12月にはI
SO14001取得の予定である。
・ 住民の意識改革がまず必要であり、そのために役場職員が先頭
に立つことが大切であると考えている。
B愛媛県内子町長
・ 20年前、町並み保存に取り組んだ。10億円の投資をし、6
0万人の集客をできた。成功したといえる。
・ これを受け、「住まい塾」を立ち上げ、町の大工さんに集まっ
てもらい、100年、200年と守っていける町を創っていくこ
とにした。合い言葉は「エコロジータウン内子」とした。
・ 「町並み保存」から「村並み保存」という考え方にした。「変
えなくてはならないもの」と「変えてはならないもの」を見極め
ていこう、変えてはならないものをしっかり守っていこう、とい
う運動とし、役所と住民との「協働」を目指している。
C秋田県小坂町長
・ 自然景観に恵まれた我が町。これを守っていくことが課題。
・ かつては鉱山の町。経済地盤があったが、プラザ合意により、
財政力はなくなった経緯がある。今は新しい産業づくりを目指し
ている。
・ H5年、自動車1台に1gの白金が使われているが、これを回
収する会社、携帯電話に使われている金を回収する会社を作り、
成功している。
・ また生ごみについて、生物系プラスチック容器を用いて処理し、
たい肥化することを試みている。
D秋田県大潟村長
・ 八郎潟干拓によってできた村。38年前、全国からの入植者た
ちでできた村である。八郎潟の水を大いに活用している村であり、
水を守ることが村を守ることと考えている。行政が守るというよ
り、村民が守ると考えている。
・ 廃油リサイクル、予防薬を使わない、などの村民運動を展開し
ている。また年に1度、八郎潟清掃村民運動が定着している。
E今後の共通の課題は何か
・ 住民参加がキーポイントである。地方分権でなく、地方主権と
考える。環境問題はそのためのいいテーマだ。
・ これまでの日本の経済主義をきっちり総括しないと環境問題は
成功しない。
・ ドイツの姉妹都市を訪れると、ドイツと日本の違いがわかる。
それは環境への取り組みの違いに尽きる、という話しがある。
・ ごみ分別のキーポイントは男性にある。家庭ごみを分別するの
は女性が多く、男性はしない。このことが外国との比較上、はっ
きりしている。
・ 「抑制」へのギアチェンジが必要だ。子どもの頃から大人への
教育まで、配慮が必要である。住民自身がどう考えどう実践する
かが課題である。

○パネルディスカッション
テーマ:「環境自治体会議この10年の歩みと成果」
司会 前・神奈川県鎌倉市長 竹内 謙
報告 環境自治体会議環境政策研究所長 中口 毅博
パネラー 長野県・「環境の世紀をめざして」 黒沼 迪子
法政大学社会学部教授 田中 充
自治労政策局次長 中島 圭子
福岡県古賀市議会議員 納富 育代
東京都日野市長 馬場 弘融
前・熊本県水俣市長 吉井 正澄
・中口 ※90〜93年 環境問題が政策課題となる
※第2期 数値目標が出されるようになる
※第3期 ISO14001取得始まる
自治体会議会員自治体と全国平均とを比較すると、会員
自治体の27%がISO取得、47%が条例を作っている、
42%が基本計画を作っている(全国では7%)
1人1日のごみ排出量、90年は1229グラム、00
年は84g。下水道普及率90年60%、00年85%、
エネルギー消費量はこの間15%増加している。
・黒沼 近所にパチンコ店ができ、住環境が一変した。そこから、
「守られる」から「守る」に、意識が変わった。
かつての風光明媚な町が、国籍不明の町になっている。
県知事に提出するための市の提言書を作成するプロセス
で、企業の苦しみ、行政の悩みもよくわかるようになった。
行政は市民のアイデアに、驚き、喜んでいた。
・中島 行政の職員の立場の悩みについて。事務の執行上、環境
破壊につながることもあることからジレンマもある。ある
いは思考停止でストレスや罪悪感を感じる場合もある。
市民からの情報をキャッチすること、情報を市民に知ら
せるという使命を職員は感じている。知恵を出す作業に、
積極的に参画していきたい。
・納富 学校給食にポリカーボネートなどの問題に取り組んでき
た。今回初加入し、市では省エネビジョンを策定し、環境
基本計画を作るための予算が初めてついた。市職員に、全
国の先進地から刺激を受けてもらいたいと思っている。
・馬場 基本条例、基本計画ともに、市民によるゼロからの手作
りで進めた。参加でなく参画という考えだった。市民の環
境意識は行政職員をはるかに上回るものであった。
これまで日野市はごみ収集、リサイクル率いずれも三多
摩ワースト1であった。33年間にわたって、ダストボッ
クス方式であり、可燃と不燃の分別のみでやってきた。で
もそれで、とてもいい行政と言われていた。しかし、ごみ
を減らす、という考えに立つとき、これは悪政といわねば
ならない。そこで、
ア ごみ袋の有料化 1枚40円、4人家族で月500
円程度の負担を実施し、このことで市民が危機感を抱
くようになった。
イ 説明会の実施 600回、地区ごとに実施。うち1
00回は市長も出席。目標は35%減と設定したが、
45%の成果を達成した。
ウ ISO14001を取得
エ 新エネルギービジョンを作成 民生エネルギー消費
が多いので、家庭生活を見直す。多摩川の水車の利用
で、防犯灯の電気代程度は賄えるようになった。
さらにバイオマスを検討中。ともあれ、まず市民が意識
を変え、次に、だから事業者も国もやれ、というコンセプ
トが大切である。
・吉井 水俣市のこれまでの取り組み
90年 水俣湾浚渫、埋め立て工事完成。裁判がすべて
和解、集結の方向が見えた。再生への動きが始ま
る。(水俣病発生から30年)
94年 患者救済完了。環境条例、基本計画を策定。市
の方針、生活のすべてに「環境」を盛り込む。各
国に「水俣」を普及、環境モデル都市目指し、行
政と市民がスタート。
97年 環境に関する行動に連帯意識、意欲が生まれる。
ISO14001取得。ISOの理念を市民に普
及。水俣版ISO、幼稚園ISOまで、市民に徹
底。過剰包装など、「ごみを家庭に持ち込まない」
運動を展開。
00年 環境自治体会議を誘致、全市民が会議のいずれ
かの分科会に参加するさいう、画期的な試み。
・田中 10年前、第1回の自治体会議は80人程度だった。現
在は68団体が加盟。成果としては、
ア 市民、職員、首長、議員、研究者、NPOなどさま
ざまな立場の人が交流、ラウンドテーブルで、という
のが新鮮だった。
イ 環境先進問題が語られ、最先端の話題が提供される。
ウ 中間山地、里山と都会・都市が交流するしくみ、ネ
ットワークが形成できた。
・今後の課題
この10年間で、EUではエネルギー消費量を1.6%減
らしつつGDPで日本の倍くらい成長させた。一方日本は消
費量を9%増やし、GDPは5%程度の成長にとどまってい
る。
「環境破壊は犯罪である」という思想の普及。
環境破壊を察知するシステムや科学技術の発展。
環境破壊を防止するシステムの開発。が課題である。
1、市民が参画する。2、住民、企業、研究機関の協働参
画。3、自治体間の連携。4、国際的なネットワークの構築。
これらが課題である。
自治体独自の頑張りには限界がある。国に影響を及ぼすた
めには、「数」が必要。自治体会議の加入数を増やすことが
肝要。
また一方で、環境に貢献した人に「エコボーナス」などの
アイデアが必要。

○第7分科会 「大量廃棄からの脱却」を聴講
テーマ 自治体から拡大生産者責任を実現しよう
コーディネーター 神奈川大学外国語学部助教授 松本 安生
コメンテーター 東京都日野市長 馬場 弘融
茨城県東海村長 村上 達也
問題提起者 環境自治体会議事務局
話題提供者 札幌市環境計画部計画課長 斎藤 進
(有)環境資源・環境ビジョン研究所代表
鈴木 直人
全国都市清掃会議調査普及部長 庄司 元
東京都杉並区議会議員 樋口 蓉子
岐阜県多治見市長 西寺 雅也
市民立法機構Rびん普及プロジェクト
中村 秀次
・事務局 アンケート結果の報告
・札幌市の事例 ごみ減量の取り組みと処理コスト
H5 さっぽろダイエットプラン「1人1日100gの
ごみ減量」を呼びかけたが、効果なし
H6.4 事業系ごみの有料化
H10.1 大型ごみ有料化で、効果あり
H10.10 ごみ袋を透明化、3種分別収集開始で、1人1日
730g(ピーク時の100g減量)に成功
清掃施設の維持コスト、解体費、ダイオキシン対策、容器リサ
イクル法により、市の清掃事業の経費は増加。分別により、行政
の経費は増大するしくみになっていることがわかる。
ここに根本の問題がある。
・日野市のごみ改革 「市民負担」のその先へ
H9.10 ごみ非常事態宣言を市報に掲載。以降600回、
3万人に説明会を展開。市長自ら街頭に立つ。
H12.10 戸別有料収集 1人900g→450g
可燃48%、不燃64%の減を達成。
ごみ袋 大型みどり透明10枚入り800円税込み
小型オレンジ透明 同 400円
コスト意識の違いから、一般の一戸建住宅からは小型袋にぎ
ゅうぎゅう詰めのごみが出、単身住宅からは大型袋にだぶだぶ
で出される。
プラスチック容器の処理コストの計算
PETボトル 収集128.9円、中間処理68.2円、その
後の再商品化費用83.8円、合計281円/kg
トレー 収集128.9円、中間処理72.0円、再商
品化105.0円、合計305円/kg
PETボトルは現在年間30万トン、H20には50万トン予
想。生産者責任を持たせ、リターナブル化も考慮させて製造抑制
へつなげることが大切。ドイツでは事業者がプラ容器の直接回収
を行っている。281円のコストを100円まで減らせる。
・庄司 ごみは減っているのか?
H3比較 一般廃棄物で1.6%の増、埋め立てごみは31.
7%の減となっている。
ごみ減量の原因は1、焼却能力向上 2、資源化量の向上 3、
集団回収量の向上 による。結果、埋め立てごみに回る量が減。
行政の経費は全国で2兆3千億円、予算全体の2.5%。トン
当たりコストは44,000円となっている。
委託費がとても増えている。これは容器リサイクル法による委
託増によるものである。
容器リサイクル法は市町村の経費負担を強いるしくみである。
どれだけ生産者に負担させるかが課題である。
・杉並区のレジ袋税
区内で年間1億7千万〜9千万枚、1億円分のレジ袋が消費さ
れている。
PET、トレーに比べ、レジ袋は取り組みやすい。
地方分権法が制定される中00年9月に発案、01年12月議会
に上程するも継続審査。スーパーで出口調査を実施、税導入につ
いて6割以上の区民が賛成であった。02年3月議会で可決成立。
レジ袋を減らすことに反対の人はいないが、手法のうえで課税
には抵抗があった。「税」というものが収奪するものであるとい
う見方、感覚が強い。また商店側の反発もあった。煩雑である、
客からいちいち5円を取れない、したがって客が減る、区外に客
が流れる、という心配あった。
アンケートを実施、税の導入には反対だが、決まってしまえは
買い物袋を持参する考えの人が70%だった。
区の職員も街頭でキャンペーンを行い、「環境目的税」として
スタートさせた。
・多治見市の法定外目的税
名古屋市は隣接する多治見市内に土地を確保、ずさんな投棄を
行っていた。これに対し「協力金」などの名目でお金を払っても
らっても、不明確であり、歳入面でもあやふやとなる。そこで一
般廃棄物埋立税として課税。
500円/トン。予定量をオーバーしたら1.5倍の750円。
努力をしないと高くなるしくみ。
一般に、都会のごみが周辺山村、中間山地に持ち込まれる傾向
がある。多治見市では「自区内処理」の原則を明確化し、持ちこ
みは有料という原則を立てる。5年の時限立法としているが、国
では「狙い撃ち禁止」のため法改正の動きもある。
・中村 リユース優先の循環社会を実現しよう
大量生産、大量消費、大量廃棄が行われてきたが、これに大量
リサイクルが付け加わるだけでは、本当のごみ減量にはならない。
本質的にはリユース(再使用)、リデュース(生産抑制)がごみ
減量の本論である。
リサイクルが税金で行われていることが、リユースを駆逐した。
「使い捨て」の発想は「頭を使わない」発想である。
リサイクルを法が地方自治体に負担させることにより、結局国
民1人1月800円の負担となっている計算になる。
リユース社会実現へ、法改正が必要である。
○フィールドワーク
二ツ井町の各施設、事業などを見学
・秋田杉を活用した市営住宅
・アイガモ農法と地鶏の育成
・河畔公園整備事業
・七座山(ななくらやま)の原生林
・きみまち阪公園整備事業と全国恋文コンテスト
○分科会報告、二ツ井白神宣言、次期開催地挨拶、閉会
○エコツアー
最終日は会議の閉会後、北に隣接する藤里町にある世界遺産センター
を見学し、さらに北上してブナの原生林を活用した自然教育林を訪れま
した。地元ボランティアガイドの説明を受けながらブナの生態、森林保
護の工夫や苦労、教育面での活用など学びながら、原生林を散策。
4 まとめ
今回で10回を数える同会議は、全国各地に会場を移しながら、さまざま
な角度から環境問題に取り組み、わが国の自治体環境問題の先駆的な役割を
担ってきました。このたび機会を得て初めてこの会議に参加しましたが、環
境問題に関わる多方面の問題が提起され、熱心な討論が行われて、さながら
環境先進地サミットの観を呈していました。
各地の先進事例が紹介されるということにとどまらず、研究機関からの学
術的な考究、消費者の代表の声、国際的な比較研究といった角度からも考察
が加えられ、ワンサイド的な論調に終わらず、立体的、有機的な議論が展開
されていることが、この会議の魅力であり、価値あるところだと感じました。
今回の第10回会議は会場が世界遺産である白神山地を遠望する秋田県二
ツ井町に設定され、こういう機会でもなければ四国に住む私たちにとっては
なかなか訪問することもないと思われる場所でしたが、米代川がゆったりと
蛇行し、原生林が手の届くところにあり、随所に「クマ出没」「サル出没」
という立て札を見かけ、来訪者も多い町の公園にも野性のカモシカが見られ
るという二ツ井町の環境は、この会議の会場としてまことに巧みな演出とい
えたと思います。
会議は登壇者の多彩さ、問題意識の深さにおいて、われわれ自治体行政に
関わる者からすれば実に得がたい内容の濃さで、メモを取るのが追いつかな
いほどの充実ぶりでありました。詳細は前述のとおりですが、ここで特筆し
ておきたいのは、ともかく参加者の熱意、危機意識の強さであります。
2日目の分科会は10の選択肢がありましたが、当然ひとつの会にしか参
加することはできず、あとは最終日の報告の席上、あらましを聞くにとどま
りましたが、分散して聴講した同行のメンバーからも、帰途さまざま語り合
ううち、いずれも熱心な討議であった旨、聞きました。
会議のサブタイトルに「地域からはじまる協働の世紀」とありますが、今
回の会議で私が痛感したことは、環境問題に関わる行政のイニシアチブとと
もに市民主導のうねりをどう作っていくかということと、国の環境施策がか
ならずしも完璧とは限らず、これからは地域の方から、国の行政を突き動か
していくだけの声を醸成しなければならない、というふたつのことでありま
した。地域とか、環境とかいうものは国が、あるいは行政が守ってくれる、
何とかしてくれる、という発想はこの際捨てて、自分たちで考え、語り、声
を上げていかなければならない、このことをあらためて痛感しました。
JCO事故のあった東海村、長い年月公害と戦った水俣市、その他報告者
の報告はいずれも、直面した困難をしたたかに逆手に取り、環境先進自治体
への変身に成功していることに気づかされます。直面する困難こそが知恵の
母であり、それを機として地球の環境問題にまで視野を広げていくことがで
きています。その点、当面の困難に直面していない自治体、あるいは市民は、
環境への世界レベルでの認識から大きく立ち遅れていくことを、この会議は
警告してくれているかに思えます。
具体的には、大量廃棄の後始末を地方行政が税金で賄っているという現行
システムでこと足れりとしていることは環境行政の本質から見ると大変に問
題のあることであり、これには国の抜本的なシステム改革が不可欠であると
いう論調に、私は強く共感を覚えます。
日常生活の中で便利さに負け、ついつい使い捨ての慣習に陥ってしまって
いる、また製品の形態上そうするしかなくなっている現在の生活のありよう
そのものを変えていくことは、限られた地方自治体だけでできるものではあ
りません。卑近な例ですが、先日私の息子が修学旅行に行くにあたり、持ち
物リストの中に水筒とあるのを見て、「お茶くらい、どこにでも売っている
だろう」と考えてしまった自分を、あとで恥じたものです。また、清掃奉仕
に出かけることもありますが、最後にパックのお茶やジュースをもらって、
拾い集めたごみと同じくらいのごみを自分たちも発生させていることに、考
え込むこともあります。しかし一方で、現今の社会のあり方そのものが、私
たちにそうした暮らしを余儀なくさせているという一面も否めません。
分科会の中で鋭く指摘されておりましたが、自治体によっては、先を見越
して規模の大きな焼却施設を作ったあまり、焼却するごみの不足が生じてい
るという状況に陥っているという一面もあり、自治体任せとなっている現在
のシステムはあちこちで矛盾を呈しているのではないかという印象も強くし
ました。
「使い捨ての文化は頭を使わない文化である」この言葉が、私の頭を離れ
ません。
大量生産のための資源の浪費から、その処分のための環境破壊まで、思い
を巡らせば人間の便利さの追求のために、随分とエゴイスティクな行動を、
私たちは今日まで進めてきました。ここに至り、このことがどれ程私たち自
身の首を締めることになっているかを、市民に知ってもらい、どう行動を起
こしてもらうか、またその下敷きとなるシステム作りをどう進めるか、その
議論を早急に、しかも粘り強く進めていかなければならないと痛感していま
す。
市の行政に携わっていると、日常の問題点にはしばしば直面しますが、と
もすればこうしたマクロな発想を置き去りにしてしまいがちです。行政当局
はなおさらのこと、この傾向が強いと思われます。したがって、私たち議会
の立場の者が、今回の自治体会議のような機会に得た知識を役立て、市政に
反映していかなければならない、このことをあらためて認識した次第です。
自治体行政のレベルから言うと、環境目的税の設置やごみの有料化、レジ
袋への課税、ごみ袋の有料化などの話題は直接、私たちの議論の対象となる
ことです。丸亀市では現在のところ、こうした面で具体的な動きはありませ
んが、たとえば最終処分場の猶予はあと10年といわれており、次の世代に
向け、議論は遅過ぎることはあっても早過ぎるということはありません。こ
のほど丸亀市にはリサイクル処理場である「クリーンセンター丸亀」が新た
にオープンしましたが、これを単に処理施設ととらえるのでなく、環境問題
を考える拠点としていってはどうかと、これから関係機関に働きかけてまい
りたいと考えています。
一方、教育現場における環境教育も大切であり、地球資源の枯渇や乱開発
が及ぼす環境破壊について学ぶとともに、日常の生活の目線で、「使い捨て
の日常を当たり前と考えてはいけない」という角度から子供たちに考えさせ
ることも、今後訴えたいと思うひとつのことです。
このほど丸亀市でも、エコ・リーダー、エコ・ハートという丸亀版ISO
ともいうべき制度がスタートしました。歓迎すべきことであり、継続的な発
展充実のために見守ってまいりたいと思います。
世界遺産白神山地を眺める秋田の地で開かれた環境自治体会議でありまし
たが、まさしく丸亀市での環境問題への取り組みも、全国へ、世界へと開か
れ、つながったものであるとの認識をあらたにし、地球市民の一員としての
丸亀市の環境行政という観点を忘れず、今後市政に反映してまいりたいと決
意しております。





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