芦屋市立図書館 訪問日 平成15年10月21日
○データ
オープン 昭和62年7月
蔵書数 345,000冊 書架12万冊、うち児童書が8万冊
貸し出し図書の24%が児童書である。
開館時間 火〜金曜日は9:30〜18:00
土、日曜日は9:30〜17:00
ホームページ及びインターネット検索サービスの開始 平成14年5月
館内端末パソコン5台
○特色ある運営
・市民からの寄贈による本6,000冊で「読書クラブ」を作っている。
・ネット検索の普及のため、15分番組を作成、ケーブルテレビで放映。
・ネット検索の工夫点、苦労話。
例:「ギリシャ神話」⇔「ギリシァ神話」
例:「アイデア」⇔「アイディア」
例:「瀬戸内晴美」⇔「瀬戸内寂聴」 打ち込み方によって、検索できないことがある。
また全集の中に納まっている場合など検索が難しい。
こうした「クセ」を知って上手に検索できるところが利用向上のポイントである。
かつての図書カードに書かれた内容をそのままデータ化しても、役に立たない。
そこで図書館職員はカウンター業務の合間にも、検索データを逐次手直ししている。
市民のための検索指南書「Qちゃんと本をさがそう」を利用者に配布。
・阪神大震災のときの図書館。停電が復旧したら、次は情報が必要となる。
避難所にも図書室がいる、ということを実感した、との話。
・バリアフリーの図書館。子どもたちが車椅子に乗り、バリアフリー体験に来る。
・図書館行事である「折り紙教室」、「母と子のいこいの部屋」、「子どもの部屋」、「ライ
ブラリーコンサート」、「おはなし作りの部屋」、「中高生年代のためのやすらぎの部屋」
など活発に行っている。すべてボランティアで運営されている。
・ライブラリーコンサートは年3回、ノーギャラでピアノ演奏など。エントランスホー
ルが300人の客で埋まる。
・点字友の会が点字広報をボランティアで作成、これは一般の広報よりも早い。
・館内展示物は3月に1回、取り替える。
・ホームページの訪問者は1日平均600人。
・どんな本を子どもに読ませたらいいかの参考になるようなホームページにしている。
・ネットを活用すると、本を置き換えずに「フェア」ができる。
・ホームページでは色覚への配慮。緑の中に赤は書かない。
・ホームページを訪れる視力障害者が音声読み上げブラウザを利用して読む場合のため
に、字を画像で示さずテキスト形式で打つようにしている。
・目の不自由な方には録音カセットを準備、宅配もしている。また足を骨折した人、障
害者の方など、図書館に来ることが難しい方にも宅配の要望に応えている。
・新刊の人気本は、「ハリーポッター」でも10冊。
競争率が10倍を超えたら、2冊目を買うことにしている。
・古い本の廃棄は、リサイクルコーナー行きと、古紙回収に回す方法にしている。
○訪問所感
芦屋、と聞いて、どなたもが閑静な高級住宅街をイメージするでしょう。
まさにそのとおり。静かで緑の多い住宅街に、樹木に包まれるようにして、市立図書
館が建っていました。
館長さん自らが話をしてくださり、また館内を案内してくださいました。
そのお話を承っていて、何度か「本をうる」という言葉が聴かれました。
ここは図書館ですが、まさに館長さん、蔵書をいたずらに眠らせておくものか、とい
う気概を強くお持ちと拝察しました。その結果、前述のようにさまざまな工夫が行われ
ているのだと思います。
「おはなしの部屋」はまさしく子どもがワクワクしながら入っていくのでしょう。部
屋を暗くしてロウソクを灯し、じっくりおはなしの世界に入っていけるようなつくりに
なっていました。
また館内中央から奥へ、書架はホールの客席のようにだんだんに高くなっていくデザ
インで、見た目に圧迫感がなく、木製の書架はやわらかい配色がいかにも、本の世界に
来館者をいざなっているような雰囲気でした。
館長さんもわれわれの訪問を前に、くわしく丸亀の図書館のことを調べてくださって
いたようで、丸亀市の図書館が持つ図書購入予算は全国でも上位、すごいことですとほ
めてくださいました。せっかくのこの予算、市民に大いに恩恵がありますよう、当局の
ご努力と市民のみなさんのご支援を願いたいものです。
赤穂市立図書館 訪問日 平成15年10月22日
○データ
オープン 平成14年3月
蔵書数 114,000冊 書架98,000冊
開館時間 通常日は10:00〜18:00
金曜日は10:00〜20:00
ホームページ及びインターネット検索サービスの開始 平成15年4月
館内端末パソコン5台
○特色ある運営
・市制施行50周年記念事業として新築。
・光あふれるパークライブラリー
・21世紀の赤穂市の文化情報発信拠点 とのコンセプトでオープンした。
・市民にくつろいでもらえるための設計。くつろぎロビー、テラス(屋外に2箇所の読
書スペースを確保)、畳ベンチを配置、集会室、和室、視聴覚室、創作室など。
・ギャラリースペースを隣接して確保し、市民の美術作品や企画展示を行う。
・ブックスタート事業を本年4月開始、「赤ちゃん絵本コーナー」を児童閲覧室に新設。
・ネットによる予約は月100件以上、リクエストもネットで可能。
・地域資料コーナーが充実。「忠臣蔵」特集もある。
・「日本文学講座」などの講演のほか、視聴覚室を利用して月例の映画上映会。読書週間
には金曜レイトショー(18〜20時)も開催。
○訪問所感
この文章を書くために、あらためて、頂戴した資料を探っていて、特徴的だと思った
のは「館内マップ」という冊子。見開きのページ全面に、館内のどこにどんなコーナー
があるのか、一目瞭然。親切な表記は、行ってみようかな、という気にさせてくれるよ
うです。
昨年オープンしたばかりのこの真新しい図書館。外観も洗練されていて、有名な設計
者の手になるものだけに、使ってみるとちょっと勝手が・・・という場面もあるようで
すが、少し郊外の広い道路に面したゆったりとしたたたずまいで、向かい側にある市民
会館と相まって、市の文化のエリアという立地になっています。
2階の回廊から、階下のフロアがすべて見下ろせるレイアウト、外の光がふんだんに
入る総ガラス張りの壁面。シルバーと黒で統一された落ち着いた室内のデザイン。外に
は板張りのテラスが準備され、そこには銀色の瀟洒なテーブルと椅子が整っていて、天
気のいい日は陽光のもとで読書を楽しめます。2階の一角には茶室仕立ての和室も。
「こちらでは古くなった本はどのように処理されていますか」との質問に、館長さん、
「まだ捨てる本がありません」。ほんとうに、気持ちのいいほど、真新しい図書館。
前日訪問した芦屋と同様、ここにも立派な「おはなしの部屋」が準備されていました。
ガラス張りの庭を眺める壁面には、先日猪熊弦一郎現代美術館で展覧会も行われた草間
彌生氏の手になる水玉模様をモチーフにしたデザインガラス。隣接して作られている児
童用のトイレにいたるまで、この手の入れ方は半端じゃありません。
まあそれはそれとして、赤穂市が図書館に注ぎ込んでいる熱い思いが伝わってきます。
丸亀市でも、熱心に学校図書館を考える会の皆さんが機関紙を発行しておられます。
先日いただいた最新号のなかに、ある新聞のコラムが紹介されていました。いわく、
「本への予算ほど有効な投資もない。子どもの頃から本に親しみ、そうした読書体験を
土台に作家、学者、文化人になるような人間が百人に一人、いや、千人に一人でも出れ
ば、それだけで市の名前は勝手に高まっていくのである」(趣旨)
これは学校図書館の司書予算を減らすな、という論調のなかでの一節です。
教育民生委員長という立場から、図書館協議会委員の一員となり、こうして図書館を
訪問させていただくのも、委員長の任期の限り。おそらくこれが最初で最後と思います。
貴重な経験をさせていただきました。
そして午後のひとときをゆっくりと本に向かっている市民の姿を拝見して、市の図書
館というものが子どもの人生に大きなインパクトを与える場所となり、また多くの市民
のためには豊かな生活の時間や情報提供の場所として活用される、それを思えばまさし
くこのコラムのとおり、贅沢にしてまた不可欠な、人間の生活を潤わせる大切な場所な
のだということをあらためて感じさせられます。
昨日の訪問で聴いた「避難所にも図書室が要る」という言葉と思い合わせて、丸亀市
の図書館もますます充実、たくさんの方から愛され活用されるものとなってほしいと思
います。これからはさらにネットでの利用、学校図書館との連携、来訪者へのサービス
の充実などに、力を入れていったらどうかと思いました。
そのためにも、図書館スタッフの皆さん、ご苦労ですがご努力よろしくお願いします。