A-6の写真
YAMAHA  A-6
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER  ¥66,500

1980年にヤマハが発売したプリメインア ンプ。プリメインアンプとして初めて「X電源」を搭載した
モデルで,スマートな筐体ながら,100W/chの大出力を実現していた先進的な1台でし た。

基本的な回路構成は,「ピュアカレントサー ボアンプ方式」を採用したイコライザアンプ→ハイゲイ
ンDCパワーアンプというシンプルでハイゲインな構成になっていました。

イコライザアンプの回路構成は, Highgm・FETによる差動入力→高信頼性ICアンプという構成
で,入力のコンデンサーを取り除いたICLとなっていました。
「ピュアカレントサーボアンプ」は,電源が音質に影響を与えないために,信号電流が電源部やア
ースラインに全く流れないようにしたもので,電源ラインには,信号に関係なく常に一定の電流を
流しておくという方式で,電源部や配線,電流変化による非直線性など給電系の影響を受けにく
くなるというものでした。
A-6のイコライザアンプは,MMカートリッジだけでなくMCカートリッジにも対応し,フロントパネル
のスイッチを切換えることで,イコライザアンプのゲインを切換えて対応するようになっていました。
特性的にも,MMポジション:86dB(2.5mV),0.003%(MM→REC OUT・20Hz〜20kHz)
MCポジション70dB(250μV),0.006%(MC→REC OUT・20Hz〜20kHz)とすぐれた特性
を実現していました。

パワーアンプ部は,ローノイズデュアルFET差動入力→エミッタ接地カスコード接続プリド ライブ,3段
ダーリントンドライブ出力段というDCアンプ構成になっていました。入力感度が150mVに設計され
ているため,通常のパワーアンプに比べて約16dB以上もゲインが高くなっていました。このため,温
度的特性においてもよく揃ったFETを1つのパッケージに収めたローノイズデュアルFETの採用やド
リフト吸収回路の採用など,中心電圧のドリフトへの注意もより払われた設計となっていました。また,
X電源の搭載により,一般的な電源では難しかった出力段での定電圧化も実現され,100W+100W
のハイパワーを安定して取り出せるようになっていました。さらに,B級動作時のスイッチング歪なども,
fTが高くリニアリティにすぐれた素子の採用により,皆無に近いほどに抑えられていました。
新しい放熱理論により設計されたヒートシンクは,100W+100Wの大出力ながら,従来の同クラス
の出力のアンプに比べて非常に小型になり,軽量・小型ながら安定したアンプ動作を実現したもので
アンプの筐体全体の小型化に貢献していました。

A-6の内部A-6のヒートシンク

A-6最大の特徴として,電源部には,ヤマハ自慢の「X電源」が搭載されていました。この「X電源」は,
交流の通電位相角を制御(Phase Angle Control)することによって交流電 力をコントロールする
TRIAC素子をトランスの一次側に挿入し,電圧比較増幅器が二次側の出力直流電圧と比較し た情報
をフォトカプラでTRIACのゲートに高速にフィードバックし,二 次側の出力電圧を一定に保つという,一
種のスイッチング電源でした。電源周波数に同期して,TRIAC素子が電源トランスに入力す る電流を
スイッチング制御し,常に大電流をトランスに流しっぱなしにするのではなく,必要に応じて通 電する仕
組みになっていました。その結果,通常より小型(従来の1/2以下)のトランスでも,大電力 伝送が可
能になり,高いレギュレーションが得られるというものでした。当時流行したこのようなスイッチング電源
は,スイッチングによるパルスが他に影響を与えることが嫌われたのか,あまり広まることなく終わりま
した。しかし,CDプレーヤー等デジタル機器が発達した今,デジタルノイズをシールドする技術も相当
に発達しているはずです。地球環境を大切にするために省エネが言われる現在,エネルギーの無駄を
防ぐこのような電源部の技術も見直されるときが来ているのかもしれませんし,最近は海外製の高級
アンプにもこのようなスイッチング電源の搭載が見られるようになりました。

よく整理されたパネル面を持ちますが,機能的には多機能で,各種コントロール類をジャンプ してメイン
アンプにダイレクトに信号を送る「MAIN DIRECT」スイッチ,インプットセレクタの位置に関係なくアナ
ログディスクを再生できる「DISK」スイッチ,あらかじめセットすることでアンプのピークパワーレベルを
確認できる「LISTENING LEVEL MONITOR」など,ヤマハのA-1桁シリーズに特徴的な機能もいく
つか搭載されていました。また,専用のボリュームを設けて低域・高域の補正量を調整できるコンティ
ニュアス・ラウドネスや,演奏中のプログラムに関係なく録音出力信号を選べるレックアウトスイッチな
ど,使いやすい機能が過不足無く搭載されていました。また,電源スイッチ,「MAIN DIRECT」スイッ
チ,「DISK」スイッチは,A-1以来の自照式スイッチで,A一桁シリーズに共通するイメージを感じさせ
るようになっていました。

以上のように,A-6は,X電源搭載を初めて搭載したプリメインアンプとして,スマートな 筐体に,ハイパ
ワーアンプを実現した1台で,軽量でスリムな外観から,思いのほか量感のある低域とヤマハらしいさ
わやかな高域を再生するコストパフォーマンスの高い1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



凄い低音をともなった
100W+100Wのハイクオリティ
A-6

◎新 開発X電源搭載
◎ハイパワーがハイクオリティ
◎ハイクオリティな100W+100W
◎ピュアカレントサーボイコライザ
◎使いごこちの良い多機能

●DISC:ディスクスイッチ
●REC OUT:レコアウトスイッチ
●PHONO:フォノセレクタ
●LOUDNESS:(コンティニュアス)ラウドネス
●MAIN DIRCT:メインダイレクト
●LISTENING LEVEL MONITOR:リスニングレベルモニタ
●HIGH FILTER:ハイフィルタ


■テクニカルインフォメイション■
●X電源にささえられた秀れたユニットアンプ
●X電源(Phase Angle コントロール電源)
●ピュアカレントサーボアンプ方式イコライザ
●MCカートリッジが使えるMCポジション搭載
●特性が素直なヤマハの新しいトーンコントロール
●100W+100WのDC構成ハイゲインパワーアンプ
●軽量・小型で高放熱効率の新設計ヒートシンク
●高度な技術による秀れたオーバオール実特性





●A-6の規格●

定格出力 100W+100W(20Hz〜20kHz・0.007%)
パワーバンド幅 10Hz〜50kHz(50W・0.02%)               
ダンピングファクター 55(1kHz)
入力感度/インピーダンス PHONO  MC:250μV/100Ω
PHONO  MM:2.5mV/47kΩ
TUNER,AUX,TAPE:150mV/47kΩ 
最大許容入力 PHONO MC 0.01%     18mV
PHONO MM,0.01%    180mV
出力電圧/出力インピーダンス REC OUT  150mV/550Ω(REC OUT)
混変調歪率 0.002%(TUNER→SP OUT・60Hz:7kHz=4:1)
全高調波歪率 0.006%(PHONO MC→REC OUT・20Hz〜20kHz・5V) 
0.003%(PHONO MM→REC OUT・20Hz〜20kHz・5V) 
0.005%(TUNER,AUX,TAPE→SP OUT・20Hz〜20kHz・50W)
周波数特性 DC〜100kHz  +0,−2dB(TUNER→SP OUT・MAIN DIRECT ON)
RIAA偏差 20Hz〜20kHz ±0.2dB
SN比 70dB(PHONO MC) 
86dB(PHONO MM) 
103dB(TUNER,AUX,TAPE)
入力換算雑音 −147dBV(MC)
−138dBV(MM)
残留ノイズ 183μV
トーンコントロール可変幅 BASS   ±10dB (at20Hz)
TREBLE ±10dBz(at20kHz)
フィルター特性 −12dB/oct(10kHz) 
チャンネルセパレーション 70dB(PHONO MC→SP OUT・入力ショート・1kHz・Vol−30dB)
コンティニュアスラウドネスコントロール
最大補正量
20dB(聴感補正カーブ 1kHz)
定格電源電圧・周波数 AC 100V・ 50/60Hz
定格消費電力 165W
ACアウトレット 連動×2
非連動×1
寸法 435W×112H×365Dmm
重量 9.1kg


A-6aの写真
YAMAHA  A-6a
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER  ¥69,800

1982年にA-6は,A-6aにモデルチェンジされました。基本的な回路や機能は受け継がれほぼ
同一の内容を持っていましたが,出力段に新開発の回路が搭載されていました。

A-6aの最大の改良点であり特徴は,ZDRという歪み低減回路の搭載でした。ZDRは Zero Dis
-tortion Ruleの略で(訳すと歪みゼロの法則!)ヤマハが開発した歪み低減方式でした。当時,
出力の一部を逆相にして入力側に戻すことで歪みを低減するNFB方式の害悪が盛んに言われ,
各社 NFB以外の歪み低減方式を盛んに発表していきました。これらの方式の基本的な考え方は
アンプの入力信号と出力信号を比較して歪み成分を検出し(入力信号と出力信号を同じレベルで
逆相加算することで検出)これを別のアンプで増幅して出力側で逆相にして加えることで歪み成分
をキャンセルするというものでした。ヤマハのZDRの場合は,歪み検出回路がブリッジ接続され,
リアルタイムで検出した歪み成分を入力電圧に同じレベルで同相で加えることによりあらゆる歪み
をゼロにするとうたっていました。ヤマハは当時この方式に自信を持ち大きく宣伝していましたし,
その後の同社のアンプにも広く搭載されていきました。実際,ZDRを搭載したA-6aは,A-6と比
較してより歪み感が少なくスムーズな音が実現されていました。

以上のように,A-6aは,A-6をベースに,ZDR搭載などの改良を加え,より完成度の高いプリメ
インアンプとなっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



終段のあらゆる歪をゼロにする
ZDRで音楽が果てしなくクリアな
100W+100W
POWER EXPRESSION


◎DCメイン部に「ゼロ歪」のZDR搭載
◎ピュアカレントサーボアンプのイコライザ
◎そしてX電源による100W+100Wの大出力



●A-6aの規格●

定格出力(両ch・8Ω) 100W+100W(20Hz〜20kHz・0.003%)
パワーバンド幅(8Ω) 10Hz〜100kHz(50W・歪0.02%)               
ダンピングファクター 65(8Ω・1kHz)
入力感度/インピーダンス PHONO  MC:160μV/100Ω
PHONO  MM:2.5mV/47kΩ
TUNER,AUX,TAPE:150mV/47kΩ 
最大許容入力
(1kHz・歪0.003%)
PHONO MC  10mV
PHONO MM 180mV
出力電圧/出力インピーダンス 150mV/270Ω(REC OUT)
混変調歪率 0.002%(AUX他→SP OUT・8Ω)
全高調波歪率
(20〜20,000Hz)
0.006%(PHONO MC→REC OUT・5V) 
0.003%(PHONO MM→REC OUT・5V) 
0.005%(TUNER,AUX,TAPE→SP OUT・50W/8Ω)
周波数特性
(MAIN DIRECT ON)
1Hz〜100kHz  +0,−2dB(TUNER,AUX,TAPE→SP OUT)
RIAA偏差 20Hz〜20kHz ±0.3dB (MC→REC OUT)
20Hz〜20kHz ±0.2dB (MM→REC OUT)
SN比(IHF-A) 70dB(PHONO MC) 
86dB(PHONO MM) 
106dB(TUNER,AUX,TAPE)
入力換算雑音(IHF-A) −142dBV(MC)
−138dBV(MM)
残留ノイズ 65μV(MAIN DIRECT ON)
トーンコントロール可変幅 BASS   ±10dB (at20Hz)
TREBLE ±10dBz(at20kHz)
HIGHフィルター −12dB/oct(10kHz) 
チャンネルセパレーション 70dB(PHONO MC→SP OUT・入力ショート・1kHz・Vol−30dB)
コンティニュアスラウドネスコントロール
最大補正量20dB(1kHz)
入力端子
PHONO(MC・MMゲイン切換),AUX,TAPE PB-1・2,REC-1・2
出力端子
SP-A・B(A,B,A+B,OFF切換)REC OUT,HEAD  PHONE
LISTENING LEVEL MONITOR
0.2W〜150W
定格電源電圧・周波数 AC 100V・ 50/60Hz
定格消費電力 175W
ACアウトレット 連動×2(TOTAL100W max)
非連動×1(200W max)
寸法 435W×112H×365Dmm
重量 9.1kg


※本ページに掲載したA-6,A-6aの写真,仕様表等は,1980年8月
 及び1982年5月のYAMAHA のカタログより抜粋したもので,ヤマハ
 株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
 転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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