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ONKYO IntegraA-919
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥160,0001990年にオンキョーが発売したプリメインアンプ。オンキョーは,「インテグラシリーズ」で, プリメインア
ンプで定評のあるブランドですが,A-919はA-820GTから始まった同シリーズのデザインイメー ジを
大きく変え,内容的にはそれまでの技術の集大成的なモデルでした。A-919は,それまで,オンキョーが「インテグラシリーズ」で開発し積み上げてきた「BI- MOSドライブ
方式」と「カレント・ドライブ・アンプ」の2つの技術を合体させ,「スーパーカレントアンプ」と称して いまし
た。具体的には,リニアリティに優れた「BI-MOSドライブ方式」を採用したプリステージ段と,電流 増
幅型アンプ「カレント・ドライブ・アンプ」の出力段から構成されていました。「BI-MOSドライブ方式」は,1989年のA-817XG,A-701XGで開発,初搭載さ れた技術で,MOS
FETとバイポーラトランジスタのそれぞれの良い所を組み合わせて使おうとするものでした。「BI- MOS
ドライブ方式」では,MOS FETとバイポーラトランジスタそれぞれの出力段を備え,入力電圧の増加 に
伴い,最初にMOS FETが立ち上がり,その後バイポーラトランジスタが立ち上がるという仕組みで,
BI-MOS合成特性は,小電流領域ではMOS FETのもつ緩やかな立ち上がりカーブの特性を示し, 大
電流領域ではバイポーラトランジスタの伸びやかで直線的な特性が支配的となります。その結果,+/−
の総合特性は,クロスオーバー領域できわめて直線近い特性得られ,大振幅領域でも伸びのあるリニア
リティに優れた特性を実現しているというもので,繊細さと力強さを両立させる方式でした。
A-919では,プリステージに「BI-MOSドライブ方式」を採用することで,リニアリティに優れた 電圧→電
流制御が実現していました。「カレント・ドライブ・アンプ」は,A-919で新たに開発されたもので,従来の出力段が電圧→ 電流変換動
作を行いながら増幅を行っており,温度特性や精度の点が問題点であることから,出力段には電流→電
流という伝達・増幅動作を行わせようとするものでした。そのために,リニアリティに優れた「BI- MOSドラ
イブ方式」のプリステージで電圧→電流変換動作を行い,出力段では,プリステージから送られてきた電
流に比例して出力電流をスピーカーに供給する「電流アンプ」となる回路構成となっていました。これによ
り,直線性に優れ,温度特性に優れた電流増幅動作でスピーカーを安定してドライブするようになってい
ました。そして,「カレント・ドライブ・アンプ」の出力段は,+側/−側完全対称の3パラレルプッシュ プル
構成となっていました。
パワーアンプ部は,L/R独立のツインモノラル構成で,シャーシ構造も3分割構造として小 信号ブロック
は中央部に,大電流を扱うパワー部,電源部を左右に配置していました。それに対応して,ボトムシャー
シも3分割構造として,シャーシ間の干渉を抑えていました。
電源部のトランスもL/R独立の2トランス構成で,2次巻き線をパワーアンプ用,イコライザーアンプ用,プ
ロテクター回路用に独立させ,また,マイコン用にサブ・トランスを搭載して,各ステージ間,L/R間の干
渉を排除した構成になっていました。
電源トランスは,磁気リーケージフラックス(磁気誘導による歪み)を抑えた「LASERトランス」を搭載して
いました。この「LASERトランス」は,これも1989年のA-817XG,A-701XGで開発,初搭 載された
もので,外周部の幅が標準よりも広い新型のEIコアを採用し,外周部の磁気抵抗を減少させてコアから
磁気が洩れにくい構造とするとともに,コアの外周を硅素鋼板シールド材によって厳重にシールドし,かつ
コアの周囲にも十二分にシールドを施し,フラックスの漏れを,従来のトランスに比べて1/30に低減し た
ものでした。ツイン・モノラル・コンストラクションで入力から出力までの信号経路が短縮化されるとともに,さ らに,信号
経路の短縮化のため,入力側では,モータードライブのセレクタースイッチにより,入力ピンジャックの近 く
で入力切換を行い,ボリュームも独立4連タイプをセレクター近くに配置して,モータードライブを搭載し た
シャフトドライブとし,これらは付属のリモートコントロールでの操作が可能となっていました。また,ス ピー
カー端子もパワー部の近くに左右独立で配置し,よりストレートな信号伝達を実現していました。振動に対する対策もしっかり行われ,高剛性のシャーシ構造に加え,ガッチリと取り付けることが可 能にな
ったケミコン制振構造材,6点留め高剛性天板,塩ビコーティング・ボトムシャーシ,ヒートシンク制振構 造
ウッドパネル・サイドスタビライザーなどの対策がとられていました。
パーツの面でも,大型ハイクオリティ,低インピーダンスのツイン・ロール・ケミコン,すべての整流ダイ オー
ドは高速ダイオード,70μm厚銅箔プリント基板,極性表示付極太ACコード,全端子金メッキジャッ ク,
特大スピーカーターミナルなど,高性能なものを使用していました。以上のように,A-919は,当時のオンキョーの最高級機として,しっかりと作られた実力派のプ リメインア
ンプでした。優れた分解能をもつ現代的な音ながら,あたたかさも持った音は,それまでのオンキョーアン
プと異なるあらたな魅力をもつものでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎繊細なディテールと力強いパワー感。
新開発スーパー・カレント・アンプ。
◎全段プッシュプル構成のパワーアンプ。
◎相互干渉を抑え,
伝送距離の短縮化を実現。
ダイレクト・ツイン・モノ・コンストラクション。
◎リーケージ・フラックスを低減した
LASERトランスのL/R2トランス構成。
◎3BOX,2分割ボトムシャーシ構造。
◎ブロック独立給電とサブトランス。
◎ダイレクト配置のセレクタースイッチ,
ダイレクト独立4連ボリューム。
◎モータードライブ方式リモコン。
◎万全の制振構造。
◎ハイ・クオリティアンプの風格。
充実の回路群。
◎高性能部品を厳選して採用。
●主要定格●
定格出力(20〜20kHz) | 155W+155W(CD→SP OUT 6Ω両ch駆動) 120W+120W(CD→SP OUT 8Ω両ch駆動) |
ダイナミックパワー | 2Ω 420W+420W 4Ω 280W+280W 6Ω 200W+200W |
全高調波歪率(20〜20kHz) | 0.015%(CD→SP OUT10W出力時8Ω) 0.003%(PHONO MM→REC OUT 3V) 0.015%(PHONO MC→REC OUT 3V) |
混変調歪率(20〜20kHz) | 0.004%(CD→SP OUT定格出力時) |
パワーバンドウィズス | 5Hz〜100kHz(IHF-3dB THD0.2%8Ω) |
ダンピングファクター | 400(1kHz 8Ω) |
周波数特性 | 20Hz〜20kHz/±0.2dB(PHONO→REC OUT/RIAA偏差) 2Hz〜100kHz+0dB,−3dB(CD→SP OUT) |
入力感度/インピーダンス | PHONO MM 2.5mV/47kΩ PHONO MC FOR3〜10 160μV/100Ω PHONO MC FOR10〜40 160μV/220Ω CD,TAPE PLAY,PROCSSER-IN他 150mV/30kΩ |
PHONO最大許容入力(0.005%) | MM 150mV(1kHz)/710mV(10kHz) MC 92mV(1kHz)/42mV(10kHz) |
定格出力電圧/インピーダンス | 150mV/560Ω(TAPE REC,PROCESSER-OUT他) |
SN比(IHF-Aフィルター入力ショート) | PHONO MM 94dB(5mV入力) PHONO MC 75dB(0.5mV入力) CD他 107dB |
トーンコントロール最大変化量 | BASS ± 8dB 20Hz TREBLE ±10dB 20kHz |
アッテネーター/ミューティング | −20dB |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力(電気用品取締法規格) | 325W |
ACアウトレット | UNSWITCHED 1個 100W SWITCHED 2個 合計100W |
寸法/重量 | 471W×170H×430Dmm/26.6kg |
※本ページに掲載したA−919の写真,仕様表等は,1990年
10月のONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式
会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意くだ
さい。
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