AU-111の写真
SANSUI AU-111
STEREOPHONIC AMPLIFIER ¥65,000

1965年にサンスイが発売したプリメインアンプ。サンスイのプリメインアンプとして最後の
真空管アンプで,完成度の高い名機として高い評価を得ました。

メインアンプ部は,出力管に6L6GCを使用し,AB,PP固定バイアス方式で動作させ,実
効出力40W×2(歪率0.8%),45W/45W(歪率0.8%)というハイパワーとパワーバ
ンドワイズ20〜20,000Hzの広帯域を実現していました。また,多重負帰還回路の構成
で,全帯域に渡りフラットな特性を得ていました。
パワーアンプの回路構成には,十分なオープンループゲインがとれ,ACバイアスも合わせ
やすいリーク・ムラード型を採用し,初段には,大電流で動作可能な瞬発力の高い6AQ8
位相反転には12BH7Aを使用していました。

トランスメーカーだったサンスイらしくアウトプットトランスには,30Hz/50W連続出力を保証
した大型コア,低損失(0.25dB以内),超ワイドレンジ(再生周波数帯域20Hz〜100kHz)
NFBマージン(25dB)という大容量SW(スーパーワイド)型出力トランスを搭載していました。
この出力トランスは非常に複雑な巻線構造を持ち,手作業でしか作れず,現在ではなかなか
作れないものといわれています。
電源トランスも,定損が少なくレギュレーションのすぐれたサンスイらしい大容量で大型のパ
ワートランスを搭載し,倍電圧電流により480Vをとりだして,6L6GCのプレートに供給して
いました。そして,これらのトランスはすべて永久保証がなされていました。

コントロールアンプ部は,カソードフォロアーを含めて12AX7の4段という贅沢な増幅回路を
搭載し,すべてを2段増幅NFアンプで構成し,ノイズや歪みを低く抑えていました。
さらに,フォノイコライザーは,12AX7の2段増幅NFB構成として,MM型カートリッジに対応
していました。MCカートリッジに対しては,別売の入力トランス(A-603,A-604)との組み合
わせで対応できるようになっていました。

プリメインアンプとして,豊富な機能が搭載され,使いこなしがいのある作りとなっていました。
トーンコントロールは,BASS,TREBLEをL・R独立で搭載し,BASSは250Hz,500Hz
TREBLEは2.5kHz,5kHzとターンオーバーを切り換えられ,DEFEATポジションで,トー
ン回路をパスすることも可能となっていました。さらに,低音域の切れを良くするプレゼンスコ
ントロールというスイッチも搭載されていました。
テープデッキへの録音出力は出力インピーダンスの低いカソードフォロア回路になっており,
オープンリールデッキの9.5cm/秒,19cm/秒のそれぞれのテープスピードに対応したイコ
ライザーが装備されていました。
また,通常のスピーカー出力以外に,全帯域用と3D再生用のハイカット出力のセンター出力
端子があり,専用のボリューム装備され,スーパーウーファー等の使用にも対応していました。
プリとパワーは独立しての使用も可能となっており,位相切替も装備されていました。
フィルターは,CRフィードバック方式のハイカットとローカットが付属し,ラウドネススイッチも装
備されていました。以上のように見てみると,現在のアンプにはあまり見られない機能も見られ
興味深いものがあります。

以上のように,AU-111はサンスイ最後の真空管プリメインアンプとして,物量と技術が投入さ
れ,名機として君臨しました。サンスイ初のブラックパネルにゴールドのツマミがついた風格ある
精悍なデザインも印象的でした。真空管アンプながら,いわゆる真空管アンプという言葉から想
像するソフトな音ではなく,ハイスピードな力強い音は,サンスイの個性を感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



マニアのために設計された
真空管アンプの最高峰

大出力45/45ワット(実効出力),超低歪率0.8%,パワーバンドワイ ズ20〜20,000cps

◎6L6GCAB,PP採用,
 超低歪,大出力のプリメインアンプ
◎永久保証つきのトランス
◎初段から最終出力段まで全増幅回路
 をNFアンプで構成
◎プリアンプ,メインアンプ共それぞれ
 単独使用が可能
◎上昇,下降点が変えられるユニーク
 なトーン回路つき
◎低出力M・C型カートリッジ用入力
 トランス使用可能
◎シリコントランジスタ採用のヘッドアンプ
◎望み得る最高級のアクセサリー回路
◎格調高いデザイン



●規格●

定格出力
ミュージックパワー(IHFM):96W
実効出力(左/右):45W/45W
ステレオ実効出力(両チャンネル同時動作):40W×2
全高調波歪率
0.8%
混変調波歪率
(5〜5,500cps)
0.8%
パワーバンドワイズ(IHFM)
20〜20,000cps(0.8%にて)
周波数特性(AUX)
20〜50,000cps±1dB
ハム・雑音(IHFM)
AUX:−80dB,PHONO:−70dB
チャンネルセパレーション
45dB(PHONO端子にて),50dB(AUX端子にて)
残留雑音
2mV(8Ω)
負荷インピーダンス
8・16Ω
ダンピングファクター
15
入力感度
(実効出力に要する,1,000cpsの入力)
PHONO-1:(3.5Ω)0.06mV(A-604使用にて)
        (30〜100Ω)0.2mV(A-603使用にて)
PHONO-2:(100kΩ)2mV
TAPE HEAD:(19cm/sec,9.5cm/sec)
          (100kΩ)1.8mV
TUNER:(500kΩ)220mV
AUX:(500kΩ)220mV
TAPE MONITOR:(PIN-500kΩ)200mV
録音出力
(PINカソードフォロア出力)
(PHONO-2入力に対して100倍)
(TAPEH.D入力に対して115倍)
センターチャンネル出力
1.5V 48kΩ(実効出力にて)
イコライザー特性
PHONO-1,2:RIAA,TAPEH.D NAB (19cm/sec, 9.5cm/sec)
プリアンプ出力
2.1V 710Ω(実効出力にて)
コントロール及びスイッチ
トーンセレクター:(LOW)DEFEAT,fo=250c/s,fo =500c/s
トーンセレクター:(HIGH)DEFEAT,fo=5Kc/s,fo=2.5Kc/s
トーンコントロール:BASS(50cps)+11.5dB〜−10dB(fo=250c/s)
            TREBLE(10,000cps)+12.5dB〜−11dB(fo=5Kc/s)
            BASS(50cps)+16dB〜−14.5dB(fo=500c/s)
            TREBLE(10,000cps)+7.5dB〜−6dB(fo=2.5Kc/s)
ラウドネスコントロール(スイッチ付):50cps +9.5dB,10,000cps +5dB
                                     (音量調整−30dB)
ハイフィルター:20,000cps −25dB fo=6,000cps
ローフィルター:20cps −26dB fo=70cps
プレゼンス:20cps +7.5dB fo=125cps
モードスイッチ:STEREO,MONO(L+R)
インピーダンス・スイッチ:8Ω,16Ω
フェーズ・スイッチ:NORM,REV
ファンクション・スイッチ:TAPE H.D19cm/sec,TAPE H.D9.5cm/sec
               PHONO-1,PHONO-2,TUNER,AUX
その他
テープモニター,ヘッドホーンジャック
使用真空管トランジスター及びダイオード
真空管:6L6GC×4 12AX7×5 12BH7A×2 6AQ8 ×1
トランジスター:2SC-402×2
ダイオード:SW-0.5a×1 SW-0.5d×2
電源
100V 117V 240V 50〜60cps 280VA (MAX)
寸法
460W×170H×345Dmm(ゴム足,ツマミを除く)
重量
24.5kg


AU-111VINTAGE1999の内部

AU-111vintage1999
SANSUI AU-111vintage1999
STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER ¥440,000

1999年,サンスイは名機AU-111を200台限定で完全復刻しました。パネルのデザイン等
だけでなく当時の出力トランスを仕様書と当時のエンジニアを訪ね当てて復活させて搭載し,出>
力管等の真空管も同じものを搭載,プリント基板を使わない配線など,一部入力やファンクショ
ン等の違いを除いて,オリジナルにこだわった作りを持つ,サンスイの熱意を感じる逸品でした。
そして,その音は現代にも通じる魅力あるものであったことは,名機であったことの証であったの
かもしれません。


●AU-111vintage1999主 要規格●

実用最大出力
45W/45W(8,16Ω)
実効出力
40W+40W(8,16Ω)
周波数特性
10Hz〜80kHz(+0,−3dB)
全高調波歪率(実効出力時)
0.8%以下(8Ω)
混変調波歪率
0.8%以下(8Ω)
ダンピングファクター
15(8Ω)
入力感度/入力インピーダンス(1kHz)
PHONO(MC HIGH)/A-603S・0. 25mV/30〜100Ω
PHONO(MM)・4.0mV/100kΩ
TUNER,CD,LINE-1,LINE-2,TAPE:250mV/300kΩ
定格消費電力
210W
外形寸法
460W×197H×433Dmm
重量
26.0kg

※本ページに掲 載したAU-111,AU-111vintage1999の写真
 仕様表等は,1965年及び1999年10月のSANSUIのカタログ
 より抜粋したもので,山水電気株式会社に著作権があります。
 したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律
 で禁じられていますのでご注意ください。

 

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