E-202の写真
Accuphase  E-202
INTEGRATED AMPLIFIER ¥198,000

1974年に,ケンソニック(現アキュフェーズ)が発売したプリメインアンプ。1972年に発足したケン
ソニック株式会社=アキュフェーズ(当時はブランド名)初のプリメインアンプで,当時の日本のプリ
メインアンプとして,あるいは世界の中でも?)最大級のハイパワーをすぐれた特性で実現していた
1台でした。

E-202は,セパレートアンプでスタートしたアキュフェーズらしく,プリメインアンプの中にセパレート
アンプのレベルの性能を実現しようとした設計で,当時のプリメインアンプの枠を超えた大出力を
実現しつつ,小出力時のすぐれた音質も両立させることに成功していました。

出力段は,大型のパワートランジスターを片チャンネル4個用いたパラレルプッシュプル駆動で,大
型ヒートシンクによる放熱能力とあいまって,100W/ch(8Ω負荷,両チャンネル同時動作時,20
〜20,000Hz,歪み率0.1%以下)の出力が保証されていました。
これを支える電源部は,大型の電源トランスとチャンネル当たり20,000μF×2のフィルターコン
デンサーを基調にしたもので,4Ω負荷時の140W+140Wの連続出力にも十分な余裕のある
電源部でした。また,大出力アンプにありがちな小出力時の音質劣化を避けるために,各ステージ
のバイアス電流を徹底的に検討して設計され,小出力時の歪みも抑えられていました。
さらに,イコライザーアンプをはじめ,出力段以外の全増幅段は定電圧化された電源部から電源電
圧が供給されるようになっており,入力信号の強弱,一次側電源電圧の変動に対しても安定な動作
が確保されていました。

E-202の内部

出力段には,特徴的な機能として「スピーカー・ダンピング・コントロール」が装備されていました。
これは,リアパネルにあるスイッチにより,ダンピングファクターを8Ω負荷時,50以上(NORMAL)
5(MEDIUM),1(SOFT)に切り2替えることができる機能で,音質の変化を楽しめるものでした。
一般に,トランジスターアンプに比べてダンピングファクターが低い管球式アンプに近い特性をもた
せることで,管球式アンプ時代に設計されたスピーカーにも対応しようという機能でした。

イコライザーアンプは,定電流負荷型の差動増幅の直結3段で,すぐれたリニアリティを実現してい
ました。また,プラスマイナス2電源方式により,300mVrms(1kHz,歪み率0.05%以下)の許
容入力電圧が確保されていました。
イコライザーアンプにも,特徴的な機能として,ロー・エンハンスメントが装備されていました。これは
RIAAに対して,100Hz,+1dBの特性で量感を補正するスイッチで,微妙なプレゼンスの調整が
できるようになっていました。また,ディスク専用のサブソニック・フィルターも装備されていました。
DISC1入力には,6dBの範囲で可変できるレベルコントロールが装備され,DISC1,2と2系統あ
るDISC入力のレベルを合わせられるようになっていました。さらに,DISC1には,3段階(30kΩ
47kΩ,100kΩ)の負荷インピーダンス切替えも装備されていました。

フロントパネルには,アキュフェーズらしく,プリメインアンプでありながらL・R独立のパワー・メーター
が装備されていました。小出力時にも見やすいように,3ステップ(0dB,−10dB,−20dB)のメー
ターレンジ切替えが装備されていました。
トーンコントロールは,TREBLE,BASSそれぞれ,2dBステップで±10dBの調整ができるステップ
式で,ON/OFFのスイッチも装備されていました。フィルターは,HIGH,LOWが装備されていました。
テープの入出力は,2系統が設けられていましたが,TAPE2はフロントにもスイッチ付き端子が設け
られ,リアの端子と合わせて計3台までテープデッキが接続でき,TAPE1とTAPE2の相互ダビング
もできるようになっていました。

以上のように,E-202は,同社の商品化第1号のセパレートアンプC-200,P-300のエッセンスを
投入した,セパレートアンプに迫る性能のプリメインアンプでした。内部の整然としたレイアウトやメイ
ンテナンス性を考慮したプラグイン式の基板など,後のアキュフェーズアンプにも共通する,高い性能
と長く使える耐久性,そして便利に使える機能性をバランスよく両立させた設計も特徴でした。音の方
も,バランスの取れた歪み感やノイズ感の少ない音で完成度の高さを示していました。しかし,そうい
った中に,どこか当時のアメリカのアンプ的な色彩や力強さを秘めていたところは初期のアキュフェー
ズアンプの音の特徴でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ステレオ・プリメインアンプE-202型は,パワーアンプ
P-300型,コントロール・センターC-200型で達成し
た技術的成果をフルに生かし,プリメインアンプの中に
セパレートアンプのグレイドを実現すべく開発されました。


◎特に,ローレベルの音質を
 重視した100W/チャンネルの出力
◎スピーカーの個性をより積極的に
 引き出すスピーカー。ダンピング・
 コントロール
◎出力をモニターするパワー。メーター
◎音質重視のイコライザー回路

 ●パルスの忠実な伝送を可能にした
  300mVrmsの入力Dレンジ
 ●アキュフェーズのみの特長
  ロー・エンハスメントとディスク専用
  サブソニック・フィルター
 ●6dBの変化範囲をもつDISC1レベル・
  コントロール
 ●DISC1入力インピーダンス切替
  スイッチ

◎2dBステップ式トーン・コントロール
◎2系統,3台のテープ・レコーダー
 接続可能。独立したテープ・コピイ
 スイッチ。
◎定電圧電源による安定化
◎完全なスピーカー保護機構
◎厳選されたパーツ




●E-202型保証特性●

定格出力 140W/ch  4Ω負荷 
100W/ch  8Ω負荷 
 50W/ch 16Ω負荷 
(両チャンネル同時動作,20〜20,000Hz間,ひずみ0.1%)
高調波ひずみ率 定格出力時:0.1% 
−3dB出力時:0.02% 
(20〜20,000Hz間 HIGH LEVEL INPUTより)
IMひずみ率 定格出力時:0.1%
(20〜20,000Hz間の任意の周波数 HIGH LEVEL INPUTより)
周波数特性(8Ω定格出力時) 
  MAIN AMP INPUT
  HIGH LEVEL INPUT 
  LOW  LEVEL INPUT

20〜20,000Hz +0,−0.2dB  
20〜20,000Hz +0,−0.5dB
20〜20,000Hz +0.2,−1.0dB
ダンピングファクター
(8Ω負荷,40Hz)
SPEAKER DAMPING SW NORMAL:50
SPEAKER DAMPING SW MEDIUM:5
SPEAKER DAMPING SW SOFT  :1
定格入力及び入力インピーダンス
  MAIN AMP INPUT
  HIGH LEVEL INPUT
  DISC1 INPUT
  DISC2 INPUT
 
1.0V・100kΩ
160mV・100kΩ
2.5〜5mV・30k,47k,100kΩ
2.5mV・47kΩ
ディスク最大入力
 (1kHz,ひずみ率0.05%)
  
DISC1
 300mVrms(DISC1 レベル・コントロール最大) 
 600mVrms(DISC1 レベル・コントロール最小) 
DISC2
 300mVrms
定格出力・出力インピーダンス 
  PREAMP OUTPUT 
  TAPE RECORDING OUTPUT 
  HEADPHONES 

1.0V    600Ω 
160mV  200Ω
0.28V  適合インピーダンス4〜32Ω
ゲイン MAIN AMP INPUT→OUTPUT:29dB 
HIGH LEVEL INPUT→PREAMP OUTPUT:16dB 
LOW LEVEL INPUT→TAPE REC OUTPUT:36dB
(DISC1のレベル・コントロールは−6dBの範囲で連続可変)
S/N
  MAIN AMP INPUT 
  HIGH LEVEL INPUT 
  DISC INPUT

94dB(定格入力) 
80dB(定格入力) 
74dB(10mV入力)
音量調整連動誤差
1dB
トーン・コントロール 11接点ロータリー・スイッチによる2dBステップ
切替式・左右連動型
ターン・オーバー周波数 BASS  :400Hz 
                TREBLE:2.5kHz
変化範囲 BASS  :±10dB(100Hz)
        TREBLE:±10dB(10kHz)
トーン・コントロールON−OFFスイッチ付
コンペンセーター +9dB(音量調整−30dB,50Hz)
DISC ロー・エンハンスメント
RIAAに対し +1dB(100Hz)
フィルター DISCサブソニック・フィルター:25Hz(6dB/oct)
ロー・フィルター         :30Hz(18dB/oct)
ハイ・フィルター         :5kHz(12dB/oct)
パワー・メーター・レベル 100W(8Ω負荷にて)
メーター・レンジ切替により
 −10dB(10W=0dB),−20dB(1W=0dB)に切替可能
使用半導体 53トランジスター,4FET,44ダイオード,2サーミスタ
電源及び消費電力 100V,117V,220V,240V 50−60Hz 
無入力時 70W,8Ω負荷定格出力時 375W
寸法・重量 幅455mm×高さ152mm×奥行355mm  19.5kg

※本ページに掲載したE-202の写真,仕様表等は,1975年
 のAccuphaseのカタログより抜粋したもので,アキュフェーズ
 株式会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無
 断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注
 意ください。

 

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