![]()
YAMAHA FX-3
NATURAL SOUND SPEAKER SYSTEM
¥220,0001979年にヤマハが発売したフロア型スピーカーシステム。ヤマハの孤高の名機NS-1000/1000Mで開発
されたベリリウムドーム型ユニットをスコーカー,トゥイーターに採用し,大型のウーファーを組み合わせたフロア
型としてより豊かな音をめざした1台でした。
![]()
トゥイーター,スコーカーの振動板に採用されたベリリウムは,高い剛性と硬度をもち,振動板素材としてすぐれ
た特性をもちながら,脆い,科学的に活性であるため腐食しやすいなどの弱点があり,実用化が難しかったもの
を,ヤマハがNS-1000/1000Mで実用化に成功したものでした。LSI製造技術に用いられている電子ビーム
真空蒸着法で高純度(99.99%)の振動板に直接成型するため,圧延板材による絞り成型などでは難しい深
いドーム形状の理想的な性能を持つドーム型ダイアフラムとしていました。FX-3では,NS-1000/1000Mに
搭載されていたものをさらに改良した新型ユニットを搭載していました。
![]()
![]()
トゥイーターJA-0526は,ベリリウム素材の性質を生かした重量0.028gという振動板を搭載していました。
振動板直径は24mm,粘弾性樹脂と熱硬化樹脂を二重コーティングした布製のタンジェンシャルエッジによって
支えられ,低いfo(1000Hz)を実現し,共振も抑えていました。ボイスコイルは耐久性にすぐれたクラフト紙製ボ
ビンにベリリウム振動板直結の銅クラッドアルミ線エッジワイズ巻きが採用され,軽量な振動系が追求されてい
ました。ボイスコイルの背後空間は,センターポールをテーパー化して不整形にし,吸音用ウレタンを充填して共
振の影響を除去していました。
磁気回路は,100φ×50φ×22tmの大型のフェライトマグネットを採用し,総磁束33,000マックスウェル,
総磁束密度18,500ガウスの強力なものでした。
![]()
スコーカーJA-0802は,口径88mmで,曲率半径の小さい形(深いドーム形状)として,剛性の増加と指向性
の向上が図られていました。トゥイーター同様,粘弾性樹脂と熱硬化樹脂を二重コーティングした布製のタンジ
ェンシャルエッジによって支えられ,低いfo(300Hz)を実現していました。ボイスコイルは,トゥイーター同様,ク
ラフト紙ボビンに銅リボン線をエッジワイズ巻きしたものが採用されていました。
振動板の背後は,センターポールを大きくくり抜いてバックキャビティに通じており,ボイスコイルの背後は磁気
回路の底板に空気穴をあけてバックキャビティに通じ,エッジ背後の部分においてもボイスコイルボビンに穴を
あけ,アウターポールに穴を通じさせるなど,各部分の空気圧が等しくなるようにして,リニアでハイトランジェン
トな動作を確保していました。
磁気回路は,156φ×80φ×25tm(NS-1000Mのウーファーのものと同じ直径。ちなみにNS-1000Mの
スコーカーも同じ直径でした。)の大型のフェライトマグネットを採用し,総磁束130,000マックスウェル,磁束
密度16,000ガウスの強力なものでした。
![]()
ウーファーは,フロア型システムとして36cmの大口径のコーン形ウーファーを搭載していました。コルゲーシ
ョン入りのコニカルタイプのパルプコーンユニットで,発泡ウレタン製のエッジによって支えられていました。
ボイスコイルは,銅リボン線を耐熱性のNOMEXボビンにエッジワイズ巻きしたロングボイスコイルタイプのもの
で,大入力に対しても高いリニアリティを確保していました。また,ボイスコイルのネックの部分には,亜鉛製
の補強リングをが装着されて,ボイスコイルのたわみによる不整形振動が抑えられていました。
磁気回路は,200φ×120φ×20tmの大型のフェライトマグネットを採用して,総磁束260,000マックス
ウェル,磁束密度12,000ガウスの強力なものでした。また,センターポールには,磁気歪の発生を抑える
銅キャップが被せられていました。
フレームは分厚いアルミダイカストフレームで,総重量8.7kgの大型のウーファーをガッチリ保持する構造と
なっていました。
![]()
ネットワークには,コイルは大型のフェライトコアによるボビンに,直流抵抗の少ない純度99.99%の銅線を
使用し,コンデンサには,音質のチェックにより選ばれたMPコンデンサが採用されていました。また,コイルど
うしの相互インダクタンスを影響を少なくするために,距離を十分にとりながら,お互いを直角になるように取り
付けていました。
![]()
キャビネットは,ゆったりした低音を再生するために120リットルの内容積をもつバスレフ型のフロアタイプと
していました。全面同一のパーティクルボード製で,通常のものより高密度で高硬度なものが使われていま
した。表面の仕上げはシャイニーオーク仕上げとし,バッフル板は精悍な黒色仕上げとしていました。ヤマハ
の楽器作りの木工技術が生かされ,適切な補強が施された丈夫で美しいキャビネットでした。
前面バッフルには,NS-1000M同様の連続可変型のスコーカー,トゥイーターのレベルコントロールが装備
されていました。以上のように,FX-3は,NS-1000Mの定評ある中高域再生能力に,豊かな低音再生を組み合わせようと
して作り上げられたフロア型システムでした。FX-1には及びませんが,総重量62kgにも及ぶ大型のシステ
ムで,ヤマハ自身「グランドモニター」と称し,NS-1000M系に通じるモニター調のヤマハらしい明るさの上
に豊かさをもつ堂々たるスピーカーシステムでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
●FX-3の主な規格●
型式 | 3ウェイフロア型バスレフ方式 |
使用ユニット | ウーファ JA−3601・36cmコーン型
スコーカ JA−0802・8.8cmベリリウムドーム型 ツィーター JA−0526・3.3cmベリリウムドーム型 |
最大許容入力 | 100W |
定格入力(JIS連続) | 50W |
出力音圧レベル | 92dB/W・m |
最大音圧レベル | 112dB |
最低共振周波数
(Box共振周波数) |
24Hz |
再生周波数帯域 | 30Hz〜20,000Hz |
公称インピーダンス | 8Ω |
クロスオーバー周波数 | ウーファ−スコーカ:600Hz(12dB/oct)
スコーカ−ツィータ:6000Hz(12dB/oct) |
レベルコントロール | スコーカ:+2.5dB〜−∞
ツィータ:+1dB〜−∞ |
キャビネット | 材質:25mmの高密度パーティクルボード
内容積120リットル |
外装仕上げ | オーク化粧(側面・上面)
カバ化粧(バッフル面) |
外形寸法 | 588(W)×867(H)×442(D)mm |
重量 | 62kg |
※本ページに掲載したFX-3の写真,仕様表等は1980年3月の
YAMAHAのカタログより抜粋したもので,日本楽器製造株式
会社に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で
転載,引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意
ください。
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。