Ｌｏ-Ｄ ＨＳ-５０００
３ＷＡＹ ＳＰＥＡＫＥＲ ＳＹＳＴＥＭ ￥４００，０００（受注生産）
１９７９年にローディー（日立）が発売したスピーカーシステム。前年の１９７８年に発売した超弩級の平面
スピーカーシステムＨＳ-１００００（￥１，８００，０００）は完全平面バッフルを前提としたシステムで，壁に
埋め込む設計で，理想を追求するあまり現実的とは言えないシステムでした。そのＨＳ-１００００をより一
般的なシステムとして完成させたのがＨＳ-５０００でした。
ＨＳ-５０００の最大の特徴は，すべてのユニットが平面型ユニットで構成されていることでした。ＨＳ-５０００
に搭載された平面型ユニットは，ＨＳ-１００００で開発されたもので，それまでローディーが積み重ねてきた
スピーカー技術を集大成したともいえるものでした。
ウーファーは，２５cm口径で，メタル単板コーンに軽量な発泡樹脂を充填して平面を出したものでした。メタ
ル単板コーンは，１９７６年にＨＳ-５３０で世界で初めて搭載されたもので，世界で初めてオールアルミ素
材で作り上げた大口径ユニットでした。従来のペーパーコーンに比べ，２倍以上の音速を持ち，ピストン振
動領域を約２倍に拡大していました。このしっかりした基礎の上に，約７０倍の高発泡率の非常に軽い発
泡樹脂を充填して剛性を高めるとともに平面を出し，出力音圧周波数特性を平坦にしたものでした。
エッジには，ローディーが開発した「ギャザードエッジ」を採用していました。「ギャザードエッジ」は，通常使
用されていたロールエッジを改良して，独自のヒダ（ギャザー）を加えたＶ型のエッジで，構造的に，伸びと
縮みの応力が一定で，かつ円周方向にも伸び縮みが一定であるために振動板の機械的直線性が改善さ
れ，大振幅時のひずみ，エッジの共振によるひずみが低減され，ｆｏを低くとることができるというもので，
１９６８年発売の名器ＨＳ-５００で開発されたものでした。
磁気回路には，センターポールに銅のショートサーキットをはめ込んでインピーダンスの平坦化とひずみの
低減を図った「ローディーアクチュエーター」が搭載されていました。
ミッドレンジは，５cm口径の平面型ユニットで，ウーファーとは逆に，ドーム型のメタル振動板の外側に発泡
樹脂を充填して平面を出したものでした。エッジはウーファー同様「ギャザードエッジ」で，磁気回路には「ロ
ーディーアクチュエーター」が搭載されていました。
トゥイーターは，２ｃｍ口径の平面型ユニットで，ミッドレンジ同様にドーム型のメタル振動板の外側に八歩樹
脂を充填して平面を出したものでした。通常のドーム型よりも平坦な特性を誇っていました。
低域特性を向上させるために，ウーファーと同口径の２５ｃｍパッシブラジエーターを搭載し，２７０リットルと
ウーファーに対してかなり大きめの内容積をもつバスレフ型エンクロージャーを採用していました。エンクロー
ジャーは３０mm厚のパーチクルボード製で，あえて１５mm厚のパーチクルボードを２枚貼り合わせて３０mm
厚にした構造として，通常の３０mm厚のパーチクルボードよりも硬く剛性の高いものとしていました。
ＨＳ-５０００では，入力端子から各々のスピーカーユニットに入力信号を分割する従来のネットワークでは，
３ウェイ以上の場合，理論的に平坦な特性が得られないことから，入力信号を次々に２つずつに分割する
順次２分式分割回路に位相補正回路を併用したものを搭載し，理論的に特性を平坦なものにしていました。
このネットワークには，高品質な部品が贅沢に使用され，７０μ厚の銅皮膜をもったガラスエポキシ基板が
しようされていました。
また，このネットワーク理論では，各音源からの距離が等しい点において音圧が平坦になるため，音源を
同一円周上に配置し，その中心で特性が平坦になるように工夫されていました。
以上のように，ＨＳ-５０００は，ローディーが平面型振動板を搭載して通常家庭で使用できるスピーカーとし
て一つの理想を追求した意欲作で，ワイドレンジで歪み感の少ない再生能力を誇りました。ブランド故か，
それほどメジャーな１台とはなりませんでしたが，記憶に残る名機だったと思います。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
