JA-S20の写真
Victor JA-S20
STEREO AMPLIFIER ¥250,000

1975年にビクターが発売したプリメインアンプ。当時のビクターのプリメインアンプとし
て最上級機であるとともに,当時,国産プリメインアンプとしては驚異的 な120W/ch
(実測値では150Wを確保していたとも・・・)というハイパワーを実現した1台でした。

パワー部は,出力段に各チャンネル4個のパワートランジスターを配したパラレルプッシ
ュプル構成で,120W+120W(8Ω負荷20Hz〜20kHz両ch動作時)の出力を実現
していました。入力回路は,交流負荷インピーダンスを下げて安定した広帯域動作を行
うカスケード差動入力回路を採用して,直流域から数百kHzに及ぶ負帰還をかけて安定
した動作を確保していました。また,大出力のパワー部からの発熱は,筐体左右に配さ
れたヒートシンクにより効果的に放熱されるようになっていました。

イコライザー回路は,初段を差動アンプとし,終段には耐圧の高いNPNトランジスターを
使用したPNP-NPN混成3段直結回路としていました。中段と終段はダーリントン接続の
A級動作で,ノッチング歪みを排除していました。

PHONO入力端子とイコライザー基板を直結するなど,シールド線を極減した「ダイレクト
・カップリングコネクション方式」によって,高域劣化やノイズを抑え,電気的にも付属回路
をジャンプしてイコライザーの出力をパワーアンプに直接入れる「ダイレクト・カップリング」
となっていました。

電源部は,重量8.5kgの大型のトロイダルトランス22,000μF×2というフィルターコン
デンサーによって構成された強力なもので,大出力を支えていました。この大型のトロイダ
ルトランスは,10数kgものEI型に匹敵する容量と2倍に及ぶレギュレーション,10分の1
という低い漏磁電流を実現したもので,その高効率により高い瞬間的な電流供給能力を
確保するとともに,アンプ全体の小型化軽量化(それでも23kgありますが・・・)に寄与して
いました。
イコライザー回路の電源は,定電圧化された±75Vの高電圧型で,その結果,イコライザー
回路は40dBのゲインを保ちながら最大許容入力400mV(1kHz・RMS)を実現していまし
た。また,プリアンプ部は全段,定電圧±75Vの2電源方式で,A級動作となっていました。

電源トランスとフィルターコンデンサーJA-S20のボリューム

ボリュームは,連動誤差が少ない22点クリック付き4連315度広角度回転ボリュームが搭載
されていました。このボリュームは,左に回しきった3クリック分は10dBステップ,連動誤差が
0.5dBというアッテネーターになっており,それ以上は精密ボリュームとなっているという構造
で,微少音量時にもバランスが崩れず,通常音量時には連続的に音量調整ができるという,ア
ッテネーターとボリュームの長所を兼ね備えさせようとしたものでした。左に回しきった3ノッチの
抵抗体を精密にトリミング処理することで実現されていました。また,この精密4連ボリュームは
他の2chアンプを加えると4chのマスターボリュームとしても使うことができるようになっており,
ラウドネス・コントロールも4ch分装備されていました。

機能的に特徴的なところとして,ビクター自慢の7素子のSEA(Sound Effect Amplifier,グ
ラフィックイコライザー)回路が搭載されていました。通常の音質調整の他,録音回路にスイッチ
ひとつで挿入することもでき,録音出力の音質調整も可能でした。ピンクノイズ発生回路も内蔵
されていました。また,スイッチ一つで,信号経路から切り離せるようになっていました。
その他,カートリッジの負荷抵抗(3段階)と負荷容量(2段階)の切替スイッチ,トータルゲイン切
替(3段階)スイッチなども装備されていました。
PHONO入力は3系統,AUX入力は2系統,TAPE2系統,スピーカー出力3系統など,入出力も
豊富で,PHONO-2,3 AUX-1,2はレベルアジャストボリュームが背面に装備されていました。

JA-S20とJT-V20

以上のように,JA-S20は,当時のビクターのプリメインアンプとして,音質面,機能面とも欲張っ
たともいえる設計がなされた意欲作で,ハイパワーながら厚みのある落ち着いたきめ細かな音を
もったアンプで,使いこなしがいもある1台でした。


以下に,当時のカタログに一部をご紹介します。



超大型電源部に象徴される
透徹したハイクオリティ,
すべてにゆとりあふれる最高級機


◎実効出力240Wの,カスケード差動入力型全段
 直結パラレル・プッシュプルピュアコンOCL回路
◎8.5kg超重量級トロイダル巻電源トランスと,
 大型コンデンサー
◎ダイレクト・カップリングの高信頼設計
◎差動入力ダーリントンA級イコライザー回路
◎PHONO許容入力400mV
◎プリアンプは全段±2電源A級動作
◎4連マスター・トリミング・ボリューム
◎7素子SEA回路
◎最高級機にふさわしい多彩な機能




●JA-S20 規格●


●パワーアンプ部●

回路方式
全段直結ピュアコンプリメンタリーOCL
ミュージックパワー(IHF) 4Ω:570W(285W+285W)(THD0.1%)
8Ω1kHz:380W(190W+190W)(THD0.1%)
実効出力
両ch動作8Ω1kHz:272W(136W+136W)(THD0.1%)
片ch動作8Ω1kHz:324W(162W+162W)(THD0.1%)
20Hz〜20kHz両ch動作8Ω:240W(120W+120W)(THD0.1%)
高調波歪率
0.01%以下(実効出力時1kHz)
混変調歪率
0.1%(1W出力時)
パワーバンド・ウィズス
20Hz〜20,000Hz(両ch8Ω,120W,THD0.01%)
周波数特性
5Hz〜100,000Hz−3dB(1W出力時)
ダンピング・ファクター
30(8Ω,10Hz〜20kHz)
負荷インピーダンス
4〜16Ω
入力感度
1V



●プリアンプ部●

周波数特性
20〜50,000Hz±0.5dB
トーンコントロール
SEA中心周波数:40,150,400,1000,2400,6000,15000Hz
SEA可変範囲:±12dB
入力感度/インピーダンス
PHONO:2.5mV/47KΩ
AUX:250mV/50kΩ
TAPE PLAY:250mV/50kΩ
SN比(RMS)
PHONO:64dB
AUX:89dB
イコライザー特性(RIAA偏差)
±0.3dB
PHONO最大許容入力
1120mV・P-P/400・RMS(1kHz)
カートリッジ負荷抵抗切替え
33,47,100kΩ
カートリッジ負荷容量切替え
100,330PF(PHONO1)
フィルター
SUBSONIC:12dB/OCT 18Hz
HIGH:−12dB/OCT 9kHz
ミューティング
−20dB
ラウドネス(−30dBポイント)
50Hz +11dB
40kHz +4dB



●その他●

消費電力
330W
電源
AC100V 50/60Hz
寸法
480W×168H×430Dmm
重量
23.0kg
※本ページに掲載したJA-S20の写真,仕様表等は,1974年
 11月のVictorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株
 式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断
 で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意く
 ださい。
                                          
 

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