LS-CX7の写真
KENWOOD  LS-CX7
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥120,000(1本)

1992年に,ケンウッドが発売した2ウェイスピーカーシステム。小型ながら1本120,000円という>
価格が示すように,同社の高級ラインナップ「Lシリーズ」の中のスピーカーシステムとして発売され>
た「soleade(ソレアード=日だまり)」と名付けられた,コンパクトな高性能スピーカーでした。

音像定位を考えると,スピーカーはユニットが1つだけのフルレンジシステムが理想ですが,それに
準ずるものとして2ウェイシステム,しかもコンパクトなシステムが有利となります。LS-CX7はそうい>
った点を考え,あえて小型にまとめたスピーカーシステムで,ケンウッド自身,LS-CX7を「点音源に
よる音楽再生」と称し,ユニットの小型・高性能化,2つのユニットの近接配置,キャビネットの小型・
高剛性化などを追求した設計となっていました。

LS-CX7のキャビネットは,音質に悪影響を与える,外部(空気伝搬系振動),内部(個体伝搬系
振動)双方からの不要な共振をおさえるために,NFセラミックスを採用していました。
NFセラミックスは,NON FIRING CERAMICS(非焼成セラミックス)の名の通り,従来のセラミックス
製造のような焼成処理をすることなく,水を媒体とした化学結合によって形成される高機能・高性能
のセラミックス系の複合材料のことです。石灰,シリカなどを主成分とし,化学結合によって良質の
フィラー(骨材)を欠陥の極めて少ない結合材で包み込むように複合化しており,減衰機能,強度,
弾性率,剛性率及び耐薬品性においてすぐれた特性を持っていました。また,焼成処理を経ないた
め,適正価格で大型製品まで製作可能であり,製作時の低収縮,転写性,振動減衰性,加工性,
短納期等を併せ,セラミックスの用途を一段と拡大し,音響分野等への応用も可能となったという新
素材で,ある意味,キャビネット素材としてすぐれた特性を兼ね備えたものでした。このNFセラミック
スにより,直接放射音以外の放射音を大きく低減し,高SN比でピュアな再生を実現するためのキャ
ビネットが形成されていました。さらに,バスレフ型ゆえのダクトも,直接放射音への影響を避けるた
めにリアに設けられていました。

トゥイーターは,2.5cm口径のソフトドーム型を搭載していました。磁気回路には,希土類元素のネ
オジウムと鉄・ボロンを主成分としたネオジウムマグネットを採用していました。ネオジウムマグネット
は,最大エネルギー積において,フェライトの9倍程度を有する強力なもので,ユニットの最短配置に
好都合な小型化を実現することができていました。
磁気回路のギャップ部には,磁性流体(フェローフルイド)が充填されていました。NASAで開発され
たという磁性流体は,平均直径が100オングストロームという極めて小さな磁性微粒子(マグネタイト)
を含む液体で,液体でありながら,磁気回路中において完全に磁化し,重力や振動によって流出しな
いというものでした。充填された磁性流体の粘性によるダンピング効果でQ値が低下し,最低共振周
波数foのインピーダンスの平坦化,低域のダンピング,ひずみの低減が実現されていました。また,
磁性流体によるセンターリング効果はボイスコイルをギャップ部中央に安定させ,ダンピング効果との
相乗作用により,第2次,第3次高調波歪も低減されていました。

LS-CX7のユニット

ウーファーは,19cm口径のコーン型で,振動板には内部ロスと剛性のバランスのとれた強化ポリプ
ロピレンが採用されていました。振動板形状は,パラカーブコーンで形状的に共振を抑え,そのうえ振
動板裏面外周部にダンピング材がコーティングされており,徹底した共振対策により特性のフラット化
が図られていました。また,直径120mmの大型AFC(Advanced Feed Construction)ダンパの
採用により,大振幅のウーファーユニットにおける小型化と高い信頼性を実現していました。

ネットワークは,リッツパターンのプリント基板が採用され,ドイツ製のフィルムコンデンサー,極太の
OFC材コイルが使用されていました。スピーカー端子は,バナナ端子対応の金メッキ入力端子が搭載
されていました。
専用のスタンド(SR-CX7・別売,¥60,000・1本)は,本体と同一のNFセラミックスを上下の台座に
使用し,突き板仕上げの支柱とともにスピーカーからのエネルギーを受け止められる重量級(18kg)の
スタンドでした。ボルトで一体化して使用するとすぐれた音場感の再現性が実現され,LS-CX7のめざ
す「点音源」がより明確になるオプションでした。

以上のように,LS-CX7は,小型・高性能スピーカーを正攻法で追求した設計が光る1台で,サイズか
らは想像できないほど低音からしっかりとした安定感のある音が特徴でした。そして,ケンウッドブラン
ドのスピーカーでは最後の高級機となってしまいました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



点音源から現れるのは,
透明な情景の中の
ゆるぎない音像。


静けさのなかに
透明な音像が立ち上がる。
静寂の点音源,
小型2ウェイスピーカー。


◎音像が精確に広がる
 コンパクトな2ウェイスピーカーシステム。
◎ノンカラーレーション思想の現出。
 高剛性NFセラミックスキャビネットを採用。
◎フェライトマグネットの約9倍のエネルギー積。
 ネオジウムマグネットを採用のツィーター。
◎ユニットの指向性と広帯域化・低ひずみ化を
 実現。ツィーターに磁性流体(フェローフルイド)
 を採用。
◎ユニットの指向性の確保と振動板の固有共振の
 抑制を実現。ウーファーに徹底した共振対策を
 実施。
◎リアルな音像,忠実な音場を再現するための>
 点音源思想によるツィーターとウーファーの
 最短配置。

●リッツパターンのプリント基板
●独製フィルムコンデンサー
●極太OFC材コイル
●ラウンドバッフル
●エアロ背面ダクト
●ボイスコイル直結チャンデバ
●バナナ端子対応金メッキ入力端子
●AV対応防磁設計(EIAJ)





●LS-CX7 SPCIFICATIONS●

型式
19cm2ウェイスピーカーシステム(防磁型・EIAJ)
エンクロージャー
型式:バスレフ方式ブックシェルフタイプ
材質:NFセラミックス,パーティクルボード
仕上:ウレタン樹脂塗装,ツキ板仕上(サイド部)
使用スピーカー
19cmP・Pコーン型ウーファー
2.5cmソフトドーム型ツィーター
定格インピーダンス
6Ω
最大入力
100W
定格入力
50W
出力音圧レベル
86dB/W/m
再生周波数帯域
45Hz〜50,000Hz
クロスオーバー周波数
1,600Hz
最大外形寸法
250W×394H×336Dmm
重量
21kg

※ 本ページに掲載したLS-CX7の写真・仕様表等は1992年11月
 のKENWOODのカタログより抜粋したものでケンウッド株式会社
 に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,
 引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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