S-07の写真
PIONEER  S-07
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥260,000(2台1組)

1995年に,パイオニアが発売したスピーカーシステム。1987年のS-55TWIN以来バー チカル
ツイン方式のトールボーイ型システムを展開してきたパイオニアも,次第に比較的大型のシステム
から,ヨーロッパ的な小型システムへとシフトしていったのがこの時代でした。そして,小型のメリッ
トをフルに生かしてすぐれた音像・音場再現性を実現しようとしたのが,このS-07でした。

S-07の最大の特徴は,自然で3次元的な音像再現を実現するために,波面コントロール技術と
ネットワークレス・テクノロジーを組み合わせた「ナチュラルフェイズ・システム」として作り上げてい
ることでした。そのために,(1)ウーファーとトゥイーターの音源を一致させ,きわめて理論的な位
相合わせを行った新形状のエンクロージャー,(2)波面回析を防ぎ,スピーカーユニットの性能を
十分に引き出す効果的なバッフル形状,(3)ネットワークレス・テクノロジーによる電気的な位相特
性のスムーズ化,の3点を技術的なポイントとしていました。

ウーファーとトゥイーターの音源の一致,位相合わせや,波面回析を防ぐために,S-07では,写
真のように,独特のエンクロージャー,バッフル形状を採用していました。バッフル板は,楽器にも
使われているマホガニーの一枚板から削り出された厚さ67mmのもので,響きの美しさも実現して
いました。また,側板の突き板や別売の専用ベースにもマホガニーが用いられていました。
無垢のマホガニー削り出しによる美しいバッフル板は,パイオニアが波面コントロール技術を生か
して作り上げられた形状に仕上げられていました。音の回析現象を抑えるために,まずバッフル面
をウーファー,トゥイーターの大きさに対し,最小限の面積で設計し,独特なテーパー(傾斜)処理を
施すことで波面をコントロールしていました。さらに,ウーファーとトゥイーターの位置を適切な位置
に配置するための滑らかな階段形状がとられ,ナチュラルフェイズ・システムの効果を引き出し,自
然な音場の拡がり感が実現されていました。

ネットワークレス・テクノロジーは,ネットワーク素子を使用せずに,スピーカーユニットをドライブさせ
るもので,ウーファーは,入力端子からのダイレクト結線でドライブされるようになっていました。さら
に,トゥイーターも低域の振幅を制限するコンデンサーのみを使用し,S-07は,2ウェイシステムな
がら,ネットワークレスを実現していました。
また,プロフェッショナルスタジオモニターとして高い評価を得ているTADの技術を駆使したCGR
(Capacitive Gap Reduction)システムを導入し,信号電流近辺に発生する不要な静電的な電
荷を低減し,クリーンな信号による高音質化が図られていました。
入力端子は,バイワイヤリング接続対応のバナナプラグ専用のスピーカー入力端子を裏板にダイ
レクトに設置し,振動の影響を低減していました。端子は金メッキ加工が施され,抵抗の低減とクリ
ーンな給電を可能にしていました。

ウーファーは,16cm口径のコーン型で,高剛性と内部損失を両立した高品位な振動板を採用し,
エッジ形状,サスペンション系すべてに関して吟味されたもので,微小入力からの追従性を強化し
ていました。また,シンプルな2ウェイスピーカーでは初めて,パイオニア自慢のフルミッドシップ・
マウントを採用し,コーンの駆動による磁気回路の揺れを防止し,入力信号に対する正確な反応
とバッフルへの不要振動の低減を実現していました。さらに,ウーファーのフレームには,アルミの
2.6倍の比重を持つ亜鉛ダイキャストが採用され,高剛性により振動系をしっかりと確保する制振
効果が高められていました。

トゥイーターには,新世代のセラミックグラファイト(炭素原子を2次元的に配列させた結晶構造を持
つグラファイトをバインダーやベース材をいっさい用いずに成形しセラミック化した素材)を使用した
3.5cm口径のセミドーム型ユニットが搭載されていました。このユニットは,新開発のHSDOM
(Harmonized Synthetic Diaphragm Optimum Method)と称され,振動板の素材,形状,エッ
ジなど,コンピュータによる有限要素法を用い,それぞれの機能・性能が最大限に発揮できるように
設計されたもので,ピストンモーションと分割振動をバランスよく組み合わせ,50kHzという超高音
域までのフラットな高感度な特性を実現していました。また,トゥイーターのフランジにも,ウーファー
同様に高剛性の亜鉛ダイキャストが採用され,制振効果が高められていました。

S-07+専用スタンド

エンクロージャーは、専用ベースと一体型になった設計で,本体とベースの間にフェルトパッキンを使
用したフローティング構造として,設置条件による音質の変化を抑えるようになっていました。また,別
売で専用スタンドCP-07(2台1組・¥80,000)が用意されていました。このCP-07は,音質の調和
を考えたトータルな設計・デザインが採用されていました。また,このスタンドは,スタンドそのものの位
置を変えずに18°内振りにできるようにもなっていました。

以上のように,S-07はしっかりした美しいエンクロージャーにすぐれたユニットを搭載した,コンパクト
ながら洗練されたスピーカーシステムでした。音場感の再現性を高めようとした設計により,自然で
すっきりとした音を聴かせてくれる,音楽をリラックスして楽しめる1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



時間軸によるフェイズ・コントロール
理論から誕生。
立体感豊かに展開される3次元の
音像が広く,深く,魅了する。


◎広大な3次元音像の定位感を生む,
 ナチュラルフェイズ・システム。
◎より自然で,量感豊かな明確な音像再現。
 67mm厚のマホガニー単板によるバッフル板。
◎独自な形状のバッフルデザインを採用。
 中高音の乱れを防ぎ,自然な音場を再現。
◎高品位なユニットがはじめて可能にする
 ネットワークレス・テクノロジー採用。
◎磁気回路を固定し,入力信号を忠実に再現。
 フルミッドシップ・マウント採用。
◎空気感まで伝える50kHzワイドレンジ再生。
 新開発セミドーム・トゥイーター搭載。
◎高い剛性により,確実に振動系を支える
 亜鉛ダイキャストフレームとフランジ。
◎設置面など,外部からの影響を受けない。
 可変可能なフローティングベース一体型。
◎細部にいたるまで強度を徹底追求した
 バナナプラグ付属,新構造入力ターミナル。




●S-07の仕様●

型式
位相反転式ブックシェルフ型
スピーカー
ウーファー:16cmコーン型
トゥイーター:3.5cm HSDOM
インピーダンス
6Ω
再生周波数帯域
40Hz〜50,000Hz
出力音圧レベル
88dB/W(1m)
最大入力
100W(EIAJ)
クロスオーバー周波数
4,500Hz
外形寸法
240W×468H×340Dmm
重量
13.2kg

※ 本ページに掲載したS-07の写真・仕様表等は1995年6月
 のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断
 で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,
  ご注意ください。

★メニューにもどる        
 

★スピーカーのページ5にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp