Technics
SB-E500
4WAY LINEAR PHASE SPEAKER SYSTEM
¥350,000
1978年にテクニクスが発売したフロア型スピーカーシステム。1975年に
SB-7000で「リニアフェ
イズ」
を提唱したテクニクスは,1977年には,ホーン型ユニットを搭載した超弩級のリニアフェイズシステムとし
て
SB-10000,
SB-9500と意欲作を発
表していきました。そんなテクニクスがその翌年に展開していっ
たホーン型ユニット搭載のリニアフェイズシステムが「SB-Eシリーズ」で,そのトップモデルがSB-E500
でした。
SB-E500は,テクニクス自慢の「リニアフェイズシステム」で,ウーファーとミッドバスのエンクロージャーに
ホーン型のミッドハイ,トゥイーターが階段状に載っているという形になっており,SB-10000には貫禄負
けするものの,共通する雰囲気を持った堂々たるフロア型システムとなっていました。
トゥイーターには,ホーンののどもとから150°という広開口角で開くテーパードフレアラジアルホーンが採用
されていました。振動板とのギャップに高い精度が要求されるイコライザには,球面波をスムーズに円筒波
に変えるシェル型イコライザが採用され,可聴域を超える高域まですぐれた特性を実現していました。
ドライバー部は,25mm口径のアルミドームをボロン化合物でコーティングしたアルミボライドダイアフラムを
採用し,高域再生限界を23kHzにまで伸ばしていました。
ミッドハイユニットには,トゥイーターと同様に,のどもとから150°という広開口角で開くテーパードフレアラジ
アルホーンが採用され,すぐれた指向性を実現していました。また,高精度5重スリットのイコライザとホーン
部との間にカットオフ周波数の異なるスロート部を設けたカスケードタイプ(ホーンロードの広がり係数が途中
で変わるような形)となっており,エネルギー特性の平坦化が図られていました。
ドライバー部は,口径60mm,30μm厚のチタンダイアフラムを,磁束密度19,000ガウスの強力な磁気回
路でドライブするもので,高能率(101dB/W/m)と低歪みを両立させていました。ボイスコイルは,CCAW
(銅被覆アルミ線)が使用され,高耐熱設計となっていました。
ミッドローユニットには,25cm口径のコーン型ユニットが搭載されていました。シンプルな組成の軽量コーン
の採用とエッジワイズボイスコイルにより,97dB/W/mという高能率を実現し,カーブドコーンの形状をとる
ことにより再生高域限界を伸長し,ミッドハイとのスムーズなつながりを実現していました。
ウーファーには,大口径38cmのコーン型ユニットが搭載されていました。針葉樹パルプを主成分とした高剛
性ストレートコーンを採用し,ピストンモーション領域が広くとられていました。また,75mmの大口径ボイスコイ
ルに高硬度ゴムリングを取り付けてボイスコイル自体の共振を制動するとともに,コーン紙との接合部も補強
され,この結果高域に発生しやすいピークが抑制され,大入力時の歪みも低減されていました。
ミッドバスとウーファーが収められたエンクロージャーは,170リットルの大容量のもので,高密度パーティク
ルボードによる堅固な構造となっていました。エンクロージャー中央部を一枚板で側板,バッフル板,裏板の
それぞれを結合し,各所の振動モードが最小になるような充分な補強が施されていました。仕上げはローズ
ウッド,オイルフィニッシュの美しいもので,フロント部分は,天板の曲線と合わせてサランネットが曲面となった
デザインで,上部のホーン部とマッチングがとられた重厚なフォルムとなっていました。
以上のように,SB-E500は,ホーン型ユニットから想像される音とはイメージが異なり,耳障りな歪み感の少
ない,ワイドレンジで自然な音を持った実力機でした。その再生音は,ある意味スピーカーの分野でのテクニク
スらしい個性と高い実力を示していたと思います。