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SONY ST-A7B
FM STEREO/FM-AM TUNER ¥158,000ソニーが1976年に発売した,高級チューナー。ソニーのバリコン式チューナーとしては最後の高級機でした。ガンブラックの
筐体は今から見ると驚くほど大きく,14.5kgもある重量級チューナーでした。これ以降ソニーは高級チューナーを中心に薄
型のシンセサイザー式チューナーに中心を移していきました。ST-A7Bの最大の特徴は,「クリスタルロック・システム」にありました。バリコン式のチューナーで最も問題となったのが,
チューナー内部の温度変化などで,微妙に同調がずれていくことでした。従来多くのバリコン式チューナーでは,検波出力
の直流成分をもとに局発のLCの容量をコントロールするなどして局発のずれを抑えるなどの手法が主流でした。「クリスタル
ロック」では,クリスタルの名の通り,高精度の発振が得られる水晶発振子の発振をもとに,0.1MHzおきに周波数をロック
するもので,非常に高い精度で周波数がロックされることが特徴でした。また,周波数のデジタル表示され,シグナルメーター
との間にあるLOCKEDインジケーターが点灯し,正確に周波数をロックしたことを表示してくれました。RF増幅部は,低雑音デュアルゲートMOS FETを採用し,デュアルFETによるバランスドミキサー,高精度5連バリコンによ
る強電界にも強いフロントエンドを構成していました。
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IF増幅部は,NORMAL,NARROWの2段切換になっていました。NORMALポジションでは,2素子が1パックになってお
り,サーモバランスがよく,群遅延特性に優れたユニフェイズフィルターにより,高選択度と低ひずみ率の両立を実現していま
した。NARROWモードにするとさらにユニフェイズフィルターの段数が増え,より高い選択度を得るようになっていました。
また,微細な混信妨害やステレオ受信時のノイズなどを防止する,ビートカットフィルターも装備していました。MPX回路は,MPX復調用スイッチング信号とパイロット信号を位相比較して常に同位相になるように制御するPLL・ICを採
用し,温度や湿度,経年変化にも強く,安定して低ひずみ,高セパレーションを発揮していました。ST-A7Bでは,チャンネル
セパレーションは,当時のチューナーでは非常に高いレベルの55dB(NORMAL時)に達していました。以上のように,ST-A7Bはバリコンチューナーとして高いレベルの性能を実現し,ロングスケールのダイヤル指針と周波数の
デジタル表示を持つガンブラックの精悍な筐体を持つ当時のソニーの最高級チューナーでした。その中身は,さすがにラジオ
や通信機分野での技術を誇るソニーを感じさせるものだったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
同調ズレ”ゼロ”を狙った
クリスタルロック・システムをはじめ,
ソニーチューナー技術が
集大成しています。同調回路にクリスタルロックシステムを採用。すばり,
放送局の送信周波数とチューナーの受信周波数の一致
を狙いました。まさに同調ズレ「ゼロ」。これは優れた諸
特性の前提となるものです。放送局に吸い込まれるような
チューニング,周波数デジタル表示,光るLED指針。
見て楽しみ,操作して楽しむ。もちろん,音質もFMをオー
ディオ・ソースとして再認識させずにおかないでしょう。
FM実用感度(IHF) | 1.5μV(IHF),8.8dBf(新IHF) |
SN比 | 80dB(モノ),75dB(ステレオ) |
キャプチュアレシオ | 0.8dB(NORMAL),1.8dB(NARROW) |
選択度(IHF) | 50dB(NORMAL),測定不能(NARROW) |
イメージ妨害比 | 110dB |
IF妨害比 | 110dB |
スプリアス妨害比 | 120dB |
ひずみ率 | NORMAL(100Hz,1kHz)モノ0.04%,ステレオ0.08%
NARROW(100Hz,1kHz)モノ0.2%,ステレオ0.3% |
ステレオセパレーション(1kHz) | 55dB(NORMAL),45dB(NARROW) |
AM感度(バーアンテナ使用時) | 250μVm |
AM,SN比 | 50dB |
大きさ | 430W×170H×435Dmm |
重さ | 14.5kg |
消費電力 | 43W |
※本ページに掲載したST-A7Bの写真,仕様表等は1978年10月のSONY
のカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。したが
って,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていま
すのでご注意ください。
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