ONKYO IntegraT-419
スーパーサーボ・トリプルクォーツFMステレオチューナー ¥150,000
オンキョーが1979年に発売した高級チューナー。オンキョーのチューナー史上でも恐らく最高級機ではなかったかと
思います。見た目は半値もしない弟機T−417(¥65,000)とほとんど同じで、これといった特徴もなく、特に高級感
があるわけでもありませんが、中身は当時のオンキョーのチューナー技術を結集したまさに高級チューナーでした。フロントエンドは、入力段トリプル同調の高精度7連バリコンを搭載し、RFアンプ及びバランス型ミキサーに、リニアリティ
の高いMOS・FETを採用していました。さらに、入力トリプル同調のまま、WIDE(高感度)とNARROW(高選択度)の
帯域幅2段切換可能なIF部を開発し搭載していました。このIF部は、入力段にD-MOS・FETを使用すると共に、きわめ
てフラットな群遅延特性を持つ最新型リニアフェーズフィルターと、段間ハイスルーレイト・ダブルベース差動IIC×8個で
構成されていました。帯域幅は、S/N検出回路によって自動的にWIDE(4素子フィルタ)とNARROW(+8素子)に
切り換わり、電波事情に応じた最適な受信ができるようになっていました。FM搬送波をオーディオ信号に復調する検波器には、新開発のセラソイド検波器を開発し搭載していました。このセラソ
イド検波器は、IFから出力された10.7MHzのFM波をミキサーで1.68MHzに下げた後、リミッターで方形波に整形し
この高精度な方形波によって直接コントロールされるノコギリ波の粗密を検波し、周波数と完全に反比例の電圧を持つ
オーディオ復調信号を取り出すというものでした。(原理は難しい・・・。)微分利得特性での帯域幅は±1MHz以上に
も及び、ワイドレンジと低歪率を誇るものでした。MPX部には、水晶発振器を備えたクォーツPLL・MPXデコーダーを搭載していました。19kHz±2Hz以内という安定
した比較周波数を水晶発振器から得ることにより、19kHzパイロット信号との位相差に起因する特性劣化を低減し、コ
ンポジット信号に含まれるパイロット信号から純粋な38kHzスイッチング信号を取り出すことができました。さらに、コン
ポジット信号をL/Rに分離するスイッチング素子としてきわめて高速なD・MOS FETを採用していました。また、サイ
ンウェーブによるパイロットキャンセラーを入力段に装備し、パイロット信号のオ−ディオ信号への混入を防止していまし
た。
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検波器以降のオーディオ部全回路を、オンキョー自慢のサーボオペレーショナルDCアンプで構成したスーパーサーボ方
式を採用していました。サーボオペレーショナルアンプには、低雑音オペアンプICを厳選して使用し、低域2Hzまでの広
い周波数特性と低域のクリアネスを実現していました。以上のように、オンキョーは、さほど目立ってはいませんが、優れ
た性能のアナログチューナーを作っていました。そしてT−419は、デザイン的には平凡でも中身の優れた名機でした。
カタログコピーの「中味の凄さが音に出ます。」を地でいくチューナーだったと思います。
以下に、当時のカタログの一部をご紹介します。
FMのインテグラ時代を拓く
高品位チューナー。
中味の凄さが音に出ます。
◎RF帯域幅切換、入力トリプルチューンの
フロントエンド |
◎帯域幅2段自動切換、
歪率0.04%を達成したIF部 |
◎新開発セラソイド検波(特許出願中)を搭載 |
◎高速スイッチングを含む
クォーツPLL・MPXデコーダー |
◎オーディオ部は、DCを超えた
スーパーサーボ方式 |
◎完璧同調を求めたクォーツロック方式 |
◎周波数表示は、見やすい
クォーツ・デジタルリードアウト |
◎快適なタッチセンサーチューニング |
◎磁性歪のない中高域
DCアクティブ・ローパスフィルター |
◎ブスアースライン採用
IF・MPX独立の強力電源部 |
◎入力レベル検出型・オートマチック・
ノイズリダクション |
◎2段切換FMミューティング |
◎A.・B2系統切換の
F型コネクターアンテナ端子 |
◎100dBfまでのリニアタイプの
シグナルメーター |
◎マルチパスメーター切換の
デビエーションメーター |
◎440Hz・50%変調の
エアチェック・キャリブレーター |
◎レベル可変出力端子に加えて
録音用固定出力端子付き |
●T-419の定格●
受信周波数範囲 | 76MHz〜90MHz |
アンテナインピーダンス | 75Ω |
実用感度 (75Ω/IHF)
|
0.95μV/ 10.8dBf(RF WIDE)
1.75μV/16.1dBf(RF NARROW) |
SN比50dB感度 (75Ω/IHF) | 1.7μV/15.8dBf |
ひずみ率
|
WIDE 400Hz 0.04%(STEREO)
50Hz〜10kHz 0.05%(MONO) 0.1%(STEREO) NARROW 400Hz 0.15%(STEREO)
|
SN比
(100%変調1mV入力) |
90dB(MONO) 86dB(STEREO) |
キャプチャーレシオ | 1.0dB(WIDE) 1.5dB(NARROW) |
2信号選択度(±400kHz離調) | IF WIDE 60dB
IF NARROW 90dB |
ステレオセパレーション
|
WIDE 1kHz 58dB
100Hz〜10kHz 50dB NARROW 1kHz 48dB 100Hz〜10kHz 40dB |
周波数特性 | 2Hz〜15,000Hz +0.2dB −0.8dB |
相互変調妨害比(±1MHz/±2.5MHz) | 90dB/105dB(RF WIDE)
110dB/115dB(RF NARROW) |
イメージ妨害比(83MHz) | 120dB(RF WIDE) 120dB(RF NARROW) |
IF妨害比 (83MHz) | 125dB(RF WIDE) 125dB(RF NARROW) |
スプリアス妨害比 | 125dB(RF WIDE) 125dB(RF NARROW) |
AM抑圧比 | 65dB(IF WIDE) 55dB(IF NARROW) |
キャリアリーク | −70dB |
出力電圧/出力インピーダンス | 固定出力(録音出力) 450mV/6kΩ
可変出力 0〜1200mV/最大時80Ω |
定格消費電力(電気用品取締法に基づく表示) | 36W |
寸法 | 435(W)×108(H)×384(D)mm |
重量 | 9kg |
※本ページに掲載したT-419の写真,仕様表等は1980年1月のONKYOのカタログより
抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
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