Ｖｉｃｔｏｒ Ｚｅｒｏ-７
４ＷＡＹ ＳＰＥＡＫＥＲ ＳＹＳＴＥＭ ￥１２０，０００
１９８０年にビクターが発売した４ウェイスピーカーシステム。ビクターの中では珍しい平面型ユ
ニット搭載の
システムで，人気モデルＺｅｒｏ-５の上級機として発売されました。
Ｚｅｒｏ-７の最大の特徴は，上記したようにビクターでも唯一といえる平面型スピーカーユニットを搭載してい
たことでした。ウーファー，スコーカー，トゥイーターの３つのユニットを平面型で構成し，その上にビクター自
慢のリボン型ユニット「ダイナフラット・リボントゥイーター」をスーパートゥイーターとして搭載して４ウェイシス
テムを構成していました。Ｚｅｒｏシリーズでビクターが標榜したＷ＆Ｄ（ワイド＆ダイナミック）再生の名の通り
広い周波数帯域とダイナミックレンジを実現していました。
ウーファーは，３２ｃｍ口径で，コーン形ユニットに発泡レジンを充填して平面を出したタイプの平面型ユニット
を搭載していました。紙の１／２０の比重という軽量で適度な内部損失を持つ発泡レジンを充填して平面型
ダイヤフラムとして機能させていました。コーンの凹みの中の空気と前面の空気が干渉を起こす形状効果を
防止するとともに全体の剛性を高めることで分割振動を抑え，平坦な周波数レスポンスを実現していました。
この結果，８００Ｈｚ付近までフラットな特性を実現したウーファーとなっていました。Ｚｅｒｏ-７では，５００Ｈｚで
ゆとりをもってクロスオーバーさせていました。
スコーカーは１２ｃｍ口径で，５００Ｈｚ〜２．４ｋＨｚを受け持ち，トゥイーターは４ｃｍ口径で２．４ｋＨｚ〜８ｋＨｚを
受け持つ設定になっていました。スコーカー，トゥイーターともウーファー同様に発泡レジン使用の平面型ユニッ
トで平坦な周波数レスポンスを実現していました。また，位相特性のすぐれた平面型ユニットの特性を生かし，
すぐれた指向特性も実現し，３０度方向も６０度方向も軸上とほとんど変わらないフラットに近い周波数レスポン
スを実現していました。
８kHz以上を受け持つスーパートゥイーターには，Ｚｅｒｏ-５で新開発搭載された「ダイナフラット・リボントゥイーター」
をより性能アップしたものが搭載されていました。Ｚｅｒｏ-７に搭載されたダイナフラット・リボントゥイーター」は，プリ
ントボイスコイルの平板リボン・ダイヤフラムで，従来タイプのトゥイーターに比べて非常に軽量で，ボイスコイルが
直接空気をドライブするため非常に優れた過渡特性を誇りました。ベースフィルムには，４３０℃の高熱に耐えるポ
リイミド系樹脂を使用し，高エネルギーのサマリウム・コバルトマグネットのプッシュプル磁気回路でドライブされ，
Ｚｅｒｏ-５のものより，さらに軽量化されたダイアフラムとあいまって，１００ｋＨｚにおよぶ高域特性と１５０Ｗの高耐
入力を実現していました。可聴帯域において余裕あるピストニックモーション性能を持ち，イコライザーつき前面ホ
ーンによってワイドな指向性を確保していました。
ネットワークは，配線材やコイル，基板プリントをすべて無酸素銅で構成して伝送損失を抑える設計となっていま
した。レベルコントロールは，マッチングロスのない定インピーダンスＬ型アッテネーターを装備し，銅接点のステ
ップ型として，音質劣化の原因となる異種金属を信号経路から極力排除し，オール銅としていました。コンデン
サーも高品質のものを採用し，コイルはエポキシ樹脂で封止して不要振動を抑えていました。
エンクロージャーは，バスレフ型で，定在波を抑えた寸法比を採用し，ユニット取付位置も，各ユニットのフラット
な周波数特性を生かすためにミリ単位で位置調整が行われていました。キャビネットの仕上げは柾目調ローズ
ウッドの天然木仕上げ，オイルフィニッシュの美しいものでした。オイルフィニッシュ用のワックスも添付されてい
ました。
以上のように，Ｚｅｒｏ-７は，当時のＺｅｒｏシリーズの最上級機として，平面型ユニットを搭載し，その特性を生か
す注意深く高品質な設計がなされた１台でした。特性の良さを感じさせつつビクターらしい音を持った実力機で
した。ここでの４ウェイの設計は，後のＺＥＲＯ１０００につながっていきました。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
