ED1、その後… あの後、加奈と何度か手紙のやりとりをしたが、直接会うことは無かった。 せっかく決断したんだ。里心を付けさせてはいけないし、加奈もそう思っている。 やがて、手紙のやりとりも次第に少なくなり、半年前の手紙を最後に途絶た。 あの日から数年。 就職も決まり、卒業を前にして、俺は重大な決断をした。 加奈を迎えに行こう。 (ここでさらに分岐。本編の中で、勇太にしっかりとどめを刺しておかないと、 ED7:「巣立った小鳥は戻らない」になる) 腫れあがり、バンソーコーを貼ったままの顔で、加奈の勤める書店を訪れる。 まだ開店前だ。手鏡で自分の顔を見る。ひどく腫れているな。 こんなひどい顔で、加奈と再会することになるとは…。 書店で在庫のチェックをしていた加奈は、アポ無しで現れた俺を見て、数秒間 時間が止まったように静止した。目の前の光景が信じられないといった表情で。 「お兄ちゃん!」 加奈は俺の胸に飛び込んできた。 「加奈、戻ってこないか?、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 、、、結婚しよう」 突然のプロポーズに驚いていた加奈だが、やがで涙交じりに微笑んで 「……(こくん)」 と答えた。 家に帰ると、お袋が飛び出して加奈を迎えた。 親父は、お袋の後から、顔を合わせづらそうにやって来て、加奈に一言 「お帰り」と言った。何故、顔を合わせづらかったのか?それは、親父も 俺と同じく、顔を腫らしていたからだ。 加奈を迎えに行く。妹ではなく、一生の伴侶として。 その事を話した時、当然、親父と怒鳴りあいになった。ほどなく殴り合いに 発展し、せっかくの再会を、二人とも、ひどく腫れた顔で果たすことになった。 後で知った話だが、親父は、俺達の関係を既に知っていた。 さんざん一人で悩んだ挙句、二人がそれを望むなら認めよう、と、既に 結論を出していたらしい。 だが、父親という立場上、手放しで認めるわけにはいかない。 息子と殴り合って、その気持ちが真剣であることを知り、やむをえず認めた、 、、、という形に演出していたようだ。 式場には、多くの人達が来てくれた。 俺と加奈をよく知っている人は、やはりこうなったか、と、苦笑しつつ、 俺達を祝福してくれた。 小学校時代からの腐れ縁の元四天王の面々、加奈がお世話になった鹿島先生、 いまだ独身の美樹さん、叔父と一緒にいるのは、奇跡的に病気の治った香奈ちゃん。 見知らぬ女性が大勢いる。加奈が高校で作った友達だろう。 あの加奈にあれだけの友達ができたことが、少し嬉しかった。 あちらの老夫婦は、加奈の書店の経営者だろうか。 「やれやれ、せっかく店の跡取りができたと思っておったのに。」 「仕方がないですよ。さあさあ、私達の孫娘を見送ってあげましょう。」 伊藤勇太は来なかった。 夕美が来ていた。会うのはあの日以来だ。 思えば、夕美が鹿島先生を説得してくれたおかげで、加奈の手術ができたんだ。 夕美はいわば恩人だ。 あんなにひどい形で10年来の初恋を踏みにじられたというのに。 俺は夕美の顔を直視できなかった。 「おめでとう。やっぱりあなた達の間には、誰も入り込めなかったんだね」 そう言って微笑みながら、夕美はどこか寂しげだった。 ウエディングドレスに身を包んだ加奈は、今まででいちばん輝いて見えた。 その頬を涙が伝う。 「ごめん・・・なさい・・・こんな時に・・・ でも・・・嬉しくて・・・すごく嬉しくて・・・。」 そして、世にも珍しい、新郎の父親兼新婦の父親となった親父は、祝辞を しどろもどろに読み上げた。その姿は、今まででいちばん立派に見えた。 結局、兄妹として過ごしていた頃と同じような生活に戻った。 でも、もう誰にも隠れなくていいんだ。 時々、親父に怒られるけれど。 「こら、所構わずいちゃいちゃするな!せめて私が見ていない場所にしろ! あと、加奈。隆道はお前の、、その、、夫なんだぞ。 いつまでも『お兄ちゃん』なんて呼ばずにだな、その、、、」 まあ、こんな生活が続いているというわけだ。 願わくば、いつまでもこの幸せが続きますように。 (ED8:「比翼の鳥のように」) 予告 加奈の胎内に、新しい命が宿る。隆道と加奈の愛の結晶が。 「あ、また動いた。ねえお兄ちゃん、女の子だったら、、、 、、、『須摩子』って名前を付けていい?」 須摩子とは、俺達の叔母にあたる人の名前だ。 加奈は叔母と仲が良かったからな。そう付けたくなるのもわかる。 やがて出産。生まれたのは、女の子だった。 加奈の希望通り、須摩子と名付けられた。 しかし、、、。 須摩子は生まれながらにして、過酷な運命を定められていた。 母である加奈のかつての病状が、遺伝してしまったのだ。 医師は厳格な声で言い放つ。 「あなたがたの娘さんは、お気の毒ですが、小学校を卒業できないでしょう」 「あの子は…須摩子は、生まれるべきでなかったのかもしれない」 「そんなこと…ない、あの子だって…一生懸命…生きて…」 『須摩子〜加奈2〜』 来春発売予定!(うそです。気にしないで)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−