まさに物欲をそそる風貌である。メカメカしたダイアルとか、沈胴とか、なかなかに
魅惑的で、一気に欲しい病が発病した。しかし、今でこそ安くはなっているが、当時
はまだまだ数万円以上の相場であったから、気軽にエイッ!とはならなかった。それ
でも格安品を探し出して無事ゲット。ゾナーの怪しいコーティングの光に吸い込まれ
そうになる。このカメラは実にコンパクトではあるが、一点吊りのため、ゴロゴロと
して、携帯性はさほど良くはない。しかし、独特の操作感やズシリとした金属感など
これに勝るカメラはないであろう。ピントは目測。フィルム巻き上げは左手。二つの
大きなダイアルを操作して露出を決定する。昔このカメラを持って早朝の香港の裏通
りを撮影して歩いた事がある。なかなかにスリルに満ちた時ではあった。最近はフィ
ルムを通す機会もめっきりと減ったが、このレンズを引出す時の感覚は、エルマーな
どとはまた違った感触で味わい深いものがある。これはシンガポールで作られたもの
であるが、近頃少し、ドイツ製のテッサー付きが気になり始めている。そう言えば以
前同じローライのXF35があったはずだが、あのカメラは一体どこへ行ってしまった
のだろうか。リストラした記憶もないのではあるが、そのうちどこかから出て来るの
かも知れない。酷使に耐えかねて黒色塗料が剥げ始めているのも趣のあるものである