これぞライカ
ライカである。これぞライカなのである。II型にはなかったスローシャッター
を組み込んだのはライカのコンプレックスの現れではあるが、それ以上にネッ
クストラップ用の吊り輪が付いたところにこの型の美点がある。これは当時主
流であったブラックペイントであるが、ファインダー窓は所謂「片流れ」とい
うタイプである。ライカはそのシリアルで製造年がわかると言うが、これは手
元の資料によると1935年に作られたものらしい。今年で71才といったところ
か。製造された台数は76,000台とされ、その内このブラックペイントが27,0
00台らしい。例えばニコンF4の製造台数が36万台と言われているが、世界中
でたった27,000しか作られなかった個体の1つがここにあると言うのも不思議
なことではある。黒のエナメルペイントにニッケル鍍金の部材が美しい。巻き
上げやシャッター等の動作は実に滑らかで気持ちが良い。シャッター音も言い
尽くされているがボタンを押した瞬間に「コトッ」と鳴るのが心地よい。もう
一点DIII型が先のDII型と違う点は距離計アイピースが1.5倍の望遠タイプとな
り測距が極めてやりやすいことにある。装着されたレンズはニッケルエルマー
でコーティングが無い分逆光等の条件ではハンディーがあるが通常のシーンで
は現代のハイテクレンズに何ら引けをとるものではない。休日これを首から下
げてのんびりと撮影をしてあるくのは身体にも心にも具合が良いものである。