ホルガというカメラ
またまたロシアの陳腐なカメラである。そもそも筆者が初めて手にしたカメラは
「スタート35」と言うカメラであった。ベークライトかプラスチックかは忘れた
けれど、これにボルタ版フィルムを装着して撮りまわったのが、中学に入る前で
はなかったか。二重写しや長時間露出など、ありとあらゆるテクをこのカメラで
覚えた。生まれて初めて写した天体写真も、このカメラと玩具のような望遠鏡を
蒲鉾の板を使って光軸を合わせて、今で言うアダプターの様なものを作って撮影
した。カメラは工夫しないと写らない物であった時代の話である。今はどうだ!
押せば写る!まるで魔法のように。これが魔法なら話は面白くなるのではあるが、
残念ながらそうではない。しみじみ考えた。写真の楽しみは、工夫して、撮影し
て、上がるまでの過程をワクワクしながら待つ事ではなかったか。文明を否定す
るつもりは毛頭無い!しかし、世の中つまらなくなったものだ。投資した金額に
見合う画像を手にして喜ぶと言った下品な遊びが横行してはいけない。このHOL
GAはそう言った写真をする楽しみを再び思いださしてくれるカメラである。以
前にここで紹介した「アガート18 K」もそうであったように、ソ連のカメラは
そう言った写真をする楽しみを思い起こしてくれる。くどくどとここに書くより
も、このカメラの楽しさを語るに、使用説明書をここに転記した方が風流であろ
う。曰く「HOLGA120Sではカメラ上部のホットシューに市販のストロボを接続
出来ます。HOLGA120Sに市販のストロボを接続した時、発光しない場合や、2
回発光する場合が多々あります。これはカメラとストロボの相性が主な原因です
、、、」「HOLGAでは、光り漏れによりフィルムが部分的に感光する事が多々あ
ります。気にしない人もいますが、気になるようでしたら黒テープで隙間をテー
ピング、、、、」「付属のネックストラップをつけて首から下げていると、カメ
ラの重みでストラップが金具ごと抜け落ちてカメラが壊れることが多々あります。
付属のストラップは決して使用しないで下さい」なかなかにおおらかでではある。
さすがに彼の地ロシアのブリキをネジ止めして作ったミグ戦闘機の遺伝子を脈々
と受け継いでいて愉快だ。絞りは「晴れ」と「曇り」のみ。シャッタースピード
は不明。ピントは絵で合わす。これで良いのだ。写真はポラバックを装着してある