シュタイングレーバーピアノのこだわり

まずアップライトで他社と大きく違うグランドピアノの様なタッチは、鍵盤の鉛調整。普通のアップライトピアノでは鍵盤の鉛は後ろ側に入っているだけでバランスピンよりも手前側には入っていませんが、シュタイングレーバーのアップライトピアノはフロント側にも鉛が入っていて、スムーズな鍵盤の回転と適度な手応えを感じ、グランドピアノのタッチを思わせる高級感あふれるタッチをつくっています。

ハンマーシャンクの部品選びでも、まだハンマーにつける前のシャンクだけの状態で硬い作業台の上に1本づつシャンクを落としてその音色を聞き、シャンクの持つ固有振動数(音程)の高い物、中くらいの物、音程の低い物と3つに分別し、音程の低いシャンクは低音部に、音程の高いシャンクは高音部のハンマーに接着します。これがグランドピアノになるともっと厳密に半音単位のハンマーシャンクの選別を行います。

フレームは鋳型から出して半年から1年のシーズニングを経て、分子レベルでの完全な安定がなされてから、ひとつひとつ叩いて音を聞き、巣のあるものは割って捨ててしまいます。それらのチェックに合格した物を今度は叩いて音を聞きながらフレームの低音部は低い音が出るように、フレームの高音部は高い音が出るように裏からグラインダーで削ってフレームそのものの音作りをしていきます。このように全ての部品が一体となって良い音が出るように小さな部品レベルからの音作りをしていくのがシュタイングレーバーピアノのやり方です。

これらひとつひとつの積み重ねから出来上がってくる来る高級感は一朝一夕にコスト重視の他社メーカーでは造る事ができません。その結果としてフランスのル・モンド・デラ・ムジーク誌やデアパゾン誌などの音楽専門誌に於いて行われるピアノ品質コンテストのアップライトピアノ最上級部門に於いてここ十数年間ずっとモデル130や138がベーゼンドルファー、スタインウェイ、ベヒシュタインなどを押さえてCHOC(グランプリ)を取り続けています。<過去のフランスのル・モンド・デ・ラムジーク誌より幾つかの批評を紹介します。>

E-272・・・バッハやモーツァルト、ベートーベンの演奏に、今日、これ以上の楽器を見つける事は困難である。

205・・・秀逸なモデル、きらびやかな高音域、純粋で温かな響き、微妙な音のニュアンスを巧みに表現、特有の音質。

168・・・卓越したダイナミック性を備えた太くて豊かな音、類まれな楽器、一流メーカーの品質が一身に詰め込まれた一台

138・・・高品質の極致、価格に見合った傑作、明らかにアップライトピアノの王様。

130・・・絶妙な音質、微妙な音の出だしによる多彩な音色、温かくて美しい自然な拡がり、実に巧妙なアクション。

最近ではアメリカのラリー・ファイン氏が書いた「The Piano Book」のピアノ格付けランキングでもシュタイングレーバーピアノはベーゼンドルファー、ファツィオリ、ハンブルグスタインウェイなどと並び世界最高のメーカーとして最上級の格付けである「1A」にランクされています。

グランドピアノに於いてもシュタイングレーバーは昔から独創的な試みを多く残しています。鍵盤筬に付いているベッディングスクリューは今ではどこのメーカーでも付いていますが、シュタイングレーバー社では100年以上前のモデルにもベッディングスクリューが既に付いていますし、数年前から次高音部と最高音部のカポダストロバーにあたる部分がフレームが一体型で繋がっているところに穴を貫通させ弦を通す事でフレームのカポダスト部の剛性を上げてエネルギーの損失を少なくするような構造を取っていますが、元々これは100年以上前から既にシュタイングレーバーのグランドピアノでは行われていた事なのです。1903年製のシュタイングレーバー162を当店でオーバーホールをしたことが有りますが、既にこのモデルでもこの方式を採っていました。

響板の貼りこみでは、貼った後で響板に砂を撒き、駒の部分を叩くことで砂を振動させ、振動状態を目で確認しながら響板を削っていき、全体がむら無く振動するように一台一台仕上げています。

駒の貼り方にも特徴があります。普通のメーカーでは低音部の短駒は少しでも響板の中央よりに位置させたい為に下駄履きをさせているので駒と響板の間に空間があったり2重に貼り付けている為に音色が鼻にかかったような音になってしまいますが、シュタイングレーバーは他社よりも響板の膨らみの大きなフォームで弦を斜めに張る事でこれらの問題をクリアし、駒は低音部であっても中高音部の駒と同じように響板に直接貼り付けているので音色に一貫性があり、はっきりとしたクリアーでドイツ的な太い低音の音色を作り上げています。

チューニングピンもまたドイツではビーネ社の物が最高とされていますが、近年コスト重視の観点から次のメーカーであるディアマント社のチューニングピンを使うメーカーが増えています。スタインウェイ社もそのひとつですが、シュタイングレーバー社は頑固に最高級のビーネ社製のチューニングピンを使い続けています。手に入る部品の中で常に最高の物を使い、それでも納得できない場合はオリジナルの部品を作ってより良い物を作り出そうという姿勢を貫いています。

アグラフに於いても昔のベーゼンドルファーはアグラフ上部を鋼が横に貫通し補強された強固なアグラフを使っていましたがコストがかかるので既に採用をやめていますが、シュタイングレーバー社では今なおこの頑丈なアグラフを頑固なまでに使い続け、強い剛性のアグラフを使うことでエネルギーの損失を最小限に抑えています。同じように他社の使っている部品よりも剛性を上げることで音のエネルギー損失を防いでいる部品としては他に、駒ピン、ダンパーワイヤー、キーピンなどで他社の部品とは異なるシュタイングレーバー社独自の高い剛性の部品を使っています。

音を響かせる木材と接着剤にも秘密があります。100%の天然木を使用し、伝統的な木材接合、音響変換効率の高いトウヒを使った鍵盤筬、一部のブッシングやフェルトの接着以外では弾性接着剤は使わずに100%結晶化接着剤といわれ固まったら木よりも硬くなりエネルギー損失が無い硬くなる接着剤を使っています。

新技術は今も次々と開発し、カーボンファイバー製の響板や駒のアグラフと高さが調節可能なヒッチピンを用いてフェニックスシステムを開発し、響板にほとんど圧力がかからずに高音域を豊かに響かせることに成功しています。新型のモデル212では特に低音部を豊かに鳴らすために特に1キーから35キーの部分で旧機種に比べ4.8%響板面積を広くし、低音の弦長は最大で5.8%長くする事でより豊かな低音を作り出しています。

新技術のグランドピアノにおけるハーフブローは、これも1893年にはすでにシュタイングレーバーで開発していた技術ですがソフトペダルの特別機能で、これを踏むと鍵盤が全体に少し沈み込み、打弦距離が35mmになり鍵盤の深さは8mmになり、ウナコルダペダルと組み合わせることで前代未聞のピアノ・ピアノ・ピアノ・ピアニッシモ(ppppp)の演奏をすることが可能になります。

これらの技術は目に見えるシュタイングレーバーのほんの一握りの部分で他にも回転するローラーナックルなど、まだまだ書ききれないほどの奥深い伝統的な技術と常に今の物よりも良いピアノを作り出そうとする姿勢がピアノマニアの心を捉えて離しません。本当にピアノを愛し、音のわかるかたに使って頂きたいピアノ、それがシュタイングレーバーです。


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