男声合唱組曲月夜孟宗の図

聴いた演奏

1989年同志社クローバークラブ
第7回東西四大学OB合唱連盟演奏会

1990年愛知教育大学男声合唱団
第33回同団定期演奏会

ベスト演奏

1.指揮 竹尾 行弘
愛知教育大学男声合唱団

朗読 小島隆史
創団35周年記念
第33回愛知教育大学男声合唱団定期演奏会
1990年3月11日(日) 愛知県勤労会館(21名)

2.指揮 森本 潔
同志社クローバークラブ

朗読 二谷英明 フルート 田口浩良
第7回東西四大学OB合唱連盟演奏会
1989年7月23日(日) 東京文化会館大ホール


解説

 90年に初めて自分の車を持った時、カーステレオで男声合唱を聞きたいと思い、そのためのテープを作成しました。 その時、ビクターの合唱曲集を参考に作曲家別に編集したのですが、多田作品についてはさらに作詩者別に6本も作る事になりました。
 その後94年に再編集し、さらにその後も何度か収録曲の変更が行われた。 実はこの「ただたけ名演集を作ろう!(仮)」プロジェクトを引継いだのも、 自分がこのように独自の名演集を作っていた経験から可能と判断したからでありました。

 さて「月夜孟宗の図」ですが、私がこの曲の存在を知ったのは上記第7回東西四大学OB合唱連盟演奏会のチラシを見た時でした。 結局、試験中だったので聴きに行く事はできませんでしたが。
 その後、愛知教育大学男声合唱団(以下愛教大男声)の定演(前回の定演パンフで夏の愛知七大学合唱連盟演奏会を知り、 さらにその演奏会のパンフで定演の日時を知って訪れる。)で初めて聴く事ができたので、 前述した多田武彦作品集に収録しました。

 時は流れ、以前聴けなかった同志社クローバークラブの音源を入手できたので、94年の再編集時に差し替える事にしました。 やはり声は素晴らしく、聴き応えのある演奏でしたが、1、2年すると次第に物足りなさを感じるようになってきました。
 なんというか、音の絡む楽しさという物が足りない気がする。どこか各パートが分離して聞こえてくるようで、 かつて感じていたこの曲の音の美しさが欠けているのではないかと思い、だんだん不満を覚えてきたのでした。
 そこで、以前聴いていた愛教大男声の演奏を再び引っ張り出して聴いてみた。

 やはり、これだ。

各パートの音が有機的に繋がり、この曲の持つ東洋的な雰囲気をハーモニーとして再現する事に成功している・・・。
 そうした印象を受けた原因はこの演奏の音程精度の高さとこの合唱団の響きの豊かな声にある。 それらが、決して易しくはないこの曲のハーモニーを完全ではないにしても表現しているため、 多田作品中では「草野心平の詩から」と並ぶ「技巧を凝らした東洋的な音の美の表現」を感じる事ができた。 そう言った理由から、再び作品集に収録し直し、現在に至っております。 というわけで、私としてはこの演奏をベスト演奏として推薦したい。

 そして、この演奏を実現した当時の学生指揮者、竹尾行弘氏こそ、 当時私が感じていた愛教大男声の演奏の魅力の約半分位を作り上げていたと思われます。
 思えば、彼の指揮した4つのステージはいずれも音程精度の高さが特徴で、 それが、持ち前の人数を超えた音量と響きの豊かな声による表現力に加わる事により、 実に高いレベルでのまとまりある演奏をしていました。
 また聞く所によると、彼の声はキーンと前に飛ぶ声を持っているとの事で、 そういえば、彼以外の指揮者が振ったステージではTopから響きの豊かな声に混じって真っ直ぐ飛んで来る声が聞こえていたのですが、 その声の混ざり具合が、「追憶の窓」や「今でも・・・ローセキは魔法の杖」等といった若い感性を刺激する曲目と相俟って、 若者らしい、ひたむきさ、スマートにいかないもどかしさ、そんな感覚を想起させて大変味わいを感じていたのですが、 ひょっとすると彼の存在がなせる技だったのかもしれません。


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