海外に拠点、ゲーム画面は日本語も


 インターネット上で実際にお金をかけてゲームができるオンラインカジノサイトが増えている。各サイトは海外に拠点を置いているが、日本語のソフトを用意したり、日本語の電話問い合わせに対応したりするなど、日本人向けサービスに力を入れているところが多い。賭博が禁じられている日本では海外サイトで賭けをすることも「違法」(警察庁)だが、ネット上の規制は難しい。国内にも愛好者が広がっており、なし崩し解禁状態だ。(石神和美)
オンラインカジノサイト
「1回のゲームで、2万ドル(約200万円)もうかったことがあります」

 東京都内の自営業の男性(34)は、自らのオンラインカジノでの戦績を淡々と語った。2年前にポーカーで、最も強いロイヤルフラッシュを出し、5ドルの掛け金が4000倍に増えたという。一方で、負けの記録は「一晩で3000ドル(約30万円)」。通算の収支は「とんとん程度」という。
 よく遊ぶサイトは約50あり、2日に1回はパソコンに向かう。ポーカーのほか、スロットマシンが好き。「グラフィックも音もリアル。新しいゲームも続々と出るので、飽きずに楽しめる」と話す。
 イカサマをしたり、勝ち金をきちんと払ってくれなかったりする悪質サイトもあるが、欧米にはオンラインカジノの営業姿勢を評価しているサイトが数多くあり、情報収集して信用できるところを選んでいる。「有名な人気サイトならトラブルは心配ない」と、この男性は考えている。
 都内の別の自営業の男性(40)は本物のカジノが好きで、米ラスベガスに年2〜3回通う。ブラックジャックなどカードゲームが好み。「結果が出るまでの短い間に、負ける不安と勝ちへの期待感が激しく交錯する。あの精神的アップダウンがたまらない」
 国内では、本物の代わりにオンラインカジノに励む。週に4日はアクセスし、長い時は5時間以上没頭する。「最高で月に6万ドル(約600万円)もうけた」という。
 カジノサイトで遊ぶノウハウを紹介する国内の個人ホームページも激増している。月間数十万円単位の副収入も期待できるためだ。多くのカジノサイトは、広告を出してくれるホームページを募集し、集客成果に応じて報酬を出している。サイト側はこの報酬に利益(遊んだ人の負けた額)の10〜30%程度を手厚く充てている。あるノウハウサイトを運営する男子大学生(23)は、「数字は言えないが、この手の報酬としては多い」という。
 国内のオンラインカジノ愛好者は数万人とも数十万人とも言われるが、正確な数字は分からない。
 人気があると言われる五つのサイトにメールで日本人のプレーヤー数を尋ねてみた。3サイトから回答があり、それぞれ「約1万4000人」「数千人規模」「2000人以上」と答えた。

◆カード、小切手で決済
 
オンラインカジノは90年代半ばに始まり、現在は2000サイト以上あると言われる。日本語サイトもここ1〜2年増え、数十に上るようだ。なかには、日本語の電話による問い合わせを24時間受け付けているところもある。
 海外のカジノサイト事情に詳しい大阪商業大アミューズメント産業研究所などによると、主なサイトは英国領のマン島やジブラルタル、カナダ領カーナウェイク、カリブ海の島国アンティグア・バーブーダなどオンラインカジノの合法国で免許をとり、営業している。
 愛好者らの話では、オンラインカジノではまずクレジットカードなどでチップを購入し、それを賭ける。基本的にドル建てで、負けてチップがなくなれば終わり。クレジットカードを使っても、チップ購入以上の損失は発生しない。勝ち金の受け取りは小切手の郵送などで行われる。
 ただクレジットカードについては、最近、番号を入力しても使えないケースが増えている。カジノサイトでの利用を拒否するカード会社が相次いでいるためだ。すでに使用できなくしている大手クレジットカード会社の担当者は、「なぜ使えないのかという苦情が毎日、数件はくる」と打ち明ける。
 米国では本物のカジノは合法の州が多いが、オンラインカジノは開設も参加も禁じられている。しかし、多くのサイトが米国外に拠点を置いて営業し、「ごく普通の人が抵抗なく遊んでいる」(大阪商業大の谷岡一郎学長)という。03年のオンラインカジノの利益は計約50億ドル(5000億円強=スポーツなどへの賭けも含む)に上ったとの米証券会社の推計もある。

◆違法だが規制困難

 第一生命経済研究所の門倉貴史主任エコノミストが賭博の検挙者数などをもとに推計したところ、国内の違法な本物のカジノで動く金の規模は90年代以降、減少が続いている。門倉氏は、「減少分の一部はオンラインに流れたと考えられる」と説明する=図参照。
 賭博は刑法で禁じられているが、これは国内の話で、日本人が海外のカジノで遊んでも罪にならない。オンラインカジノの場合、胴元は海外だが、警察庁は「国内から参加するのは違法」としている。合法国のサイトであっても日本で賭ければ違法なわけだ。
 ただ、これまでに事件として摘発された例はない。胴元が海外で、現地では合法的な営業を行っているうえに、ネット上の行為のため、「立証は相当、難しい」(捜査当局関係者)のが実情のようだ。
 オンラインカジノについては、(1)本人確認が難しく子どもでも簡単に参加できる(2)手軽なため依存症患者が広がりかねない、などの点から、本物のカジノよりさらに問題が根深いとの指摘が強い。本物のカジノについては、自民党の議員連盟が解禁に向けた基本構想をまとめ議員立法を模索しているが、この基本構想でも、オンラインでの営業は禁じる方針を示している。
 一方、ネット上の規制は極めて難しいことなどから、「今の刑法は実情にあっていない。賭博罪は廃止して、暴力団関連の賭博だけを罰する規制に改めるべきだ」(ネット犯罪に詳しい甲南大法科大学院の園田寿教授)との声もある。ネット社会の現実を踏まえ、規制のあり方を見直す時期なのかもしれない。
 参考情報 ギャンブルの営業姿勢を示す指標として「控除率」がある。掛け金総額から顧客への払戻金を差し引いた残り、つまり胴元の取り分の割合だ。米国などの本物のカジノでは5%以下と言われ、多くのカジノサイトはそれ以下の率を掲げて宣伝している。ちなみに日本の競馬など公営ギャンブルは25%、サッカーくじは50%程度。