「シンジ……ごめんなさい……今日中に謝っておきたくて」
アスカは寒さのあまり歯を震わしながらもシンジに謝った。
「馬鹿、そんな事でこの寒風吹く中突っ立ってたのか……怒ってるんなら、
昼間すぐ怒ってたさ……こんなに身体を冷やしやがって……
風邪でも引いたらどうするんだ……とにかく中へ入れ……話はそれからだ……」
シンジは鍵を開け、アスカを招き入れた。
自分がアスカの部屋に行く方がまずいと思っていたのだろうが、
墓穴度はあまり変わらなかったようだ(笑)
シンジは部屋に入るなりエアコンのスイッチを入れ、アスカをコタツに座らせた。
「さぁ、これでも飲んでって……寝てやがる」
数分後 シンジはホットミルクを手に居間に戻って来たら、
アスカはコタツに突っ伏して寝入っていた。
シンジに謝る事が出来て張り詰めていた緊張の糸が切れたのだろう。
「どうすりゃいいんだ……」 シンジはアスカを部屋に招き入れた事を心底後悔した。
第5話 「長い夜」
「んー……こんな時間じゃ無かったら洞木さんを呼ぶんだが……もう寝てるだろうな……」
いつも遅くても10時には熟睡する事を知っているだけにシンジは行動に移す事を憚った。
「どうする どうする どうする 君ならどうする?」
シンジはぶつぶつ言いながらこたつで突っ伏すアスカの周りを所在なくうろついた。
シンジの頭には三つの選択肢が浮かんでいた。
その1 可哀想だが起こす デメリット せっかく安心して寝てるのを起こすのも
その2 洞木さんを起こしてアスカをベッドに運んで貰う デメリット 寝起きは恐い。
その3 自分でアスカをベッドに寝かせて自分はトウジの部屋に転がり込む。
そして、その4にカーソルが移動しはじめていたものの、
自分には意識が無いアスカへの前科がある事を思い出し、それを打ち消した。
「仕方ない……トウジを叩き起こすか……しかしコタツで寝かせておく訳にも……」
シンジは躊躇したものの、コタツで寝て低温火傷させる訳にもいかないので、
脇の下に腕を差し入れてコタツから苦労して引っ張り出した。
予備の布団でもあればここで寝させるのだが、そんな気の効いたものは無かった。
「まったくいい歳をして無防備なんだよ……」
シンジはぶつぶつ言いながらアスカを抱きかかえ、ベッドに運んだ。
(
中略 説明は最後に
)
「さて……トウジを叩き起こすとするか」
シンジは部屋の電気を消して自分の部屋を出て階段を降りて行った
そして、翌日…………AM7:30
アスカは突然鳴りはじめた目覚まし時計の音に飛び起きた。
「あれ、どこに置いたっけ……あれ?」
アスカは寝ぼけたまま目覚ましを手探りで探していた。
チンっ その時、誰かの手が目覚まし時計のスイッチを切った。
「え?」 アスカは今いるのが自分の部屋では無い事にようやく気づいた。
引っ越して来たばかりで家具も備えつけ、壁紙は同じ 対称になっているので
少し部屋の配置が違うのだが、先程までその事に気づきもしなかった。
「何時に起きてるのか知らなかったから、早めに起こしたよ」
恐る恐る顔を上げると、眠そうな眼であくびを堪えているシンジと目線が会った。
「なっ……ここ、シンジの部屋? 私、どうしてここにいるの? ねぇ」
アスカは布団から飛び出そうとしたが、自分が下着しか着て無いのに気づいた。
「何で、私服着て無いの? 何で?」
アスカは混乱のあまり今にも泣き出しそうな顔付きであった。
「ゆっくり説明するから、取り敢えず服を着たらいいよ……」
シンジはハンガーにつるしているアスカの一張羅の服を手渡して言った。
「昨日……マヤさんに送って貰って……それから」
アスカは服を抱えたままうろたえていた。 シンジは髭でも剃っているのか
風呂場の方で電気音が聞こえていた。
「そうか……私 ほっとしてコタツで寝ちゃったんだ……けど、どうして服着てない
のかしら……あっ これ一張羅だしシルク100%だから皺が出来るからか……
やっぱりシンジが脱がせたのかしら……」 アスカは恐る恐る服を身に付けた。
服を身に付け、ようやく人心地がついた頃、アスカのお腹がくぅ と小さく鳴いた。
「昨日居酒屋で、揚げ出し豆腐と串をいくつか食べただけだった……」
アスカはシンジに聞こえなかったか、周りを見渡した。
すると、以前は毎朝のように聞こえていた シンジが台所で朝食を作る音が聞こえて来た。
漂って来た臭いに思わずアスカは喉を鳴らした。
「シンジの作ったご飯……四年ぶりね」
アスカはさっきまで混乱していた事を忘れたのか、
シンジが出してくれる朝食の事ばかりを考えていた。
「たいした物無いけど……」
シンジはお盆が無いのか、二枚の皿を両手に持って来てコタツの上に置いた。
「あ、ありがとう……」 アスカは期待に眼を輝かせながら皿を見た。
だが……昔の純和食で手間ひまかかっていた料理とは違い、
おおぶりなハムをベーコンと共に炒めて、卵焼きを添えているだけと言う簡素なものだった。
「自分の為だけに作るんじゃ手間かける気しないから、こんなものしか冷蔵庫に無いんだ」
シンジはご飯とみそ汁を二度往復してコタツの上に置いていった。
「まぁ、食べてみてよ……」 シンジはアスカに割り箸を差し出して言った。
「い……頂きます」 アスカは待ってました とばかりに箸を取り、まず味噌汁を口にした。
「どうぞ……」 シンジは複雑な表情をして答えた。
「お、美味しい……」
味噌汁だけは昔と変わらずいりこだしをふんだんに使ったシンジの味であった。
アスカはご飯を口に運び、おかずのハムに箸を伸ばした。
以前の繊細な味付けとは少し違いワイルドな感じでマスタードが効いており、
これも美味であった。
「あ〜満足満足……」
アスカはあれよあれよと言う間にご飯と味噌汁をおかわりし、平らげてしまっていた。
「一日持つと思ってたんだが……」 シンジはぼそりと言ったが、不満気では無かった。
「ねぇ……材料費は出すから、毎朝私の為にみ……みそしれる(?)を作ってくれない?」
一度は諦めて味気の無い食事に甘んじていたが、シンジの料理を味わってしまうと、
コンビニで買った菓子パンと牛乳 と言う貧相な食事にはもう戻れなかった。
「何でだよ……何でアスカの分まで作らなきゃいけないんだよ」
アスカの言葉に一瞬我を忘れていたが、シンジはようやく自分を取り戻した。
「あら……私にそんな口が聞けて? 強制猥褻に殺人未遂で起訴するか、
NERVの法務担当者に聞かれたけど、シンジの将来の為に揉み消してあげたのよ」
さらっと過去の傷口に触れる事が出来る程アスカの心の傷は回復していた。
「う……」 シンジの顔はみるみる青ざめていった。
アスカ程には過去の傷が癒されていないのにアスカは気づいてはいなかった。
アスカとは違い、加害者側だったと言う事もあったのだろう。
「ごめんっ……ごめん シンジ……シンジを傷つけるつもりじゃ無かったの」
アスカは思わず俯きかけたシンジの身体を抱き寄せた。
空になった茶碗が転び、箸が落ちたが、アスカはシンジを抱きしめて離さなかった。
「ねぇ……シンジ 何とか言ってよ……」
シンジの返答が無いのでアスカは泣き出しそうになっていたが、
シンジはアスカの胸の谷間に顔を押しつけられており、呼吸困難になっていた。
4年前でも14歳には見えない程であったのが、完全に成長した今となっては
すでに殺人兵器としても使用出来る程になっていたのだ。
「く……苦しい」 シンジのくぐもった声が聞こえ、アスカはようやくシンジを解放した。
「私が日本に戻って来たのは……シンジと過去の清算をしたかったの。
ドイツに戻ったばかりの頃は毎晩のように、シンジを追い詰めていた頃の
嫌な私の夢を見たわ……私は心の中でどうしてそんな事を言うの? 止めてと
哀願したけど、14歳の頃の私は止まらなかったの……
あの頃私がもっと落ち着いていればシンジをあそこまで追い込む事は無かったの……」
少ししてシンジが落ち着いてから、アスカはゆっくりと話しはじめた。
「四年も経って今ごろ顔を出した私を恨んでるのはわかる……
シンジにとって私は思い出したく無い過去そのものかも知れないのもわかってる……
だけど、私はシンジともう一度……やり直したかったの」
アスカの涙ながらの独白にシンジの胸は疼いた。
「アスカ……」
拒絶されたと信じ、震えているアスカをシンジはそっと抱きしめた。
「シンジ……」
アスカは自分が受け入れられた事に感動し、涙を一筋流した。
そしてアスカは眼を閉じようとしたが、壁にかけられている時計を見て正気に戻った。
「きゃー もうこんな時間じゃ無いの 今日は一限目の一般教養に出ないといけないのに
やだ、昨日の服のまま行けないわ……着替えなきゃ……」
アスカはどたばたしながらシンジの部屋を出て自分の部屋に駆け込んだ。
「やっぱりアスカはアスカだな……」
シンジは苦笑したが、心のつかえの一つが取れたので安らかな顔をしていた。
その頃アスカは自分の部屋で服も着替えずハンカチで目尻を押さえていた。
「日本に……日本に帰って来て良かった……シンジと会えて…………よかった」
数分後 アスカは服を着替え、顔を洗い 軽く化粧をしてから部屋を出た。
「シンジは今日は授業出るのかしら……」
声をかけようかと一瞬考えたが、アスカは一人で昨日歩いた道を歩み始めた。
そして、一限の一般教養の教壇にアスカは立った。
「それでは、出席を取ります 青橋君」
「はいっ」
「碇君……」 アスカは教室内を目で追った。
「はい」 奥の方の席で、シンジが手を上げるのを見てアスカは胸が一杯になっていた。
補足……シンジは何故自分の部屋に結局朝までいたのか……
「ふぅ……」 シンジはアスカをベッドに寝かせた
「布団は一枚でいいかな……」 アスカに布団を着せかけようとしたが、
アスカが一張羅の外出着を着たままなのに気づいた。
「このまま寝たら絶対皺になるな……洞木さんを起こすしか無いが……トウジに頼むか」
トウジとヒカリが恋愛進行中だと言う事は分かっていたので、トウジに起こされるのなら
それほど恐く無いだろうと シンジは判断した。
「さて……トウジを叩き起こすとするか」
シンジは部屋の電気を消して自分の部屋を出て階段を降りて行った
「おい、トウジ 開けてくれ」 シンジはトウジの部屋のインターホンを鳴らした。
だが、待てど暮せどトウジが起きる気配は無かった。
「まさか……」 シンジはそっと後ろを向いた
「洞木さんの部屋にいるのか……」
シンジは確認する為、ヒカリの部屋の郵便受けをそっと指で押し開いた。
玄関にトウジの運動靴が置かれているのを見てシンジは絶望的な心境となった。
これで、トウジの部屋に泊まらせて貰う事も、ヒカリを起こして貰う事も
両方出来なくなったからである。
シンジは足音を立てないように自分の部屋に戻って来た。
アスカが眼を覚ましているのでは無いかと言う期待を胸に居間に入って行ったが、
アスカはすやすやと寝入っていた。
「こうなれば起こすしか無いな……」
シンジはアスカの肩を揺すりかけたが、アスカの入院時代のトラウマのせいで、
それを続ける事は出来なかった.
[取り敢えず上着とスカートを……」
シンジは眼を瞑ってアスカの上着を脱がせ、スカートを脱がせようとした。
トウジとヒカリが下でしていただろう事を考えると、
シンジの胸中にはいろんな思いが錯綜したが、シンジは明鏡止水の心境で続けた。
スカートを脱がせた時、アスカが無意識の内に呟きを漏らした時にはシンジの心臓は
20cm程跳ね上がったように感じた。
「今、眼を覚まされたら 終わりだな……」
シンジは慎重にアスカの服を脱がし終えて、布団をかぶせた。
「で、俺はどこで寝ればいいんだ……」
ソファーなどと言った気の効いたものは無いので、シンジは座ぶとんを折ってまくらにし、
こたつに潜り込んだ。
だが、同じ部屋にアスカが寝ていると意識するだけで頭は冴えわたり、
寝ぼけて横に寝たアスカにしそうになった事を思い出す度に心臓は早鐘のように鳴り響いた
「今だったら……あんなものでは済まないな……」 シンジはぼそりと呟いた
今晩はシンジにとって長い夜になりそうであった。
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R指定じゃ無いのか ちっ
よく我慢したな・・シンジ
よくやったな・・シンジ
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ここに、何か一言書いて下さいね(^^;
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どうもありがとうございました!
第5話 終わり
第6話
に続く!
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