「…………女に恥をかかせないでよ……」
振り向いたアスカは恥ずかしさからか眼に涙を溜めていた。

「えっ……あ……その……ありがとう 僕もアスカの事好きだよ」
シンジは慌てながらもアスカを傷つけないように、
シンジも言いたくても言えなかった言葉を伝えた


裏庭歌劇団

作:尾崎貞夫

第4話【寝言の王道】


一ヶ月後……シンジは夏季公演にかかりっきり アスカは多数の公演でてんてこ舞い
と言う多忙な日々が続いていた。 普通の生徒は夏休みだと言うのに……

「やっと楽か……」
疲れが溜まっているせいで目覚めにくくなっているので目覚ましを増やして
計5つの目覚まし時計に起こして貰ったアスカは横たわったまま呟いた。

夏休みに入ってから10日間も連続して公演していた舞台がようやく楽日を迎えるのだ
8月前半での大きい舞台はこれで終わりなのでようやく息がつけると信じて
アスカは服を着替えた。

着替えている途中、端末のメール着信ランプが点滅しているのに気づき、
アスカは靴下を履きながら端末を立ち上げ、メールを受信した。


”アスカ 今日が楽日だね お疲れさま 僕の方は16日から始まる夏季公演の練習

が続いてるよ で本題に入るよ 今週の僕の休みは 12日の午後だけだよ

あとお盆に一日休みがあるんだけど、父さんと母さんに付き合わなきゃいけないし……

アスカと休みが重なればいいんだけど……会いたいよ。
                                shinji_i@st.uraniwa.com 碇シンジ”



アスカはシンジからのメールを読み終え、ポケットから手帳を取り出した。

「12日の午後は……ダメね 通し稽古が入ってる……お盆は同じ日が休みなのに……」
アスカは手帳の12日の所を見つめてうなだれた。

「取り敢えず伝えておかなきゃ」
アスカは時間の余裕がある事を確認してメールの返事を打ち込み手早く送信した。


「さて……行きますか」

アスカは自分の部屋を出て、夏休みで人気の無い寮の廊下を歩いていった。

卒業して劇団員になってもすぐいい役が貰えないのに学生の身分でいい役を貰っている

その代償だと言う事は分かっているものの、せっかくシンジと心が通ったと言うのに、

あれ以来まともなデートをしてない事をアスカは悔やんでいた。


千秋楽にて最後の舞台に立ったアスカはファンから贈られた花束を手に、
割り振られた楽屋に歩いていった。

「ダメ出しが出なくて良かった……」
演出家が何も言わなかったのでアスカは安堵していた。

主役なのでアスカに割り振られた楽屋は個室であった。

ドアを空けようとすると中の電気が付いているのに気づいた。

「あら、消しわすれたのかな?」 アスカは首を捻りながらドアを開けた。


「シンジっ!」 部屋の隅で壁に背中をもたせかけたままシンジが寝入っていた。
シンジはアスカの大声にも目覚めず、寝息を立て続けていた。

「どうしたんだろ……ま、起きてから聞けばいいか……」
アスカはシンジの寝顔を少し見つめてからメイクを落とし始めた。

「これでよし……着替えなきゃいけないんだけど……寝入ってるよね」
アスカはちらちらとシンジを気にしながら衣装を脱いだ。

衣擦れの音だけが部屋を満たしていた。

「さっさと着替えよ」 気にしないようにシンジに背を向けてアスカは着替えはじめた。


「……アスカ…………」 汗ばんだ下着を脱ぎ、用意していた新しい下着に袖を通そう
としていた時、背後からシンジが漏らした声が耳に入った。


「シンジ? 起きてるの?」

アスカは身体を硬直させたまま振り返りもせずにシンジに声をかけた。

着替えようとしていた下着を胸の所にあてているだけの姿なので、

もし寝言だった場合シンジを起こさない為に小声であった。

少しして寝息が聞こえて来たので、アスカは安堵して下着を身につけた。

「そんな……アスカ もうダメだよ……」
そして普段着に着替えはじめた時、再びシンジが寝言を漏らした。

「何がダメなのよ……」 寝言と分かっていながらもアスカは振り向きシンジを見つめた。
「まさか……いやらしい夢でも見てるのかしら……」
その相手が自分だと言う事に気づき、アスカは胸の鼓動の高まりを感じた。

「ほんとに寝てるんでしょうね……」
アスカは下着姿にクッションで胸元を隠した姿でシンジに近づいていった。

「ダメだよ アスカ もう食べられないよ」
シンジが再び漏らした寝言はあまりにもお約束であった。

「シンジの馬鹿ぁ!」 アスカはあまりにも期待外れな寝言に失望し、
現在の状況を忘れ、胸元をかくしていたクッションでシンジの頭をはたいた。

「痛っ」 シンジは壁に頭をぶつけたその痛みで目覚めた。

「ごめん シンジっ 大丈夫?」
アスカは顔色を変えてシンジの後頭部をさすった。

「大丈夫だよ 驚いただけでそんなに痛く無いよ」
ようやく焦点を結びはじめたシンジの眼には、
眼前に肉まんが二つ並んでいるかのように見えた
別にあんマンでもピザまんでもカレーまんでも可

肉まんの正体は……言うまでも無いだろう シンジの後頭部をさすっている為、
シンジの眼前に下着で包んだ肉まんx2を見せつける事になっていたのだ。

そして、ようやく現在の状況を把握したシンジは顔を真っ赤に染め慌てて手で眼を被った。

「シンジ どうしたの? 眼も痛いの?」
アスカはおろおろとしながらシンジを見ていた。

「そのアスカっ 服着てよ」
シンジの言葉にようやくアスカは現在の自分の格好に気づいた。

「こうしているから着替えてよ」シンジはアスカに背を向け、更に手で眼を被った。

「ありがと……」
アスカは背後にシンジがいる事を意識しないように手早く服を身につけた

「ところでどうして僕の頭をはたいたの?」
着替えたアスカにシンジが疑問を口にした。

「シンジが……寝言でいやらしい事言ったからよ」
あながち嘘では無いが少し無理のある抗弁であった。


「ところで、シンジは何しにここに来たの?」

「ああ、忘れてた お盆なんだけど家族で神戸に行くんだけど、
アスカも一緒に行かないかって 父さんと母さんが言ってくれたんだ。」

「家族旅行に? 私も?」 すでにアスカの頭の中では
シンジの両親に認められた家族旅行にご招待もうすぐ本当の家族になる
と言う感じで妄想が渦巻いていた。





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どうもありがとうございました!


第4話 終わり

第5話 に続く!


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