成人式
「さぁ 一応規則だから、これにサインしてね」
ミサトさんが、僕たち三人の前に、ペンと用紙を差し出した。
「遺書ですか?」「んーまぁそのような物かもね」
「何よそんなもの書かなくてもいいわよ!」アスカがふくれている。
「まぁ まぁそー言わずに」ミサトさんがアスカをなだめている。
「これに書けばいいのね」綾波はペンを取り、サインをした。
それを見たアスカが「判ったわよ うっさいわねー」と言いながら、記入し
始めた。
「何見てるのよ! あんたもさっさと書きなさいよ!」アスカは今日もご機嫌
ナナメだ。
「うん」僕も用紙に名前を書き、サインした。「碇シンジ っと」
「さぁ皆さんこちらへどうぞ!」インストラクターのお姉さんが、
僕たちを連れて、室外に出た。
「さぁ しっかり 固定して下さいね!」インストラクターが、点検する。
僕たちは、ストラップのような物で、体を固定された。
「何よコレ 不格好ね!」アスカが、また文句を言っている。
対象的に綾波は、黙々と、装備を身に付けた。
「じゃ、私の後を付いてきて下さい。」男性のインストラクターに先導され、
僕たちは、階段を登っていく。「んもう 何でエレベーターくらい無いのよ!
」
「・・・・」「あはは そうだね」重い装備を身に付けているので、結構疲れ
る。
やっと上の端まで上がった頃には、心臓がバクバク言っていた。
「ふー はー」僕は深呼吸をして息を整えた。
「さて 誰からですか?」インストラクターが声を掛けた。
「そりゃ もう無敵のシンジ様からに決まってるじゃない」
アスカが挑発した。
「それに 元々あんたの為にここに来たんだから、当然でしょ!」
「・・・・」綾波は無表情だ。
「はい じゃぁ ここまで来て下さい。」
インストラクターに先導され、僕は端に立った。
ビュゥゥゥゥーーー 今日は風が強い。
「じゃこれを足に挟んで、足をクロスさせてぇ」サンドバッグのような物を、
足に挟んだ。
ビュゥゥゥーー僕は思わず後ろを振り返った。
「何よ!」アスカが腕を組んでいる。 僕はまた正面を向いた。
そして、ここに連れて来たミサトさんの言葉を思い出した。
「シンちゃん! あなたもっと度胸を付けなさい! そんな事じゃダメよ!
私いい所知ってるから、明日の日曜に、みんなで行きましょ!」
いきなり嫌な顔をした僕に「おっとこの子でしょ!」と一喝され、
不承不承ながらも、来ることになったのだ。
「何よあんた びびってる訳ぇ? まさか無敵のシンジ様がねぇ?
それに、これは昔ある地方では成人式だったのよ!
まぁセカンドインパクト前の話らしいけどね!」
アスカが勝ち誇ったかのように話している。
「・・・どうするの?」綾波が口を開いた。
「さぁ準備はいいですか?」インストラクターが声を掛ける。
僕は下を見て、
「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ!」と、
心の中で繰り返した。
アスカと綾波が見ている以上ブザマなまねはしたくない!
「さぁ行きますよ!」
「 3 」
「 2 」
「 1 」
「バンジー!」
インストラクターが叫んだ その瞬間僕は、手摺りから、手を離し
下の青いマットに向かい飛び降りた。
「うわぁぁぁぁ」まるで、飛び降り自殺のようだ! した事は無いが。
だが、怖いのは最初だけで、後は大した事は無く 胸をなで下ろした。
びよよーん びよよーん
何度かバウンドしていると、ミサトさんの声が聞こえてきた。
「良くやったわ!シンちゃん! あと2回ね!」 それを聞いた僕は気が遠く
なりかけた。
「逃げちゃ、駄目なんだ・・」
下のインストラクターに、紐を外して貰った。
そして紐が巻き上げられた。 すると、上からアスカの声がした。
「バックロールエントリー」
インストラクターがカウントする前に、
アスカは、背面のまま飛びおりた。
だが、バンジージャンプに置いて背面飛びは禁止されているほどなので非常
に危険である。
案の条 アスカは振り回され、パニックに陥っていた。
びよよーん びよよーん 危うく鉄塔に触れかけていた。
(注)良い子は絶対まねしちゃ駄目だよ!
「もう 絶対こんな事しないで下さいね! 保証出来ませんよ!」
インストラクターがアスカを叱りながら、アスカの紐を解く。
再び紐が巻き上げられ 上の飛び降り口に、綾波が現れた。
「 3 」「 2 」「 1 」
「バンジー」
その瞬間!綾波は手すりから手を離し、飛び出した。
さすがに声も出していない。顔も無表情のままだ。
びよよーん
だが、僕とアスカは、サンドバックのような物から足をすぐ離したのだが、
綾波は、説明を良く聞いていなかったのか、足をがっちりクロスしたまま、
逆さになっていた。
びよよーん びよよーん
綾波は逆さになったまま何度もバウンドしていた。
「キャッハッハ 何よあのざま」アスカが自分の心に棚を作り、笑っていた。
紐が下ろされ エアマットまで降りてやっと、足を離していた。
(教訓 話は良く聞きましょう)
「良くやったわ! 三人とも!」ミサトが、エビチュを飲みながら 近づいて来た。
「ミサトさんは飛ばないんですか!」僕は少しばかりの皮肉を込めて言った。
「ワタシはチョッチパスね!(^^;」ミサトさんが汗を拭いた。
僕達はジト目でミサトさんを睨んだ。
「いや、その 酒気を帯びてると、飛んじゃ駄目なのよ!」
ミサトさんは、バンジーの注意書きを指さした。
「ほら そーいう訳なの さ、後は遊びましょ!」ミサトが話しをそらす
「ミサトォ あんたその為にわざわざビール買って飲んだんじゃないの?」
アスカも相当怖かったらしく、怒りの矛先をミサトに向けている。
シンジも追求したかったが、また飛ぶはめになるのを恐れて黙っていた。
結局その後は、日暮れまで4人で遊園地の他の施設で遊んでいた。
「こんな事なら、トウジやケンスケも連れて来たら良かった」
シンジは一人呟いた。
成人式 完
作:尾崎貞夫
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