移動教室の帰り。
「なんだろ、これ・・・」
 窓から差し込む光が、面した廊下にくっきりと陰影を付けている。
「お菓子・・・かな?」
 その壁際の影の中に、四角いセルの袋が落ちていた。
 可愛い色してるな・・・
 熱で圧着されている外側は赤く、それに囲まれたポコッとふくらんでいる部分は白一色。
 袋を切りやすいように外周にギザギザの切り込みの入ったそれは、確かに一口サイズの駄菓子にも見える。
 ただ一つ、
「なんだろ?、このわっか・・・」 
 窓にかざし、それを透かしみるシンジの指に隠れて、


  stop’d AIDS 


 と書かれている以外は・・・。


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    an illegal novel novels
                        this justjoke

     「昼下がりのマンダム」

                        writen by "digitalion"

           

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「シンジ」
「え?」
 げしっ!
「ジャマよ」 

 上半身だけを振り返らせたシンジの腰に、上履きの前げりが突き刺さった。
 いきなりの蹴りに踏ん張ることもできず、つんのめるようにこけるシンジ。

「・・・・・・」
 この重み、角度、あの口調。

「やっぱり・・・」
 おそるおそる見上げた先には、腕を組み反らした姿勢からこっちを見下ろすアスカが居た。

「廊下の真ん中でジャマなのよ、バカシンジっ!」
「避けて通ればいいだろぉ・・・なんで・・・蹴るんだよ・・・」
 なんの悪びれもないアスカの仁王立ちに、文句が尻すぼみに下がる。
「うるっさいわねぇ、ごちゃごちゃ言ってないでさっさと退くっ!。
 レディファーストって言葉しらないのあんたはっ!」
「ア、アスカ・・・・・・」
 流れるようなアスカのいじめぶりに気後れしたヒカリは、そういうのがやっとだった。
「ほんっとに鈍くさいんだから・・・」
 そう言って、立ち上がろうとするシンジを見おろしている辺り、まるっきり小動物虐待の現場である。
 でも、なぜか悪いのはシンジの方という雰囲気が出来上がっている辺り、もって生まれたサガ
 なのだろう.お互いに。
「ほんっと気がきかないわねぇ、あたしの気配くらい察知しなさいよ」
 無茶苦茶言うアスカ。
「そんなの、無理だよ・・・」
「あんた、」
 ぎろり
「このあたしに盾突こうってぇの?」
 アスカの視線が危険な色を帯び始めた。
「うっ・・・」
 思わず詰まるシンジ。
 今日はまたひどいわね、と再び傍観するヒカリ。
 まあ、アスカの気が済むまで止まらないのだからしょうがないといえばしょうがないのかもしれない。
 そのままあっさりあきらめ、傍観を決め込むヒカリ。

----そう、このとき彼女があきらめたことが、「始まり」だったのかも知れない。

 彼女のとったその行動は、あきらかに失策だった。

「・・・・・・」

 あっ

 いつの間にか完全にうつむいてしまったシンジを見て、ヒカリの脳裏にイヤな映像が蘇った。
「いいんだ、どうせ、どうせ僕はいらない子供なんだ・・・」
 がくんと落とした頭を力無く揺らし、ぶつぶつとつぶやくシンジは、すっかり自己批判の世界に
 入り込んでしまっていた。

 まさか・・・

「ちょっと、返事くらいしなさいっての」
 アスカのいちゃもんにも反応しない。

 またなの?

 こうなると長いのだ、周囲を巻き込んでのネガティブアワー。
 どういう原理か知らないがこうなったシンジは、クラスを重い空気に包み込むs2機関と化す。
 そこでみんなのすがるような視線を浴びるのが、私、なのよねぇ・・・
「はぁ・・・」

 そんなヒカリの気も知らず、アスカはますますいらいらしていた。
「もーはっきりしないわねぇっ、んなだからバカシンジだってぇのよっ!」
「ア、アスカ・・・」
「その辛気くささ何とかしなさいってぇの」
 だ、だめだ、こっちはこっちでどうしようも・・・
 もともと周りの忠告何ぞ耳に入るアスカではない。
 な、何とかしなくちゃ今ならまだ回避できるかも、いやっ、しなければ!!
 となれば、策はシンジをこっちの世界に引き戻すのが最も手っ取り早い。
 な、何か話題は、さりげない話題っ!
 必死に頭をめぐらすヒカリはそれを見つけた。

 神の光明!!!

「シ、シンジ君これ落としたんじゃない?」
 ヒカリは努めて明るい声を出した。
「?、何よそれ」
 シンジの足下、カラフルな正方形の包み。
 ヒカリがすっとそれを拾い上げた。
 よかった、話が変わった
 ほっと一息付くヒカリ。
 が、しかし・・・、
「はいこれ、」
 と、笑顔と共にそれを差し出しすのと同時。

  stop’d AIDS

 ハッキリと赤い文字で書かれたキャッチコピーが、彼女の目にはいった。
 ・・・ヒクッ
 ヒカリの声に反応し億劫そうに顔を向けるシンジと、まるで頭から影をかぶったように一気に
 笑顔の消えるヒカリ。
「ちょっとそれ、」
 とっても不味い物を食べたような苦ーい顔をしたアスカが、それを肩越しにのぞき込む。
「コンちゃんぢゃない?」
 それがトドメだった。
「いっ、いっ・・・・」

 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

スパァンッ!!
 必殺平手打ちっ!、クルティカルヒットって言うか、殺。

 派手に横転しながら鼻血をぶちまけるシンジと全力ダッシュのヒカリ。
 その音に何事かと振り返る通行人の間を、イヤンイヤンと身体をくねらせ、真っ赤になった頬を
 押さえながら走り去っていった。

 それを見送った後、掻き立てられた通行人の好奇心、当然その場で一番目立つ物へと向けられた。

そして、集まり始めた人垣の間で------

・・・だっさいわねぇ

 この状態を一言で言い切り、あっさりときびすを返すアスカ----全ての元凶----がいた。
 そのままくるりときびすを返したアスカが抜けた後、一瞬だけ開いた人垣の間からは、
 冷たい廊下にぐったりと横たわり無言の涙を流すシンジがちらりと見え、また人垣の向こうへと
 埋もれてしまった。

うう、うあ、うあう・・・

 おい、やばいんじゃないかこれ?、と誰かが言っているのがおぼろげに聞こえる。
 シンジはうっすらと目を開けた。
「・・・血?」
 あ、綾波?。
 ちょうど通りかかったのか、そのもうろうとした意識の中で人垣の向こうに赤い瞳を見つける。
「・・・鼻血」
 あ、綾波、僕を保健室に・・・
 最後の希望にぷるぷると力無く震える手を伸ばす。
「・・・・・・・・・・・・えんがちょ
ガクッ
 それが最後の記憶だった。









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小一時間後

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ぎゃはははははははははっ!
「っ、っ、っ、っ」

 シンジを気づかってか、何とか笑いをこらえようとしているケンスケの肩が発作のようにふるえている。
「あかん、腹っ、腹いたっ!」
 ツボに来たトウジは、それでも笑いが止まらない。
「そ、それでお前、はなっ、はなぢっ、ひーっひっひ」
 無理にしゃべって笑い声がひきつり始めたトウジの横で、しきりに眼鏡に手をやりながら何とか
 冷静さを保とうとするケンスケ。
 しかし、しゃっくりの様な笑いの衝動は収まらない。
「笑い事じゃないよ」
 一人フェンスに寄り掛かっていたシンジが、ふてくされた子どもそのままに、すねた声で抗議した。

 ----昼休み、弁当を食べ終えたトウジとケンスケは、原因不明で保健室にかつぎ込まれたシンジを
 屋上に連れ出し、事の顛末を聞き出していた。

「いやっ、すまん。けど、けどなお前廊下でっ、んなもん・・・」
 謝りながらもトウジ顔は大きく笑っている。
「そうだよ、気づくだろ普通は」
 何とか顔の筋肉が歪むのを押さえ込んだケンスケが、眼鏡を押し上げながら相槌を入れた。
「・・・だって、聞いた事しか無かったし」
「まあ、せやろなぁ。」
 まだ笑いでヒクつくトウジは、声のトーンがおかしい。
「言われんでもわかるわ。あの生活環境で、まだなーんも問題起こさん様な奴が、あんなもんに
 馴染みがあるとは、そりゃ思わんわ」
「確かに、問題がないのは問題だよね」
 わしなら・・・と、拳を握りしめ、力強く想像の世界に入り込んでしまった
 トウジとは違い、ケンスケの口調は何故か真剣だ。
「そんなこと言ったって・・・」
 暮らしてみりゃわかるよ、と言おうとしたが墓穴になりそうで止めた。
「シンジにはナンカ無いの?、こうなんて言うかわき上がってくるような衝動って言うか、
 燃えたぎる本能って言うか」
「それは・・・」
 語尾は小さくなって口の中に消えた。
「・・・みずくさいでセンセェ」
 それを見たトウジが大げさに嘆いてみせる。
「ワシら、同じ悩みを持つ健全な青少年やないか」
 その目は、真夏の太陽の顔負けにすがすがしい笑みをたたえている。
 シンジは思わず一歩引いた。
「言うてみぃ、あるんやろ、こう、シャワーの音を聞きながら、そおっとドア開けてもーたり」
 と、一転してだらしない目になったトウジは、耳に手を当て聞き耳を立てる振りをしてみせ、
 細かいことに左手はドアノブをひねる仕草までしている。
「あるいは、洗濯物をチョロまかして使ったり」
 後に続くケンスケ。何に?とは聞かない方がいいだろう。
「寝静まった寝室にすーっと入り込むとかやな」
 爪先立ちの忍び足で、さらにふすまを開けるような仕草をするトウジ。
「添い寝したりとか」
 続いてケンスケがトウジに寄り添ってみせる。
「抱きしめたりとか」
 シンジの方を見ながら、がばっとケンスケを抱きしめるトウジ。
「そのまま勢いでって、・・・それは無いか」
 トウジを押し倒そうとしたケンスケは、それがシンジの限界を越えている事にやっと気かついた。
「まあとにかくや、そういうの、あるやろ?」
「う、あ、え?」
 パントマイムやら演技やら、二人の妙に生々しい説明で思い起こしたことでもあるのか、
 シンジは”シャワー”のフレーズ辺りから自分の世界に入っていた。

「かぁーっ!、ダメやこいつは」
 アカン、アカンと、手をぷらぷらさせるトウジの横で、顎に手を当てなにやら考え込むケンスケ。
「いやあの、だってほら、あの二人だし、それに・・・はずかしいし」
 どもりながら、心なし顔を赤らめ話すシンジは二人が全く聞いていないことに気づいていない。
「そりゃ僕だってそれなりに・・・けど、でもやっぱり、ほら、物事には時期と順序ってものが・・・」
「せんせ」
「それにさ・・・」
「おい、せんせ?。どないした?」
「え?・・・あっ」
 やーっとめくるめく想像の世界からカムバック。
「な、なに?」
「そいで、あれはどないしたんや」
 と、宙に四角い枠を書いてみせる。
「?」
「あーの、さっきのあれや。あー、ほら、コや、コ」
 トウジの顔が赤いのは気のせいか?。
「あ、あれ」
 やっと合点の行ったシンジはごそごそとポケットを探り始めた。
「お前、なんだかんだ言ってもっとるんかい・・・」
「いや、だって起きたら脇に置いてあったから・・・」
 親切な人もいる物である。
「んーーーーー、まあええわ。それ、どないする気や」
「え?、どないっ、て」
 戸惑うシンジの首に手を回し、ぐいっと引き寄せる。
「せやからな、使う気はあるんか、て聞いとんのや」
「つ、使うって、まさかセ・・・・」
「馬鹿、声でかいわ」
 慌てて、口を押さえるトウジ。彼にとって堂々とは言えないフレーズらしい。

「で、でも・・・そんな・・・まだ早いよ」
「・・・せんせ、・・・誰がそっちやって言うた」
 シンジは確実に、ベッドの下に隠した本の中味を思い浮かべていた。
 こいつ以外とゆだんならんなー
 気を取り直して、
「あのな、アスカに一泡吹かせたらんか?」
「・・・アスカに?」
 シンジの脳裏には、上半身を反らしたアスカの、人を見下した視線が蘇っていた。
 ちょっと腰が引ける。
「普段いいようにされてるんや、ちょっとくらいバチ、あたらんやろ」
「う、うん・・・」
 力無くうなずくシンジ。
「でも、・・・どうやって?」
「・・・考えとらん」
「・・・」
 なんだか予想していた答えがそっくり返ってきて、がくっとコケながらも、ちょっとほっとする。
「でもな、そいつつこうたらなんや面白いこと出来るとおもわんか」
「う、うん。・・・でも、また今度・・・」
「なーに言ってんねん、今日や今日。やられたらやり返す、それが男ってもんやろが」
 ぐっと握り拳を突き出す。
「でも、何やるか考えてないんだろ」
「うっ」
 痛いトコを突かれ拳を握ったまま固まるトウジ。
 が、しかぁし、
「その点なら、」
 長らくお待たせいたしましたと言わんばかりに腰に手を当て仁王立ち。
 何に対してなのかやたらと自信を溢れ流し、片手で眼鏡をクッと直す。
「この僕に任せてくれたまえよ」
 表情が読みとれないのは光の反射のせいだけだろうか?。
「そや、お前がいたんやなぁケンスケェ」
 おおっ、と希望の光を見つけたように眩しそうに目を細めるトウジ。
 低い姿勢から立っているケンスケを見上げたために日差しが眩しかったとかいう事は
 ひとまず置いといて、
「期待してるでぇ」
「ふっ」
 ゲン○ウ笑い。
「・・・・・・・」
 勝手に盛り上がる二人に、シンジは一人ひしひしとイヤな予感を感じとっていた。










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そして、放課後

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もー信じらんなぁい
 いいんちょ、ヒカリを取り囲んだ女子数名は、何故か、怒っていた。
「学校にあんな物持ち込むなんてっ!」
 変態よねーと、口裏の合わさる五、六人。
 六時間目の終わった直後、当然教室にはシンジもいるわけで、シカトされながらも遠回しに
 突き刺さってくる視線にグッサグサに刺され、
 ちょっとした金縛り状態に陥っていた。
 別にシンジは悪くない、なーんにも悪く無いって言うか、壱百%被害者である。
 しかし止めどない毒舌の波状攻撃は、確実にシンジを標的にして繰り出されていた。
 しかし被害者という事を言うなら、集まった女子の中心、いいんちょヒカリも一応、被害者ではある。
 おそらく純情な彼女にしてみれば、コンちゃん等は不浄の物に見えるのだろう。
 第一これ指定物じゃないし、そういう設定なのである。

 では、元凶は誰か?。
「ほーんとバカはバカなのよねー、誰か襲う気だったのよあれ使って。最低よねー」
 問答無用にアスカである。
 あの後、涙の後を付けたヒカリを利用し、昼休み3分にしてクラス女子はもちろん、日頃もてない
 一部男子を反シンジ派に引き込み、扇情、動員してシンジ拒絶網を造り上げてしまっている。
 さすがに対シンジ最終人型決戦兵器だけのことはある。
 さらに言えばその爆発的な動力源は”シンジいぢめると面白いから”、つまり半永久機関だ。
 そしてそのエネルギー量は言うまでもなくN2兵器並みである。

「気にすな気にすな、あないなもん。」
「そうそう、僕らがいるじゃない」
「あ、ありがと」
 一方教室の傍らでは、今では数少ないシンジの味方、作戦本部長相田君と黒ジャージがシンジを
 両脇から挟み勇気づけていた。
 が、何故かシンジの反応はおびえが入っている。
「まっとれやぁ赤毛無差別人災女ぁ、日頃の鬱憤全部まとめて、”あ、そないなことまで・・・いやーんっ”、
 っていわしたるからなぁ・・・」
「うふ、うふふふふふふふ」
「・・・」
 無茶な想像に走るトウジと、笑いながらひたすらパソコンをいじくるケンスケ。
 しかも、どう利用するつもりなのか、ケンスケの端末画面にはどこかでハックしたらしい
 『特A級戦闘目標「殱滅」を目的とした陽子反動弾投入への考察:その6』と銘打たれた文章が
 高速でスクロールしていた。

 殱滅----すっかり滅ぼすこと。「某社 国語辞典 第八版より」

 シンジの頬を嫌な汗が一筋、流れた。

 ・・・やっぱり今の内に謝っとこう
 このまま行くと局地戦闘に発展しかねない。
 プライドその他はこの際捨てることにして。
 日頃の経験から一直線にその結論にたどり着いたシンジは、ゆっくりと二人に気づかれないように
 席を立った。



「あ、あの・・・委員長」
 ぴしっ
 それまで口々に陰口をたたいていたヒカリ擁護派が一気に固まる。
 宙をさまようシンジの言葉。
 シンジはめげずに続けた。
「あの、ちょっといいかな」
「・・・・・・」
 黙り込んだヒカリに変わってアスカが口を開く。
「用事なら、私を通してもらえるかしら?」
 小馬鹿にしたような口調はいつものこと。
「いや、その、”あれ”の事なんだけど・・・」
 詰まりながらもシンジは話しを進めた。



「ん、何やってんやあれ?」
 教室の静けさに振り返ってみると、ふんぞり返ったアスカを前にシンジが何やら話しかけている。
「謝ってるんじゃないか、あれは」
 視線の先ではシンジがヒカリに向かって頭を下げていた。
「なんでや、シンジが謝る必要なんか無いやないか!」
「シンジはもめ事嫌いだからねー、自分で収める気なんじゃない」
 あーあ、つまんないの、とケンスケが計画を組み立てていたパソコンを閉じた。
「なにーっ、んなことしたらわいの計画がぁぁ!」
 自分の事かい。
 焦るトウジの意志に関係なく、シンジはなおも頑張っていた。


「だからさ、別に悪気があったわけじゃなくて、あれも拾ったものでさ・・・」

「嘘ね。わかりやすいのよあんたって」
「嘘じゃないよ、ホントだってば」
 取り付くしまもないアスカに、シンジはいつになく真剣だ。これだけはハッキリさせて於きたいと
 ばかりに言葉を返す。

 ・・・シンジ君、一生懸命だ
 うつむいていたヒカリがシンジを見やる。
 もう許して上げた方がいいかな・・・、もともとあたしの早とちりみたいだし・・・
 ちらっと見上げたアスカはまだワヤワヤとシンジに食って掛かっている。
 珍しくシンジもそれに応戦、健闘していた。

「だから、別に悪気は」
「何よ、あたしの前に立ちふさがったのはあんたでしょ」
「廊下はそんなに狭くないだろ避けて通ればいいじゃないか」
「あんたバカァ、あんたが私の前に立ってるっていうことがダメなのよ、頭悪いわね」
「何でアスカのことになってるんだよ、無茶苦茶じゃないか」
 ヒカリは何とか会話の切れ端をつかもうとするが、二人の止めどない会話の応酬に仲裁に入れない。
「とにかくあんたが間違ってんのよ、バカシンジ」
「そんな・・・」
 シンジが言いよどんだ。チャンスっ!。
「アスカ、もう・・・」
「やめとけ、やめとけっ!」
 穏やかさを込めたヒカリの声を、トウジの大声がかき消した。
 バカトウジー!!!
 そんなヒカリの意志とは別にトウジはなおも続ける。
「シンジは悪いことないんや、謝る必要なんかない」
 前言撤回、話が思った方向に。
 うまい、ナイスよトウジっ
 すかさずヒカリも、
「あ、あのね、ア・・・」
「シンジ、帰るで」
「ちょっとあんた何言ってんのよっ!」
「ス、カ・・・」
シンジを戸口に引っ張るトウジを追って、アスカを中心にヒカリ擁護派の輪がヒカリの机から離れる。
もう当事者が誰とかは関係ないらしい。
 ぽつねんと残るヒカリの言葉。

 やっぱり、バカーッ!!

 ヒカリの心の叫びも届かず、事は代理戦争に発展していた。

「あんた、あたしの話に許可もなく入り込んで謝りもしないなんて、いい度胸じゃない」
「知るか、んなもん、このサディスト女が!」
「なぁーんですってー、あんたみたいな筋肉おつむにいわれるなんてっ。こんの万年黒ジャージがっ!」
「うるさい、これは趣味じゃっ」
「なお悪いわよっ」
 とことん不毛である。
「だいたいなぁ、なんでお前が出てくんねん。シンジとヒカリの問題やろーがっ」
「分かってないわねえ、シンジはヒカリを襲おうとしてたのよ、あんなモン持ち込んでっ!」
 それは違う。
「これはもう女性全体に対する侮辱よ」
 無茶苦茶だが、取り囲んだ輪の過半数がそれにうなずく。
 彼女たちの中では、すでにあの一件が強姦未遂事件として定着してしまっているようだ。
 ひどい話である。

「それがなんやっ、健全な男なら何も悪いことあらへんやないけ」
 それもかなり、いや、一部違う。
 おまけにトウジのその一言は、必至の弁解でイメージを回復しかかっていたシンジに取って、
 かなりの致命傷だった。
 周囲を囲んでいたギャラリー、大半は女子だが、から明らかに非難の視線が突き刺さる。
 トウジと、哀れなことにシンジにも・・・。
 そして、悲劇はそれだけではなかった。
 トウジの乱暴な発言はある人物の逆鱗に触れたどころではない、ぶん殴っていたのである。
「なぁぁんですってぇぇぇぇぇ?」
 ギャラリーの怒気の中でも一際目立つ怒りを、いや、殺気を発してその彼女が人垣をかき分けた。
「い、委員長!?」
「鈴原君、・・・何て言ったのかしら、・・・今」
 ゆっくりと一歩ずつ歩み寄りながら、生温い風がぞわっと頬をなでるようにヒカリの言葉が地を伝い、響く。
 ギャラリー、アスカも含めて、全員がズサッと一歩後ずさった
「な、なんや。何か文句・・・」
 いいながらも後ずさるトウジ。
「何て、言ったの?」
 ヒカリがさらに詰め寄る。
「お、俺はあやまらんで、あやまらんからなぁぁぁっ」
 怪しく光りを放つヒカリの視線にもろに直視され、トウジの声はもはや悲鳴になっていた。

ズアパァァァァァァァンッ!!!

 必殺平手打ち。
 クルティカルっていうか、そういうようなレベルじゃなかった。
「ばかぁっ!」
 壁に頭をめり込ませ、びくんっ、びくんっと痙攣するトウジに涙目で一言いい捨て、恋に破れた
 ヒロインのごとく斜め四十五度の姿勢で可憐に走り去るヒカリ。
 しかしその後に残ったのは殺人未遂の現場であったが・・・。

「・・・えっ、と?」
 意気込んでいた気勢がヒカリの怪しい毒気にそがれ、
 やや気抜けしたアスカが我に返る。
「ちょっと・・・、生きてる?」
 痙攣している黒ジャージの反応は、・・・ダメっぽい。
「・・・・・・じ、自業自得よね・・・」
 さすがに言う声がちょっとひきつっている。
「ふ、ふんっ。」
 そして、そのまま何かをごまかすように、その禁忌を犯した二人、正しくは一人、に背を向け
 教室を後にした。
 アスカの声でヒカリの怒気に硬直していたギャラリーも正気を取り戻しはじめ、倒れた二人、
 シンジはヒカリに一睨みされ恐怖のあまり失神、を何か危険な物を見るような目で眺め次々と
 教室から出て行き始める。
 触らぬ神になんとやら、一気に熱も冷めたらしい。
 せちがらい世の中である。

「あーあ、・・・」
 三人だけが残った教室。
 白目を剥いたままのトウジと、今日二回目の涙に床をぬらすシンジを見やりケンスケが
 ぽつりとつぶやいた。
「はなぢ二号」 
 そして、シンジの災厄は拡大していった。









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続 く

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後書き


ディジタリオン襲来」(by現世紀)



何はさておきここまで読んでくださったあなたに、謝謝
私の初小説、いかがだったでしょうか?。
などと常識人っぽい出だしをしてみたりしつつ、

初めましてみなさんディジタリオンです。

いやぁもう、ほんっとうれしいっす。
なにがって?、そりゃあーたきまってんべよ、
自分の小説がインターネットのるってんだよ!?。
そりゃあ日本海を中国まで走破するさ、インターネット初心者としては。

ましてや、人ん家のインターネットで細々とやっている身分としては、

ああ、俺も参加してんだな。

って、珈琲片手に軽くため息を付きつつ男の哀愁を漂わしもするってもんよ。
もちろん日本海上を高速で走り抜けながら。

はあ、欲しいなぁペンティアムマシン・・・。
来年頑張ってみようかねぇ・・・。

なんて個人的事情はさておき、

・・・っと待て、自己PRがまだだった。

えーっと、初めましての方、そうでない方(例えば、きりうさん)

はげんでるかーい?。(なにを?)
暴投(もとい冒頭)からもお解りになるように
妙にテンションの高いインターネット初心者、ディジタリオンです!!!。

え?、名前が何かのタイトルみたいだって。

気のせいだ忘れろ。

なんてちょっとお茶目な僕ですが、もうお解りですね。

頭悪いです。

まあ、これを書いてる今が深夜3時という、
非常にナチュラルハイな時間帯であることもありますが・・・
そんなことはさておいて、おそらく、こいつ何者?、
と思われているかたもおられると思いますので私の実体について少々。

私、ゆさく雑貨店さんの方の連想ゲームにちょくちょく顔を出させてもらってる

ごく普通の一般的物体です。

タイトルっぽい(笑)私の名前も、そこに参加したときに生まれたモノでして、

詳しくは連想ゲームのほうで、二進数、という言葉を探してみてください。

それからメインの小説について、

すいません。キャラを把握しきれてませんね。
それというのもまだ、エヴァを全部見てないからなのですが。

などとさりげなく問題発言してみたりして・・・。

・・・いや、その、見たいんですけどね、
エヴァにはまり始めたのが今年に入ってからでして、
テレビ放送はとっくの昔に終わっているわけでして、
レンタル屋さんはレンタル屋さんで、貧乏高校生としては
なかなかにレンタル料が高いわけでして、
今知り合いに頼んで貸してもらおうとしてるところなんですわ。
(それで表題が「illegal」なんですな、全部見てないから)
一応、トウジが初号にやられて
シンジの瞳孔がギュってになる所までは見たんですが・・・
そっから先がすっげー気になってるところです。
(何か現世紀の尾崎さんみたいだ・・・)
とりあえず、この小説の続きは近いうちにかき上げると思うんで、
その時までには全二十六話+movieを見ておきたいと思います。
とういうわけで、ゆっるっしってくっださいね(悪魔でもリズミカルに)。

全然謝ってねーなぁ・・・と思いつつ、

後書き2「見知らぬメール」に続く。(続くのかっ!?)



追伸、もしくは追記かP・Sか?

小説に関する感想、
そのほか思ったことなど何でも、
下記のアドレスまでメール下さい。

<tuki@uranus.interq.co.jp>

前述の通り、
僕自身はネットにつなげれる環境を作ることが無理なので
友人のアドレスですが・・・。

同項補足

後書き2は「見知らぬメール」なので
メールがこないとどうにもこうにも・・・
なのでみなさん色々書いちゃって下さい

それでは、みなさんごいっしょに

アデュアデュラー


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