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MAGIを守れ
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<第3新東京市 商店街>
「さぁ、いらはいいらはい、傘はいらんかねぇー。」
本日は晴天なり。そんな炎天下で傘を売る少年トウジとケンスケ。
「いらはいいらはい!」
当然、傘など買う客は1人もいない。
「ヒカリ様、駄目ですよ。こんな晴れた日に傘なんか買う人いませんよ。」
全然傘が売れないので、イライラしているヒカリに、おずおずと言い訳するケンスケ。
「おだまり! 晴れてるのがいけないんなら、雨を降らせるのよ!」
ヒカリの指示に従い、ケンスケはありとあらゆる水道管にホースを繋いだ。
「いらはいいらはい、雨が降りまっせーーーーー。」
引き続き客引きをするトウジ。見向きもせず、通り過ぎる通行人の上から、突然水滴が
落ちてきた。
ザーザー。
ケンスケが、天に向って水をばらまいているのである。あわてて、傘を買いに来る通行
人。
「傘をくれーーーー。」
「わたしにも、1本ちょーだーい。」
傘は飛ぶ様に売れ、完売した。
「はーい、閉店でおますーーー。」
ガラガラガラ。
完売と同時にシャッターを閉めるトウジ。それと同時に、雨は降り止んだ。
「なんだよ! 雨なんか降って無いじゃないか!」
「金かえせーーー。」
高い金を払って傘を買った客が、シャッターに罵声をとばしている。
「ねぇ、シンジ。あの店おかしくない?」
「そうだね。調べてみよう。」
ちょうど、その場に通りかかったシンジとアスカは、怪しい傘屋に忍び込んだ。
「フフフフフ。今日は大もうけね。」
札束を握り締めるヒカリ。
「これで、しばらく暮らしていけますね。」
閉店した傘屋の中で賑わう3人に、どこからともなく声が聞こえる。
「どーーーれ、どくろべーだべーーーーーーーー。」
ヒョコっと、テーブルからガイコツの格好をした映写機が出てきた。
「はーーーはーーー。」
ひれ伏す3人に、指示が飛ぶ。
「ネルフ王国には、MAGIというスーパーコンピューターがあるだべ。その中核の脳
細胞を覆っているカバー。それこそがドクロストーンだべーー。それを奪い取るのが、
今回の任務だべーーー。」
「はーはーーーーーーーー。」
その様子を見ていたシンジとアスカ。
「アスカ、こうしちゃいられない。ぼく達も急ごう。」
「ええ。」
<コンフォート17マンションの地下駐車場>
2人はコンフォート17マンションというマンションに住んでいる。その地下駐車場は、
実はヤッターマンの基地となっていた。
「ヤッターーーー。」
ヤッターシンジに変身するシンジ。
「ヤッターーーー。」
ヤッターアスカに変身するアスカ。
「ブッ。」
アスカの変身を見ると、毎度、鼻血を出すシンジ。
「よし、行くぞ! 出動だヤッター綾波!」
シャッターが開き出てきたのは、車の上に女の子の胴体があり、その上に巨大なレイの
顔がついている2等身のヤッター綾波だった。
「わかったわ。」
ヤッター綾波の肩に取り付けられた吊革にぶら下るヤッターシンジとヤッターアスカ。
そして、正面の椅子に座るペンペン。
「クワッ。」
こうして、ヤッター綾波は、「ウーーワワンワン?」と走り出した。
かーめんにかーくしたーせーーいぎのこころーーー♪
<ネルフ王国>
ネルフ王国では、今、加持リョウジ王子とミサト姫が幸せに暮らしていた。それも、全
ての治安,経済などの管理をスーパーコンピューターMAGIが行い、平和で豊かな国
を作っているからだった。
「加持、ほら、つぎなさいよ!」
「はいはい。」
朝っぱらから、エビチュを飲むミサト姫と、それに付き合う加持王子の姿が、今日も王
宮にはみかけられた。
「そろそろ、国税調査をしないと・・・。」
「だーーいじょうぶよ! ぜーーーんぶMAGIがやってくれるわよ。いいから、あん
たも飲みなさいよ!」
まさしく、MAGIのおかげでこの国は成り立っていた。
●
「ここが、ネルフ王国の宮殿ね。」
ヒカリは、傘の形をしたロボットから顔を出して、王宮を展望していた。
「行くわよ! 鈴原!」
「あらほらさっさー。」
傘ロボットは、壁を突き破り王宮へ突撃する。
ガラガラガラガッシャーン。
「な、何?」
「MAGIの方で、何か音がしたみたいだ。ちょっと見てくる。」
ミサト姫の酒盛りに付き合わされていた加持が、これを機会に逃げ出す。
MAGIは地下1階に設置されている。加持が階段を駆け下りた時、ちょうど、傘ロボ
ットがMAGIにアームを伸ばしている所だった。
「何をしている!」
傘ロボットに飛び掛かる加持だが、所詮は人間とロボット。かなうはずが無い。
「うわーーーーーーー。」
アームに殴られ、気絶してしまう。
「あれよ! あれが、ドクロストーンよ!」
傘ロボットは、アームを伸ばし、MAGIの中核となる脳細胞を覆っているカバーを奪
い去って行った。
●
ウーーーーワワンワン。
ヤッターマン到着。
「何か、王宮が騒がしいわね。」
赤い髪をなびかせてヤッター綾波に乗ってきたヤッターアスカが、王宮を指差す。
「行ってみよう!」
ヤッターシンジとヤッターアスカは、ヤッター綾波で王宮に入る。そこには、気絶した
加持王子の手当てをしている、ミサト姫の姿があった。
「あ! あの人怪我してるわよ!」
「本当だ!」
走り寄るヤッターシンジとヤッターアスカ。
プーーーーーーーーーーーーー。
「うわっ、汚い。」
いきなり、加持の怪我に、口に含んでいたビールを吹きかけるミサト姫。消毒している
ようだ。
「あなたたち、誰よ?」
ミサト姫がヤッターシンジ達に気付く。
「ぼく達はヤッターマンです。それより、どうしたんですか?」
「急に傘の形をしたロボットが現れて、大事なコンピューターのカバーを奪っていたの
よ。あれが無いと、ゴミが入ってダメになってしまうわ。」
顔を見合わせる、ヤッターシンジとヤッターアスカ。
「どろんぼう達だ!」
「まかせて! このヤッターアスカが取り替えしてあげるわ!」
「本当に? お願いねん!」
ヤッターシンジとヤッターアスカは、傘ロボットが残したタイヤの後を追跡した。
●
「今回は、楽勝でしたねーーーーー。ヒカリ様。」
「ま、ちょっと、物足りないけどねーーー。ほほほほほほほ。」
「あ! そんなことを言ったら・・・。」
気になってバックミラーを見るケンスケ。
「ほら、来ちゃったじゃないですかーーー。」
「いいじゃない。今日という今日は、決着をつけるわよ! やっておしまい!」
「「あらほらさっさ!」」
くるっと、傘ロボットは方向を変え、ヤッター綾波と対峙した。
「今日は、いつもとは違うでーーー。弱点を徹底研究してきたさかいなぁ。
ポチっとな。」
トウジがボタンを押した瞬間、焼き肉の臭いが充満しはじめる。
「うっ・・・。私、ダメ。」
ヤッター綾波の元気が無くなる。
「まずい、ヤッターアスカ。元気の元だ!」
ヤッターアスカは、ポケットからニンニクを取り出した。
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解説しよう。ヤッター綾波に、ニンニクを与えると、体内にあるターミナルドグマで
クローンを生成し、チビレイが登場するのだ。
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「あまいで、ヤッターアスカ! ポチッとな。」
トウジがボタンを押した瞬間、音楽が流れはじめる。
ハーーーレルヤ。ハーーーレルヤ。
「キャーーーーーーーーーーーーーーー!!」
頭を抱え、座り込むヤッターアスカ。
「ヤッターアスカ、早く元気の元を!」
アスカから、元気の元を奪い取るヤッターシンジ。
「ヤッター綾波!」
ヤッター綾波の口に向って投げようとした時、シンジの周りに落下する人形がいっぱい。
ポト。
それを見たヤッターシンジは、ニンニクを落とす。目が潤んでいる。
「カヲルくん。こんな所にいたんだね。」
カヲル人形に囲まれて幸せいっぱいのヤッターシンジ。
「すごいじゃない! トウジ! この機会にトドメをさしておしまい!」
「あらほらさっさ!
ポチっとな。」
傘ロボットから大量に現れる、チビカサ。
「チビカサ。チビカサ。チビカサ。チビカサ。チビカサ。チビカサ。チビカサ。」
なぜか、全てのチビカサが、「チビカサ。」と言っている。
「長かったわねー。これで、来週からわたし達が主役よーーー。」
ヤッター綾波に近づいて行くチビカサ。しかし、それより早く、ヤッター綾波に近寄る
黒い影。
「クワッ!!」
ニンニクをヤッター綾波の口の中に投げ入れた。
ピカッ!
赤い目が光り、ぐたーーっとしていたヤッター綾波の背筋がシャキっとする。
「効いたわ。今週のビックリドッキリメカ発進して。」
ヤッター綾波は、上半身を倒すと、アーーーーーーーンと口を開け、ペロっと舌を出し
た。
「チビレイ。チビレイ。チビレイ。チビレイ。チビレイ。チビレイ。チビレイ。」
ヤッター綾波から、出てくるチビレイを見たヒカリは、トウジの首を閉める。
「このスカポンタン! どうして、キャラクターみんなの弱点を押さえておかなかった
のよ!!! ペンペンが残ってたじゃない!!!」
「いつも、何もせんから、忘れとったんや、堪忍やーーー。」
「明日から、弁当は無いからね!!!」
「そんなーーーー。堪忍やーーー。」
ヤッター綾波に飛び掛かるチビカサ。
「チビーカサーーー。」
「チビーレイーーー。」
しかし、チビレイ達は、次々とATフィールドで跳ね返す。
跳ね返ったチビカサは、ヒカリの乗る傘ロボットに突き刺さっていった。
チュドーーーーーーーーーーーーーン。
傘ロボットが爆発し、音楽が流れなくなったので、復活するヤッターアスカ。
「ふーーー、もうちょっとで、心が汚されるところだったわ。ん? ヤッターシンジ?」
シンジは、カヲル人形を抱きかかえて幸せそうにしている。
ボカッ!
「何してんのよ! このホモ!」
カヲル人形を、全て河に捨てるヤッターアスカ。
「あーーーーーー!!! カヲルくーーーーーーん。」
ヤッターシンジが、流れるカヲル人形を追いかけて行ってしまったので、今日の勝利の
ポーズは無くなってしまった。
●
3人乗りの自転車で、逃走するどろんぼう達。
「「「えっほ、えっほ、えっほ。」」」
「でも、今回はドクロストーンを手に入れたことだし、ゲンドウ様・・・いや、どくろ
べぇ様も、お仕置きはしないんじゃない?」
「そやなぁ。苦労してんからなぁ。」
「「「えっほ、えっほ、えっほ。」」」
山超え、谷超え、3人乗りの自転車はひた走る。
「どーーーーーれお仕置きだべーーーーーー。」
「ど、どくろべぇ様、ちゃんとドクロストーン取ってきたじゃないですかぁ。」
「ほうやほうや! ちゃんと、見てくんなはれ。」
「それは、ただのカバーだったべー。だからお仕置きだべーー。」
「そんなーーー。」
ヒカリ,トウジ,ケンスケは、傘の雨にうたれ、悲鳴を上げ続けた。
●
そして、その後、ネルフ王国は、MAGIを失ったものの、ミサトが積極的に政治を行
うようになり、平和は続いたらしい。
●
夕日を背に、ヤッターアスカはペンペンとヤッター綾波に乗って帰っていく。
今日も行く行くヤッターアスカ!!
ヤッターシンジは?
fin.
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