そして、学園祭の朝
「碇君起きてぇ!」
誰かが僕の肩を揺すっている。
「んあ・・あ〜綾波・・ おはよう」僕はようやく目を覚ました。
「今日は学園祭だから、急いでくれる?!」
綾波が僕の横に跪いて言った
「うん わかったよ・・」僕はあくびを噛み殺して、立ち上がった。
「もう朝御飯の準備は出来てますから!」
綾波はそういって、僕の部屋から出ていった。
「綾波が起こしに来るのは久しぶりだなぁ」僕は呟きながら、寝間着を脱ぎ、制服を着た。
「おはよ〜」僕はそう言って食卓に歩いていった。
「あ、碇君! もう出来るから、座ってて!」
綾波が料理の手を止めて言った。
「うん」僕は食卓の椅子に座った。
「いい匂いだなぁ」僕は鼻をひくつかせた。
「あれ?アスカはどうしたの?」僕は疑問を口にした。
「クラブの準備で朝早く出かけられましたよ」綾波が料理をしながら言った。
「そうか・・そんな事昨日言ってたような気もするけど・・」
僕はまだ完全に目が覚めずにぼーっとしていた。
「はい どうぞ!」
綾波がトレイから、味噌汁とごはんと海苔を僕の前に置いた。
「さ、どうぞ!」ぼーっとしていた僕に綾波が声をかけた。
「あ、ごめん・・ いただきます!」
僕はそう言ってから味噌汁を啜った。
「おいしい 今日の味噌汁とてもおいしいよ!」僕は綾波に言った。
「本当?碇君」綾波が箸を置いて言った。
「うん!」僕はごはんの上に海苔を乗せて食べた。
「この卵焼きもいつも以上においしいなぁ」僕は食べながら言った。
「ありがとう!碇君!」綾波が少し頬を染めて言った。
「そ、そんな お礼を言うのは僕の方だよ?」
僕は訳がわからなかった。
数分後
ピンポーン ピンポーン
ドアホンの音が鳴り響いた。
綾波がリモコンを押してドアのロックを外した。
ガーガシャン
「おまえら まだ飯食うとんのかい?」トウジが笑った。
「二人っきりで仲良く朝食?いや〜んな感じぃ」ケンスケがおどけた。
「鈴原は朝食べて来なかったんでしょ!身体に悪いわよ!」
洞木さんがトウジに言った。
「一人で朝飯作るのは面倒なんじゃ」トウジが頬を手で掻いた。
「そうなの・・」洞木さんが俯いた。
「委員長が気にせんでもええって」トウジが洞木さんの肩に手を置いた。
「ちょっと待ってて! すぐ終わるから」僕はトウジ達に声を掛けて食事を再開した。
「ねぇまだ卵焼きある?」
僕は二杯目の御飯をよそってから綾波に聞いた。
「あ、そこの蓋をした入れ物にあります!取りましょうか?」綾波が答えた。
「いや、自分で取るよ」僕は卵焼きをごはんの上に乗せて一気に食べた。
「さ、行きましょうか!」僕がようやく食べ終えたので綾波が立ち上がった。
「うん! 待たせてごめんね!」僕は三人の方を向いた。
「あ・・・碇君! 御飯粒が」
綾波の顔が僕の顔に近づいて来て、綾波が僕の顎についてた御飯粒を
口で取り除いた。
「あ、ありがとう」
「ま、またしてもいや〜んな感じぃ」ケンスケとトウジが叫んだ。
「あ、綾波さんっ 貴方達まさかっ」洞木さんも顔色を変えてしまった。
「あ、碇君・・ごめんなさい・・つい」綾波が下を向いてしゅんっとなってしまった。
「いいんだよ 綾波・・さ行こう!」
数分後
僕達は走りながら学校へ向かっていた。
「今日午前中のうちのクラスの公演が終わったら、後は自由行動ですからね!」
洞木さんが走りながら僕達に言った。
「そりゃ楽しみやなぁ〜」トウジが呟いた。
「そうよ! だから白雪姫を成功させましょうね!」洞木さんが答えた。
「おいトウジお前何の役だったっけ?」ケンスケがトウジに聞いた。
「木だよ」トウジが答えた。
「え?何だって?」ケンスケが聞き返した。
「木の役なんだよ! だから立ってるだけでいいんだよ!
そういうお前は小人だったな!」トウジがケンスケに言った。
「そうなんだよなぁ 制作費が足らないのと、時間が無いせいで、
まるで前衛映画のように、人が木になったり、山になったり・・」
僕は思い出しながら呟いた。
「碇・・お前はいいよな!王子様役だからな」ケンスケが呟いた。
「恥ずかしいだけだよ」僕は呟いた。
「わしなんか、おじいが研究所休んで見に来るんやで!
来んでもえいって言うてんのに・・」トウジが呟いた。
「俺の所もさ、おやじが来るんだよ・・」
「はぁ〜 ×2」
「ほ〜ら!鈴原!遅れるわよ」洞木さんが僕達に発破をかけた。
僕達は階段を走りあがって教室に走り込んだ。
「ぎりぎりセーフ!」僕は安堵した。
だが、教室には男子しかいなかった。
「遅くなっちゃったぁ」洞木さんも入って来た。
「あ、もう着替えに行ったのね・・」
洞木さんは、綾波を連れて、空き教室に向かった。
「着替えるとするか・・」僕は王子様の服に着替えた。
一部の着替えを要する者以外は、制服のままだった。
「おい! 碇が準備出来たってよ!」クラスの男子が、空き教室に声をかけた。
「ハイハイ」アスカが化粧箱を持って現われた。
「あ、アスカおはよう」僕はアスカに声をかけた。
「時間が無いのよ!ほら早く座りなさい!」胸元が開いた薄紫色のドレスを着たアスカが、
僕を椅子に座らせた。
キョウコおばさんのドレスを借りて来たって言ってたけど・・
「え〜と まず白粉ね」パタパタ
アスカが僕の顔に白粉を薄く塗った。
「それから、眉毛を黒く塗ってと・・ あ、この色にしようかな」
アスカは僕の化粧に没頭していた。
「よし!ま、これでいいか! 」アスカが化粧箱をたたんだ。
ガラガラッ 教室の扉が開いて、ミサト先生が顔を出した。
「あと10分で公演開始だからね!」ミサト先生はそれだけ言って出て行った。
5分後
着替えの終わった女子達が教室に入って来た。
「さあ、白雪姫の到着ですよぉ」洞木さんが白雪姫の格好をした綾波を連れて来た。
「さぁ 時間ですよ!みなさん!」ミサト先生が教室に入って来た。
「さぁて 木になって来るかな・・」トウジが呟いた。
「ま、そう言わずに・・公演が終わったら、自由行動なんだから!」
ケンスケがトウジをなぐさめていた。
「自由行動ねぇ・・」だがトウジは元気が出なかった。
「ねぇトウジ! 高等部の2年A組の人達がタコ焼きするって言ってたよ」
僕はトウジに言ってあげた。
なにせ、クラスの数が少ないので、出し物も少ないのだ。
ま、新設校で生徒がまだ少ないから仕方無いんだけど・・
だから、一段上の区画にある 第三東京市立第一高校も
同時期に学園祭をして、自由に行き来出来るようにしているのである。
後、文科系の各クラスの出し物とかだけがこの校舎であるだけなのだ。
僕達は長い校名を言うのが面倒なので、高等部と呼んでいた。
僕達は体育館の狭い控え場所で、出番を待っていた。
わーーー パチパチパチ
僕達の前に公演した、1年B組の生徒達が、もう一方の出口から出て行った。
「それいけっ!」ミサト先生に先導された僕達は所定の場所に行った。
まず、木の役のトウジ達は、首から、”木”と書かれた札を下げて所定の場所についた。
さらに奥には、数人がピラミッドを作り、山を形どっていた。
−−scene1−−
7人の小人達が舞い踊る森の中に、綾波扮する白雪姫が登場した。
「わぁ!白雪姫だ!」
「美しいなぁ」
「僕らと踊ろうよ!」
「レイちゃ〜ぁん」
白雪姫の登場と共に、客席にいた、自称綾波レイ親衛隊の男子がアイドルの親衛隊のようなダミ声をあげた。
このレイちゃん親衛隊と言うのはメンバーは僅か30人ながら、かなり濃い集団だと聞いている。
彼らの隊長は、校内新聞を作る新聞部の部長でもあるのだが、親衛隊の活動のせいもあり、
月1回の発行も危うくなっているらしく、一部の者が校内新聞の発行を強く求めているらしい。
ナレーション
「とある国の東にある森に住んでいる、少女は、その白い肌と美貌で、
白雪姫と呼ばれていたのです」
「ええ」
白雪姫と7人の小人はまるでミュージカルのように、歌って踊った。
「もう限界だぜ・・」
「俺もだよ 死ぬな!」
奥の方でピラミッドを作って山を表現している数人の顔は蒼かった。
−−scene2−−
アスカが扮する魔法使いは、鏡に向かっていた。
「鏡よ鏡よ鏡さん 世界で一番美しいのは誰?」
そして鏡から、綾波扮する白雪姫の顔が浮かびだした。
「ををおぉ〜」ギャラリーは少し驚いているようだ。
実は、これは鏡では無く、鏡の枠にラップを張って、スポットの調整で
鏡に見せかけていたのだった。
そのラップに後ろに隠れていた綾波が顔を突っ込んだ、という訳なのだった。
「こやつは何者じゃ!」アスカ扮する魔法使いが叫んだ
すると従者が出てきて
「これは、東の森に7人の小人と共に住んでいる”白雪姫”です!」
と言って去って行った。
「クク 白雪姫だとぉ・・」アスカ扮する魔法使いは顔を真っ赤にして怒った。
−−scene3−−
「え〜リンゴぉ〜 リンゴぉ!」アスカ扮する魔法使いは、
リンゴの入った駕籠を手に、白雪姫の住む、森の街にいた。
そして、小人役の生徒が前を横切った。
「ちょいとお待ちよ小人さん!」アスカ扮する魔法使いが声をかけた。
「なんだい? オイラに用かい?」小人が立ち止まった。
「私はリンゴを売ってるんだけど、誰も買ってくれないんだよ・・
だから まけとくから、買ってくれないかい?」アスカ扮する魔法使いが言った。
「いくらだい?」小人役のケンスケが答えた。
「全部で銀貨一枚でいいんだよ・・売れないと、薬が買えないもんでねぇ ゴホゴホ」
アスカ扮する魔法使いが言った。
「わかったよ 買ってあげるよ! ほら!」ケンスケ扮する小人が銀貨を渡して、
リンゴの入った駕籠を手にして白雪姫のいる森に向かって行った。
「しめしめ・・これで、白雪姫は・・」アスカ扮する魔法使いはそういって退場した。
−−scene4−−
「白雪姫ぇ」ケンスケ扮する小人が綾波扮する白雪姫のいる森に着いた。
「あら、小人さん なあに?」綾波扮する白雪姫が声を返した。
「ほら おいしそうでしょ! リンゴ貰ったんだ! 白雪姫にあげるよ!」
「まぁ、ありがとう!」綾波扮する白雪姫は駕籠の中からリンゴを一つ取ってかじった。
「うっ!・・・・」綾波扮する白雪姫は倒れてしまった。
「ああっ 白雪姫! 白雪姫!」7人の小人が集まり、倒れた白雪姫の周りを回った。
「眠っているだけです!」小人の一人が、白雪姫の胸に耳を当てて言った。
ナレーション
だが、呼べど叫べど白雪姫は目を覚まさなかった。
それはともかく!踊っていないでなんとかしろ!と皆さんお思いでしょう。
ワハハハハ
ギャラリーは笑ってしまった。
−−scene5−−
途方に暮れる小人達の横に、馬に乗った(生徒3人で騎馬を作っている)
王子様役の僕が進んで行った。
「どうかなされたんですか?」僕は小人に声をかけた。
「白雪姫が、白雪姫が目を覚まさないのです!」
小人の一人が王子様役の僕の足元にひざまずいた。
(よいしょっと・・)僕は馬から降りた。
「をを これは美しい!」僕は棒読みながら、覚えさせられた台詞を言った。
そして、顔を綾波扮する白雪姫の顔に近づけて行った。
(ドキドキ 本当に綾波にははまり役だなぁ・・毎日見てる綾波とは違うみたいだ)
僕は綾波の顔に見入ってしまっていて、足下の注意がおろそかになっていた。
「うわわわわぁっ」 僕ははみ出していた綾波のドレスに足を引っかけてしまい、
僕は寝ている綾波の上に倒れこんでしまった。
「ん んん〜」僕はやっと気付いたものの、何故かしゃべる事が出来なかった。
何と、寝ている綾波に倒れ込んだ僕は、事故とは言え、綾波に口づけをしてしまっていた。
「??碇君大丈夫?」
「ゴ、ごめん わざとじゃ無いんだ。」
「くぅをらぁ〜 シンジぃ」魔法使い役のアスカまで飛び出て来てしまった。
「わちゃぁ」僕はアスカの制裁を恐れて、思わず横に逃げてしまった。
「むわてぇ〜」だが、アスカは執拗に僕を追って来た。
「誰か助けてぇ〜」僕は山を作っている人たちの中に突っ込んでしまい、
ピラミッドまで壊れてしまった。
劇は完全に、めちゃくちゃになってしまった。
「え〜オホン!」
だが、ナレーターが僕たちを無視して、そのまま話しを続けてしまった。
ナレーション
お、王子様のキスで何と、白雪姫は目覚めたのです。
二人はお城で末永く幸せに暮らしたそうです
そして、いきなり幕を下ろしてしまった。
最後はどたばたではあったものの、観客は盛り上がっていた。
アンコール! アンコール!
ギャラリーは熱狂して叫んでいた。
「あと1分あるから、並びなさい!」
ミサト先生が僕達を横に並ばせて、幕を上げ、
僕達は観客に頭を下げた。
「失礼しましたぁ〜」僕たちは一斉に叫んだ。
そして再び幕は降りて行った。
「ハイ お疲れさん! ま、いろいろあったけど、お客は喜んでたんだから、
いいじゃ無いの!昔、大正時代の歌劇団なんかセットまで壊した事があるそうよ!
だから気にしない 気にしない! さ、メイクを落したら、後は自由行動よ!」
ミサト先生がそれだけ言って、教室を出ていった。
「さ、メイク落して来なきゃ」僕は洗面所に向かった。
バシャバシャ 丹念に顔を洗って白粉などのメイクを落す事が出来た。
「さて・・」僕は教室に帰った。
「よぉ碇お疲れさん」トウジが机の上に座っていた。
トウジはいつものジャージに”木”と書いたカードを首から下げるだけだったので
着替えの必要が無かったようだ。
「よう碇!役得やったなぁ ん?それとも日常茶飯事かぁ?」トウジがふざけて言った。
「トウジまで、そんな事言うのぉ!」僕はさすがにいい気がしなかった。
「ま、一生懸命やったんやからええやないか! わしはもう 足がぱんぱんや!
おじいがうまいもん食わしたる言うんで、行って来るわ!」
トウジがそういって教室から出ていった。
ケンスケも首からカメラを下げてとっくの昔に教室を出たようだ。
数分後
僕が着替えを終わり、いつもの格好に戻った時、アスカと綾波も戻って来た。
「綾波!アスカ!ごめん!」僕は二人が教室に入るやいなや、ひたすら謝った。
「もういいわよ!バカシンジ! ま、事故だったんなら仕方無いわ!」
アスカが珍しく激怒しなかったので僕はほっとした。
「碇君! 頭を下げないで!碇君が悪い訳じゃ無いんだから」
綾波はそういって微笑んだ。
「じゃ これからあちこち見に行こうか!」
僕はアスカと綾波に言った。
「シンジあんた聞いて無かったの? 私は今日放送部の方に行って、
校内放送やらなきゃいけないのよ!」アスカが残念そうに言った。
「そ、そーだったのか・・僕も明日は吹奏部に顔を出さないといけないし・・」
「ま、普段顔出して無いんだから、こんな時くらいはね・・」アスカが言った。
僕達の中学は、全員が何かのクラブに入る事になっているのだ。
だから、必然的に、幽霊部員が多い訳なんだ。
綾波は図書部 アスカは放送部なんだ。
「じゃ、私放送部にいるからね・・シンジ」アスカがそう言って立ち上がった。
「ちょっとレイ・・来て」アスカは綾波を呼んで何か耳打ちしていた。
「いってらっしゃい」綾波がアスカを送り出した。
アスカは教室を出て行った。
「そ、それじゃどっか行こうか?」僕も立ち上がって綾波に言った。
綾波は黙って肯いた。
僕達はぶらぶらと校舎の中の各クラスの出し物を見に行った。
一階の教室・そして、二階の隣の二年Bクラスの出し物の前に僕達は立っていた。
「お化け屋敷かぁ」僕は呟いた。
「体育祭の前の日を思い出しますね」綾波が僕に囁いた。
「そんなに混んで無いみたいだし、入ろうか?」僕は綾波に声をかけた。
僕達は3分程待って、やっとお化け屋敷に入る事が出来た。
「暗いですね」綾波が呟いた。
「暗く無かったら恐く無いからねぇ・・」
僕達は自然の内に手を組んで、お化け屋敷を歩いて行った。
「キャァ」綾波が声を立てた。
ぴちゃっ! 僕の首筋にもぬめぬめした物が当たった。
「な、何だ!」僕はそのぬめぬめした物を手に取った。
「こ、こんにゃくだよ!綾波」そのこんにゃくには糸がついていた。
誰かが竿を使ってこんにゃくで脅かしているのだろう。
「大丈夫だよ・・行こう」僕達は再び歩き始めた。
すると、前方にマネキンの人形みたいな物がたくさん並んでいた。
僕達はびくびくしながら通り過ぎると、一体のマネキン人形が急に動き出した。
「・・・・!」綾波は何もいえずに驚愕して僕にしがみついた。
「大丈夫だよ・・綾波!あれは、電気で一定の間隔の間動いているんだと思うよ」
僕は綾波に囁いた。
「綾波・・・・」僕はしがみついている綾波がとてもいとおしく感じた。
僕は綾波の背中に手を回して、優しく抱いてあげた。
「碇君・・ありがとう」綾波はようやく立ち直った。
「じゃ、行こうか」僕は掠れる声で綾波に言った。
「・・・・」だが、綾波は動こうとしなかった。
僕達はいつしか見つめ合っていた。
綾波は少し頬を染めて目を瞑った。
僕はマイナスの電極に引き寄せられるプラスの電極のように綾波を抱きしめて、キスをした。
(やわらかい・・・唇ってこんなに・・)僕は夢中になっていた。
偶然も入っていたとは言え、今日二回も僕は綾波とキスしてしまった・・・
僕達は頬を染めたま再び歩いて行くと、火の玉が見えた。
「危ないなぁ布にベンジンでも付けて燃やしているのかなぁ」
僕は呟いた。
綾波は頬を染めたまま、腕を組んで僕について来ていた。
数分後・・僕達は無事お化け屋敷から生還した。
そして僕達は3Fに上がった。
3年A組の出し物は自主制作ビデオの上映のようだったが、
3分前に上映が始まっていた。
僕達は隣の3年B組の出し物を覗いて見た。
中のテーブルの上に水晶球と、タロットカードが置かれていた。
他にも、ゲームセンターにあるような、占いの機械が並んでいた。
「あれ・・やってないのかなぁ」僕はテーブルの上を見た。
テーブルの上には”食事中!すぐ戻ります”と書いた札が置いてあった。
僕達は中に入って行った。
「あ、これ母さんに聞いた事あるなぁ」
僕は前世紀の遺物のようなシールをプリントする機械の前に立った。
「綾波!これやろうよ」僕は綾波を横に立たせてコインを入れた。
「綾波・・もうちょいこっちね」僕達はフレームの中におさまった。
そしてボタンを押した。
数分後
機械からプリントされたシールが2枚現われた。
1枚にシールが20枚程貼ってあった。
「はい!」僕は一枚を綾波に渡した。
綾波は少し頬を染めてシールに見入っていた。
「プリクラはいいねぇ 恋人達の為に作られた最高のマシンさ!」
僕達の後ろから声が聞こえた。
声に驚いて僕達が振り向いたら、さっきまで誰もいなかったテーブルの所に、
男の生徒が立っていた。
「さ、おいで!可愛い恋人達!僕が占ってあげるよ」その男の生徒の声につられて、
僕達はテーブルの前にある椅子に座ってしまった。
「君の名前は?」その男の生徒が僕に聞いた。
「碇シンジです」
「綾波レイです」続いて綾波も答えた
その後も、誕生日とかいろいろ聞かれた。
そして、その男の生徒はタロットを机の上に一枚ずつ置いて行った。
「あなたには恋敵がいますね!」その男の生徒が綾波に言った。
綾波は黙って肯いた。
その後何度も質問をしながら、タロットを並べて行った。
そして、机いっぱいにタロットが並んだ所で、男の生徒水晶球を覗きながら話を始めた。
「お二人が努力すれば、その関係はよりよい物になるでしょう・・
只、一つ、赤く光る星が見えます。決して困難な事が起っても、くじけないで下さい。」
そして、占いは終わった。
僕達は頬を染めてお礼を言って部屋を出た。
「・・・・・」
「・・・・・」
僕達は腕を組んで階段に向かった。
僕達は高等部の校舎に行く事にした。
僕と綾波は高等部への坂道を歩いていた。
「あ!いい匂いがしているなぁ」僕は鼻をひくつかせた」
高等部の校庭には沢山の食べ物などの出店が並んでいた。
「まず体育館から見て行こう!」僕は綾波に提案した。
広い体育館にはいろんな物を展示していた。
どうやら卒業制作の物の即売会や、各クラブが出店を出していた。
僕達はいろんな店を覗いて行った。
そして可愛いアクセサリーを売っている店の前に僕達は立ち止まった。
僕達は、アクセサリーを眺めていたが、
綾波が、”テントウ虫”のブローチを見つめていた。
「綾波・・テントウ虫好きかい?」僕はさりげなく・・のつもりだったが、
ぎくしゃくしながら綾波に聞いた。
綾波は恥ずかしそうに、首を縦に振った。
「すみません!これ下さい!」僕は係りの人にテントウ虫のブローチとお金を渡した。
可愛い袋にラッピングしてもらったそれを、僕は手にした。
「さ、行こうか」僕は綾波といろいろ店を回って行った。
綾波は無言のまま僕の後を着いて来た。
そして、別の店で金色の縁取りのついた、真っ赤な髪止めを買った。
そして、僕達は体育館を出た。
僕は校庭の大きいもみの木まで歩いて行った。
僕は立ち止まって可愛いラッピングをした袋を綾波に渡した。
「プレゼント・・受け取ってくれるかい・・」僕は頬を染めながら言った。
「ありがとう・・碇君」綾波は頬を少し染めて、美しい笑顔を僕に見せてくれた。
「をい!伝説の木の下見ろよ 大胆なやつらだなぁ」
「あ、ホントだ!明日には校内に知れ渡るのに・・」
「普通卒業式の日にあそこで告白するのになぁ! それなら噂広がってもOKだし」
「そうだな・・・けどあの子可愛いなぁ」
「よせよ 寂しくなるじゃないか」
「・・・・・」
僕達は、その後高等部の各教室の出し物を見て回ったが、
あまりこれと言って面白い出し物が無かった。
どうやら、校庭の出店や、体育館がメインのようだ。
僕達は食べ物や、出店の並んでいる校庭に戻って来た。
「さぁ、何を食べる?」僕は綾波に聞いた。
「碇君が食べたい物でいい・・」綾波は恥ずかしそうに言った。
「・・・・」
僕達はクレープや、焼きそばに、ホットドッグそしてたこ焼きを買って、
坂を降りて中等部に戻って行った。
「惣流さんもお腹すかせてるでしょうから、持って行ってあげましょうよ」
綾波が食べ物を仕分けしてアスカ用の袋を一つ作った。
「放送部だったなぁ 行ってみようか」
僕達は靴を履き替えて放送室に向かった。
コンコン 僕は放送室のドアを叩いた。
「どうぞ!」中からアスカの声がしたので、僕はドアを開けた。
「差し入れ持って来たよ!」僕はアスカに食べ物が入った袋を差し出した。
「さんきゅぅ〜 お腹減ってたのよ」アスカは袋を開きながら言った。
「あんた達はもう食べたの?」アスカが綾波に聞いた。
その時、アスカは綾波の胸についている小さいテントウ虫のブローチを見逃さなかった。
「いえ、これからなんです」綾波はアスカに答えた。
「ならここで食べて行きなさいよ!私も退屈してたし」アスカが言った。
「じゃ、そうさせて貰おうかな」僕は椅子を持ってきて座った。
僕達も袋を開けて食べ物を出した。
「じゃ、いただきます!」
「そのたこ焼きマヨネーズついてなかったの?」
「あ、あるよ」
「この焼きそばおいしいですよ!碇君」
「あ、ありがとう」
僕達はいろんな食べ物をとりかえっこしながら楽しく食べた。
僕達は食べ終えて、買っておいたパックのジュースを飲んでいた。
「ところで レイ!そのブローチいいわね!どうしたの?」
アスカがさも今気付いたかのように振る舞った。
「あ、これですか?さっき、碇君に貰ったんです」
「・・そ、そうなの・・・・」
僕達はなんとなくシュンとなってしまった。
「ま、良かったじゃないの・・楽しかった?」アスカが少しとげのある言葉で言った。
「ええ・・楽しかったです」綾波が答えた。
「私はここで一人で放送している間あんた達はどうせいちゃいちゃしてたんでしょ!」
アスカは立ち上がって、コンソールを叩いた。
カチッ
「そ、そんな事ないよ!アスカが気になるからこうして来たんじゃ無いか!」
僕は弁解した。
「何言ってるのよ!どうせあんたの事だから、私が恐いから機嫌を取る為に来たんでしょ!」
アスカが叫んだ。
「そ、そんな事無いよ・・」僕は的確な返事が出来ず、口篭もってしまった。
何故なら今アスカが言った事は、ほぼ真実だったからだった。
「やっぱりそうなんじゃない! 私は同情なんかいらないわ!出てってよ 」
アスカは目に涙をいっぱい溜めて言った。
「アスカさん・・・碇君はそんな人じゃないと思うわ」綾波もアスカをなだめてくれた。
「嘘よ!」アスカは下を向いてしまった。
「アスカ!」僕はアスカに声をかけた。
「何よ!」アスカが上を向いた。
アスカの目の前には僕の手にしている可愛くラップされた袋があった。
「アスカ!僕は君を忘れてやいないよ!」僕はアスカに言った。
アスカはその袋を見つめていたが、ようやく口を開いた。
「プレゼント!?開けてもいい?」
僕は肯いた。
ガサガサ
アスカが袋の中から一対の金色の縁取りがついた紅い髪止めを手に取った。
「シンジ・・ごめんね私・・シンジの事誤解してた・・・」アスカの手の中の紅い髪止めに、
大粒の涙が落ちて弾けて消えた。
「いいんだよ!アスカ!一人で寂しかっただろう」僕はアスカに優しく言った。
「ごめんね・・レイ!」アスカは綾波にも一言言った。
その時、ドアが開いてミサト先生が現われた。
「はい!君たちそこまでよ!」ミサト先生が入るやいなや言い放った。
「ミサト先生?どうしたんです」僕はミサト先生に声をかけた。
「校内中鳴り響いていたわよ!」ミサト先生が言った
「何がですか?」僕は訳が分からずミサト先生に聞き返した。
「あなたたちのさっきのやりとりよ!」ミサト先生がコンソールのスイッチを一つ倒した。
そのスイッチの前にはシールが貼られており、”全校内”と書かれていた。
「ひえぇ〜〜」僕は驚愕した。
30分後 先生にこってりとしかられた僕達は、暗くなりはじめた並木道を三人で並んで家に向かっていた。
裏庭エヴァンゲリオン第6話【学園祭】
裏庭エヴァンゲリオン第7話【初陣】につ・づ・き・ま・せ・ん!