「シンジ君!ここから先はエヴァじゃ無理よ」
「そうですか・・分かりました」
僕は今、ラピスに教えて貰った、雲仙地獄嶽に来ていた。
雲仙地獄嶽とは、雲仙一帯が、セカンドインパクトの折に、
大噴火を起こし、隆起して地形も変わり、
今では近づく者すらいない地域になっているそうだ。
狭い谷間の間に、間欠的に蒸気を噴き出す洞窟があり、
恐らくその洞窟の中だろうと言う、父の言葉を聞き僕はその洞窟の前に立っていた。
バラバラバラバラ
ヘリコプターに乗った特殊部隊が、背後の少し広い所に、降りて来ようとしていた。
「シンジ君・・これを渡しておくわ・・」ミサト先生が僕に黒光りする拳銃のような物を渡した。
「こ、これは?」ずっしりと重みのある、拳銃のような物を手にして言った。
「あなたも知ってるでしょ・・彼等は不可視の結界を張る事を・・
その結界を破れるのはこの銃だけなの・・だけどこの銃は誰でも扱えるものじゃ・・」
「ミサト先生・・分かってます・」説明を続けるミサト先生に声をかけた。
「シンジ君・・」ミサト先生が複雑な表情をした。
「出来るだけあなたを援護するからね・・・」ミサト先生が顔を下げた。
ザッザッザッザッ
軍靴の音を響かせて背後から数人の特殊部隊の兵士が近づいて来た。
僕とミサト先生は特殊部隊の兵士と顔を合わせた。
「今回の作戦の現場指揮官を勤めます、山中二尉であります!」
30前の柔和な顔つきの指揮官が敬礼した。
「それでは作戦の説明を致します!」
その後5分程のミーティングの後突入と相成った。
「シンジ君・・これを付けてね」ミサト先生がイヤホンとカメラと、
ライトとマイクが付いたヘッドセットを手渡した。
「山中二尉にも渡してあるわ・・何かあったらそれで呼ぶのよ!」
僕と特殊部隊の兵士4人は洞窟の入り口近くで待機していた。
5分おきに間欠的に噴き出す蒸気が出てすぐ突入する予定なのだ・・
「あと30秒で噴き出します!」
「来ます!」
ブシャーーー
高温の水蒸気が吹き出し、視界が一瞬にして悪くなった。
「行くぞ!」少し収まった瞬間僕たちは駆け出した。
ダッダッダッ
頭に付けたランプのみの明かりではあるが、5人分だとそれなりに明るかった。
2分程走って行くと、左に折れる側洞があった。
「ここかな?」僕は正面の通路と左の側洞を交互に見た。
「こっちからは蒸気が通った跡が無いから・・多分そうだな」
側洞を走って行くと、行き止まりにあたってしまった。
「違うのか・・だが今引き返したら蒸気が・・」
「隊長!上です!」一人の兵士がライトを上に向けた。
50M程上まで続く竪穴が開いていた。
だが、広さは人一人がぎりぎり通れるだけしか無かった。
一人の兵士が強力なライトを上に向けて覗き込んでいた。
「どけ!」山中二尉が大きいバズーカのような物を構えた。
「ハイ!」
山中二尉はバズーカの用な物を上に向けた。
「誰か支えろ!」
「ハイ!」
「それ以外の者は伏せていろ!」
僕は慌てて地に伏せた。
シュゴーン
「もういいぞ!」
立ち上がると、竪穴からロープが下がっていた。
そして、機械の付いた取っ手のような物がセットされていた。
「すごい・・」僕は感嘆した。
「このボタンを押すんだ・・もう一度押せば止まるから」山中二尉が声をかけた。
「やってみます・・」
僕は取っ手を掴んで、ボタンを押した。
僕の体は少しずつ上がって行った。
幸い竪穴は狭かったが、あまり突起のある岩は無かったので、無事に上がる事が出来た。
上の端まで上がると、前方に通路が見えた。
なんとか通路に移って下に声をかけた。
2分後には全員が上まで上がって来ていた。
「行くぞ!」
2分程、通路を進んで行くと、大きい両開きの扉があった。
「重い・・」先頭を歩いていた隊員が手で押しはじめた。
「バカヤロー」山中二尉の警告も空しく、
その隊員の頭に、2本の矢が上から振って来て刺さっていった。
「おい!おい!」崩れ落ちた隊員をゆさぶるが、すでに事切れていた。
別の隊員が通路の脇に寄せて行った。
その時、僕は震えていた。
「そ、そんな・・僕がカヲルを逃がしてしまったから・・こ、こんな事に・・」
「君のせいじゃ無い・・それより早くここを開けてくれ!」
山中二尉が表情を変えずに言った。
「わかりました・・」
僕はつばを飲んで、その両開きの扉の前に立った。
すると、
ギィィィィイ
扉は軋みながら左右に開いて行った。
「敵は近いぞ!ロック外せ!」
「君・・下がっていたまえ」
「はい・・」
MAKIさんが挿し絵を描いてくれました!
その後、いくつかの扉を開けて奥に進んで行った。
そしてこれまでの扉より、数倍大きい扉の前に行き当たった。
「大きい扉だなぁ・・」僕は扉の上の方を見ていた。
その時!
「やめてぇ・・お願い・・」
綾波の声が扉の向こうから響いて来た。

「こんにちわ〜 碇シンジです」
「惣流アスカです! 宜しくね!」
「それでは、今日のお勧めリンクを紹介致します」
「ふむふむ」
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ガンメタル
ガンメタル(WINDOWが開きます)
「それではまた来週!」
「ホントにまた、やるのぉ〜?」
「予定はありません(^^;」
「やめてぇ・・お願い・・」
綾波の声が扉の向こうから響いて来た。
その声に僕は反応して、扉を開けて中に飛び込んだ。
ズシャーーーン
次の瞬間、僕の背後にすさまじい地響きのような音がした。
「碇シンジ君・・君は運がいいねぇ・・」カヲルが悪魔のような微笑みを浮かべていた。
「ほら・・君以外の人はみんな下敷きだよ・・」カヲルが僕の背後に目をやった。
「!?」僕が振り向くと、さっきまで僕がいた扉の向こうに、天井の一部が落ちていて、
特殊部隊の兵士の流す、血の赤い染みが、室内に流れ込んで来ていた。
「碇君!」
「綾波!」
カヲルの横に、黄色い水の入った、細長いカプセルのような物の中に、
何も身につけて無い綾波が閉じ込められていた。
「綾波を返せ!」僕はミサトさんから渡された銃のような物をカヲルに向けた。
「おやおや・・人間には学習能力と言うものが無いのかねぇ・・
しかし、ラピスも余計な事を・・」カヲルが目を閉じて首を振った。
パーン
僕は引き金を引いた。
「無駄な事を・・・」カヲルが目を開けた。
「何?」カヲルは頬を何か伝う感触に気づき、手を当てた。
「血?」カヲルはあてていた手に付いた血を見て驚愕していた。
「手を上げろ!」僕は照準をカヲルの頭に向けて言った。
「くっくっく・・・あの時君を殺しておけば・・私が血を流すなんて・・」
カヲルは何か小言をぶつぶつ言っていた。
パーン
僕は嫌な予感がしたので、カヲルの返答を待たずに引き金を引いた。
さっきまでカヲルだった物体は頭を柘榴のように割られて冷たい石の床に倒れていた。
「綾波を僕の手で撃つよりは・・欺瞞だけど・・」
「綾波!」僕はカヲルを捨て置き、綾波の閉じ込められているカプセルの前に走った。
「くそっどうやったら開くんだ・・」僕はカプセルに付いているボタンを押した。
「綾波・・寄ってて」
僕は銃をコンソールに向けた。
パーン パーン
コンソールは爆発し、綾波の入っているカプセルは軋みながら開いて行った。
「碇君!」綾波がカプセルから出てきて、僕に抱き着いて来た。
「何とか間に合ったみたいだね・・」
「碇君・・ありがとう・・助けに来てくれて・・」
「あの・・」
「なに?」
「服着てくれないかな・・」
「??」
「キャッ」
綾波は今気づいたのか耳元で大きい声を出した。
「そ、そうだ・・」僕はヘッドセットについていたカメラの向きを変えた。
僕はプラグスーツの上に着ていた上着を脱いで、足元でうずくまっている綾波に渡した。
「とりあえず・・これでも着ててよ・・」
「碇君・・」
その時、洞窟は、グラグラと左右に揺れはじめた。
遠くで地響きの音がしていた。
「レイ・・逃げよう」
「うん・・」
僕たちは瓦礫の上を通って、部屋を出て、出口を目指した。
「痛っ」綾波がうずくまった。
「大丈夫?」
「足が・・」
さっき瓦礫を乗り越えた時、レイの素足に何かが刺さっていたようだった。
僕は驚く綾波を無視して綾波を担いだ。
綾波は必死に僕にしがみついていた。
来る時には5分でこれた、竪穴まで、なかなか到着しそうになかった。
僕は力を振り絞って歩いて行った。
僕の頭につけられたランプがようやく、竪穴を照らし出した。
「どうしよう・・」僕は下に降ろされたロープを見つめた。
僕は綾波を降ろした。
「レイ・・僕にしがみついているんだ・・」そう言って僕は綾波を抱きしめた。
「碇君・・」
そして、取っ手を握り締めてボタンを押した。
キリキリキリキリ
僕と綾波は少しずつ下に向かって降りて行った。
途中まで来た頃、綾波が口を開いた。
「碇君・」
「なに?」
「初めて、今日名前で呼んでくれたね・・」
「そうだっけ・・」
「そうよ・・」
「碇君・」
「なに?」
「なんでもないの・・(いつまでも下に着かなかったらいいのに)」
綾波は頬を染めて何かをくちごもった。
その時、僕は柔らかい綾波の感触を感じていた。
(ずっとこうしていたいな・・)
だが無常にも、足に地面が付き、下に降りてしまった。
だが、ふたりとも、まるで名残を惜しむかのように、お互いを抱きしめていた。
「シンジ君!」
ヘッドセットから流れるミサト先生の声で僕は我にかえった。
「綾波・・急ごう」
「うん」
僕は再び綾波を担ごうとしたが、
「もう大丈夫だから・」と綾波が言ったので、綾波の手を引いて出口に向かった。
ようやく、最初の分岐した所に近づいて行った。
「ミサト先生!次は何分後ですか?」僕はヘッドセットのマイクに向かって言った。
「さっき出たばかりだから大丈夫よ!」
「わかりました」
「綾波・・もうすぐ出口だよ」僕たちは、遥か彼方に見える光に向けて歩き続けた。
その時!背後から風の鳴るような音が聞こえた。
「綾波!」
僕は異変に気づいて、綾波を押し倒してその上に被さった。
「碇君?」
次の瞬間!
高温の水蒸気が僕の身体を駆け抜けて行った。
「碇君!」
だが、僕はかろうじて保っていた意識を失ってしまった。
裏庭エヴァンゲリオン第8話【決戦は水曜日】Fパート 終