「ミドリ……もし行く気になったのなら……第三新東京空港に2:45分着だから……
 弁護士さんのところにも行くから、もう夕方まで戻らないからね……」

今日は曇ってるのね……今にも雨が降り出しそう……
私は右手を握ったまま、窓の外を凝視していた。



裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 11B

第11話【別離】Bパート



朝食を食べおえ、僕達は学校に行く準備をしていた。

「それじゃ、授業が終わったら職員用駐車場で待っててくれ」
父さんは僕たちにそう言い残して、一足先に家を出ていった。

「ローラちゃん、私が幼稚園に迎えに行くからね」母さんがローラちゃんに話していた。
「じゃ、ローラちゃん幼稚園行こうか」
「行きたくない……」
始業時間が遅いアヤさんが幼稚園まで連れて行く事になったのだが、ローラちゃんは渋っていた。

「けど、お友達出来たんでしょ? お別れの挨拶もせずに向こうに帰ったら後悔するわよ」
ミライがローラちゃんの頭を撫でながら言った

「うん……」

何故か交わす言葉も少なく、僕達は学校に向かっていた。

少しざわついている教室に僕達は入っていった。

「よう、シンイチ!勉強してるか?」

「そういうムサシはどうなの?」

「聞くまでも無いだろ……」

「ムサシは、僕のノート写すだけで半日の休みを三日間潰してるんだよ……」ケイタが苦笑した。

「けど、ケイタのわかりやすいノートを写すんなら、それだけでも勉強になったんじゃ無い?」

「日ごろから勉強しとけば慌てないのに……」ミライが呟いた。

「余計なお世話だ!」ムサシはミライに追求されて、ムキになってしまった。

「けど、いつも授業受ける時ノート取って無かったの?」鈴原さんまでもが追求を始めた。

「こんな便利なモノがあるのに、どうして手書きで書かないといけないんだ!」ムサシは端末を指差した。

「手書きで書かないと、漢字忘れちゃうからかな」僕は端末を見ながら言った。

「国語のテストで赤点取ったら、漢字の書き取りを毎日5ページって、碇先生が、昨日言ってたよ」
昨日の父さんの言葉を僕は思い出した。

「ゲー そんなぁ毎日って何日書かされるんだよ んなバカな」

「何言ってるのよ 他の先生なら補習させられたりするじゃない。書き取りぐらいで許してくれるんだから、まだマシじゃ無い」

「おまえはいいよなぁ 碇センセの娘だから……」

「何言ってるのよ パパの娘なのに、国語で赤点取ったらパパに恥かかせるから、いつも一人で勉強してるのよ
 娘だからって、贔屓するようなパパじゃ無いの! 私はそれを誇りに思ってるんだから」

「す、すまん……そんなつもりじゃ無かったんだ」ムサシは素直に頭を下げた。

「あ、碇先生が来た ホームルームが始まるよ」ケイタの声を聞くと、僕達は素早く自分の席に戻った。


起立・礼・着席

こうして、今日の授業が始まった。



「ミドリさん……両親がいるのに受け入れて貰えないなんて……」

1時間目は、いろんな事が頭に浮かんで、授業に集中出来なかったが、
二時間目からは、テスト前の半日の授業に集中する事にして、ミドリさんの事を頭から振り払った。


気がつくと、4時間目の授業が終わりかかっていた。
授業に集中していたせいか、時間の概念を失っていたのだ。
「こんな事でミドリさんの事……忘れようだなんて……僕は卑怯だ……」
手にしていた鉛筆を僕は折ってしまい、我にかえった時授業終了のベルが鳴り響いた。

ホームルームを終え、試験を明日に控えた生徒達の声で教室はざわめいていた。

「じゃ、駐車場に行きましょ」ミライが鞄を持って立ち上がった。
「うん」

僕達は教室を出て、職員用の駐車場に歩いて行った。

「ローラちゃんとも、これでお別れか……なんか寂しくなるわね……ミドリさんもいないし」

「うん……」

「確かここよね パパのエレカの置き場は」

「うん……まだ来て無いみたいだね」
僕達はガレージの前で父さんを待っていた。

「待たせたな」父さんの声に僕達は振り向いた。

「アスカから電話があって、今ローラちゃんと空港に行ってるらしい」

「ところで、アネキは?ここで集合じゃ無かったっけ」

「週番で、少し遅くなるって電話があったから、エレカで迎えに行こう」

「うん」

僕達は父さんのエレカに乗り込んだ。

高等部に向かう坂道をエレカはゆっくりと上がって行った。
エレカは校門前で止まり、僕達はアヤさんが出て来るのを待つ事にした。

「遅いな……」父さんは校門の方を見ながら呟いた。
15分が経過したが、アヤさんは出て来てなかった。

「もう……アネキ何してるのよ……お腹空いちゃったなぁ……」
「空港のレストランで食べる予定だから、我慢しなさい」
「はーい」
「様子、見て来ましょうか クラスはAでしたよね」僕はエレカのドアに手をかけて言った。
「んー、そうだな 行き違いになったらいけないから、5分経って見つからなかったら、戻って来るんだよ」

「わかりました」僕はエレカを出て、校内に入って行った。

「えーと二年は二階だっけ」来客用のスリッパを履いて、僕は階段を登って行った。

「A組……ここだな」

「すみませーん」
僕は教室の扉を開けた。

「アヤさんっ」

薬でもかがされたのか、ぐったりとしたアヤさんを黒服の男二人が担いでいた。

「なんや、もう生徒はおらへん筈やのに……あんたらは何やってたんや」
背の低い方の黒服の男が、アヤさんをもう一人に預けて僕の前に立ちはだかった。

「アヤさんを離せっ」

「こいつが、風の谷のハストゥール神殿を襲った渚シンイチです。」もう一人の黒服の男が僕を指差した。

「ほうか……ま、こちらには人質がおるっちゅー事を忘れたらいかんで」
もう一人の黒服の男は胸から短剣を取り出して、アヤさんの首筋にそえた

「お前たちも、ハストゥールの眷族なのかっ」

「ちゃうちゃう おれは、雇われ者や 特定の眷族に仕えとる訳やない」
そう答える黒服の男の素顔はまだ幼かった。

「アヤさんをどうするつもりだっ!」

「おまえがしゃしゃり出たら、クライアントの仕事の邪魔になる……だから、邪魔させん為の人質や……
 おまえらが妙な事でもせぇへん限りは、手は出さん 無事に帰したる」

「納得したか?じゃ、行かせて貰うぜ」黒服の男は、片手を上げた。

次の瞬間、轟音が鳴り響き、窓の外にジェットヘリが急降下してきた。

「おい、乗せろ」

黒服の男はアヤさんを背負って、ヘリの方に歩いていった。

へりの横腹の扉が開き、中から二人の男が手を差し伸べて、アヤさんをヘリに積み込もうとしていた。

{{兄さん 兄さん!}}

{聞こえている……だが手を出したら、アヤの命が危ない……}

{{じゃ、黙って連れ去られるのを、見てろって言うのかい?}}

{アヤが目を覚ませば、テレパシーで会話出来るだろう……助けるチャンスはきっとある}

{{うん……わかったよ}}僕は右手の指が白くなるほど握り締めていた。

次の瞬間、ホバリングしていた、ジェットヘリが、窓ガラスを振るわせながら飛び立っていった。

「シンイチ!」
父さんが銃を手に教室の中に飛び込んで来た。


「父さん……アヤさんが攫われてしまったんだ……来た時にはすでに眠らされてて、人質にされてたから……」


僕は父さんに事情を説明し終えた。

「奴等は仕事の邪魔だからと言ったんだな……だとすると……」

その時、父さんの携帯フォンの着信音が鳴り響いた
普段の時の着信音とは明らかに違う音……非常用コールの無機質な音が、教室で響いていた。



「みんな遅いわねぇ……ローラちゃん……先にご飯食べる?」
「いい……ここで待ってる」
ローラは壁の大時計を見ながらいった。

「お母さんの乗った飛行機が着くまで、まだ二時間もあるのよ……」

「いい……ここで待ってる」ローラは、大時計の秒針を見つめつづけていた。




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第11話Bパート 終わり

第11話Cパート に続く!



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