「あなたの力が必要なんです あなたを連れて僕がテレポートしますから、
コクピットにいる眷族を倒さないと……」

「そんな……無理よ……私に力があると言っても、自由にいつでも出せる訳じゃ無いの……
出なかった時は、私も、シンイチさんも、乗ってる皆を危険に晒す事に……」

「そんな……どうすればいいんだ……あと30分しか無いのに……」




裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 11F

第11話【別離】Fパート




「ママに近づいたら、ママと心で話す事が出来るわ……ママはいつもファーターの形見の銃を持ってるの……
 ママならそいつを倒せるかも知れない……」
 
「そうか……ゼーレの幹部が持ってた銃なら、倒せるかも知れない……けど、君のお母さんを危険に巻き込む事に……」

「もうその飛行機に乗ってるんだから、今いるだけだって危険でしょ……それに私はママを信じてるもん……」

「じゃ父さんに連絡して、ヘリコプターか何かで迎えに来て貰って……だめだそれじゃ間にあわない」
僕は残されたあまりにも短い時間で、どうすれば飛行機に乗っている全員を助ける事が出来るかを考えていた。


{シンイチ……何を考えてる……}

{{兄さん……何をって……みんなを助ける方法だよ}}

{おまえのキャパシティを超える能力は使えない事を忘れるな……}

{{そのキャパシティを上げる事は出来ないの?}}

{山に入って修行でもするしか無いな……}

{{それじゃ間に合わないよ……}}

{俺がおまえの思念を飛ばすのを後押ししたように、おまえとミドリがローラに協力して思念を飛ばせば、

 あるいは届くかも知れん 残された時間で、最も確率の高い方法だ……}

{{わかったよ 兄さん}}


「どうかしたの?シンイチお兄ちゃん」ローラはシンイチの方を覗きこんだ

「ローラちゃん……僕とミドリさんが後押しするから、ここからお母さんと心で話す事出来るかな?」

「やった事無いけど……出来るかも知れない」

「ミドリさん……」僕はミドリさんの方を向いて言った。

「無理よ……言ったでしょ……いつでも力を出せる訳じゃないの……それどころか二人の足を引っ張るかも知れない……」

「ミドリお姉ちゃん……お姉ちゃんの気持ちは解るけど……お父さんやお母さんや自分から逃げちゃダメ!
 駄目なら駄目でいいじゃない……けど、何もしなかったら後で絶対自分が許せなくなると思うの……」
 ローラは毅然とした態度でミドリを叱責した。
 
「わかった やってみる ありがと……ローラちゃん」

「それじゃ、手を触れあわせておいた方がいいかな」僕はテーブルの上に手を置いて言った。

「うん!」僕の手の上にローラちゃんの小さい手が重なった。

そのローラの手に、ミドリさんの手がそっと重ねられた。

「そういう事なら、私たちも手伝えないかしら」ドアを開けて、アヤさんとミライが入って来た。

「みんなの力を合わせたらきっと、大丈夫だよ」ローラちゃんは笑みを浮かべた。

ミドリさんの上に、ミライの手が重ねられ、上の端にアヤさんの手が置かれた。

「ママ……ママ……聞こえる?……」ローラは目を閉じて囁いていた。

僕達は一所懸命、精神を集中した。


{俺が指向性を強めたらなんとかなりそうだな……}





「ん……もうすぐ着陸かしら」彼女は何か胸騒ぎを感じて目を覚ました。

{ママ……ママ……}

{{ローラ?どうしたの?}}彼女は愛娘からの思念を感じて、精神を集中した。

{ママの乗ってる、その飛行機の操縦席に、けんぞくってのがいて、ママや乗ってる人を人質にしてるの}

{眷族?}

{{ファーターの銃でなんとかならない? そうしないと、ママもミドリお姉ちゃんのおとうさんもおかあさんも、みんな死んじゃうの}}

{わかったわ……やってみる……何があっても勝って生き残るからね……ローラを一人になんてしないからね}

{{ありがとう……ママ}}

ローラちゃんを通して、会話を聞いていた僕は目頭が熱くなってしまった。

重ねた手の平の上に、涙が一滴落ちて跳ねた。

「ミドリさん……」


「もういいわ……ママは約束を破らないもん……」そういって、ローラは目尻に涙を溜めたまま微笑んだ。

「空港に行こう! 今から車を飛ばしたら間に合うかも知れない!」僕は立ち上がっていった。

「うん!」

「行きましょ!」

「空港に!」

ミドリさん以外の皆が部屋を駆け出していったが、ミドリさんはまだ戸惑っているのか、ドアの所で立ち尽くしていた。

「ミドリさん……行こう!」僕は手を差し出した。

「……ハイ!」少し躊躇った後、ミドリさんは僕の手を取った。


エレベーターで下に降りた時には、二台の車に皆が分乗していた。

「遅いわよ シンイチ!」

「こっちの車があいとるで こっちに乗れや」黒服を着た広島弁の男が手を振った。

「わかった!」僕はミドリさんの手を引いて黒塗りの車に乗り込んだ。

「私の車に後れるんじゃ無いわよ」ミサトさんは身体を乗り出して叫んだ。

「ミサトさんって、凄く飛ばすんです。僕達もシートベルトしておいた方がいいですよ」
僕は前のミサトさんの車に乗っているアヤさんとミライが無事である事を祈る事しか出来なかった。

「よかった……ミドリお姉ちゃんとまた会えて……」ローラはミドリさんにだっこされていた。

「それじゃ行くわよぉ!」ミサトさんの車のタイヤが煙を上げたかと思うと、ミサトさんの車が飛び出していった。

「ホンマに早いな ほな行くで!」僕達の車も急発進して、ミサトさんの車の後を追った。


その頃、長身の黒服の男はホテルの医務室で唸っていた。



その頃、機内では……

「銀の弾丸が6発……眷族相手に使えそうなのは、これだけね……大事に使わなくちゃ」
サイドホルスターから銃を抜き、弾丸を込めながら彼女は呟いた。

幸い隣の席の夫婦連れらしき客は寝入っているので、安心して準備をする事が出来た。


「あと、15分か……一気にカタを付けないとね……」彼女は隣の席の客を起こさないように、席を立った。


「あの……お客様 そちらにはお手洗いはございませんが」スチュワーデスの一人が彼女に近づいて来た。

「この飛行機がすでにハイジャックされてる事、知らないの?」彼女はスチュワーデスの耳元で囁いた。

「何故、それをご存じなんです? コクピットにコーヒーを持って行った私しか知らない筈なのに……」

「詳しい事は後で話すから案内しなさい……その化け物を倒す事の出来る武器も持ってるわ」
彼女は脇に吊るした銃を、スチュワーデスに見えるように上着を少し開いた。

「わ、わかりました……案内します その化け物はコクピットに入ってすぐ右にいました……」

彼女はスチュワーデスの後を付いてコクピットの方に歩いていった。

「ローラ……私がいなくても……きっと、あの子なら大丈夫よね……」
彼女は唾を飲んで、目線で扉を開けるようにスチュワーデスに指示した。

7ケタのパスワードがすでに打ち込まれていて、スチュワーデスがボタンを押して、ドアが開くと同時に彼女は中に飛びこんでいった。



「死ぬかと思った……」ミサトさんの車の中からアヤさんが這い出て来た。

「よくこれで事故しなかったものね」青ざめた表情のミライも中から出て来た。

「アヤ!無事だったのね」アスカさんが僕達を見つけて駆け寄って来た。

「お母さん……心配かけてごめんね」

「何言ってるのよこの子は もう」アスカさんは笑いながらアヤさんを抱きしめていた。

TRRRR

その時、アスカさんの携帯フォンが鳴り響いた。

「はい、碇です……あなた? え?本当? わかったわ」

「どうかしたの?ママ」

「飛行機は無事着陸コースに入ったそうよ……ただ、怪我人が出たから、 NERVの病院から救急車が来るそうだから」

「怪我人?大丈夫なんだろうか……」僕は、ローラちゃんのお母さんの事が少し気になった。

飛行機は無事着陸し、怪我人を救急車に載せる為、NERVの病院の所員が駆けずり回っていた。

担架に乗せられて、救急車に運ばれている女性の顔に、僕は見覚えがあり、背筋が凍りついた。

「ママ!」

「ローラちゃん!」

駆け出そうとしたローラをミドリが背後から押さえた。

「すみません 家族なんです 乗せて下さい。」ミドリは所員に口早に説明して、ローラを連れて乗り込んだ。

「ママ!ママ!大丈夫なの?」ローラは必死に母に呼びかけていた。

「そこにいるの……ローラなの?」彼女は腹から血を流していた。

「ごめんね……眷族は倒したんだけど、その瞬間にやられちゃったの……約束……守れないかもしれない……ごめんね……」
弱々しい声で彼女は声を捻りだした。

「ママ!」ローラは身を乗り出して声を上げた。

「ローラちゃん……私、試してみる……」ミドリは俯いていた顔を上げた。

「え?何を?」

「自分の可能性を……試したいの」そう言ってローラは、傷のある腹部に手をかざした。

ミドリは目を瞑ったまま、傷が癒えるイメージを頭の中で描いた。

「熱い……」

「ママ!」

傷口から白い煙が立ちはじめていた。

ミドリは、普通には聞き取れないような、意味の無いような言葉を詠唱していた。

「すごい……傷口が塞がっていく」

「ちょっと、何事ですか!」心電図などのモニターを見ていたNERVの所員が声を上げた。

「黙ってて!」ローラは所員を制止した。

「すごい……心電図も脳波も異常が無くなってる……」

「ちょっと看て貰えないかしら」ミドリは所員に声をかけた。

「なんてことだ……傷口まで無くなってる」患部の血を拭った所員が驚愕した。


「終わったわ……きっと大丈夫よ……」ミドリは満足そうな笑みを浮かべて、救急車の床の上に崩れ落ちた。

「ミドリお姉ちゃん!ありがとう!ミドリおねえちゃん」ローラはミドリにしがみついて、泣き喚いた。

「出口……どこかしら」
NERVの病室にローラを残し、ミドリは病院を出ようとしていた。

「あ、碇先生……」

病院の入り口には、シンジが立っていた。

「ご両親が会いたいそうだ……」シンジは簡潔に用件を述べた。

「どうして……なんで今さら……」ミドリは訳が解らず困惑していた。

「私が伝えたんだよ……君の力で飛行機の乗員全員を救ったローラちゃんのお母さんの命をその力で救ったとね……」
シンジが手を振ると、ミドリの両親が現れた。


「ミドリ……済まなかった……私たちがどうかしてたんだ……おまえを捨てた事……
 許してくれとは言えない……けど……おまえと暮らしたいんだ」
 
「碇さんに事情を聞いて、私達はなんて罪深い事をしてしまったのか……今さら後悔しても遅いかも知れないけど……」

「本当にすまなかった……」

「お父さん……お母さん……まだ、心の整理がついてないけど……今度……遊びに行ってもいい?」

「おまえの為に部屋を開けておくから、いつでも戻って来い!」

「帰って来る時は言ってね ごちそう作って待ってるから……」

「心の整理が付くまで、おじいちゃんの所にお世話になるから……」

「ああ……待ってるよミドリ」

「お父さん お母さん! ありがとう」ミドリは両親に背を向けて歩き始めた。



僕達は少し離れた所から、ミドリさん達を見ていた。
「良かったね……ミドリさん」
「親子だもん……心が通じ合わない訳は無いわ」

「親子の絆……僕の場合は偽りの絆なのかも知れない……」
風の吹きすさぶ路の上で、僕はひとりごちた。




次回予告!

全然決まってません(笑) タイトルも未定です(^^;
いくつか案はあるんですが、迷ってます。
出来れば、希望を下記の感想フォームの中から選んで送って下さい。
火曜の朝まで受付けます(笑)




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どうもありがとうございました!


第11話Fパート 終わり

第12話Aパート に続くと思う(笑)



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