裏庭セカンドジェネレーション

CHAPTER 03B

第3話【心の闇に潜むもの】Bパート



僕はゆっくりと、対峙している二人に近づいて行った。

{{兄さん・・・頼むよ・・}}

分かった・・

次の瞬間、僕の手の中に、青白く光る剣が現れた。

「エーテルソード・・これで・・」


僕は、兄の力と助言で、7才の時に、

ピクニックに行った時出会った化け物を倒した事があるのだ・・

僕はエーテルソードを手に、少しづつ近づいて行った。

青い長髪を背中に垂らしている少女と、何かに切り裂かれたのか、

コートで隠されていない所に、青白い鱗のような皮膚が見えた。

「多分・・尾長山町の殺人鬼はあいつだな・・」


動きが無いかのように見えた、二人の闘いであったが、

青い髪の少女に、コートを着た化け物が、長い爪で襲い掛かった。


「くっ」青い髪の少女は着ていた服の一部を切り裂かれた。

だが、その直前に後ろに倒れていたので、服一枚で済んだのだろう

化け物はその隙に逃げ出そうとして、僕と出くわした。


「僕はその化け物の顔を正面から見てしまった。

まるで魚のように死んだ目・・そして皮膚は鱗のようになり、

不自然な前傾姿勢を取っていた。

先程と同じ、爪による攻撃を、僕は間一髪で避け、エーテルソードを叩き込んだ。

ブシッ

エーテルソードは、化け物の身体に突き刺さると共に、その姿を失った。

{{まだか・・兄さん!}}

僕の手の中に、先程と同じようなエーテルソードが現れた。

「さぁ来い!化け物」僕はエーテルソードを両手で持って対峙した。


がさっ

その時、倒れていた青い髪の女性が、僕と同じような剣を手にして、

化け物の背後から斬りかかった。

化け物はその一撃を受けて、前の僕への注意力を失っていた。


「いまだ!」

僕は剣を両手で持ったまま、ジャンプし、化け物の脳天目指して、突きおろした。

ザシュ

エーテルソードは化け物の頭を切り裂いて、奇妙な色の体液を撒き散らした。

だが、化け物は、右目を失い、脳にも損傷を受ける程の傷を負っているのに、

今度は僕を目標に定めて、攻撃して来た。

ヒュッ

ビュッ

爪による二度の攻撃を僕は避ける事が出来た。

{{兄さん・・}}

僕の手の中に小振りな短剣サイズのエーテルソード・・いやエーテルナイフが実体化した。

だが、一瞬の精神集中の間、注意力が途切れ、僕は化け物に蹴られてしまい、転倒した。

転倒した僕に化け物はにじり寄って来ていた。

今から立ち上がって攻撃する事は・・無理だ・・

僕は手にしていたエーテルナイフを化け物の唯一無事な左目に向けて放った。

ぼやけていく、視界の隅に、左目にエーテルナイフをくらい、

次の瞬間背後から、首を跳ねられる化け物の姿を確認し、僕の意識は途切れた。



夢の中で僕はまだ見ぬ母に抱かれているかのような、安心感を感じた。

「母さん・・」





「シンイチ!シンイチ!

「シンイチ君・・どうしたんだ!」

「シンちゃん!起きて!」


僕を呼ぶ皆の声が聞こえた。


「ん・・」僕は意識がようやく回復した。

「よかった・・シンイチ!」

「一体何があったんだね」

「シンイチ君・・」

僕はようやく目がさめて来たので、記憶を取り戻した。

「えーと・・山際さんをおいかけて行って、手縄山に登ったんだ・・

すると、途中の公園で山際さんの叫び声が聞こえて・・・

山際さんが逃げて来たんだ・・奥の方で、コートを着た男と青い髪の少女がいたんだ・・

多分、あのコートの男は、尾長山町での殺人鬼だと思う・・

僕は、その少女に加勢したんだ・・僕が無事だったって事は、その少女も無事だったのかな」

僕はぼそぼそと、さっきの出来事を話した。


「誰かがドアを叩くので、ドアを開けたら・・青い髪の少女が、シンイチ君を抱きかかえてたの・・

で、玄関に置いて、そのままドアを閉めて帰って行ったのよ・・」

アヤさんが僕に説明してくれた。

「どうして逃げなかったのよ シンイチのバカ」ミライが涙を零しながら僕にしがみついた。

「私もそう思う・・けどそういうシンイチ君だから・・私が好きになったのかも・・」

アヤさんが優しい目で僕を見ていた。


「まぁ、詳しい話は明日だ・・とりあえずシンイチ君を寝かせてあげようじゃないか」

僕は父さんの背に負われて、二階の自分の部屋に連れて行ってもらった。


「父さん・・父さんのせなか・・広くて、あったかい・・」僕は急に碇先生の背中に郷愁に似たものを感じた。


「それにしても、あの髪の青い子・・・どっかで見た事あるのよね・・」

「アネキがはっきり覚えて無いなんて珍しいわね いつ頃の事なのよ」

「そうねぇ・・かなり小さかった頃に似たような人に頭を撫でて貰った事あるのよね」

「それは別人でしょ・・さ、私達も寝ましょう」

「ええ・・・・」

僕はベッドの上で降ろして貰った。

部屋には、僕と父さんだけだった。

「父さん・・あれは化け物だった・・」

「そうか・・よくやったな・・シンイチ」

父さんが優しい目で寝ている僕の頭を撫でてくれた。


「化け物を倒す事の出来る僕も・・化け物じゃ無いのかな・・

そんな僕をシンイチと呼んでくれるの?父さん・・」

「シンイチ! そんな事は二度と言うんじゃ無い!

例えおまえがどんな姿だとしても 私はおまえの事を息子だと思ってるよ」


「父さん・・ありがとう・・」


「それにね・・昼間いった、特殊な遺伝子を持つ、一族・・・・僕もその血を引いているんだ・・

もちろんアヤやミライだって・・だが、人間と何ら違いは無いんだ・・同じように涙を流し、血も流す・

人を好きになり・・そして・・子を宿す事も出来る・・だから、何も気にやむ事は無いんだよ」

「いつか時が来たら・・全ての事を教えてあげるから・・だから今はお休み・・・シンイチ」


僕の心に父さんの言葉が染み込んでいった・・・

そして、自分の秘密をコンプレックスに思い、

アヤさんやミライに積極的な態度を取る事を控えていた、

自分の心の牢獄から解き放ってくれた父さんが、

まるで本当の父親のように感じられて僕は思わず涙を流してしまった。

父さんが部屋を出てからも、僕はその晩・・枕を濡らした。

それは、哀しみの涙で無く・・歓喜の涙であった。


第3話Bパート 終わり

第3話Cパート に続く!


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