雪山に消ゆる面影を求めて
外伝2 【アスカ・愛の軌跡】
時に西暦2015年 10月
「ねぇシンジ・・もうすぐ卒業ね」アスカは編み物をしながら、僕に声をかけた。
「うん・・あと5ヶ月だね・・」僕は一旦、勉強を止め休憩する事にした。
「ねぇアスカ・・紅茶でも飲む?」
「うん」
数分後
僕はアスカと、レモンティーを飲みながら、将来の夢を語り合っていた。
「叔父様が言うには、オーストラリアに、いい大学があるんだって」
「うん・僕も聞いたよ たしか、前世紀にあったMIT並みの設備があるんだよね」
「アスカなら、楽勝で受かると思うけどね」
「なによ・・私だけあんな遠い大学に行けって言うの?」アスカが少しふくれた。
「そりゃ僕だって、アスカと同じ大学に行きたいけど・・」
「シンジだって学年10位前後にいつもいるじゃない」
そう・・アスカはこの高校生活の三年間ずっと学年で首位を守っていたのだ。
「私が個人指導してあげるから、シンジも同じ大学に行こうよ」アスカがカップを置いて微笑んだ。
「うん・・ありがとう・・アスカ」
「そんな他人行儀な事言わないの」アスカが笑いながら、僕の鼻を指で小突いた。
「んっ」
「レモンの味がするよ・・アスカ」
「ばか・・」
浅間山頂の、研究所にて、二人は少しづつ愛を深めつつあった。
そして、次の登校日・・
「シンジ!願書は忘れて無いわよね」
「うん用意したよ」
「それじゃ行って来ます!」
「あら、今日は学校の日?」研究主任の赤木博士が声をかけた。
「はい!」
「今日は風も強いし、気をつけてね!」
赤木主任にモノレールまで送ってもらって、僕達は山を降りた。
僕達は、学校に向かう、片道3時間の道のりを列車の中で過ごした。
「はい・・お茶」
「ありがと」
「で、他に質問は無いの?」
「うーん、この数式がいまいち理解出来ないんだけど」
「殆ど合ってるけど、ここね これが間違ってるわ」
「あっ そうか ありがと アスカ」
学校に向かう列車での時間は、いつもこんな感じであった。
松代 国立第一高等学校
「お久しぶり!アスカ!碇君」
同級生の洞木さんが声をかけてきた。
「元気だった?ヒカリ」
アスカと洞木さんは親友なのだ。
だが、月に一度しか学校が無いので、滅多に会えないのであった。
「ねぇ 進路決まったの?」
「うん・・オーストラリアの大学にね・・シンジもだけど」
「あら、そーなのぉ アスカなら大丈夫ね」
「ありがと」
「ヒカリは?」
「栄養士になりたいから、専門学校ね」
「そうなのぉ」
そして、授業が始まった。
だが、授業とは言っても、一月分のテキストと、月次テストだけである。
授業の後、僕とアスカは願書を提出し終わり、帰りの列車を待っていた。
「あーあ 次は二時間後かぁ」
夕暮れが町を包んでいた。
「そーだね・・いつもはギリギリで間に合うんだけど・・」
今日は願書を提出した時、先生といろいろ相談をしていたせいで、
いつもの列車に乗れなかったのだ。
「図書館も閉まったし・・どーしよ」
「駅で二時間も待ってたら、凍えちゃうしね」
僕とアスカはとぼとぼと駅に向かっていた。
「遅くなるって電話しておくよ」
「そうね」
数分後 僕は駅で電話をしていた。
TRRRR
「はい!株式会社NERV浅間研究所です」新入りの、青葉通信士が電話に出た。
「あ、シンジですけど、列車に乗りそびれてしまったので、
帰りが遅くなるって、父さんに伝えてくれませんか?」
「そりゃ大変だね 次の列車は?」
「二時間後の8時の最終列車です」
「じゃ、帰り着くのは、深夜だね・・風も強いし、明日は日曜だから、
松代で泊まって、明日の市でも見て来たら?」
「そうですね・・じゃ父さんに伝えて下さい」
「うん じゃ駅前の、NERVの関連企業のホテルがあるよね」
「ええ知ってます」
「こっちから、連絡しておくから」
「ありがとうございます」
「それじゃ」
僕は電話を切った。
「駅前のNERV系列のホテルに連絡してくれるって 明日は日曜だから、市を見てゆっくり帰ろうよ」
「そうね 深夜に、あのモノレールの中で揺られるのはぞっとしないもんねぇ」
「ハハ そうだね」
「じゃ、行きましょうか」
僕達が、列車に乗りそびれて、このホテルにお世話になるのも、初めてでは無かった。
「いらっしゃいませ」
「あ、碇ですが」
「はい 承っております こちらにサインを」
「303号室でございます」カウンターの中の男性がカードキーを目の前に置いた。
「あれ、一つしか無いけど」
「残念ながら、開いている部屋は、この部屋しかありませんので・・」
「そうですか 分かりました」僕はカードキーを手にした。
「303号室だって」
「一つしか部屋無いの? 変な気起こさないでよ」
「毎晩のように、一緒に寝てるじゃ無いか・・僕が信用出来ないの?」
「冗談よ」
「荷物を置いて、食事でもしましょ」
「うん」
僕達は、エレベータに乗って、3Fまで移動した。
シュッ ピー
「開いたよ」
僕達は、室内に入った。
同時に照明がONになった。
「ダブルベッドぉ?」僕とアスカは、ベッドを見た。
「ツインじゃ無いのかぁ・・」
「ま、いいじゃないの・・いつも狭いベッドに二人で寝てるんだから 広くていいじゃない」
「まぁそーだけど・・」
「さ、荷物をおきましょ」
僕達は部屋をロックして、10階の展望レストランに向かった。
「いらっしゃいませ」
「なににする?」
「シンジと同じ物でいいわ」
「じゃ、ハヤシカレーにしよう」
「いいわね」
「ご注文は?」
「ハヤシカレー二つと、食後にアイスティー二つ」
「かしこまりました」
「しかし、本当に、シンジって信用されてるわよね」
「なにが?」
「・・何でも無いわよ」
「変なアスカ・・」
僕は水を飲んだ。
ハヤシカレーを食べ終えて、僕達は、松代の夜景を見ながら、
アイスティーを飲んでいた。
「もう・・後戻り出来ないわね・・」
「うん・・そうだね・・もう願書は出したし」
「ねぇ・・シンジ・・小さい頃の約束覚えてる?」
「アスカには一杯約束させられたからなぁ 全部は覚えて無いよ」
「そうなの・・」
「けど・・一番大事な約束は、忘れて無いよ・・アスカ」
「ありがと」
そう・・あれは8才の頃・・父さんに連れられて、夏祭に行った時・・
夏祭と言っても、浴衣を着ている人などいないが・・
「ねぇシンジ!私あの指輪がいいな」
「これ?」
「うん・・」
事の起こりは、夏祭の二日前・・
アスカが風呂に入っている時に、偶然僕も入ってしまったんだ・・
アスカは泣きながら、もうお嫁に行けないと言い出したのだ。
僕はアスカをなだめる為に・・
「じゃ、僕のお嫁さんになってよ・・」と言ってしまったのだ。
で、早速夏祭で、エンゲージリングを求められているのであった。
「これ下さい」
僕は父さんに貰った小遣いの三分の1の金額の指輪をアスカに手渡した。
「ありがと!シンジ!私これ大切にするから」
そのアスカの微笑みで、一昨日の事件が、アスカの策略であった事に気付いた僕であった。
そう・・僕が風呂に入ると言い出した時に、すばやく先回りをしたのであろう・・
だが、僕も悪い気はしなかった。
「今思い出したでしょ・・」
「うん・・」
「私のヌードを」
「ちっ違うよ」
「冗談よ」
「ねぇ・・アスカ・・あの時・・僕が風呂入るの分かってて、先回りしたんだろ・・」
その瞬間、アスカの顔は真っ赤になっていた。
「そっそんな事ある訳無いじゃない!偶然よ 偶然」アスカは見てて気の毒な程、狼狽していた。
「わかったよ・・じゃ、そういう事にしてあげるよ」僕はクスリと笑って、アイスティを飲み干した。
「そろそろ戻ろうか」
僕達は、303号室に戻っていた。
「シャワーでも浴びるよ」僕は上着を脱ぎ捨てた。
着替えを持って、下着姿で、僕はシャワーのある小さい風呂場に向かった。
僕は、洗面所で下着を脱ぎ、タオルを腰に巻いて、浴室の扉を開けた。
シャーーー
暖かいお湯を浴びながら、アスカの狼狽した顔を思い出して、僕は微笑んだ。
僕がシャンプーで、頭を洗っている時、浴室の扉が開かれた。
「ど、どうしたの?アスカ」僕はシャンプーが顔についていたので、目を開ける事が出来なかった。
アスカはシャワーのノズルを手にとって、僕の頭を流してくれた。
「ふぅ」僕がようやく、目を開けると、そこには、全裸のアスカが立っていた。
「ア・アスカ・・どうしたの?」
「7才の頃の裸見ただけで、私と結婚するんじゃ、シンジが可哀相だから・・」アスカは頬を染めて言った。
「アスカ・・」
「見るだけよ! 見るだけ! 分かってるわね・・シンジ」
僕は思わず、つばを飲み込んで言った。
「うん・・」
「続きは、結婚してからね」アスカが微笑んだ。
「そんなぁ・・」蛇の生殺し状態であった。 シンちゃん不幸! いや、幸福なのかも
「シャンプーが付いてるよ」僕はアスカの胸についた泡を取り除いた。
「ひゃっ 触っちゃ駄目よ」
「シャンプー取ってあげただけだよ」
「もぅ〜シンジったら」
「ねぇ・・キスだけなら、いいだろ・・」僕は胸をドキドキさせながら言った。
「・・・うん・・」
僕達は寄り添って、唇を重ねた。
僕は唇をつけたまま、両手でアスカを抱きしめた。
「んっ・・」だが、アスカは拒否しなかった。
普段のキスとは違い、何も身につけていない、アスカを抱きしめて、
するキスは、普段以上の興奮を感じていた。
数分後
ようやく、風呂場から出た僕達は、少しのぼせていた。
「ハイ」アスカが冷蔵庫から、スポーツドリンクを手渡してくれた。
「ありがと」僕は喉を鳴らして、スポーツドリンクを飲んだ。
「もう遅いし・・寝ましょうか」アスカはベッドに入り込んだ。
「うん・・」僕はスポーツドリンクの缶を捨てて、寝間着は用意して無かったので、
Yシャツの下に着てた、Tシャツのまま、ベッドに入った。
「広いね・・」
アスカは、少し頬を染めたまま、壁を見ていた。
「アスカ・・好きだよ・・・今日は嬉しかった」
アスカの手がそっと伸ばされて来た。
僕はその手に自分の手を重ねた。
「おやすみ・・アスカ」
3ヶ月後・・シンジとアスカは空港に立っていた。
「シンジ・・あなたは、充分に勉強したんだから、実力さえ出せば、
合格出来るんだから・・がんばるのよ」
「うん・・」
アスカは、推薦入学なので、無試験なので、僕だけが、オーストラリアに受験に行くのであった。
「これ・お守り・・大事にしてね・・」
「ありがとう・・アスカ」
「じゃ・・行ってらっしゃい」
「うん・・がんばるよ・・アスカと一緒に・・いたいから・・」
「シンジ・・」
僕達は唇を重ねた。
「コホン」
見送りに来ていた、洞木さんが咳払いをした。
慌てて離れたが、時すでに遅かった。
「みーちゃった みーちゃった」
「ヒカリ! 他の人に言っちゃ駄目だからね」
「ハイハイ 他人の恋路を邪魔するものはって言うし」
アナウンスが流れ、搭乗時間が近づいた事を僕は知った。
「じゃ、もう行くよ・・」
「がんばるのよ!」
「がんばってね!」
「うん!」
僕はアスカに背を向けて、トランクを突いて行った。
「合格したら・アスカといられるんだ・・だから今は・・寂しくても・」
一ヶ月後・・合格通知が、浅間山に着く事になる・・・
そして、運命が二人を別つその日まで・・二人の愛は途切れる事は無かった。
雪山に消ゆる面影を求めて
外伝2 【アスカ・愛の軌跡】
完
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