「心と心が結ばれた」 成田発バンクーバー経由で、メキシコに入国したのは十六時間後。
そして、メキシコシティからバスに揺られて四時間三十分。
雪をいただいたポポカペテトル火山をながめながら、プエブラ州のテワカンに到着した。
私にとっては地球の裏側に来たかのような長い旅であった。
初めて出会う異国の子どもたち、子どもたちにとっても初めて見る日本人。
期待と不安がいっぱいで落ち着かない。

教育視察最初の訪問校は、「リベラシオン小学校」。
全校生による歓迎のウエーブと「ハポン ハポン ラララ(がんばれ がんばれ 日本?)」というエールの大合唱。すばらしさに感激しながら授業参観へ。
一人の女の子が私のもとへコインを交換しに来た。
日本の硬貨がなくなったので、「ごめんね」と言いながら「平和の群像」の使用済みテレカを渡した。
オリーブの木の下で集う大石先生と十二人の子どもたちに何かを感じてくれたのだろうか。
その子は、我々が学校を離れるときに走りよって来て、お礼にボールペンを手渡してくれた。
よく見ると、先は歯でかんでつぶれており、つばもついていた。
しかし、何よりも心がこもったプレセントだった。
研修も最後の夜、アメリカ・オレゴン州ポートランドでのレセプション。
教育センターからのゲストは、帰りぎわにアメリカ民謡「線路は続くよどこまでも」を歌ってくれた。
会場は日本語と英語が入り交じった日米友好の大合唱となり、大いに盛り上がった。
英語での会話は十分にはできなかったものの、互いの国際理解は、この歌のようにどこまでも続いていきそうな気がした。
「メヒコ」,「アメリカ」そして「ニッポン」。
それぞれの国情、国民性、教育事情は異なっても、心と心をつなげることができた有意義な体験であった。
テワカンでの最後の訪問校は、「タマヨ中学校」。
狭い教室に五十名以上の子がうごめいている。
でも表情は真剣そのもの。
エスコート役の女子生徒が、数百メートル離れたホールまで、腕を組んだまま歩いて連れて行ってくれた。
彼女は、スペイン語でせいいっぱい話しかけてきた。
何を言っているのかわからない。
英語も通じない。
それでも名前を紹介しあい、日本語を教え、スペイン語を教わった。
言葉が通じないのに、なぜかずっとしゃべり続けだった。
組んだ腕から伝わる暖かさが、心と心のぬくもりとなり、お互いの言葉が一つになって通じあえたような気がした。

帰国すると、山田洋次監督の映画「学校」が話題になっていた。
さまざまな境遇の中で、差別や偏見などのために中学校に通えず、夜間中学で学ぶ人たちの物語である。
ここでは、どの生徒も生き生きと学習しており、教師と生徒の心が通いあい、学ぶ喜びと教える手応えを感じ取ることができた。
学校とはこんなにも楽しい所だったのだろうか。
こんなすばらしい学校にしたいといつも考えつつ、遅々として進まない現状である。
しかし、今回の学校訪問ではその方策の一部をかいまみることができたような気がする。
メキシコ,アメリカの異文化にふれることにより、自分の今までの固定された観念が少し変わったように思う。
この変化を大切にし、これからの教育活動に生かしていければと願っている。