PTA新聞「こぶら」から
みんなちがって みんないい 校長 日向 光徳 PTA新聞「こぶら」第59号 15.7.14発行より
十数年以上も昔のことです。
山口で行われたへき地教育の研究会に参加したことがあります。
詩の研究家という方の講演には、あまり興味がなく期待もしていませんでした。
ところが話を聞くうちに、どんどんと引き込まれていく自分がありました。
すばらしいものに出会ったという気持ちでいっぱいになりました。
「金子みすゞ」という初めて名前を聞いた山口県仙崎出身の詩人の詩は、なぜか心の中にしみこんできました。
今でこそ、どこの書店でも彼女の本は店頭に並んでいますが、講演後はどこにも売っていない詩集を求める長蛇の列ができていました。
彼女の詩からは、命あるものたちへの深い思いやりとやさしさがあふれ、他の人の気持ちを考えられる心や、小さいもの、力の弱いもの、無名なもの、地球という星に存在するすべてのものに対する慈しみの心が伝わってきました。
こういう心を持って子どもたちと接していけば、どんな子に育つだろうかとわくわくしてきました。
この詩は彼女の代表的な詩なので、知っている人もたくさんいると思います。
空が飛べること、いい音がでること、走れること、うたが歌えること、どれも素晴らしいことです。
でも、ちがいがいいといっても、学校や社会という集団生活をする場で一人一人ちがう行動をとり、周りに迷惑をかけることは、もちろん認められません。
一人一人ちがいがあるからこそ、素晴らしいのであって、お互いのちがいを認め合い、そのちがいを好きになり、仲間づくりが深まっていくことが望ましいことなのです。
家庭でも学校でも、子どもの成長過程に応じた手助けをしながら、相手の思いに気づき、ともに支え合える子に育てたいものです。
こんな夢を見た 校長 日向 光徳 PTA新聞「こぶら」第58号 15.3.15発行より
200×年7月8日。今日は須磨海浜水族園から連れてきてちょうど一年になる戸形生まれのウミガメ、「とがたタート」ちゃんと「とがたルー」ちゃんを海に帰す日です。
一年前のこの日、大きなバッグを両手に、水族園の飼育員が「びっぐあ〜す」から降りてきました。
中には毛布にくるんで手足を固定され、息ができるように顔だけ出している「タートちゃん」と「ルーちゃん」が入っていました。
二匹のウミガメは、小学校の池の中で子どもたちが一生懸命世話をしました。
そのかいあって今では、体甲60a、体重30`にまで成長しました。
ウミガメとの別れはつらいけれど、「タートちゃん」と「ルーちゃん」にとっては、自然に帰り、広い太平洋で思いっきり泳ぐのが一番幸せなことなのです。
二匹の背中には、発信器が取りつけられています。ウミガメが海面に出ると、人工衛星に向かって電波が発信され、衛星が位置をキャッチしてくれます。
きっと瀬戸内海から太平洋に出て、アメリカ西海岸からメキシコ方面へと旅をするのでしょう。
いよいよ放流の時間がきて、「ウミガメが戸形にやってきた」の大合唱が始まりました。
全校児童と先生方、保護者や地域の方々が見守る中、砂の上に放された二匹は、なごりを惜しむかのように一度みんなの方を振り返りました。
そのあと、足でバタバタと砂をかいて、海に向かって仲良く旅立って行きました。
二十数年後の2027年、今日は戸形地区大運動会の日です。当時の小学生たちもおおぜい自分たちの子どもを連れて参加しています。
小山の百年祭とウミガメ記念碑の中のタイムカプセルが開けられました。思い出の作品を前に感慨もひとしおで、あちこちで昔話に花が咲いています。
その時です。心地よい潮風を受けながら海を眺めていた子どもたちが、一斉に叫び始めました。
「ウミガメが来た!」
「タートちゃん」と「ルーちゃん」に引き連れられた戸形っ子ガメの大群が、産卵をしに次々と上陸しているではありませんか――。
ボランティアのすすめ 校長 日向 光徳 PTA新聞「こぶら」第57号 14.7.15発行より
「One for all,all for one.(ワン フォア オール、オール フォア ワン)」というラグビーの有名な格言があります。
「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」という意味ですが、ラグビーに限らず、チームで勝敗を競うスポーツはすべてこの精神を持たないと結果はついてきません。
この言葉をわれわれの毎日の生活に置き換えてみると、「自分のことだけを考えるのではなく、他人のためにつくすことで自分もまわりも幸せになれる」ということになります。
教育改革国民会議で、学校が子どもたちに奉仕活動をさせることを提案した曾野綾子委員は、「世のため人のため、役立つことの意義を、子どもたちが学校や家庭で学んでおくこと」が大切であると言っています。
戸形小学校は、ボランティア活動普及事業協力校として、学校近くの県道や浜の清掃活動を進めています。
授業の中で清掃奉仕を行うということは、強制です。
最初は強制であっても、これをきっかけに、環境保全の意識や奉仕活動の充実感を感じ取り、家庭や地域の中でボランティア活動をしようという意欲が少しでも育ってくれればと願っています。
子どもたちだけでなく、職員も保護者や地域の方々も同じです。スポ少の指導、子供会のお世話、PTA活動などすべてボランティアですし、学校支援ボランティアは、本の読み聞かせや、ゲストティーチャーとして料理づくりや昔遊びの授業に来ていただいております。
また、お年寄りの方にはゲートボールを教えていただき、子どもたちは身をもってボランティアの精神を学んでいます。
戸形地区の人たちが小学校の事を気にかけてくださり、自分のできる範囲で学校に協力をする。
そして、地域の中ではいつも子どもたちに声をかけ、時々は学校を覗きに来て、ついでに子どもたちと一緒に授業に参加したり、子どもたちにいろいろなことを教えてくださる。
これが、地域で子どもたちを育てるということではないでしょうか。
これからの教育はそれが求められています。戸形小学校の将来を占うキーワードの一つは、「ボランティア」だと思っています。
心の琴線にふれる太鼓の音 校長 日向 光徳 PTA新聞「こぶら」第56号 14.3.15発行より
「イヨー ドドーン ドン ハッ ドンデン ドン、ドンドン カラカ ドン カラカッカ」
太鼓の威勢のよい音が響きわたったあとには、涙が出そうになるくらいの感動が待っていました。
これは私一人だけでなく、その場にいた多くの人が感じた気持ちでもあったと思います。
ひなまつり学習発表会での六年生の「ひびけ和太鼓!」の演奏は、どこに出しても恥ずかしくないできばえでした。
教えていただいた「小瀬石切り太鼓」「八丈ドンドラ」「清龍のぼり打ち」の三曲を見事に演じきりました。
保護者の感想にも、「真剣な眼差しと太鼓の音に心をうたれた」「とりはだがたった」「腹の中にひと振りひと振りの音がしみこんできた」「後まで余韻が残った」など絶賛する声がたくさんありました。
「発表会だけで終わってしまうのはもったいない」という意見も多くあり、ついに老人ホームを訪問して披露することになりました。
太鼓はもっとも基本的で単純な音楽です。音の強弱だけで心の奥底にある琴線にふれ、聞く人に感銘を与えます。
「伝統として受け継いでいってほしい」という意見もあります。地域の技を伝承していくことに誇りを持つ子を育てることも大切です。
家庭・地域・学校が連携してよりよい方向に進んでいってくれればと願っています。
未来へのプレゼント 校長 日向 光徳 PTA新聞「こぶら」第54号 13.3.15発行より
2000年の夏は、二十世紀最後のミレニアムの年にふさわしく、戸形小学校百年の歴史の中でも、意義のある年でした。
ウミガメの産卵・ふ化は、戸形の子どもたちへの思いがけない素晴らしいプレゼントになっただけでなく、子どもたちの心に命を大切にして、自然や環境を守っていこうとする気持ちを育ててくれました。
この気持ちは記念碑の設置に結びつき、戸形の海を再びウミガメがやってきて卵を産めるようなゴミのないきれいな浜にしていこうという動きになってきています。
授業でも、ウミガメについて調べ、地球環境の保全問題へと発展させ、子どもたちの学習に大いに役立っています。
子どもたちが歌った「ウミガメが戸形にやってきた」も、そんな中から完成したものです。
子どもたちにとっては、校歌と同じように心に残る歌としていつまでも歌い続けられることでしょう。
記念碑の中には、産卵・ふ化の記録や子どもたちのメッセージを入れたタイムカプセルを埋め、小山にある百年祭のカプセルと同じ2027年の運動会の日に開けることにしました。
歌の中に「今ごろどこに いるのだろう 必ず必ず 帰ってきてね」という歌詞があります。
ぜひ二十数年後に親ガメとして、卵を産みに上陸することを願って、みんなでこのきれいな戸形の浜を守っていきたいものです。
昨年の親ガメも再び来てくれればと祈っています。
自力で旅立てなかった二匹の子ガメは、現在須磨水族園で飼育していただいています。
ぜひ適当な時期に戸形に連れて帰り、生まれた浜から放流したいと思っています。
そのときには、また皆様方のご協力をよろしくお願いいたします。
夕日の小学校に立ちて‥‥考察 浜本克寿 PTA新聞「こぶら」第53号 12.7.10発行より
戸形小学校は小豆島で夕日が一番近く見える場所です。
前島に住んでいる人は,当たり前の事として,考えるほどの事でもありません。
こんな書き出しをしますのも,今日JR四国から,日本列島夕日の旅百選という題目の大きなポスターが郵送されてきたからですが,その中に戸形地区も百選に選ばれております。
夕日が日本で一番美しい小学校ですと自負して誇ってもいいと思います。
永遠という文字が彫り込まれた石碑のある小山にたてば,白浜の海岸が横たわり,こぶら岬が立ち上がり,その先には,四国,中国地方の山が連なって,真ん中には瀬戸大橋が見えて,小豊島,豊島,左手に男木島,女木島,高松,右手に牛窓周辺が見えています。
夕日取りの写真家がきたり,映画,テレビドラマの舞台に使われたりするのも理解できることでもあります。
海と山のこのすばらしい自然環境に囲まれての中で,学園生活ができるのも,都会の人工構築物の中で騒音と共に暮らす人たちには,(子どもたちは)きっとうらやましいことでしょう。
月間ピープルに連載している邪鬼庵先生こと,万八先生も3年後,越後(新潟)大学を退職し小豆島へ移住し,ここからの夕日を眺めて暮らすのを楽しみにしています。
白く光る朝日よりも真っ赤に燃えた落日の方がワビ,サビ,が感じられ私は好きです。
人生もこのような生き方が最後まで美しいまま燃え尽きることができれば最高の至福の幸せでしょう。
生きてゆくには知性も大事ですけれど,なによりもいい感性を高め養うこの場所であってほしい。
戸形小学校,永遠に!
エジプトはナイルのたまもの 校長 日向光徳 PTA新聞「こぶら」第53号 12.7.10発行より
「エジプトはナイルのたまもの(賜)」、これはギリシャの歴史家ヘロドトスの有名な言葉です。
砂漠の中を流れるナイル川は、毎年夏になると増水し氾濫をおこします。
しかし、これによって上流からよく肥えた土が運ばれてくるので、下流では豊かな収穫が続き、古代エジプト文明のもとになったと言われています。
ナイル川あってのエジプトなのです。
戸形小学校も同じことです。地域や保護者の方々の協力あっての戸形小学校なのです。
四月、新入生を歓迎するために、こぶらにこいのぼりが設置され、大小四十匹余りが海上を元気よく泳いでいました。
まさに「明るくたくましい戸形っ子」を象徴するような風景がそこにありました。
開校百年祭の小山公園は、柳、千軒、小瀬の三自治会の協力であっという間にきれいになりました。
五月、地区大運動会は、幼稚園児、中学生、老人会、自治会を始め地域あげての参加で盛りあがりました。
玄関まわりの木も美しくせん定をしていただき、うさぎの餌を時々持って来てくださる方もいます。
六月、授業にもゲストティーチャーを招き、ベーごま、竹馬、パチンコなど昔の遊びを指導していただきました。
また、九月には、地引き網でお世話になります。
これからの教育は、学校だけで行うのではなく、保護者、地域とともに子どもたちを育てることが求められています。
二十一世紀の未来を担う子どもたちを共に育てるために、今後ともご協力をよろしくお願いします。
「戸形小学校は地域の方々のたまもの」です。
自然とふれあう子どもたち PTA新聞「こぶら」第52号 12.3.17発行より
戸形小学校ほど自然環境に恵まれた学校は,そう多くないであろう。学校の周辺,どこへ行っても自然を満喫できるのである。
島出身の人の中でも,わざわざこの地へ足を運ぶ人があとを断たない。特に,戸形崎から見る沖合いの夕景は一見の価値があるとのことである。
実際見てみると,なるほどと思う。確かに,夕日が落ちる一瞬のその様は神秘的でもある。そんな環境の中で,毎日学校生活を送る子どもたちは幸せである。
体育館の裏に小山公園がある。三年前,学校創立100年を記念して裏山周辺が整備された。創立記念公園の中央には永遠と刻まれた碑が建っている。
その裏手には,タイムカプセルが,三十年後に開封される日を静かに待っている。ここからは,瀬戸内海が一望できる。
遠く屋島や五剣山を望み,抜けるような紺碧の空の下,備讃瀬戸航路を行き交う船がのどかな雰囲気をかもしだしている。
穏やかな日には,子どもたちが友達と語り合ったり、野外給食を楽しむ場でもある。
小山公園を下ると海岸線に出る。島では数少なくなったまぶしいほどの白砂が広がっている。まるでダイヤモンドを散りばめたような光景である。
春には西側の海上に,子どもたちがそれぞれの夢を寄せ書きしたこいのぼりが揚げられる。大海原に向かって泳ぐ姿を,子どもたちが楽しそうに見上げる場でもある。
運動場の南側にフェニックスが五本,校舎側に貝塚四本が植えられている。どの木も,他の樹木をはるかに圧倒し,威風堂々としている。
度重なる暴風雨にも耐え抜いてきたその姿は,長い歴史を感じさせる。今日も,運動場でスポーツや遊びに興じる子どもたちをやさしく見守っているのである。
正門の前方は雑木林が続く小高い山である。ここは小鳥たちの別天地でもある。
春から夏にかけてうぐいすが飛び交っている。子どもたちはその鳴き声にしばし心を奪われるのである。
中庭に目を向けてみよう。初冬から春にかけて,桜とさざんかが競い合うように花を咲かせる。さざんかの花の優雅さと,桜の花の華やかさが楽しめるのである。
また,小鳥小屋の横に大坂城築城残石が居座っている。子どもたちにとっては,故郷の歴史教材資料として役立っている。
このようなすばらしい環境の中で元気に活動する子どもたちの姿を目で追いながら,自然のありがたさをつくづく思うこのごろである。