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ハマチが売れない

住民代表でここに来ている安岐さんは、親の代からハマチの養殖を営んできた。産廃の問題は先頭に立って一生懸命やってきた。その安岐さんがこのたび、養殖をやめることを決意した。なぜかというと、ゴミの島のイメージで豊島という産地を明らかにして売ることが出来ない。ハマチ業界全体が厳しい中で、豊島でやっているハンデを背負い、この2年間は赤字。借金を抱えてしまった。あんたらは被害がないみたいな言い方をするけど、これがまさに被害。長引けば長引くほど一人、二人と離脱する。だから、なんとか早く、解決する方向で考えてもらいたい。安岐君、君も何とか言えよ。

無駄にしないで
1996年2月22日、総理府二階の調停・仲裁・裁定室。第8回調停で、中坊公平は、公調委の調停委員らに、住民会議のリーダー・安岐正三が戦線を離脱、出稼ぎに出ざるを得なくなったことを明らかにした。住民らには感情を押し殺した様な声に聞こえた。

安岐は立ち上がり、淡々と語り始めた。

自分達の様な零細魚業者は、よい餌をやり、きれいな海で養殖しているのをアピールすることで、負荷価値もつき、何とか生き残れる道も探れるが、豊島でやっている限り、それは絶対言えない。東京や大阪に出荷される中に紛れこませ、売っている。産廃の危険性を訴えれば訴えるほど、自分の首を絞めることは分かっていた。でも、私たちは何か悪いことをしたのか。次の世代にちゃんとした島にして残すため、運動を続けてきた。何とか、自分の努力を無駄にしないでほしい。

この日、調停委員長・西山俊彦(69)はいきなり、住民らが撤去を求める法的根拠や具体的な被害について質問した、という。

住民側にすれば「公調委自体が現地調査結果を踏まえ、早急な対策の必要性を強調しているのに、今さら何を言い出すのか」という気持ちだった。

中坊は「答えるつもりはない」と突っぱねた。そして、公調委事務局の元総務課長が<イニシアチブをとって当事者間の調整を行い、迅速な解決を目指すのが、公害紛争処理制度の理念>などと法律専門誌に書いた論文を読み上げ、調停を前進させるよう要求。被害の実例として、安岐の話しを始めたのだった。

安岐の話しを聞きながら、浜中幸三は涙が止まらなかった。安岐とは幼なじみ。77年に起こした産廃処理場建設差し止め訴訟では二人で高松地裁に通い、調停申請後、住民の現場への立ち入り調査権が認められる仮処分決定の有力な武器となった和解調書を勝ち取った。撤去を望む心は一緒だったが、安岐は、土庄町職員としての私の立場を考えてくれ、いつも矢面に立ってくれた。心の中で「正三君、この敵は必ずとってやる」と叫んでいた。

安岐は「島の仲間には調停が終わった後に話そうと思い中坊さんも了解していた。だから、あの時はずいぶんひどいことを言わせるなあと思った。でも、後で考えたら犬死にじゃなく、意味のある死に方をさせてくれたと思う。言わせたほうが辛かっただろう」と思いやる。

安岐の発言の後、室内は静まり返った。弁護団の岩城裕は「自体の深刻さがはっきり出て、調停委員の雰囲気は変わった」

公調委は第7回調停で約束していた排出業者の意見聴取もしていなかった。迅速な進行を再度求める中坊の要請に、西山は「申請人、被申請人に接触して、色々意見を聞くかもしれないが協力を御願いしたい」と答えたという。

これに先立ち、公調委は県側に第7回調停で住民側が出した完全撤去を求める要請書に対する意見を質問。県は「主体となって撤去計画を示すことは困難」との見解を繰り返した。さらに、公調委は県として、環境保全上望ましい対策などをなるべく早く出すよう要請したという。

正義は勝
五日後、大阪市北区の中坊法律事務所。「安岐さんのことを言うつもりはなかったんやけどねえ。委員長があんなことを言い出したから・・・。金も組織もないものが戦うのが、いかに困難かという証拠」

中坊は低い声でつぶやいた。一方で、こう断言した。

「正義の戦いは必ず勝。負けてたまるか。いたずらに失望したり、慌てたりせず、腰を落として悪い時でも耐え忍んでいく。世の中なんて、全部が壁やと思うてもどこかに抜け穴がある。そんな妙な信念がある。」 (敬称略)

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このページは、 1996.7.20 にアップデートされました。
Last up date
2002.7.22