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きれいな海を守れ

<環瀬戸内海弁護団>が総理府に結集した。1994年4月4日、第9回調停。

初参加の元日本弁護士連合会(日弁連)副会長・阿左美信義(61)は終了後「豊島の汚染は、やがて瀬戸内海全域に広がる。瀬戸内海の環境は一つ。違法な産廃は業者、自治体、国が撤去しなければ、弱いもの(住民)が泣き寝入りさせられる」と力をこめた。

豊島住民会議の弁護団長・中坊公平(66)は第8回調停で、公調委の調停委員長・西山俊彦(69)が「住民の被害は何か」などと質問したことに危機感を強めた。

「公調委は莫大な解決費用にびっくりし、専門委員の示した案より、もっといい加減な案を住民に呑ませようとしているのではないか。問題を矮小化させてはならない。豊島問題は瀬戸内海沿岸住民全体の問題である」

住民負担も限界 関係する府県の弁護士を集め、各地で狼煙を上げたい。そんな思いで弁護団への参加を呼びかけたところ、大阪、兵庫、和歌山、広島、岡山、香川、愛媛の八弁護士が名乗りを上げた。日弁連会長時代や森永ヒ素ミルク中毒事件の仕事仲間、公害問題に関心のある人々だった。

住民側がこれまでに支出した調停関係費用は3000万円を突破。これ以上、負担はかけられない。だから、中坊ら旧弁護団と同様、住民からは食事代などは別にして弁護料は一切もらわない、「手弁当」。第9回調停には6人が駆けつけた。

しかし、その冒頭、西山は質問をあっさり撤回。「住民が豊島をきれいにしたいという気持ちは分かる。第3回調停で県が出した『撤去の問題も視野に入れながら』という内容の文書を評価し、公調委として最大限解決に努力するとした方針は変わりない。その方向で努力しているので、信頼してほしい」と述べた。さらに、調停当日以外でも県と協議し、その担当は調停委員の一人、南博方(66)があたる意向を示した、という。

それでも、弁護団の日高清司(40)は「西山委員長の前回発言はこれまでの調停のいきさつや専門委員の調査検討結果を全く無視し、進行を混乱させ、解決を遠ざけるだけでなく、公調委の存在意義すら害しかねない」との意見書を読み上げ、積極的に解決策を示すよう、釘を刺した。

弁護団に新たに参加した伊多波重義(63)や石田正也(41)も豊島問題解決の重要性を訴えた。

その頃、産廃汚染の風評被害でハマチ養殖を断念、戦線を離脱した住民会議のリーダー・安岐正三(45)は、高松港の港湾工事に汗を流していた。

県も体制一新
県側も、体制を一新した。陣頭指揮をとっていた全環境保健部長・山下賢一(58)は、4月1日付で環境保全公社副理事長に転出。最前列の席に座ったのは、組織再編で新設された生活環境部長・川北文雄(55)、環境局長・大久保厚(53)。

住民らが処理業者「豊島総合」の犯罪に加坦したと主張する県職員A(46)も同日付、B(54)は95年4月に移動した。共に、廃棄物行政の担当は約18年間。

安岐の戦線離脱に対し、二人とも「コメントできない」。Aは「頭の中にはいつも豊島問題がある。調停は最後まで見届けたかった」。Bは一度も調停に出ず「県の職員なので、県の指示に従う。個人的な問題ではない」と語る。

県側の弁護士、田代健(50)は第9回調停終了後、第8回調停で公調委から求められた県としての環境保全策など<宿題>には回答しなかったことを明らかにした。その理由を「調停には排出業者、処理業者も参加している。県だけの立場で回答を出すのは困難。全当事者参加のもと、(公調委が)指導力を発揮してほしい」と説明した。

一方、処理、排出業者は出席せず、西山は住民、県同席の場で「今後は、排出業者の考えも聞きたいと提案、田代は「出来るだけ早い機会にやったほうがいい」と歓迎の意向を表明した。

調停は第7回のレベルに戻った。

4月8日、県庁4回の県政記者室。定例記者会見で知事・平井城一(73)は今後の調停について「申請人、被申請人に公正な立場から公調委が意見を出してもらいたい。公調委が主体的な立場で考えを出してもらいたい」と語った。

11日、高松市の県環境保全公社事務所。山下は「生涯を通じて大きな事件だった。(在任中に解決できなかったのは)心残りで、今後は気がかりだが、最終的には調停で解決できるだろう」と期待をこめた。

14日昼、廃校になった豊島の小学校運動場。満開の桜の下で、安岐は気のおけない仲間と花見を楽しんだ。産廃の話しはしない。酒を酌み交わし、春の一日を堪能する。そんなのどかな島の暮しももうわずか。近く、神戸などに出稼ぎに出る予定だ。

「島の暮しはこんなんよ。人生狂うてしもたな。でも間違うたことはしとらん」

19日午後、高松市水道局5階研究室。安岐から後継氏名を受けた石井亨(36)は、住民団体「瀬戸内海を守る県連絡会」の構成団体代表者らに、公調委へ早期解決を求める意見書を出してくれるよう、懸命に訴えていた。

「県は意見を言えない。公調委もノラリクラリ。豊島の住民が出す費用は今年度中には4500〜5000万円にのぼる見込みです。島の住民は長引けば長引くほど、仕事が出来なくなります。豊島だけの問題ではありません。ぜひ、各々の立場から公調委に意見書を出して下さい。もはや、県単独で対応できる問題ではないのです」

弁護士だけでなく、瀬戸内海沿岸住民の問題としてネットワークを広げようと始めた初仕事。早速、二団体から賛同をもらった。これから、他県へも足を運ぶつもりだ。

石井は現在無職。公調委の動きは以前鈍い。献身的に努力した安岐の跡継ぎは荷が重い。「だが、やるしかない」(敬称略、第二部終わり)

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このページは、 1996.7.20 にアップデートされました。
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2002.7.22