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公調委は無力だ

「初めて敵に向かって弾が飛び、それが見事に当たっている」

豊島住民会議弁護団の岩城裕(37)(大阪)は、前列の席で公害等調整委員会(公調委)の調停委員にかみつく師匠の弁護団長、中坊公平(66)の背中をほれぼれとする思いで眺めていた。

1994年5月19日の第2回調停は住民の地元開催の願いが受け入れられず、会場は東京・総理府。まず、県側が入室。続いて入った住民側に公調委を通じて伝えられた県の見解は「排出業者の所在地の自治体も当事者。排出業者や他の自治体も含めて撤去案が出るのならいいが、その場合でも県が主体となって撤去できない」だった。

そして、調停委員長、海老原義彦(67)は「専門委員による現場調査を実施し、その結果を受けて検討すればどうか」と提案したという。

調停を不調にする
だが、中坊は弁護団の大川真郎(55)と岩城が公調委に事前折衝に出向いた際、調査予算はわずか200〜300万円で、環境保全が前提、県の調査結果も参考にするという報告を受けていた。おざなりな調査で安全宣言し、住民を沈黙させようという意図を感じていた、まさにその路線。「怒りと失望」が込み上げ、爆発した。

「調停委員会は権威があると期待していたが、間違いだとわかった。そんな調査は無意味だ。撤去に方向転換しない限り、調停を不調にする」

海老原は色をなして「調停を申し立てながら、たった2回で不調を言い出すのはきわめて横暴だ」と反論。

中坊は負けない。「横暴なのはあんたや。私はいつもグリーン車やけど、今日は乗ってこなかった。住民に1円でも負担させたくないからや。今も住民らは県庁前で一日中、抗議の立ちっぱなしをしている。県は公費で来るけど、住民は一人ひとりのカンパ。力に開きがあるのに、強いほうに気がねする。調停を不調にし、マスコミに公調委の無力を訴える」

当時、中坊の事務所に居候していた岩城は「中坊先生の声は震え、本当に泣いているのがわかった。住民以上に怒っている。駆け引きでも何でもない。あの迫力は何ともいえない。怒られて海老原委員長も泣いた。あれが、公調委の泥船路線をゴロッと変えた」と回顧する。

同事務所出身の弁護士日高清司(40)も「すごい迫力。間近で見るのは初めてで、調停の空気もやや変わった」申請人代表のひとり、土庄町議、長坂三治(64)は「どきどきし、びっくりしたが、中坊さんは大したもんやなあと思った」

弁護団のメンパーや住民にとって、中坊はそれまでハッパを掛けるだけの怖い存在だった。申請人筆頭代表、山本彰治(62)は「住民は、県が親という気持ちをぬぐいきれなかった。でも、私たちが完全撤去と反することを言い出すと、『そんなことを言うてるからあかんのや』と怒られた」と打ち明ける。中坊はそうした自らの考えを身を持って示した。

法律でなく条理で
公調委の態度は変わった。いったん、審理が中断された後、ひとりで調停室に呼ばれた中坊に、海老原は「どうしたらいいんですか」と問いかけた。

中坊は言った。「公調委の権威を回復し、県に撤去せよと勧告をしてもらいたい。法律ではなく条理(誰が考えても明らかなこと)で。そうすれば、不調にはしない」と。

午後5時。調停開始から3時間が経過し出席者全員が集められた席で、海老原は県にこう提案した。「法的責任はともかく、条理上、撤去を望む住民の気持ちはよくわかる。県としては難しい問題もあると思うが、撤去の方向に向け、一歩踏み出せるよう、再度検討してもらいたい」

これに対し、県側の弁護士、田代健(50)は「持ち返って検討する」と答えた。 田代は自治官僚から県に出向、80年に弁護士に転じた。知事平井城一(73)が企画部長時代、仕えたこともあって、調停開始以前から豊島問題の法律上の相談を受けていた。

田代は、中坊が相手でも「やりにくいことは全くない」と言い切る。一方で苦悩も吐露する。

「この事件は今でも解決の姿、イメージすら描けない。普通は裁判所で法的な争点を詰め、主張して立証していくのだが、今回は住民の主張を全部つぶしても、勝ったと喜べない。住民の訴えが法律的には通らないと主張する立ち場と、知事として県土をどうするかという視点もある。理屈で勝てばいいというわけでないところが、辛いというか、弁護士の普段の仕事と異質なところ」

県内部では第2回調停後、方針をめぐって激論が交される。(敬称略)

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このページは、 1996.7.20 にアップデートされました。
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2002.7.22