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Victor JA-S41DC
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥59,8001977年にビクターが発売したプリメインアンプ。トリオのL・R独立電源に対し,A級・B級独 立電源を搭載して人
気となったJA-S41の改良モデルで,パワー部を完全DC化したのが大きな特徴となっていました。 JA-S41発
売の翌年に発売された,ある意味JA-S41の完成形ともいえる1台でした。JA-S41DCの最大の特徴は,JA-S41で初搭載され,継承されたA級・B級独立2電源方 式でした。楽音レベル
のダイナミックな変動によってA級増幅段の電圧が変動し歪みが発生する動的干渉歪みを抑えるため,消費 電流
が楽音レベルによって大きく変動するB級増幅段の電源を,A級増幅段から分離してしまうもので,A級段 用とB級
段用の電源回路をトランス自体から独立して設け,A級段用電源を定電圧化し,温度変化や電圧変動にも強 い高
安定・低雑音の回路としていました。この方式が,アンプ動作の安定度を高め,DC化にも大きく役立って いました。
JA-S41DCでは,パワーアンプ部を完全DC化するために,さらに中点電位の安定度を高める 改良がされていま
した。パワーアンプ部の初段に,特性のよく揃ったローノイズFET2個を単一パッケージに封入したデュ アルFETを
採用していました。デュアルFETは,熱に対して2個のFETが同じ条件になり,温度変化によるドリフ トをきわめて
低く抑えることができ,安定度を高めることになっていました。そして,次段には,トランジスター差動回 路とダブル
差動同相帰還回路を搭載していました。PHONOイコライザー回路は,DC回路構成によるICLカスコード3段直結構成となっていました。初段には,低ノイ
ズのFETによる差動回路を採用していました。FETは,入力インピーダンスの高い電圧増幅素子であるため,カー
トリッジの出力電圧がストレートに増幅され,周波数によって信号源インピーダンスが変わっても回路の動作が安
定しているというメリットがあり,カートリッジ実装時のSN比がすぐれているという特長を持っていました。ボリュームは,このクラスでは贅沢な4連ツインボリュームが搭載されていました。イコライザー回路の後とトーンコ
ントロール回路の後,2箇所にボリュームを置くことで,プリアンプ部から発生するノイズを効果的に低減し,アンプ
全体としての実用SN比を高めていました。
その他,特徴的な機能として,前面パネルにTAPE-2端子が設けられ,可搬型デッキ等を使いやすくしていること
化粧ビスをとればオプションのハンドルOH-140(¥2,000)を取り付けられるフロントパネルなどがありました。以上のように,JA-S41DCは中級機ながら,要所に力の入った作りで,端正で癖のない音を持った実力派のアン
プでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎初段デュアルFETダブル差動入力の
完全DCパワーアンプ部。
◎動的干渉歪−100dB以下
A級・B級独立電源方式。
◎初段FET・ICL入力の
DC回路構成イコライザー。
◎高S/N4連ツイン・ボリューム。
■パワーアンプ部■
回路方式 | 初段デュアルFETダブル差動DCアンプ |
実効出力 | (8Ω両ch動作)
65W+65W(20Hz〜20kHz,THD0.05%) (4Ω両ch動作) 82W+82W(20Hz〜20kHz,THD0.05%) |
全高調波歪率 | 0.02%以下(65W・1kHz) |
混変調歪率 | 0.10%以下(実効出力時) |
出力帯域幅(両ch動作時) | 15Hz〜40kHz(8Ω,−3dB出力,THD0.05%以下) |
周波数特性 | DC〜100kHz+0,−1dB(1W出力時) |
出力端子(スピーカー) | 4〜16Ω(SYSTEM-1or2),8〜16Ω(SYSTEM-1+2) |
ダンピングファクター | 40以上(8Ω,20Hz〜20kHz) |
SN比 | 105dB(65W出力時,IHF-Aネットワーク,ショートサーキット) |
■プリアンプ部■
回路方式 | 全回路正負2電源,
イコライザーFET入力ICLカスコード3段直結 |
PHONO入力感度/インピーダンス | 2.5mV/47kΩ |
PHONO・RIAA偏差/最大許容入力 | ±0.5dB(20Hz〜15kHz)/200mV(RMS・1kHz) |
TUNER,AUX,TAPE PLAY
入力感度/インピーダンス |
160mV/50kΩ |
TUNER,AUX,TAPE PLAY
周波数特性 |
20Hz〜50kHz+0,−1dB |
トーンコントロール | BASS±8dB(100Hz)/TREBLE±8dB(10kHz) |
サブソニック・フィルター | 18Hz(6dB/oct) |
ラウドネス・コントロール | +6dB(100Hz)/+4dB(10kHz)(ボリューム−30dB時) |
ミューティング | −20dB |
SN比 | PHONO・75dB(IHF・A)/TUNER,AUX・95dB(IHF・A) |
■電源部・その他■
回路方式 | A級・B級独立2電源方式 |
定格消費電力 | 160W(電気用品取締法基準) |
ACアウトレット | 電源スイッチ連動2,非連動1 |
寸法・重量 | 420W×152H×330Dmm・10.6kg |
Victor JA-S41
STEREO NTEGRATED AMPLIFIER ¥56,500
(別売ウッドケース¥4,500)1976年にビクターが発売したプリメインアンプ。JA-S41DCのオリジナルモデルで,A 級・B級独立電源を初めて
搭載した1台で,癖のないバランスのとれた音で人気モデルとなりました。
前段の電圧増幅段をA級動作とし,最終段の出力段をB級動作とするアンプが多くなってきたのがこ の時代でした。
A級動作は,信号のレベルに関係なく一定電流が流れる方式であるため,電圧も一定であることが望まれ JA-S41
でも定電圧化が行われていました。B級動作の最終段の信号レベルの変動によって電源は内部抵抗により電 圧が
変動し,電源が共通の場合どうしても前段に影響が及ぶということになります。A級・B級独立電源は,電 圧が変動
して動くところと動かないところを分離し,動く部分の影響が動かない部分に及ばないようにしようとする 考えで,ある
意味理にかなった方式でした。また,見方を変えれば,セパレートアンプの利点を取り入れたともいえ,こ の方式は
他メーカーのアンプにも影響を与えていくことになりました。その意味でもJA-S41は画期的な1台で あったといえそ
うです。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎A級・B級独立2電源方式による
低歪率,安定増幅。
◎初段FET・ICL入力
DC回路構成イコライザー
◎小音量時の聴感S/Nを高める
4連ツイン・ボリューム
◎高域特性の劣化をふせぐ
シールド線極減設計。
◎システム・アップに役立つ
フロント・パネルのTAPE-2端子。
●JA-S41型規格●
回路方式 | 全段直結ピュアコンOCL
A・B独立2電源方式 |
実効出力
(8Ω両ch動作時) |
65W+65W(20Hz〜20kHz,THD0.05%) |
全高調波歪率 | 0.02%(65W・1kHz) |
周波数特性 | 20Hz〜50kHz+0,−1dB(1W) |
PHONO入力感度/インピーダンス | 2.5mV/47kΩ |
PHONO・RIAA偏差/最大許容入力 | ±0.5dB(20Hz〜15kHz)/200mV(RMS・1kHz) |
PHONO・SN比 | 75dB(IHF・Aネットワーク) |
消費電力 | 160W(電気用品取締法基準) |
寸法 | 390W×152H×330Dmm |
重量 | 10.2kg |
※本ページに掲載したJA-S41,JA-S41DCの写真,仕様表
等は,1977年9月のVictorのカタログより抜粋したもので,
日本ビクター株式会社に著作権があります。したがってこれら
の写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
ますのでご注意ください。
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