YAMAHA 101M
NATURAL SOUND STEREO POWER AMPLIFIER
¥1,000,000ヤマハは数多くのセパレートアンプを発表してきました。その中には多くの意欲作,野心作があ
りますが,この101Mは,ヤマハの歴代のアンプの中でも最大のもので,国産アンプの歴史の
中でも巨大アンプの一つに数えられるものだと思います。500W+500W,総重量61kgもの
規模を誇りました。当時,その巨大なフォルムとプロ機器的な精悍なデザインは目立っていたと
記憶しています。パワー段は,Pc200Wという大容量のメタルキャンケース入りパワートランジスターが片ch10
パラレルプッシュプルで組まれた強力なものでした。しかも,通常は±70V,5パラで動作し,必
要に応じて±120V,4パラが加わるという構成になっていました。このため,通常動作時におい
ては,±120V側の4パラは動作する必要がなく,パワー段全体としても大きな余裕度を持って
いることになり,トランジスター自身の発熱も,全体の発熱も大パワーアンプの割に少なくなって
いるため,自然放熱方式で,プロ規格のUL813を悠々とクリアしていました。
ヤマハが当時売り物にしていた,ZDR(ゼロ・ディストーション・ルール)という歪み低減回路を登
載していました。これは,通常の帰還方式と異なり,歪みを検出するする回路を持ち,そこで検出
された歪み成分のみをフィードバックすることで歪みをキャンセルしようという方式でした。当時,
帰還方式(NFB)の罪悪がいろいろ言われ,それに替わる歪み低減回路ということでこのような
部分帰還方式が各メーカーにより発表され流行していたことを思い出します。その結果,データ
的にも,0.003%(500W+500W・8Ω)の低歪みを誇りました。実際,歪み感の少ない音
だったと記憶しています。
電源部も強力なものが使われていました。線径2mmという極太の無酸素銅線を磁気特性に優れ
たオリエントコア(結 晶の磁化容易軸をできる限り圧延方向にそろえたもの。鋼板の圧延方向に
優れた磁気特性を示す方向性電磁鋼帯)に巻いた重量10kg ものトランスをパワー段専用のメイ
ン電源用に登載し,それ以外の部分には,サブ電源を持ち別のトランスを登載するというものでし
た。コンデンサーも大容量で,100V,18,000μFのものを4個,63V,39,000μFのものを
2個を片chに登載し,全体で,コンデンサーが12個,総容量30万μFにも達する巨大なものでし
た。この電源部に支えられ,4Ω時には,750W+750Wの出力に達し,BTL接続により,1.5
kWのモノラルパワーアンプにもなりました。
内部の構成も,完全なツインモノラル構成がとられ,電源コードや電源スイッチからL・R独立となっ
ており,片chだけ動作させるということも可能となっていました。全体配置や配線パターンについて
も,左右完全対称とした上で,微小電力部は上側に,大電力部は下側に配置し,信号の流れもフ
ロントパネル側からパワートランジスタが並ぶリアパネル側に流れるように,信号の流れや相互干
渉等に配慮した設計となっていました。シャーシ構造も強力で,極厚のアルミフレーム構造を採用し,
プロ用のラックマウントも可能なきわめて頑丈なものになっていました。
入力は,ピン端子の他,キャノン入力端子(オス・メス)も装備され,リアパネルのスイッチでバラン
ス入力,アンバランス入力が選べるようになっていました。また,リアパネルには7Hz/12dBoctの
サブソニックフィルタのスイッチも装備されていました。
フロントには,高精度な大型ピークメーターが搭載されていました。このメーターは,500Wを0dB
としたフルスケール1000W/8Ωのもので,BTL接続時NORMAL時×4のW表示も併記されて
いました。また,クリップインジケーターもついていました。
音の方は,従来のヤマハアンプの繊細で華麗な音にプロ機的なしっかり感が加わった感じだった
と記憶しています。さすがに巨大アンプだけに,従来の繊細だが少し細身といったヤマハトーンを
超え,重厚さも加わってきていました。しかし,その外観から想像されるほど重々しい音ではなく,
どちらかというとわかりやすいシャープな音だったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
疾風怒濤の絢爛たる表現性よ
蠱惑的でヴィヴィッドで濃密な描写性よ
陶磁の肌の滑らかさと艶やかさの叙情性よ!
真に知的で贅沢なオーソドックスからの
真の革新と革命だけが
パワーアンプの可能性をさえ増幅する
◎いかなる贅沢も,先進性も精緻さも, すべてを当然として聳え立つ巨人
|
◎あくなきクオリティーパワーの源泉 高余裕度パワー段と高能力電源部 |
◆片ch,Pc200W,10パラの高余裕度パワー段 |
◆ヤマハZDRを登載。トータル歪率0.003%以下 |
◆メイン電源,サブ電源セパレートの高能力電源部 |
◎ハイクオリティーを最終的に仕上げる スペシャルクオリティーパーツ |
◆Pc200Wもの大容量パワーTrは,贅沢なメタル キャンケース入り |
◆オリエントコア採用の大型メイントランス |
◆総量30万μFの大容量ケミコンを搭載 |
◆AC電源コードから別の完全ツインモノラルコン |
ストラクション |
◎ハイパワーを安心してハンドリングする ための精密プロテクション |
◆DC検出プロテクション |
◆高周波検出プロテクション |
◆ミューティング |
◆Pcリミッタ |
◎プロユースを含めて多用途に対応できる 本質的なファンクション |
◆BTL接続により1.5kW(8Ω)のモノラル・パワー アンプに |
◆キャノン入力端子 |
◆入力レベルアッテネーター |
◆高精度大型ピークメーター |
◆ラックマウント可能 |
●主な定格●
定格出力 | 500W+500W(8Ω,20〜20,000Hz,歪0.003%) 750W+750W(4Ω,20〜20,000Hz,歪0.01%) 1.5kW(BTL,8Ω,20〜20,000Hz,歪0.01%) |
パワーバンド幅 | 10Hz〜100kHz(8Ω,250W,歪0.1%) |
入力感度 | 1.73V(8Ω,500W) |
入力インピーダンス | 25kΩ |
周波数特性 | 10Hz〜100kHz+0,−3dB(8Ω,1W) |
サブソニックフィルター | 7Hz,12dB/oct |
SN比 | 122dB(8Ω,IHF-A) |
全高調波歪率 | 0.003%以下(8Ω,20〜20,000Hz,250W) |
混変調歪率 | 0.002%以下(8Ω,50Hz・7kHz,250W) |
ダンピングファクター | 500(8Ω,1kHz) |
消費電力 | 580W/ch(100V) |
外形寸法/重量 | 482W×264H×441Dmm/61kg |
※本ページに掲載した101Mの写真,仕様表等は1982年12月のYAMAHAの
カタログより抜粋したもので,日本楽器製造株式会社に著作権があります。したがっ
てこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますのでご
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