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PIONEER A-0012
STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER ¥190,0001977年にパイオニアが発売したプリメインアンプ。DC化,AB級動作など,「Magni-Wide Power Range」
を標榜して,広帯域,高出力,低歪みというアンプの性能を追求した新しいシリーズの最上位機種として発売さ
れたモデルでした。イコライザーアンプは,初段にローノイズデュアルFETを採用し,カスケード接続によってFETのドレイン-ゲート
間の電圧を抑えてノイズの発生を防ぐことなど,ローノイズ設計によりPHONO SN比91dBを実現していました。
また,MCカートリッジに対応してMCヘッドアンプを内蔵していました。このMCヘッドアンプは,全体を2系統に
分け,新開発のローノイズNPN・PNPトランジスターを2個ずつ平行接続する初段パラレル接続シンメトリカル3
段直結A級SEPP・DCアンプ構成としてSN比80dBというすぐれた特性を実現していました。
イコライザーアンプには,カートリッジロード切換が装備され,負荷抵抗が100Ω,10kΩ,25kΩ,50kΩ,
100kΩの5種,負荷容量も100pF,200pF,300pF,400pF,500pFの5種がそれぞれ独立して選べ,合
計25種のカートリッジロードが設定できるようになっていました。パワーアンプは,新素子である集団トランジスターRETを採用していました。このRETは,高周波特性にすぐれた
小さなトランジスターを数百個並列合成したもので,破壊強度が高く,高い周波数でも低歪み・大出力を取り出す
ことができるものでした。また,低域の特性向上のために,DC構成として低域までの周波数特性の伸張と中・低
域の位相特性の向上を図っていました。さらに,3Wまでをスイッチング歪みが本質的にないA級動作としたAB級
で,大出力と低歪みの両立を実現し,120W+120Wの大出力を0.01%(5Hz〜30kHz)の低歪みで実現し
た強力なパワー部としていました。これを支える電源部は,L・R独立の大型トランスと,18,000μF×4の大容
量コンデンサーによる強力なものでした。A-0012では,DC化が徹底され,MCヘッドアンプ,イコライザーアンプ,フラットアンプ,パワーアンプすべてが
DCアンプで構成された4DC構成となっていました。バッファーアンプも含めると5DC構成ともいえるものでした。
増幅回路のNFBループ内にある位相歪みの原因となるコンデンサーがないため,すぐれた位相特性と過渡応答
特性による安定したアンプ動作を実現していました。さらに,バッファーアンプとパワーアンプを直結するフラットア
ンプ・バイパススイッチを備え,より純度の高い信号伝送を可能としていました。
また,大電流が流れるパワー部からスピーカー端子までは,抵抗値が従来の太線の1/4になる極太14番線で
配線され,電源コンデンサーのアースラインには純銅板が使用されると同時に,各回路のプリント基板の銅箔は
従来の倍の厚さの70μ厚とされていました。機能として特徴的なものとしてトーンコントロールがありました。通常のBASS/TREBLEのメイントーンコントロ
ールの他にサブコントロールとしての超高域/超低域のコントロールツマミが設けられた方式となっていました。
BASSは,100Hzのメインコントロール(11ステップ各1dB)と50Hzのサブコントロール(9ステップ各1dB),
TREBLEは,10kHz(11ステップ各1dB)と20kHz(9ステップ各1dB)という設定になっており,より微妙なト
ーンバランスの調整が可能となっていました。また,トーンコントロールはスイッチによってバイパスすることもで
きるようになっていました。
サブソニックフィルターは6dB/oct,12dB/octの2段階になっており,プリ部,パワー部はスイッチひとつで分離
できるようになっていました。使用頻度の低いスイッチを下部におさめ,スモークドカラスの扉を設けたデザインも
当時としては特徴的でした。以上のように,A-0012は,オーソドックスに煮詰められた手堅い作りのプリメインアンプでした。20kgを超える
重量から想像されるようにしっかりとしたしかも癖のない音を持ったパイオニアらしい1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎120W+120Wの大出力で達成した
マグニワイド・パワーレンジ。
◎スイッチングひずみの追放を求めたAB級。
音の輪郭を明確に伝えます。
◎音の入口から出口まで,
すべての増幅段をDC化。
◎広大なミックレンジ再生を実現した,
PHONO SN比91dB(MM)。
◎MCカートリッジをダイレクトに接続できる,
DC構成のMCヘッドアンプを内蔵。
SN比80dB(MC)。
◎より純度の高い再生音を追求した
フラットアンプ・バイパススイッチ。
◎負荷抵抗5種,負荷容量5種が独立で
設定できるカートリッジロード切換。
◎微妙な音質調整ができる
ツイントーンコントロール。
(パワーアンプ部)
実効出力
(両ch駆動) |
120W+120W(5Hz〜30kHz,THD0.01%)
120W+120W(5Hz〜100kHz,THD0.05%) |
高調波歪率 | 0.01%(実効出力時5Hz〜30kHz,8Ω) |
混変調歪率 | 0.002%(実効出力時50Hz:7kHz=4:1,8Ω) |
出力帯域幅 | IHF両ch駆動,8Ω
5Hz〜40kHz(THD0.01%) 5Hz〜100kHz(THD0.05%) |
周波数特性 | 5Hz〜500kHz+0−1dB(1W出力時) |
ダンピングファクター | 70(5Hz〜30kHz,8Ω) |
SN比 | 120dB(IHF,Aネットワーク,ショートサーキット) |
(プリアンプ部)
入力端子
(感度/入力インピーダンス) |
PHONO1・2(MM):2.5mV/100Ω,10kΩ,25kΩ
50kΩ,100kΩ PHONO1・2(MC):250μV/100Ω カートリッジ負荷容量 PHONO1・2(MM)/100pF,200pF,300pF,400pF,500pF TUNER,AUX,TAPE PLAY1・2:150mV/50kΩ |
PHONO最大許容入力 | MM:300mV MC:30mV(1kHz,THD0.01%) |
出力端子
(レベル/出力インピーダンス) |
TAPE REC 1,2:150mV
PRE OUT:2V/1kΩ |
高調波歪率 | (5Hz〜30kHz)/0.005%(1V出力),0.01%(15V出力) |
周波数特性 | PHONO:20Hz〜20kHz±0.2dB TUNER,AUX,TAPE PLAY:5Hz〜300kHz+0−1dB |
SN比 | (IHF,Aネットワークショートサーキット)
PHONO MM:91dB PHONO MC:80dB TUNER,AUX,TAPE PLAY:100dB |
サブソニックフィルター | 15Hz(6dB/oct,12dB/oct) |
フラットアンプバイパス | −20dB |
(電源部・その他)
電源電圧 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 400W(電気用品取締法) |
最大消費電力 | 980W |
ACアウトレット | 2(電源スイッチ連動),2(非連動) |
外形寸法 | 454W×167H×468Dmm |
重量 | 24.7kg |
※本ページに掲載したA-0012の写真,仕様表等は,1979年
3月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア
株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
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