A1の写真
YAMAHA A-1
NATURAL SOUND STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER
                                ¥115,000

1977年にヤマハから発売されたプリメインアンプ。CAシリーズから新たにA-1桁シリーズへと転換した
最初のモデルで,それまでのモデルとは一変したシンプルな機能とデザイン,ディスク優先の思い切った
シンプルな回路構成などを特徴とし,個性的なモデルが展開されていくことになるA-1桁シリーズの幕開
けを飾った1台でした。

A-1の最大の特徴は,ディスク(アナログ)再生時に,DCイコライザアンプ+DCメインアンプというストレー
トDC構成になっていることでした。通常のプリメインアンプでは,プリアンプ→トーンアンプ→メインアンプと
いう3段構成になる信号経路を,プリアンプ(イコライザアンプ)→メインアンプ(パワーアンプ)という2段構成
にし,信号経路のシンプル化が図られていました。そのため,通常トーンコントロールOFF時にもトーンアン
プが20dB程度のゲインを持つ通常の構成ではなく,20dB分のゲインを,メインアンプに吸収し,トーンOFF
時(DISC SW ON時)には完全な2段構成DCアンプとなるようになっていました。

イコライザアンプは,入力回路のコンデンサとNFB回路のケミコンを排除したDCアンプ構成で,初段には
スーパーローノイズDual FETによるカレントミラーカスコードブートストラップ回路が採用されていました。
出力段は,トランジスタによるSEPP回路で出力インピーダンスは600Ωと低く設定されて,負荷安定度
を確保していました。また,REC OUTには,電源ON/OFF時のポップノイズを防止するミューティング
リレーが搭載されていました。
さらに,リアパネルのCERTRIDGE LOAD端子に付属のプラグを差し込むことで,負荷抵抗を,47kΩ
68kΩ,100kΩから選択できるようになっていました。

メインアンプは,通常のメインアンプより約20dBゲインが高い,入力感度200mVで設計されていました。
回路構成は,初段ローノイズDual FET差動増幅→プリドライブ段カレントミラー負荷差動増幅回路→エミ
ッタホロアバッファアンプ→ダーリントン接続SEPP OCL DCアンプという構成になっていました。
パーツの厳選,適正配置で,中心電圧のドリフトも抑えられた安定した動作のDCアンプとなっていました。

電源回路は,+,−別電源の画期的方式を採用し,2トランス構成で,それぞれのリーケージフラックスを
キャンセルするように配置して,パラに接続され,コンデンサには18,000μF×2の大容量のものが搭載
されていました。さらに2.3μFのメタライズドマイラコンデンサをパラに接続することで,電源のインピーダン
スを低く抑えていました。

A-1の内部

MCカートリッジに対しては,MCヘッドアンプが内蔵されていました。ローノイズ素子を使用したローノイ
ズMCヘッドアンプで,60μV入力時で70dB,入力換算雑音−154.4dBVの高SN比を実現していま
した。
トーンコントロール回路は,コントロール特性の素直なヤマハ独自のNF-CR型が採用されていました。
また,このトーンコントロール回路は,サブソニックフィルタを兼ねていて,トーンコントロールツマミをフラッ
トなポジションに設定すると,サブソニックフィルタのみを動作させることができるようになっていました。
これら,付属機構は,下部のシーリングポケット内に収納され,シーリングパネルを閉めた状態では,き
わめてシンプルなデザインとなりました。そのシンプルなパネル上に配置された,DISC スイッチを押す
ことで,アナログレコード再生が優先された回路構成になるという,アナログレコード再生にはうれしい機
能を持つアンプでした。

シーリングパネルを開いたA-1

以上のように,A-1は,アナログディスク再生をよりよくするという設計を前面に出し,DCアンプ,回路の
シンプル化を進め,電源部等中身のしっかりしたアンプでした。A-1桁シリーズへのヤマハの意欲がそ
こには表れていたように思います。そして,その後A-1桁シリーズは,新しい技術を次々と導入し,個性
的で美しいアンプが作られていきました。
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


Disk straight
DC Amp A-1

ストレートDC構成で秀れた特性を誇り,
ディスクを鮮やかに優先します
 
 

●A-1の規格●


実効出力 20Hz〜20kHz・8Ω・0.02% 70W+70W
20Hz〜20kHz・4Ω・0.05% 80W+80W
全高調波歪率 PHONO MM→REC OUT 8V 20Hz〜20kHz 0.005%以下
PHONO MC→REC OUT 2V 20Hz〜20kHz  0.01%以下
TUNER→SP OUT 35W・8Ω 20Hz〜20kHz   0.01%以下
混変調歪率 TUNER→SP OUT ・8Ω・35W
       60Hz:7kHz=4:1  0.003%以下
パワーバンド幅 10Hz〜50kHz(8Ω・35W・歪0.02%)
ダンピングファクター 100以上(8Ω,1kHz)
周波数特性 TUNER・AUX→SP OUT・8Ω 20Hz〜20kHz+0,−0.2dB
TONE OFF   10Hz 0±0dB,100kHz 0+0dB−2dB
TONE ON    10Hz −4±0.5dB,100kHz 0+0dB−2dB
RIAA偏差 20Hz〜20kHz 0±0.2dB
入力感度/入力インピーダンス PHONO MM   2.5mV/47kΩ標準(200pF)
PHONO MC   60μV/10Ω
TUNER・AUX・TAPE 200mV/47kΩ  
最大許容入力 PHONO MM・1kHz・歪0.01%  230mVr.m.s
PHONO MC・1kHz・歪0.02%     6mVr.m.s
トーンコントロール特性 BASS   350Hz   ±10dBat20Hz
TREBLE  3.5kHz  ±10dBat20kHz
出力感度/出力インピーダンス REC OUT  200mV/600Ω
PRE OUT      2V/600Ω
ノイズレベル・SN比 PHONO MM(IHF-A net work)  85dB以上
PHONO MC(IHF-A net work)  70dB以上
TUNER・AUX・TAPE TONE OFF 112dB以上
               TONE ON  105dB
残留ノイズ DISC ON・TONE OFF 50μV以下
チャンネルセパレーション(1kHz) TUNER→SP OUT 入力5.1kΩ             70dB以上
PHONO MM→SP OUT 入力5.1kΩ・Vol−30dB 75dB以上
PHONO MC→SP OUT 入力ショート・Vol−30dB 75dB以上
NDCR PHONO→SP OUT 歪0.1%・Vol−20dB
IHF-A net work  6mW〜70W
ヘッドホン出力 39mW(8Ω定格出力時)
ACアウトレッツ SWITCHED 2個 Total 100Wmax
UNSWITCHED 1個 100Wmax
定格電圧・周波数 AC100V・50/60Hz
定格消費電力 215W
外形寸法 435W×117H×381Dmm
重量 15.8kg
※本ページに掲載したA−1の写真,仕様表等は,1978年4月
のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・
引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。                                         
 

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