A-1Eの内部
A-1Eのフロント
 

ONKYO integra A−1E
INTEGRATED STEREO AMPLIFIER ¥180,000

1992年にオンキョーから発売された「QUEST(クエスト)シリーズ」のプリメインアンプ。CDプレーヤーの
ページでご紹介したC−1Eと同じ一連のシリーズの製品で,オーディオ機器然としたメカニックさを極力抑
え,音楽を聴く道具としてシンプルながら上質さを求めて設計されたアンプでした。日本のアンプのイメージ
とは大きく異なるシンプルなデザインと薄型ながらしっかりした音が好評を得たことを思い出します。どこか
イギリスのオーラデザインのアンプを思わせる洗練されたイメージのアンプでした。                                        
A−1Eは,薄型でシンプルな作りながら,実は贅沢な設計が特徴でした。通常のアンプは物量を投入して
性能を追求していきますが,このA−1Eは,「量より質」という感じの設計でした。量産性より品質を重視し,
高精度部品や高品位のパーツを贅沢に投入し,性能の安定度を徹底的に高め,回路テクニックやアクセサ
リー的な機能より素顔の美しさを重視した設計は他の多くの国産プリメインアンプと異なり,非常に特徴的
でした。                   
初段および二段目のプリドライブ段の差動増幅部では,計測器用の高精度デュアルトランジスターを使用し,
このプリドライブ段から最終段までの主要部分には,誤差±0.1%の高精度抵抗を使用し,極めて安定度
の高い回路としていました。このため,トータルの負帰還量を大幅に減らすことができ,さらに,出力部のフィ
ルターコイルを廃止して,出力インピーダンスを安定的に低下させることになっていました。また,出力リレー
も負帰還ループ内に取り込み,安定したアンプ全体の動作と相まってスピーカー実装時の優れた特性が実
現されていました。                 
出力トランジスターのバイアス変動による音質の劣化を防ぐために,「リアルタイム温度補償回路」を新搭載
していました。これは,2チップ・デュアル・トランジスターを用い。片方のトランジスターで出力トランジスター
の損失モニターとして温度変化を検出し,同時に温度変化に合わせたバイアス制御をするもので,安定した
出力トランジスターの動作が実現されていました。A−1Eでは,この制御用素子の関係から出力を50W/ch
としていましたが,Pc=80Wのトランジスターをパラレルで使用し,しかも,120W/chクラスのトランスを
使用した強力な電源部をもっているため十分に余裕を持った出力段になり,2Ω負荷でも十分なスピーカー
ドライブ能力を持っていました。               
電源トランスには,オンキョー自慢のLASERトランスが用いられ,小型,大容量,超低リーケージフラックス
の優れた特性を実現した電源部でした。また,超低歪率ボリューム,ドイツ・レーダーシュタイン社製の高音
質フィルムコンデンサー従来比2倍の厚さの70μm厚の銅箔プリント基板などこだわった高品質パーツで固
められていました。また,シャーシも,フロントパネル部9mm厚の,高剛性・非磁性体アールアルミ押し出し
成形モノコックシャーシを採用し,優れた振動減衰特性,非磁性体の筐体を作り上げていました。±0.5mm
の高精度加工が施されたこのシャーシには,剛性を向上し,不要な共振を低減するため内外面に多くのリブ
を設けた複雑な構造で,これだけでもお金がかかっていそうでした。このシャーシにトランス,プリント基板,ヒ
ートシンクがそれぞれインシュレーターによってアイソレートマウンドされ,高剛性・無共振が徹底されていま
した。                                              
このように。シンプルな外観と機能の中に贅を尽くした作りを詰め込んだという感じのA−1Eは,分かる人に
はその価値が分かるという玄人好みの設計でした。音質の方も,音楽を上品に美しく聴かせるという実質本
意のもので,店頭効果より,実使用時の良さを持った優れたアンプだったと思います。                                

 
 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 




 
 

こだわれば,透明な音が見える。
・・・インテグラA−1E
 

ハンドメイドだけが可能にした精緻な回路設計。
電源部,コンストラクション,パーツにも      
高度なノウハウと高品位な素材を結集しました。

◎超安定な,理想の動作機能を
  発揮する増幅回路
◎音質劣化を解消した,
  画期的な出力バイアス温度補償
◎高品質のために,あえて
  量産性にこだわらない設計を導入
◎高剛性・非磁性体のオールアルミ押し
  出し成型モノコックシャーシを採用

 

●主要定格


入力 5系統(CD,TUNER,LINE・1,LINE・2,TAPE PLAY)
出力 TAPE・REC,SPEAKER,HEADPHONE 各1系統
定格出力 50W+50W(8Ω),85W+85W(4Ω)
ダイナミックパワー 80W+80W(8Ω),140W+140W(4Ω),230W+230W(2Ω)
全高調波歪率 定格出力時(20Hz〜20kHz:8Ω)0.02%
10W出力時(20Hz〜20kHz:8Ω)0.01%
混変調歪率 定格出力時(70Hz:70kHz=4:1・8Ω)0.02%
パワーバンドウィズス  10Hz〜100kHz (IHF・3dB THD0.2%)
ダンピングファクター 400以上(8Ω・20Hz〜20kHz)
スルーレート 80V/μs
周波数特性 10Hz〜100kHz +0,−1.5dB
S/N比 106dB(CD,A-Weighted,入力ショート)
チャンネルセパレーション 75dB(CD・1kΩ-ターミネート,100Hz〜10kHz)
入力感度/インピーダンス 150mV/25kΩ(CD,TUNER,LINE・1,LINE・2,TAPE PLAY)
録音出力 150mV(TAPE REC OUT)
消費電力 155W(電気用品取締法規格)
外形寸法 435W×85H×374Dmm
重量 9.1kg
※本ページに掲載したA−1Eの写真,仕様表等は1992年10月のONKYOの
カタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権があります。したが
って,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられています
のでご注意ください。                                  
 

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