YAMAHA A−2000
STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER ¥189,000ヤマハが1983年に発売した高級プリメインアンプ。ヤマハのそれまでのプリメインアンプのどちらかというと
繊細なイメージとは打って変わってどっしりしたイメージの外観。そしてその外観に比例するかのようにどっし
りした音が印象的でした。それまでのX電源をやめて巨大な通常電源を搭載し,ある意味でオーソドックスに
なったモデルでもありましたが,それまでのヤマハアンプの軽やかで繊細なイメージを大きく変えた1台でし
た。最大の特徴は「Dual Amp Class A with ZDR」という回路方式でした。これは,「全域純A級150W+
150W」というスペックを実現するためにヤマハが1983年春,パワーアンプB−2xで発表した方式でした。
当時全盛だった疑似A級アンプとは異なる方式で,純A級アンプとAB級アンプをコンビネーションして,大出
力で純A級の音質を実現しようとするものでした。負荷は,A級アンプとAB級アンプの各々の出力と接続され
かつNFBは負荷両端からA級アンプにかけています。この結果A級アンプが負荷電流をコントロールし,AB
級アンプはA級アンプの音質に関わることなく電力損失だけを受け持つということで,特性上全出力帯域がA
級動作しているという巧妙な方式でした。従来のバイアス電流をコントロールする疑似A級方式とも,出力によ
りA級動作とAB級動作を切り換える方式とも異なっていました。後にテクニクスが純A級の電圧制御アンプと
AB級の電流駆動アンプをブリッジ接続して大出力とAクラス動作を実現したクラスAA回路と似た方式とも言え
当時として先進的なものだったと言えると思います。(基本的な考え方はアメリカのスレッショルドが電流供給
アンプと電圧供給アンプを分けてひずみの発生を防ぎNFBを排除したステイシス回路にあるようです。)ZDRはZero Distortion Ruleの略で(訳すと歪みゼロの法則!)ヤマハが開発した歪み低減方式でした。
当時,出力の一部を逆相にして入力側に戻すことで歪みを低減するNFB方式の害悪が盛んに言われ,各社
NFB以外の歪み低減方式を盛んに発表していました。これらの方式の基本的な考え方は,アンプの入力信
号と出力信号を比較して歪み成分を検出し(入力信号と出力信号を同じレベルで逆相加算することで検出)こ
れを別のアンプで増幅して出力側で逆相にして加えることで歪み成分をキャンセルするというものでした。ヤ
マハのZDRの場合は,歪み検出回路がブリッジ接続され,リアルタイムで検出した歪み成分を入力電圧に
同じレベルで同相で加えることによりあらゆる歪みをゼロにするとうたっていました。ヤマハは当時この方式に
自信を持ち大きく宣伝していたことを覚えています。実際,当時のヤマハアンプは歪み感の少ない音だったよ
うに思います。アースに起因する問題についても「ノンカレントアース」と「ワンポイントアース」ということで対策を図っていま
した。先のDual Amp方式により,アースは電位を決めるだけで電流が流れなくなるため「ノンカレントアー
ス」となってアース問題からフリーとなっていました。さらに,パワー段,電源廻り,プリアンプ,プリドライブ,
トランス系などのアースを完全にセパレート化し,それぞれが1カ所に落ちる「ワンポイントアース」としたこと
で共通インピーダンスをゼロにし,アースに余計な電流が流れない設計としていました。
電源部は,クラスを超えた大容量で,内部構造を見てもその巨大さが分かります。片ch55,000μFの大
容量のケミコンを2個ずつ搭載,合計22万μFという大容量で少々の負荷にはびくともしない安定した電力
供給を可能にしていました。2Ω時のダイナミックパワーは実に400W+400Wを実現していました。電源
トランスも強大なものを2基搭載してアンプ本体の重量もプリメインアンプでありながら26kgもありました。
イコライザー部はヤマハが誇るDCサーボ「リアルタイムイコライザー」となっていました。これは,RIAA素子を
2つ使用したもので,NF型とCR型を組み合わせて両者の良いところをとるという巧妙なものでした。周波数
特性的にも時間的にも優れた特性でイコライジングが行え,高域の位相ずれも少なく,位相補正も軽くてすみ
動作の安定したイコライザーとなっていました。さらに,High gm ローノイズFETによるダイレクトカップリング
のDCサーボ方式となっており,低域まで優れた特性を実現したものでした。
機能的に大きな特徴は,「リッチネス回路」でした。これは,スピーカーの低域を補正する回路で,接続したス
ピーカーの低域周波数特性を,1オクターブ下へフラットにのばすことができる一種のイコライザー回路でした。
同社のスピーカーの名機NS−1000M,NS−2000にはそれぞれ専用のポジションが設けら れ,当時も同
社のNS−1000Mを愛用していた私にとってはこの機能だけでも気になるA−2000だったことを思い出しま
す。全体の作りも非常に豪華で,高級グランドピアノと同じ豪華なポリ塗装リアルウォルナット仕上げの外装,内部
の端正なレイアウト,無酸素銅線使用極性付き電源コード,大型のスピーカー端子など,それまでの繊細な感
じを特徴としたヤマハアンプのイメージを大きく変えたものでした。私にとって今でも記憶に残る名機の一つで
す。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
全域A級150W+150Wという 巨大スペックを達成した, プリメインアンプの最高峰。 ヤマハの2000番。 ◎頂点のスペックを達成して,オーディオの夢が
よみがえった。純粋とパワーの両立。
DualAmp Class A with ZDR。◎王者にふさわしい22万μFの巨大電源部。 ◎ノンカレントアースで,アース問題からは
パーフェクト・フリーになっています。◎スピーカーNS−2000,1000Mに捧げられる
新回路”RICHNESS”。
アンプとスピーカーの新たなパートナーシップが
ここにある。◎ポリ塗装リアルウォルナットの重厚なアウト
ルック。いい音はその姿まで美しい。◎贅沢なクォリティパーツも魅力です。
●A−2000の主な規格●
定格出力 150W+150W(6Ω,0.003%)
170W+170W(4Ω,0.005%)
130W+130W(8Ω,0.003%)パワーバンド幅 10Hz〜100kHz(歪0.02%,65W,8Ω) ダンピングファクター 200以上(1kHz,8Ω) 入力感度/インピーダンス PHONO 1=MC:100μV/100Ω・1kΩ
MM:2.5mV/47kΩ(220pF,330pF)・100Ω
PHONO 2=MM:2.5mV/47kΩ・220pF
AUX=150mV/47kΩ
MAIN IN=1V/1MΩ全高調波歪率 0.004%(MC→REC OUT)
0.003%(MM→REC OUT)
0.003%(AUX他→SP OUT 65W/8Ω)
0.002%(MAIN IN→SP OUT 65W/8Ω)周波数特性 +0,−0.5dB(5〜100kHz,AUX他) RIAA偏差 ±0.5dB(MC・MM 10Hz〜100kHz)
±0.2dB(MC・MM 20Hz〜20,000Hz)SN比(IHF-A) 83dB(MC 250μV)
88dB(MM 2.5mV)
106dB(AUX他)RICHNESS ポジション1 7.5dB/30Hz(NS−2000用)
ポジション2 7.5dB/40Hz(NS−1000M用)
ポジション3 7.5dB/50Hz(汎用)電源/消費電力 AC 100V 50・60Hz/420W 寸法 473W×169H×464Dmm 重量 26kg ※本ページに掲載したA−2000の写真,仕様表等は1983年11月のYAMAHAの
カタログより抜粋したもので,日本楽器製造株式会社に著作権があります。したが
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