A-820GTの写真
ONKYO A-820GT
スーパーサーボインテグラル方式プリメインアンプ ¥159,000

オンキョーが1981年に発売した製品で,当時の同社のプリメインアンプの最上級機でした。オンキョーは
セパレートアンプよりプリメインアンプに力を注ぎINTEGRAシリーズの名でプリメインアンプの名機を多く送
り出しています。このA-820GTもその一つですが,私にとって最も記憶に残っている1台です。当時,プ
リメインアンプを買い換えようと物色していた私の先輩が試聴を重ねた末このA-820GTを選んだのでし
た。その試聴に私も立ち会い,当時の他のプリメインアンプを圧倒する力感と鮮明な音は今でも記憶に残
っています。

オンキョーは優れたサーボ技術を特徴としており,このA−820GTにもその技術が生かされていました。
「スーパーサーボインテグラル方式」と称された技術が搭載されていました。電流増幅段の非直線性を補
正するためにNF(ネガティブ・フィードバック,負帰還)をかけ,NFで補正しきれないところを,超低域用の
+側サーボと,アースライン用の−側サーボをかけて,電源効果を上げスピーカーの実駆動能力を上げた
Wスーパーサーボを改良したもので電源増幅段にリニアリティ補正回路による正・負帰還をかけ,この段
のリニアリティを高めて時間差歪みと称する歪みを低減させるものでした。この時間差歪みというのは,当
時オンキョーが盛んに提唱していたもので,スピーカーが他のチャンネルの音の振動をマイクのように拾い,
逆起電力を生じさせることで混変調歪みが発生するもので,オンキョーが名付けた名称のはずです。

当時,アンプの世界では,アメリカのスレッショルドから始まった可変バイアスによる疑似A級増幅方式が
流行していましたが,オンキョーはバイアス固定の独自の「リニアスイッチング方式」を搭載していました。
これは,スイッチング速度の速いトランジスターを使うことでスイッチング歪みを解消し,クロスオーバー歪
みは,バイアスを可変するのではなく,特殊な補正回路でバイアスを補正して対処しようとする方式でした。
従って基本的にはB級動作ですが,他社の疑似A級アンプ同様,歪み感は少ない音でした。
プリメインアンプという形を生かすために,「デュアルダイレクト構成」と呼ぶシンプルな伝送系を採用してい
ました。これは,MC対応のストレートイコライザーとパワー部だけの2アンプ構成でした。イコライザー部を
最初からMCカートリッジをポイントに置いて設計し,ヘッドアンプやMCトランスを持たないシンプルな構成
とするとともに,イコライザー部,パワー部とともに裸特性を向上させ,帰還量を従来より大幅に低減し,余
分なゲインを持たせることの必要をなくしていました。

トーンコントロールはオンキョー自慢のトーンアンプを持たずにパッシブ素子のみで構成された「ダイレクトト
ーン方式」で,トーン回路をパスしなくてもコンデンサーが信号系路に入らない方式でした。そのためこのこ
ろはやっていたトーンコントロ−ルのON・OFFスイッチもついていませんでした。そのほか,機能的な特徴
としては「ソフトネス回路」がありました。これは,クオリティの低いソースを聴くときに適度に分解能をコント
ロールするもので,このアンプの分解能のすごさを物語っている回路でもありました。

A-820GTの電源部
電源部はプリメインアンプとして非常に強力なもので大型トランスを2基搭載した「ツインワインド方式大型2ト
ランス方式」で,セパレートアンプ並のものでした。このように見てくると,同社の高級セパレートアンプ
P−309,M−509の技術を受け継ぎ,プリメインアンプの中に注ぎ込んだようなアンプでした。決してあか
抜けたデザインとは言えませんが,中身の充実した音の良いプリメインアンプだったと思います。
 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



 

時間差歪のヴェールが除かれる。
そこにあるのは,ただ「音楽」だけ。
 
 

◎スーパーサーボインテグラル方式の採用           
◎A級匹敵サウンド,リニアスイッチング方式   
◎音の透明度を保証するデュアルダイレクト構成
◎パッシブ素子構成のダイレクトトーン方式     
◎トーンキャラクターを選べるソフトネス回路     
◎理想を目指す2トランス超大型強力電源部    
◎音質に影響を与えない非磁性体パーツ      

 
 
 

●A−820GTの定格●


定格出力(20〜20,000Hz) 110W+110W(AUX→SP OUT 8Ω両ch駆動)
全高調波歪率(20〜20,000Hz) 0.008%(AUX→SP OUT 定格出力時) 
0.006%(AUX→SP OUT 1/2定格出力時) 
0.003%(PHONO MM→REC OUT 3V) 
0.01%(PHONO MC→REC OUT 3V)
混変調歪率 0.008%(AUX→SP OUT)
パワーバンドウィズス 5Hz〜100kHz(IHF-3dB  THD0.2%)
ダンピングファクター 100(1kHz 8Ω)
周波数特性 20Hz〜20kHz/±0.2dB(PHONO→REC OUT/RIAA偏差) 
2Hz〜100kHz+0dB,−3dB(AUX→SP OUT)
入力感度/インピーダンス PHONO MM=2.5mV/47kΩ,100kΩ 
PHONO HIGH MC=2.5mV/100Ω 
PHONO MC=130μV/100Ω,330Ω 
TUNER,AUX,TAPE PLAY=150mV/47kΩ
PHONO最大許容入力(0.05%) PHONO MM=300mV(1kHz)/1400mV(10kHz) 
PHONO HIGH MC=300mV(1kHz)/1400mV(10kHz) 
PHONO MC=16mV(1kHz)/80mV(10kHz)
定格出力電圧/インピーダンス 150mV/2.2kΩ(TAPE REC) 
1.5V/600Ω(PRE OUT)
SN比(IHF-A ショート) PHONO MM 86dB 
PHONO MC 69dB 
TUNER・AUX・TAPE PLAY 100dB
トーンコントロール BASS   ±8dB 70Hz(Vol−16dB) 
TREBLE  ±8dB 20kHz(Vol−16dB)
ラウドネス +4dB,+6dB 100Hz
SUBSONIC FILTER 15Hz,20Hz 6dB/oct
ミューティング −20dB
使用半導体 6IC,6FET,72TR,49Di
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力(電気用品取締法規格) 200W
ACアウトレット UNSWITCHED 1個 200W 
SWITCHED    2個 合計200W
寸法/重量 465W×162H×431Dmm/21.5kg

 
 ※本ページに掲載したA−820GTの写真,仕様表等は1981年9月のONKYOの
カタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権があります。したがって,
これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意
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